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花見での出来事 Ⅱ

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 俺はマクシミリアンに、俺と青のことを話した、
 暴走族で、青が率いるピエロとの抗争で、俺が青の眼を潰し、顔に膝を入れて潰したこと。
 大学で青の妹・柴葉典子と出会い、その縁で青と再会したこと。
 その後、青が明穂さんに一目惚れし、一緒に喫茶店をやっていた話。
 
 「あんなに愛情を通わせていた夫婦を俺は知らないよ。最高の二人だった」

 たった二年の夫婦生活で、あいつらは最高の関係を紡いでいた。
 マクシミリアンも、一緒に聞いていたローマ教皇とガスパリ大司教も涙ぐんでいた。

 「イシガミ、サイバさんは本当に奥さんの遺影を大事にしていたんだ」
 「そうだろうな」
 「ああ、サイバさんの連絡先を聞いたんだ」
 「ほんとか!」
 「今、電話しようか?」
 「すぐにしろ!」

 俺と響子が興奮した。
 俺は六花や鷹、子どもたちを呼んで集めた。
 マクシミリアンが青と知り合っていたことを話す。
 マクシミリアンが青と電話で話し始めた。

 「そうなんです! 偶然、今イシガミと話していて分かったんですよ!」
 「おい、替わってくれよ!」

 マクシミリアンが電話をスピーカーモードにしてくれた。

 「青!」
 「赤虎! ほんとかよ!」
 「ああ、びっくりしたぜ! 隣に響子もいるんだ」
 「響子ちゃん!」
 「オニオニ―!」

 響子が泣きながら叫んだ。

 俺たちは懐かしく話した。
 
 「おい、そろそろ戻って来いよ!」
 「ああ、そうだな」
 「明穂さんも、いい加減日本に戻りたいだろう!」
 「アハハハハハ! 分かった、近いうちにな」
 「ほんとか!」
 「ああ、また連絡する」

 俺は喜んで青に自分の携帯の番号を教えた。

 「響子! 青が帰って来るってよ!」
 「うん!」

 響子がまた泣き、六花が抱き締めて席まで連れて行った。
 アビゲイルたちに、響子が一生懸命に今の話をしていた。
 そちらは任せて、院長たちのいるテーブルへ行った。

 「石神、何があったんだ?」

 俺は院長たちに話した。

 「あの喫茶店の人か!」
 「はい、院長には明穂さんのことでお世話になりました」
 「いや、少しは話を聞いていたからな」

 院長は、末期ガンの苦しみを「手かざし」で緩和してくれていた。
 それは、俺も当時は知らずに後から聞いた。

 「仲のいい夫婦だったよなぁ」
 「はい、最高でした」
 「二人とも綺麗な光だったよ」
 「そうですか」

 六花と鷹も思い出しているようだった。
 二人は明穂さんを喪ってからの青しか知らない。

 「優しい人でしたよね」
 「ああ」
 「だから常連さんも多くて」
 「石神先生、よく平五郎のカレーを持っていかれてましたよね?」
 「あいつも好きだったからな。いつもは店があってなかなか喰えなかったしな」
 「そうだったんですね」

 アビゲイルたちのテーブルに行くと、みんなが歓迎してくれた。

 「聞いたよ、タカトラ! 素晴らしい話だな!」
 「ああ、俺も驚いたよ」
 
 響子がまた話し出すので、俺がフォローしながら笑って補った。

 「青が帰ってきたら、また喫茶店でもどうかと勧めようと思っているんです」
 「そうなのかね? どの辺に?」
 「うちの病院の向かいに、丁度廃業したクリニックがありましてね。そこの土地でどうかと」
 「タカトラ! ほんとう!」

 響子が喜ぶ。
 ビルを建てるには,少々狭い土地だ。

 「ああ、実はもう高木に言って押さえてあるんだ。青の気持ち次第だけどな」
 「絶対にいいよ! そこにしよう!」

 俺は笑って響子の頭を撫でた。

 「まあ、あいつが帰ってからだ」
 「うん!」

 「ミスター・イシガミ、私たちも通うよ」
 「え! 大使閣下がですか!」
 「だって、近いじゃないか」
 「それはそうですが……」

 青がびっくりするだろう。
 まあ、それも面白い。

 「じゃあ、お願いしますね。ちょっと先になりますが」
 「私はミスター・イシガミとのことで、しばらくは駐日大使を務めることになる。大丈夫だよ」
 「ワハハハハハハハ!」

