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激涙! 暁の三連星 Ⅳ
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夕食を終え、みんなで交代で風呂に入り、俺は酒を飲んだ。
「おい、飲みたい奴は一緒に飲もうぜ」
「「「「はい!」」」」
いつもなら真っ先に一緒に飲みたがる亜紀ちゃんが、自分の部屋に行こうとした。
ルーが声を掛けた。
「あれ? 亜紀ちゃん、一緒に飲もうよ!」
「え?」
「ほら、おつまみ作ろ?」
「!」
亜紀ちゃんは他の子どもたちがいつも通りなので、不思議そうな顔をしていた。
自分が避けられていると思っている。
「おい、美味いもの作ってくれよな!」
「はーい!」
ルーが亜紀ちゃんの手を引っ張ってキッチンへ入った。
ハーも柳もニコニコして一緒に入る。
ルーが余った鳥団子で黒酢餡かけを作っていく。
亜紀ちゃんがあまり食べなかったので、ここで食べさせようとしていた。
ハーは鮭とばとニラ、キャベツで炒め物を作る。
そこへ鶏がら出汁のスープを注いで、柔らかく煮込んで行った。
柳はカプレーゼを作り、皇紀は鳥団子を串に刺してタレを塗ってつくね串のようなものを焼いた。
亜紀ちゃんは泣いているのを必死で隠しながら、刺身を切っていた。
「おお、美味そうだな!」
俺が笑って言うと、みんなが喜んで飲み始めた。
努めて楽しい話題を話した。
「今度、家族全員でドライブにでも行くかぁ!」
「タカさん、いいね!」
「全員って初めてだよね!」
双子も敢えてノッて来る。
亜紀ちゃんが落ち込んでいるのが分かっているからだ。
「な? 楽しいよな!」
「「うん!」」
「皇紀も行くからな!」
「分かりました!」
「柳はどこへ行きたい?」
「え、あー! 海!」
「ベタだなぁ」
みんなで笑った。
「亜紀ちゃんはどうだよ?」
「え、私ですか。私はどこでも」
「よし! じゃあ行き先は亜紀ちゃんの行きたいとこな!」
「「「「さんせー!」」」」
「みんな……」
亜紀ちゃんが泣き出すので、みんなでつまみを喰わせた。
まあ、これで自分が弾き者になっていないことは分かっただろう。
皇紀と双子は、亜紀ちゃんに見つからないように、「花見の家」で鍛錬をしていた。
忙しい中だったが、三人で必死にやった。
よく3人で出掛けるので、亜紀ちゃんが一度「私も一緒に行っていい?」と聞いた。
ルーに素気無く断られ、また落ち込んでいた。
そして2週間が過ぎた。
2月の第3週の土曜日。
その日は満を持しての「すき焼き大会」だった。
獣用の大鍋がやっと届いたからだ。
鍋料理自体が、前回の亜紀ちゃんの落ち込みを観ていたので避けていた。
他の子どもたちは大歓声で喜んだが、亜紀ちゃんだけは委縮している。
奪い合いの食事は、前回の「すき焼き大会」以来になる。
今回は皇紀と双子の希望で、ウッドデッキでやることになった。
子どもたちが用意をし、亜紀ちゃんがいつも通りに50キロの肉を自分たち用に切り分ける。
俺には1キロを用意させた。
準備が出来ると、皇紀と双子が一度部屋へ行った。
《赤い三連星》というTシャツに着替えて来た。
「何それ?」
亜紀ちゃんがよく分からないという顔をしている。
「亜紀ちゃん! しばらくの間ごめんね!」
「私たち、もう大丈夫だから!」
「お姉ちゃん、本当にごめん。今日からまた一緒だよ!」
「あの、私は?」
柳が相変わらずだった。
「みんな、どうしたの?」
「それはすぐに分かる!」
「思い切りきなさーい!」
ルーとハーが笑顔で叫んだ。
釣られて、亜紀ちゃんも微笑む。
「分かった。じゃあ、宜しくね!」
すき焼きの鍋に、大量の肉が入った。
俺は自分の鍋を用意しながら、それを眺めていた。
肉が煮えて行く。
「お姉ちゃん! 行くよ!」
皇紀の後ろにルー、ハーが並んだ。
「!」
亜紀ちゃんが驚きながら構える。
皇紀が捨て身のタックルを亜紀ちゃんにかます。
亜紀ちゃんは余裕で皇紀の背に両手を付いて、空中に跳ねようとした。
突如、皇紀の背後からルーがジャンプして来た。
亜紀ちゃんが凄まじいストレートを左手で受けようとする。
同時に、ルーの更に上からハーが飛び蹴りで突っ込んで来る。
「ちょっとぉー!」
「「「赤き三連星!」」」
