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真冬の別荘 Gathering-Memory XⅠ

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 六花と別荘に戻り、二人でゆっくりと風呂に入った。
 風呂から上がると、子どもたちがお茶を待っていた。

 「なんだよ、先に食べてればよかっただろう」
 「いいえ! そんなわけには!」

 まあ、気にしているのだろう。
 丁度響子も起きて来て、みんなでお茶にした。
 紅茶と、俺が作ったパンプキンプリンだ。

 その後、俺たちがいると子どもたちが気を遣うので、吹雪も連れて4人でスーパーに出掛けた。
 ハマーではなく、六花のグランディアで行った。
 新館にちょっとしたゲームコーナーがあったので、そこで遊ぶ。

 子ども広場で、俺と六花のブレイクダンスの映像を響子に見せた。

 「ほんとだぁ!」

 響子が喜んだ。
 吹雪を床で回してやると、吹雪が結構それっぽい動きをした。

 「響子もやるか!」
 「うん!」

 硬過ぎてダサかった。

 「ダサ」
 「なによー!」

 六花が笑った。
 また二人でダンスし、人垣が出来た。
 響子が吹雪を抱いて座り、手を叩いていた。

 「石神様!」

 店長が来ていた。
 ダンスを教えている人間が連絡したらしい。

 「今日はいらっしゃらないかと!」
 「すいません。ヒマだったんで」
 「どうぞ、フードコートで何か召し上がって下さい」
 「さっき食べたばかりなので。今日はこれで失礼します」
 「そんな!」

 ちょっと待ってて欲しいと言われたが、遠慮して帰った。

 「もう焼き芋はいいよなぁ」
 「そうですね」

 三人で笑った。




 別荘に戻ると、子どもたちがバーベキューと夕飯の準備を始めていた。
 気合が入っていることが分かる。

 松茸料理を双子が中心に作って行った。
 亜紀ちゃんと柳はバーベキューの食材を刻んで行く。
 皇紀はウッドデッキのセッティングだ。
 ロボは放っておかれたので俺たちが帰ると飛んで来た。

 しばらくロボと遊ぶ。

 俺は時々、松茸の進捗を見た。
 双子が確認して来る。

 「おお、いいんじゃないか」
 「そうですか!」

 松茸ご飯は30合炊く。
 バーベキューはその分少し控えめになっていた。
 肉も20キロしか用意しないようだ。

 「おい、もっと喰えよ」
 「いえ、今日はこの辺で」
 「お前らが肉を減らすと、リバウンドが怖ぇよ!」
 「アハハハハハハ!」

 亜紀ちゃんがもう20キロ用意した。
 それでいい。

 松茸のいい香りがしてきた。
 皇紀が戻って来て、松茸の揚げ物に専念する。
 双子はその他の松茸料理だ。
 初めてのものだが、大体加減は分かっている。

 「豆腐は最後に入れればいいからな。先に入れると固まるぞ」
 「はい!」

 吸い物が絶品の香りになっていく。

 「タカさん、吸い物に溶き卵を入れてもいいですかー?」
 「ああ、いいな! そうしてくれ」
 「はーい!」

 大体準備も出来、俺は松茸の素焼きのために、岩塩、マスタードソース、ワサビ醤油、宮のタレを準備した。
 宮のタレは万能だ。




 ウッドデッキに出て、俺たちはバーベキューを楽しんだ。
 松茸が大量にあり、響子も迷いながら口にして行く。

 「美味しいね!」
 「そうだろう? 素焼きもいいぞ?」
 「うん!」

 俺は焼けた松茸を宮のタレで響子に食べさせた。

 「うん! これいいよ!」
 「そうだろう!」

 こちらは薄くスライスしているので、響子もいろいろな味を楽しめる。
 六花は丸ごとをそのまま焼いて食べていた。
 吹雪にも宮のタレを少し付けて食べさせる。
 手足を動かして喜ぶ。

 「美味いか」
 「はい!」

 六花が大きな松茸を口に咥えて俺を見ていた。

 「やめろ!」

 ニコニコしてバリバリ食べて行った。

 子どもたちの台が随分と大人しい。
 夕べのことをまだ気にしているのだ。
 俺は獣台に行って、どんどん焼いた。

 「なんだよ、元気ねぇじゃんか」
 「タカさん!」
 「やめろよ、辛気臭いだろう」
 「「「「「!」」」」」

 焼いたものをどんどん子どもたちの器に入れてやった。
 みんな涙目になっている。

 「だからやめろって! どんどん喰え!」

 六花も来た。
 六花も気を遣ってどんどん楽しく食べ始める。
 響子も来た。

 「全部私のだよ!」

 笑って響子の前に置いた。

 「た、食べれないよ……」

 みんなで笑って取って行った。
 俺が焼いてやり、子どもたちが食べて行く。
 懐かしい感じがした。
 子どもたちも嬉しそうに食べて行く。
 食べるのは早いが、俺もどんどん焼いて間を空けないようにした。
 段々みんな俺が器に入れずとも食べて行くようになる。

 「やっぱりタカさんのが美味しい!」
 「そうだね!」
 「なんか懐かしいね!」
 「前はこうだったよね!」

 子どもたちも思い出したようだ。

 「よし、じゃあみんな自分で焼いて食べろ」
 「「「「「はい!」」」」」

 俺たちも自分の台に戻った。

 「タカトラ、あーん」
 「あーん」

 響子が笑って俺に肉を寄越す。

 「生焼けじゃねぇか!」
 「そう!」
 「あっちで修業して来い!」

 響子が子どもたちを見た。

 「死んじゃうよ」
 
 子どもたちはいつも通りに争って食べていた。

 「そうだな」
 「そうだよ!」
 「良かったな」
 「うん!」

 松茸ご飯も美味かった。
 白出汁がいい具合に染みている。
 響子もお替りした。

 「大丈夫か?」
 「うん! 美味しいよ!」
 「そうだな」

 吹雪にも松茸ご飯を食べさせる。
 ニコニコして口に入れる。

 



 楽しいバーベキューになった。
 子どもたちも肉を喰い終えて松茸を味わっている。
 ゆっくりと暗くなって行く。
 俺たちはバーベキューを楽しんだ。
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