 しばらく話し、今日の料理は最高だと褒めてもらった。

 早乙女達のテーブルへ行った。
 「御近所さん」テーブルだ。
 双子が詳しく話していた。

 「石神! 感動したよ!」

 早乙女が泣いている。
 雪野さんは久留守を抱いて微笑んで早乙女を見ていた。
 俺は怜花を膝に乗せて座った。

 「トラ兄さん! 僕も感動したよ!」
 「分かったよ。ところでお前らの子どもはまだかよ!」
 「うーん、なかなかね」
 「毎日頑張ってるんですよ?」

 早乙女が困った顔をして、雪野さんが笑った。
 河合さんも笑っていた。

 「石神さん、今日はお招きいただいて嬉しいんですけど」
 「そうですか!」
 「あの、来ている方々が信じられないほど……」

 「ワハハハハハハハ!」

 ローマ教皇や駐日大使たちがいる。
 御堂総理もだ。

 「まあ、一杯食べていって下さいね。ロボも楽しそうだし」

 ロボは河合さんの飼い猫のモンドと遊んでいて、今はくっついて一緒に寝ている。
 
 「あの、どうしてローマ教皇までいるんですか?」
 「まあ、前に居酒屋で仲良くなって」
 「絶対ウソですよね!」

 みんなで笑った。
 高校時代に体育館裏で告白されたのだと言うと、河合さんも爆笑した。

 「石神さんはいろいろ凄すぎですよ」
 「そんなことはないですけどね」

 俺も最初はビビったのだ。
 柿崎たちも相当ビビっている。
 元ヤクザ一家が、公安のトップと自衛隊のキャリアに挟まれ、さらには御堂総理とローマ教皇だ。
 
 「柿崎ぃ、最近は悪いことはしてねぇだろうなぁ?」
 「石神さん、勘弁して下さい!」
 「ああ、雪野さんと河合さん。今度柿崎のやってるホストクラブへ御連れしますよ」
 「ほんとうですか!」
 
 「いしがみぃ~!」

 早乙女が泣きそうな顔でやめてくれと言った。
 早乙女家を中心に、左門とリーも、河合さんも柿崎たちも親しくなっている。
 時々、お茶会や食事会もしている。
 柿崎たちは別だが、お互いに仕事上も協力し合う関係だったからだ。
 今は真夜真昼が本格的に「花岡」を始めて一層親しくなっていっている。
 柿崎は水商売で少し肩身の狭い思いをしていたようだが、早乙女家も他の人間も優しい連中なのでいい感じに付き合っているようだった。

 千両たちの所へ行った。
 地面にシートを敷いてみんなで飲んでいる。
 千両と桜、それに千万グループの幹部たちだ。
 渋谷の野方たちや、新宿や他の地域を治めている連中もいる。

 「おう、呑んでるか!」

 みんなが立ち上がって挨拶して来る。
 亜紀ちゃんが青のことを話していた。
 亜紀ちゃんは大人気だ。

 「石神さん、またいいお話をお聞きしました」
 「また冥途の土産か!」
 「はい!」

 千両が笑い、みんなが笑った。
 しばらく石神家本家の話で盛り上がった。
 大きな組をまとめていた千両が何も出来なかったと笑っていた。

 最後に御堂家のテーブルへ行った。
 正巳さんが大歓迎してくれる。

 「石神さん、うちへすっかり来てくれませんね」
 「すいません、どうにも忙しくて。でも、ゴールデンウィークには是非」
 「待ってますよ!」

 昨日、双子に連れられて一家でコッコたちの土地に行ったそうだ。

 「驚きましたよ!」
 「そうでしょう!」
 「挨拶されました!」
 「ワハハハハハハハ!」

 「こんにちは」くらいなのだが、あれは驚く。

 「全部菊子さんのお陰ですからね!」
 「あれは全然違いますよ!」

 みんなで笑った。

 「トラさん、青のこと聞きましたよ!」

 木村が興奮していた。

 「まさか、あの青がトラさんとそういうことになっていたとは」
 「まあ、ヘンな縁だよな」
 「そんなことは! トラさんはやっぱ優しいや!」
 「よせよ」
 「山内兄弟のことも聞きました。それに槙野のことは、本当に残念です」
 「そうだな」

 俺が御堂に全部話しているので、御堂が木村にも話してくれたのだろう。
 槙野の葬儀にも、花の葬儀にも、もちろん木村は参列してくれた。

 4時頃に一旦解散とした。
 千両たちはまだまだ飲んで行く。
 ローマ教皇たちも御堂たちも、最後まで付き合ってくれた。
 楽しい花見になった。





 ローマ教皇たちやアビゲイルたちを見送り、御堂たちも帰って行った。
 早乙女達ご近所さんもそれぞれ土産を手に帰って行く。
 子どもたちが片付け、千両たちに大量の食材を置いて行く。
 
 俺は最後に残ったテーブルに向かった。

 「レイ、今年も楽しかったよ。見ているか?」

 俺はテーブルに置いたレイの写真に話しかけた。

 「タカさーん!」

 亜紀ちゃんが叫びながら近づいて来た。

 「おう」
 「じゃあ、レイのテーブルも運びますね」
 「ああ」

 俺が写真とウォッカのグラスを持ち、亜紀ちゃんが白いテーブルを持った。

 「夕飯はカレーですよ!」
 「マジか!」
 「今日は一杯ありますよー!」
 「いつもそうしろ!」

 「ワハハハハハハハ!」

 カレー屋台のものが大量に残っているそうだ。
 まあ、花見にカレーもないだろうが。
 でも、お陰で俺も喰えるらしい。

 本当にいい花見になった。
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