2,181 / 2,806
千石と石神家本家 Ⅲ
しおりを挟む
俺は4人のベテランの剣士を相手にしていた。
一瞬の油断も出来ない。
本気で斬り掛かって来る、狂信者たちだ。
手足が吹っ飛ぼうと気にしない連中に、 俺も段々受け大刀だけでは捌き切れなくなって行った。
「あ! 今こいつ、俺を斬ろうとしやがったぞ!」
「生意気だぁ!」
「連山!」
「ちょ、ちょっとぉー!」
奥義まで出しやがる。
それにお互い斬り合う練習だろう!
無数の切っ先を更なる超高速で軌道を変えていく。
奥義をまともに刀身で受ければ、刀がもたない。
「やりやがるな!」
「煉獄!」
「てめぇら! いい加減にしろ!」
俺も奥義で対応した。
段々楽しくなっていく。
やはり石神の血だ。
「「「「ワハハハハハハハ!」」」」
「ガハハハハハハハ!」
また2時間が過ぎ、一旦休憩になった。
千石を見ると、倒れていた。
駆け寄ると、息をしていない。
脈を摂ると、鼓動が無い。
「死んでんじゃないですかぁー!」
急いで蘇生措置をし、呼吸を始めた千石に口移しで「Ω」と「オロチ」の粉末を飲ませる。
「い、いしがみさん……」
「おい、しっかりしろ!」
「親父が笑ってました」
「おい!」
虎白さんたちは何一つ気にせずに、平然と地面に座って水を飲んでいた。
「なんだ、生き返ったのかよ?」
「虎白さん!」
「あんだ?」
「千石は俺たちにとって大事な人間なんだ!」
「ほう」
「厳しいのはいい! でも、殺すことはないでしょうが!」
虎白さんが俺に近づいて来て、俺をぶっ飛ばした。
「高虎! 死を恐れていた奴に何を教えんだぁ!」
「虎白さん!」
「てめぇはいつから腑抜けになった! お前も何度も死を乗り越えてここまで来たんだろうが!」
「!」
「お前は千石のホモダチか? こいつが死を怖がるんなら、たっぷり味わって行くしかねぇだろう!」
「……」
虎白さんの言う通りだった。
千石は逃げてしまった。
その疵は千石の中で固まってしまっている。
それを無理矢理こじ開けて乗り越えさせるには、千石を殺すしかない。
千石が立ち上がった。
両足に力が入っておらず、震えている。
身体が、神経が限界を超えているのだ。
脳が休めと強要している。
「ほう、まだそんなに動けたか」
「お願い……します!」
「お前はダメだ。モノにならねぇ。ただ惨めに死ぬしかねぇぞ?」
「構いません!」
「じゃあ殺すからな」
虎白さんが強烈な威圧を放った。
「虎相」だ。
他の剣士も立ち上がって「虎相」になった。
空間が揺らぐほどの圧力があった。
「高虎!」
「はい!」
俺にも分かった。
俺も最大の威圧を放った。
千石が倒れて吹っ飛んで行く。
ほとんど物理的な圧力を感じたのだ。
肉体が勝手に反応していった。
転がった千石の身体が大きく痙攣している。
体中の筋肉が過剰反応し、自律神経が全身をのたうち回らせた。
地面を転がりながら、手足と胴体が勝手にバラバラに動き出す。
死の感覚が肉体を支配し、そこから逃れようと個々にでたらめに動いて行く。
「千石!」
俺が叫ぶと、千石の暴れる身体が徐々に鎮まって行った。
両眼から血の涙を流し、口から大量の泡を吹きながら、千石の身体が止まった。
「千石!」
千石が両眼を閉じて、口の泡を吐き飛ばし、地面に両膝と両手を付いた。
大きく身体を震わせながら、10分も掛けて立ち上がった。
両眼を見開いた。
「来い!」
千石が叫んだ。
刀を構え、俺たちに向いた。
虎白さんが裂帛の気合を放って千石の頭頂に刀を振り下ろした。
千石は反応できない。
千石の額に血が伝わって落ちて来た。
頭頂で刀が制止していた。
「よし! お前は死んだ!」
「はい!」
千石が笑顔のままぶっ倒れた。
俺がすぐに蘇生措置を施したが、「死」を完全に受け入れた身体は甦るまで10分程掛かった。
千石は確かに死んだのだ。
俺が千石を背負って、下の集会場に布団を敷いて寝かせた。
他の剣士たちは夕飯を食べながら酒を飲み始めている。
真白が顔を出した。
「おやまあ、こいつ助かったのかい?」
「お陰様で」
「あたしは死なせてやるつもりだったんだよ」
「お陰様で」
