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激涙! 暁の三連星 Ⅲ
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騒いでタカさんに怒られ、みんなで謝った。
柳ちゃんがお風呂から上がってきたので、部屋に引き入れた。
柳ちゃんにも、今私たちが掴んだものを説明する。
もう一度皇紀ちゃんが見せてくれた映像を確認して、またみんなで夢中になった。
「この3人の連続攻撃だよ!」
「うん! 絶対上手く行くね!」
「第一カッコイイしね!」
「え、3人?」
柳ちゃんがなんか言ってた。
「「「よし! やろう!」」」
「えーと、私は?」
「まずはフォーメンションと攻撃技を考えて行こうよ」
「最初はやっぱ皇紀ちゃんが亜紀ちゃんの攻撃を防ぎながらかなー」
「私が次の攻撃で、ハーは最後のとどめだね」
「だから、わたしー!」
「お姉ちゃんは超天才だからね。よく考えて組み込まないと」
「スピードもパワーも技も、私たち以上だからね」
「並みの攻撃じゃ通じないよね」
「べ、べつに、私、いいんだけどさ……」
私たちは一生懸命に話し合った。
技名は「赤い三連星」に決まった。
「よ、四連星にならない?」
明日から特訓だぁー!
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
子どもたちが特製の鍋をぶっ壊したので、俺は以前に購入した合羽橋の鍋屋に電話した。
あの当時も、出来るだけ大きな土鍋ということで、調理器具の問屋が並ぶ合羽橋の鍋屋を捜し歩いた。
合羽橋の問屋街の素晴らしい所は、自分の店で間に合わない場合に、必ず置いていそうな店を紹介してくれるのだ。
商売人としての貴い道徳があり、また他の店のことも熟知している。
つまり、どこの店も誇りを以て正しい商売をやろうとしている、ということだ。
だから俺も食器類、調理器具の購入は合羽橋に行くことが多い。
まあ、食器類はデパートや直販店も多いのだが。
「前に直径80センチの土鍋を頼んだ者なんだけど」
「ああ、石神さんですか! その後いかがですか、使い心地は!」
俺のことを覚えていてくれた。
やっぱり素晴らしい。
まあ、あの鍋を買った時に結構話し込んだためだろう。
個人宅で直径80センチもの土鍋など、買うわけもない。
鍋は大きくなれば、火の通りも遅くなる。
一般家庭では使いにくいことこの上ない。
俺は子どもたちの「喰い」の情熱を打ち明け、店主が大笑いしてくれた。
「うん、重宝してたんだけど、昨日割れてしまってね」
「え! あれ、相当頑丈なものでしたよ? 落としたって割れないくらいに」
「申し訳ない。本当にいいものだったんだけど」
「そうですかー。まあ仕方ないですね」
「それで、また同じものは手に入るかな?」
「あれ、ちょっと特殊なルートで仕入れたものでしてね。時間が掛かるかもしれませんが」
「構わないよ。お願いします」
「分かりました!」
店主は多分3週間かかると言っていた。
仕方がない。
それまでは、うちにある他の鍋を使おう。
子どもたちのことを考えながら試行錯誤して、幾つも鍋がうちにはある。
二月最初の土曜日に、鳥の肉団子鍋が夕飯だった。
俺も特に用事もなく、子どもたちと一緒に食べた。
俺の鍋はいつも通りだが、子どもたちの鍋は2つに分ける。
鳥団子も大量に食う連中なので、1つの鍋ではあいつらの回転数に合わない。
2つ用意させ、適当に2組で食べるだろうと思っていた。
ちょっと違った。