三人が叫び、亜紀ちゃんの顔面にハーの飛び蹴りが突き刺さった。
亜紀ちゃんがぶっ飛ぶ。
ウッドデッキから飛び出して、庭を転がっていく。
「「「やったぁー!」」」
三人がハイタッチで喜んでいた。
そして亜紀ちゃんの方へ走って行く。
「大丈夫?」
「ちょっと痛かった?」
「お姉ちゃん、鼻血が出てるよ!」
「あんたらー!」
亜紀ちゃんが笑顔で起き上がり、そして涙を零した。
「スゴイ攻撃だったね!」
「そうでしょ?」
「三人で一杯練習したんだ」
「お姉ちゃんと一緒に鍋を食べるためにね!」
「あんたたちー!」
四人が抱き合って泣いていた。
付き合いのいいロボも駆け寄って亜紀ちゃんの脚に身体をこすりつけた。
「おい、柳」
「ファイ?」
柳が誰もいなくなった鍋の、大量の肉を口に入れていた。
「お前も行った方がよくね?」
「あ、あぁ!」
柳が走って行き、亜紀ちゃんの背中から抱き締めた。
「柳さん!」
「亜紀ちゃん、良かったね!」
ロボが柳に足を踏まれそうになり、「大銀河黄昏流星キック」をぶち込んだ。
柳が庭の果てまで飛んで行った。
亜紀ちゃんが笑顔で大泣きしている。
三人の兄弟が自分のために頑張ってくれたことを理解した。
俺も笑って、子どもたちの鍋に肉を投入した。
「おい、早く戻ってどんどん喰え!」
「「「「「はーい!」」」」」
みんなが笑顔で戻り、鍋を囲んだ。
「よーし! 本気だすぞー!」
亜紀ちゃんが嬉しそうに叫んで、鍋をついた。
他の子どもたちは笑って、亜紀ちゃんに食べさせようとした。
「「「「え?」」」」
亜紀ちゃんが掴んだ肉をみんなの器に入れて行く。
「「「「!」」」」
「はい! みんなありがとう!」
「「「亜紀ちゃん!」」」
「お姉ちゃん!」
その日は争いもなく、みんなで仲良く食べていた。
亜紀ちゃんが本当に嬉しそうで、どんどんみんなに肉をやり、またみんなも亜紀ちゃんの器に入れて行った。
あのよ。
俺もちょっと感動したんだけどさ。
いつも、そうやって喰ってくれない?
あのね、前からそういう話、してんじゃん。
そして、次の「すき焼き大会」で「赤き三連星」をぶっ放したハーが亜紀ちゃんの反撃に遭い、飛び蹴りを鍋にぶっ込んだ。
鍋が爆発して四散した。
合羽橋ででかい鉄のお鍋を買いました。
「おい、飲みたい奴は一緒に飲もうぜ」
「「「「はい!」」」」
いつもなら真っ先に一緒に飲みたがる亜紀ちゃんが、自分の部屋に行こうとした。
ルーが声を掛けた。
「あれ? 亜紀ちゃん、一緒に飲もうよ!」
「え?」
「ほら、おつまみ作ろ?」
「!」
亜紀ちゃんは他の子どもたちがいつも通りなので、不思議そうな顔をしていた。
自分が避けられていると思っている。
「おい、美味いもの作ってくれよな!」
「はーい!」
ルーが亜紀ちゃんの手を引っ張ってキッチンへ入った。
ハーも柳もニコニコして一緒に入る。
ルーが余った鳥団子で黒酢餡かけを作っていく。
亜紀ちゃんがあまり食べなかったので、ここで食べさせようとしていた。
ハーは鮭とばとニラ、キャベツで炒め物を作る。
そこへ鶏がら出汁のスープを注いで、柔らかく煮込んで行った。
柳はカプレーゼを作り、皇紀は鳥団子を串に刺してタレを塗ってつくね串のようなものを焼いた。
亜紀ちゃんは泣いているのを必死で隠しながら、刺身を切っていた。
「おお、美味そうだな!」
俺が笑って言うと、みんなが喜んで飲み始めた。
努めて楽しい話題を話した。
「今度、家族全員でドライブにでも行くかぁ!」
「タカさん、いいね!」
「全員って初めてだよね!」
双子も敢えてノッて来る。
亜紀ちゃんが落ち込んでいるのが分かっているからだ。
「な? 楽しいよな!」
「「うん!」」
「皇紀も行くからな!」
「分かりました!」
「柳はどこへ行きたい?」
「え、あー! 海!」
「ベタだなぁ」
みんなで笑った。
「亜紀ちゃんはどうだよ?」
「え、私ですか。私はどこでも」
「よし! じゃあ行き先は亜紀ちゃんの行きたいとこな!」
「「「「さんせー!」」」」
「みんな……」
亜紀ちゃんが泣き出すので、みんなでつまみを喰わせた。
まあ、これで自分が弾き者になっていないことは分かっただろう。
皇紀と双子は、亜紀ちゃんに見つからないように、「花見の家」で鍛錬をしていた。
忙しい中だったが、三人で必死にやった。
よく3人で出掛けるので、亜紀ちゃんが一度「私も一緒に行っていい?」と聞いた。
ルーに素気無く断られ、また落ち込んでいた。
そして2週間が過ぎた。
2月の第3週の土曜日。
その日は満を持しての「すき焼き大会」だった。
獣用の大鍋がやっと届いたからだ。
鍋料理自体が、前回の亜紀ちゃんの落ち込みを観ていたので避けていた。
他の子どもたちは大歓声で喜んだが、亜紀ちゃんだけは委縮している。
奪い合いの食事は、前回の「すき焼き大会」以来になる。
今回は皇紀と双子の希望で、ウッドデッキでやることになった。
子どもたちが用意をし、亜紀ちゃんがいつも通りに50キロの肉を自分たち用に切り分ける。
俺には1キロを用意させた。
準備が出来ると、皇紀と双子が一度部屋へ行った。
《赤い三連星》というTシャツに着替えて来た。
「何それ?」
亜紀ちゃんがよく分からないという顔をしている。
「亜紀ちゃん! しばらくの間ごめんね!」
「私たち、もう大丈夫だから!」
「お姉ちゃん、本当にごめん。今日からまた一緒だよ!」
「あの、私は?」
柳が相変わらずだった。
「みんな、どうしたの?」
「それはすぐに分かる!」
「思い切りきなさーい!」
ルーとハーが笑顔で叫んだ。
釣られて、亜紀ちゃんも微笑む。
「分かった。じゃあ、宜しくね!」
すき焼きの鍋に、大量の肉が入った。
俺は自分の鍋を用意しながら、それを眺めていた。
肉が煮えて行く。
「お姉ちゃん! 行くよ!」
皇紀の後ろにルー、ハーが並んだ。
「!」
亜紀ちゃんが驚きながら構える。
皇紀が捨て身のタックルを亜紀ちゃんにかます。
亜紀ちゃんは余裕で皇紀の背に両手を付いて、空中に跳ねようとした。
突如、皇紀の背後からルーがジャンプして来た。
亜紀ちゃんが凄まじいストレートを左手で受けようとする。
同時に、ルーの更に上からハーが飛び蹴りで突っ込んで来る。
「ちょっとぉー!」
「「「赤き三連星!」」」
三人が叫び、亜紀ちゃんの顔面にハーの飛び蹴りが突き刺さった。
亜紀ちゃんがぶっ飛ぶ。
ウッドデッキから飛び出して、庭を転がっていく。
「「「やったぁー!」」」
三人がハイタッチで喜んでいた。
そして亜紀ちゃんの方へ走って行く。
「大丈夫?」
「ちょっと痛かった?」
「お姉ちゃん、鼻血が出てるよ!」
「あんたらー!」
亜紀ちゃんが笑顔で起き上がり、そして涙を零した。
「スゴイ攻撃だったね!」
「そうでしょ?」
「三人で一杯練習したんだ」
「お姉ちゃんと一緒に鍋を食べるためにね!」
「あんたたちー!」
四人が抱き合って泣いていた。
付き合いのいいロボも駆け寄って亜紀ちゃんの脚に身体をこすりつけた。
「おい、柳」
「ファイ?」
柳が誰もいなくなった鍋の、大量の肉を口に入れていた。
「お前も行った方がよくね?」
「あ、あぁ!」
柳が走って行き、亜紀ちゃんの背中から抱き締めた。
「柳さん!」
「亜紀ちゃん、良かったね!」
ロボが柳に足を踏まれそうになり、「大銀河黄昏流星キック」をぶち込んだ。
柳が庭の果てまで飛んで行った。
亜紀ちゃんが笑顔で大泣きしている。
三人の兄弟が自分のために頑張ってくれたことを理解した。
俺も笑って、子どもたちの鍋に肉を投入した。
「おい、早く戻ってどんどん喰え!」
「「「「「はーい!」」」」」
みんなが笑顔で戻り、鍋を囲んだ。
「よーし! 本気だすぞー!」
亜紀ちゃんが嬉しそうに叫んで、鍋をついた。
他の子どもたちは笑って、亜紀ちゃんに食べさせようとした。
「「「「え?」」」」
亜紀ちゃんが掴んだ肉をみんなの器に入れて行く。
「「「「!」」」」
「はい! みんなありがとう!」
「「「亜紀ちゃん!」」」
「お姉ちゃん!」
その日は争いもなく、みんなで仲良く食べていた。
亜紀ちゃんが本当に嬉しそうで、どんどんみんなに肉をやり、またみんなも亜紀ちゃんの器に入れて行った。
あのよ。
俺もちょっと感動したんだけどさ。
いつも、そうやって喰ってくれない?
あのね、前からそういう話、してんじゃん。
そして、次の「すき焼き大会」で「赤き三連星」をぶっ放したハーが亜紀ちゃんの反撃に遭い、飛び蹴りを鍋にぶっ込んだ。
鍋が爆発して四散した。
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