真白が幾つも歯の抜けた口を拡げてニヤリと笑った。
俺には分かった。
「まあ、良かったじゃないか」
「真白さんが助けてくれたんでしょう?」
「何を」
「ちゃんと生き返るように調整してくれてた」
「はっ!」
「ありがとうございます!」
真白が着物の裾をたくし上げた脚で俺の肩を思い切り蹴って笑った。
ここにまともな奴はいねぇ。
「あたしがやったのは、こいつの凝り固まったしこりを解いてやっただけだよ。バカな男だねぇ。気楽に生きりゃいいのに」
「不器用なんですよ。逃げると決めたらとことん逃げる。でも、いつか帰らなきゃって思い続けてたんですよ」
「そういうもんかね」
「そうですね」
真白が宴会に混ざって、誰かの酒を奪って飲み始めた。
「千石、お前やっと帰って来たんだな」
千石はピクリとも動かない。
限界を超えて、本当に死んで今ここにいる。
幽かに寝息が聞こえるが、相当な激痛が脳によって遮断されている状態だ。
そのうちに痛みで目覚めてのたうち回るだろう。
誰も千石の様子を見に来ない。
信頼しているのだろう。
千石は、地獄を乗り越えたのだ。
それがみんなに分かっている。
真白は心配で様子を見に来たのだろう。
千石が大丈夫なのを見て、安心して酒を飲んでいる。
本当に優しい人だ。
「おい、ババァ! お前が脱ぐんじゃねぇ!」
「ハッ! お前ら溜まってんだろう! あたしが相手してやるよ!」
「ふざけんなぁ! 酒が不味くなっただろう!」
真白のババァが全裸で胡坐をかいて股を開いていた。
本当に下品な連中だ。
一瞬の油断も出来ない。
本気で斬り掛かって来る、狂信者たちだ。
手足が吹っ飛ぼうと気にしない連中に、 俺も段々受け大刀だけでは捌き切れなくなって行った。
「あ! 今こいつ、俺を斬ろうとしやがったぞ!」
「生意気だぁ!」
「連山!」
「ちょ、ちょっとぉー!」
奥義まで出しやがる。
それにお互い斬り合う練習だろう!
無数の切っ先を更なる超高速で軌道を変えていく。
奥義をまともに刀身で受ければ、刀がもたない。
「やりやがるな!」
「煉獄!」
「てめぇら! いい加減にしろ!」
俺も奥義で対応した。
段々楽しくなっていく。
やはり石神の血だ。
「「「「ワハハハハハハハ!」」」」
「ガハハハハハハハ!」
また2時間が過ぎ、一旦休憩になった。
千石を見ると、倒れていた。
駆け寄ると、息をしていない。
脈を摂ると、鼓動が無い。
「死んでんじゃないですかぁー!」
急いで蘇生措置をし、呼吸を始めた千石に口移しで「Ω」と「オロチ」の粉末を飲ませる。
「い、いしがみさん……」
「おい、しっかりしろ!」
「親父が笑ってました」
「おい!」
虎白さんたちは何一つ気にせずに、平然と地面に座って水を飲んでいた。
「なんだ、生き返ったのかよ?」
「虎白さん!」
「あんだ?」
「千石は俺たちにとって大事な人間なんだ!」
「ほう」
「厳しいのはいい! でも、殺すことはないでしょうが!」
虎白さんが俺に近づいて来て、俺をぶっ飛ばした。
「高虎! 死を恐れていた奴に何を教えんだぁ!」
「虎白さん!」
「てめぇはいつから腑抜けになった! お前も何度も死を乗り越えてここまで来たんだろうが!」
「!」
「お前は千石のホモダチか? こいつが死を怖がるんなら、たっぷり味わって行くしかねぇだろう!」
「……」
虎白さんの言う通りだった。
千石は逃げてしまった。
その疵は千石の中で固まってしまっている。
それを無理矢理こじ開けて乗り越えさせるには、千石を殺すしかない。
千石が立ち上がった。
両足に力が入っておらず、震えている。
身体が、神経が限界を超えているのだ。
脳が休めと強要している。
「ほう、まだそんなに動けたか」
「お願い……します!」
「お前はダメだ。モノにならねぇ。ただ惨めに死ぬしかねぇぞ?」
「構いません!」
「じゃあ殺すからな」
虎白さんが強烈な威圧を放った。
「虎相」だ。
他の剣士も立ち上がって「虎相」になった。
空間が揺らぐほどの圧力があった。
「高虎!」
「はい!」
俺にも分かった。
俺も最大の威圧を放った。
千石が倒れて吹っ飛んで行く。