皇紀、双子、柳が一つの鍋を囲み、亜紀ちゃんが一人だった。
「あ、あのさ、誰かこっちのお鍋に来ない?」
亜紀ちゃんが動揺していた。
空気は読めないが優しい柳が言った。
「じゃあ、私が行くね!」
しかし、ルーが止めた。
「ごめんね、亜紀ちゃん。今日は一人で食べて」
「え?」
「柳ちゃん、一緒に食べよ」
「え、でも……」
「お願い」
「え、うん。分かった」
「!」
「……」
亜紀ちゃんはショックを受けていた。
俺も先日のことでまだわだかまりがあるのかと思った。
でも、4人の食べ方を見て、そうではないということが分かった。
亜紀ちゃんは気付いていないが。
まあ、俺から話せないことだということも分かってしまった。
可哀そうだが、4人が納得するまでやらせるしかない。
「じゃ、じゃあ一杯食べようかな!」
亜紀ちゃんが悲しそうな顔で笑って言った。
精一杯明るく振る舞おうとしている姿が憐れだった。
やはり、全然楽しそうではなかった。
あの肉好きの亜紀ちゃんが、あんまり食べなかった。
4人も気付いていて、申し訳なさそうな顔で、悲しい亜紀ちゃんを見ていた。
そして、柳を使って、3人で特殊な食べ方をしていた。
ルーが落ち込んでいる亜紀ちゃんを見て、堪らずに言った。
「亜紀ちゃん、一杯食べなよ!」
「そうだよ! 独り占めじゃん!」
ハーも堪らずに声を掛けた。
亜紀ちゃんはちょっと驚き、笑顔を見せた。
「そうだよね! じゃあ、食べるね!」
「「うん」」
それでも全然食べない。
涙を流しそうになったが、それだけはと必死に耐えていた。
「ちょっと喉が渇いたな!」
そう言って、キッチンに行き、そしてそのままリヴィングを出て行った。
「おい、お前ら」
「タカさん! 違うの!」
「分かってるけどよ。早く仕上げろよな」
「え! は、はい!」
皇紀と双子は、対亜紀ちゃんの技を考えている。
それは亜紀ちゃんをいじめるためではなく、対等に兄弟たちでまた争うためだ。
突出した亜紀ちゃんの力に何とか追いつこうとしている。
そうしなければ、兄弟の絆が危ういのだと思っている。
しばらくして、亜紀ちゃんが戻って来た。
目を真っ赤に腫らしていた。
みんな、それに気付かない振りをした。
「さー! 食べるぞー!」
亜紀ちゃんが明るく叫んだ。
「うん! 亜紀ちゃん、一杯食べてね!」
「ありがとう! でも、少しそっちに回すね」
「ありがとう!」
何だか、気を遣い合っている。
まあ、お前ら、普通に食えよー。
柳は三人の猛攻で本当に全く食えなかった。
俺が呼んで俺の鍋を喰わせた。
だからさー。
柳ちゃんがお風呂から上がってきたので、部屋に引き入れた。
柳ちゃんにも、今私たちが掴んだものを説明する。
もう一度皇紀ちゃんが見せてくれた映像を確認して、またみんなで夢中になった。
「この3人の連続攻撃だよ!」
「うん! 絶対上手く行くね!」
「第一カッコイイしね!」
「え、3人?」
柳ちゃんがなんか言ってた。
「「「よし! やろう!」」」
「えーと、私は?」
「まずはフォーメンションと攻撃技を考えて行こうよ」
「最初はやっぱ皇紀ちゃんが亜紀ちゃんの攻撃を防ぎながらかなー」
「私が次の攻撃で、ハーは最後のとどめだね」
「だから、わたしー!」
「お姉ちゃんは超天才だからね。よく考えて組み込まないと」
「スピードもパワーも技も、私たち以上だからね」
「並みの攻撃じゃ通じないよね」
「べ、べつに、私、いいんだけどさ……」
私たちは一生懸命に話し合った。
技名は「赤い三連星」に決まった。
「よ、四連星にならない?」
明日から特訓だぁー!
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
子どもたちが特製の鍋をぶっ壊したので、俺は以前に購入した合羽橋の鍋屋に電話した。
あの当時も、出来るだけ大きな土鍋ということで、調理器具の問屋が並ぶ合羽橋の鍋屋を捜し歩いた。
合羽橋の問屋街の素晴らしい所は、自分の店で間に合わない場合に、必ず置いていそうな店を紹介してくれるのだ。
商売人としての貴い道徳があり、また他の店のことも熟知している。
つまり、どこの店も誇りを以て正しい商売をやろうとしている、ということだ。
だから俺も食器類、調理器具の購入は合羽橋に行くことが多い。
まあ、食器類はデパートや直販店も多いのだが。
「前に直径80センチの土鍋を頼んだ者なんだけど」
「ああ、石神さんですか! その後いかがですか、使い心地は!」
俺のことを覚えていてくれた。
やっぱり素晴らしい。
まあ、あの鍋を買った時に結構話し込んだためだろう。
個人宅で直径80センチもの土鍋など、買うわけもない。
鍋は大きくなれば、火の通りも遅くなる。
一般家庭では使いにくいことこの上ない。
俺は子どもたちの「喰い」の情熱を打ち明け、店主が大笑いしてくれた。
「うん、重宝してたんだけど、昨日割れてしまってね」
「え! あれ、相当頑丈なものでしたよ? 落としたって割れないくらいに」
「申し訳ない。本当にいいものだったんだけど」
「そうですかー。まあ仕方ないですね」
「それで、また同じものは手に入るかな?」
「あれ、ちょっと特殊なルートで仕入れたものでしてね。時間が掛かるかもしれませんが」
「構わないよ。お願いします」
「分かりました!」
店主は多分3週間かかると言っていた。
仕方がない。
それまでは、うちにある他の鍋を使おう。
子どもたちのことを考えながら試行錯誤して、幾つも鍋がうちにはある。
二月最初の土曜日に、鳥の肉団子鍋が夕飯だった。
俺も特に用事もなく、子どもたちと一緒に食べた。
俺の鍋はいつも通りだが、子どもたちの鍋は2つに分ける。
鳥団子も大量に食う連中なので、1つの鍋ではあいつらの回転数に合わない。
2つ用意させ、適当に2組で食べるだろうと思っていた。
ちょっと違った。
皇紀、双子、柳が一つの鍋を囲み、亜紀ちゃんが一人だった。
「あ、あのさ、誰かこっちのお鍋に来ない?」
亜紀ちゃんが動揺していた。
空気は読めないが優しい柳が言った。
「じゃあ、私が行くね!」
しかし、ルーが止めた。
「ごめんね、亜紀ちゃん。今日は一人で食べて」
「え?」
「柳ちゃん、一緒に食べよ」
「え、でも……」
「お願い」
「え、うん。分かった」
「!」
「……」
亜紀ちゃんはショックを受けていた。
俺も先日のことでまだわだかまりがあるのかと思った。
でも、4人の食べ方を見て、そうではないということが分かった。
亜紀ちゃんは気付いていないが。
まあ、俺から話せないことだということも分かってしまった。
可哀そうだが、4人が納得するまでやらせるしかない。
「じゃ、じゃあ一杯食べようかな!」
亜紀ちゃんが悲しそうな顔で笑って言った。
精一杯明るく振る舞おうとしている姿が憐れだった。
やはり、全然楽しそうではなかった。
あの肉好きの亜紀ちゃんが、あんまり食べなかった。
4人も気付いていて、申し訳なさそうな顔で、悲しい亜紀ちゃんを見ていた。
そして、柳を使って、3人で特殊な食べ方をしていた。
ルーが落ち込んでいる亜紀ちゃんを見て、堪らずに言った。
「亜紀ちゃん、一杯食べなよ!」
「そうだよ! 独り占めじゃん!」
ハーも堪らずに声を掛けた。
亜紀ちゃんはちょっと驚き、笑顔を見せた。
「そうだよね! じゃあ、食べるね!」
「「うん」」
それでも全然食べない。
涙を流しそうになったが、それだけはと必死に耐えていた。
「ちょっと喉が渇いたな!」
そう言って、キッチンに行き、そしてそのままリヴィングを出て行った。
「おい、お前ら」
「タカさん! 違うの!」
「分かってるけどよ。早く仕上げろよな」
「え! は、はい!」
皇紀と双子は、対亜紀ちゃんの技を考えている。
それは亜紀ちゃんをいじめるためではなく、対等に兄弟たちでまた争うためだ。
突出した亜紀ちゃんの力に何とか追いつこうとしている。
そうしなければ、兄弟の絆が危ういのだと思っている。
しばらくして、亜紀ちゃんが戻って来た。
目を真っ赤に腫らしていた。
みんな、それに気付かない振りをした。
「さー! 食べるぞー!」
亜紀ちゃんが明るく叫んだ。
「うん! 亜紀ちゃん、一杯食べてね!」
「ありがとう! でも、少しそっちに回すね」
「ありがとう!」
何だか、気を遣い合っている。
まあ、お前ら、普通に食えよー。
柳は三人の猛攻で本当に全く食えなかった。
俺が呼んで俺の鍋を喰わせた。
だからさー。
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