ほとんど物理的な圧力を感じたのだ。
肉体が勝手に反応していった。
転がった千石の身体が大きく痙攣している。
体中の筋肉が過剰反応し、自律神経が全身をのたうち回らせた。
地面を転がりながら、手足と胴体が勝手にバラバラに動き出す。
死の感覚が肉体を支配し、そこから逃れようと個々にでたらめに動いて行く。
「千石!」
俺が叫ぶと、千石の暴れる身体が徐々に鎮まって行った。
両眼から血の涙を流し、口から大量の泡を吹きながら、千石の身体が止まった。
「千石!」
千石が両眼を閉じて、口の泡を吐き飛ばし、地面に両膝と両手を付いた。
大きく身体を震わせながら、10分も掛けて立ち上がった。
両眼を見開いた。
「来い!」
千石が叫んだ。
刀を構え、俺たちに向いた。
虎白さんが裂帛の気合を放って千石の頭頂に刀を振り下ろした。
千石は反応できない。
千石の額に血が伝わって落ちて来た。
頭頂で刀が制止していた。
「よし! お前は死んだ!」
「はい!」
千石が笑顔のままぶっ倒れた。
俺がすぐに蘇生措置を施したが、「死」を完全に受け入れた身体は甦るまで10分程掛かった。
千石は確かに死んだのだ。
俺が千石を背負って、下の集会場に布団を敷いて寝かせた。
他の剣士たちは夕飯を食べながら酒を飲み始めている。
真白が顔を出した。
「おやまあ、こいつ助かったのかい?」
「お陰様で」
「あたしは死なせてやるつもりだったんだよ」
「お陰様で」
真白が幾つも歯の抜けた口を拡げてニヤリと笑った。
俺には分かった。
「まあ、良かったじゃないか」
「真白さんが助けてくれたんでしょう?」
「何を」
「ちゃんと生き返るように調整してくれてた」
「はっ!」
「ありがとうございます!」
真白が着物の裾をたくし上げた脚で俺の肩を思い切り蹴って笑った。
ここにまともな奴はいねぇ。
「あたしがやったのは、こいつの凝り固まったしこりを解いてやっただけだよ。バカな男だねぇ。気楽に生きりゃいいのに」
「不器用なんですよ。逃げると決めたらとことん逃げる。でも、いつか帰らなきゃって思い続けてたんですよ」
「そういうもんかね」
「そうですね」
真白が宴会に混ざって、誰かの酒を奪って飲み始めた。
「千石、お前やっと帰って来たんだな」
千石はピクリとも動かない。
限界を超えて、本当に死んで今ここにいる。
幽かに寝息が聞こえるが、相当な激痛が脳によって遮断されている状態だ。
そのうちに痛みで目覚めてのたうち回るだろう。
誰も千石の様子を見に来ない。
信頼しているのだろう。
千石は、地獄を乗り越えたのだ。
それがみんなに分かっている。
真白は心配で様子を見に来たのだろう。
千石が大丈夫なのを見て、安心して酒を飲んでいる。
本当に優しい人だ。
「おい、ババァ! お前が脱ぐんじゃねぇ!」
「ハッ! お前ら溜まってんだろう! あたしが相手してやるよ!」
「ふざけんなぁ! 酒が不味くなっただろう!」
真白のババァが全裸で胡坐をかいて股を開いていた。
本当に下品な連中だ。
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、
ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、
私のおにいちゃんは↓
泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
イケメン歯科医の日常
moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。
親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。
イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。
しかし彼には裏の顔が…
歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。
※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる