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道間家 剣の舞 Ⅱ
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虎白さんたちが庭に集まり始めた。
「剣の舞」といいことなので、当然刀を持って来ている。
俺は念のために「黒笛」を持っていないか確認した。
ハイファを中心に、五平所たちも、何とか結界や敷地を守護するあれこれを調整したようだ。
五平所が直接虎白さんにも相談し「あー、そういえば」と言われて顔を青くしていた。
考えてなかったんかい!
俺は双子と縁側に座って、準備の様子を眺めていた。
「どんなことすんだろうなー」
「虎白さんが歌うんだって」
「どうして知ってんだよ?」
さっき、双子が虎白さんから聞いたらしい。
俺には何も話してくれないのに、双子には結構優しく説明してくれる。
俺、当主なんだけどなー。
「中島みゆきの『地上の星』を虎白さんが歌うんだって」
「ナンデ?」
「好きなんだってさ」
「まじか」
あの、古い儀式とかじゃないの?
とにかく、虎白さんが歌って他の剣士が舞うらしい。
へー。
庭に道間家の人間によってテーブルや椅子、ソファが運ばれた。
俺が生まれたばかりの奈々を抱き、庭に出た。
奈々は大人しく眠っている。
天狼は五平所に手を握られ、歩いてくる。
ハイファが麗星の車いすを押して来たので驚いた。
虎白さんたちが振り向く。
「ハイファ、お前に剣技を見せるのは久しぶりだな!」
「はい、皆さまご壮健のご様子。有難いことでございます」
「虎白さん、さっきも引っ掛かってましたけど、以前にもハイファに会ってるんですか?」
虎白さんがハイファを他の剣士に紹介していたので、不思議に思っていた。
「ああ。前に虎影のことでちょっと揉めてな。その時に会ってる」
「!」
親父が道間宇羅に騙されて殺されたことは虎白さんたちも知っている。
でも、以前に俺がそのことを聞いた時には、手出しはしていないと聞いていたのだが。
「まあ、最初はぶっ込もうとしたんだけどよ。ちょっと遣り合った後でハイファから事情を聞いて、まあ全部虎影の納得してのことだと分かったからな」
「虎白さんはハイファの言葉を信じたんですか?」
「ああ。こいつは嘘が吐けねぇだろう。だったらな」
「……」
流石に虎白さんはこの世のものでない存在のことをよく分かっている。
感情的には相当なものが渦巻いていただろうが、親父が決めたことだと、無理矢理自分を捻じ曲げたのだろう。
しかし、まさかハイファに挑もうとしていたとは。
俺の両脇に麗星と天狼が座り、俺が奈々を抱いた。
ハイファは俺たちの後ろに立っている。
道間家の人間が50人ほど集まった。
天狼と奈々を取り上げてくれた助産婦さんもいる。
蓑原が虎白さんたちに挨拶していた。
嬉しそうだ。
それにしても悪い気配ではないが、背中のハイファから噴き出すエネルギーを感じる。
やはり尋常な存在ではない。
虎白さんたちの準備が出来た。
虎白さんを中心に、剣士たちが輪を作っていた。
「どっかで見たな、アレ」
「うん」
「そうだね」
双子も同意する。
虎白さんが歌い出した。
♪ 風の中のすばる 砂の中の銀河 みんな何処へ行った 見送られることもなく ♪
虎白さんの朗々と歌う見事な歌声が響いた。
麗星や五平所、その他の道間家の人間たちが驚いている。
剣士たちが舞い始めた。
「あれって、舞なのか?」
みんなバラバラに、それぞれ刀を鞘から抜いて動かしている。
もちろん、一つ一つは演武として素晴らしいのだが、とにかく一体感が無い。
全員が好き勝手な型を披露している気がする。
そもそも、『地上の星』を独りで歌っている虎白さんからしておかしい。
「なんだ、こりゃ」
でも、黙ってみんな見ていた。
歌がクライマックスになると、それぞれの人間が奥儀を見せ始めた。
「連山」「煉獄」「飛燕」……
空中に向けているので地上に被害は無いが、空が段々と崩れていく。
「おい……」
先ほどまで快晴だった空が、何か傷ついたかのように濁って行き、傷を覆うかのように暗雲が立ち込めてきた。
「なんだよ……」
突然、見たことも無いようなでかい雷が頭上を走った。
突風も吹き始める。
麗星が徐々に落ち着かなくなって行く。
「五平所! 地下はどうなっていますか!」
「はい! すべて第八層まで移動していますが!」
「間に合わないかもしれません」
「はい……」
なんか大変そうだぞー。
でも俺は怒られるので、ジッと演武を見ていた。
雨が降って来た。
土砂降りだ。
でも、虎白さんたちが真剣にやっているので、誰も動けない。
五平所が大きな傘を持ってきて、俺たちの上に翳してくれた。
ドッドゥオォォォーーーン!
庭に巨大な落雷があった。
一瞬目の前が真っ白になり、皮膚が痺れる感覚の後で、濃いオゾンの臭気が満ちた。
多分、離れて見ていた俺たちは、ハイファがガードしてくれた。
「オイ!」
俺は五平所に奈々を預け、飛び出した。
石神家の剣士が全員倒れていた。
凄い水蒸気が上がっている。
「……」
後ろから慌てて道間家の人間が向かってきてくれた。
剣士たちが全員気絶しており、俺は手近な人間から急いで確認していった。
落雷の場合、外傷が無ければ心停止の確認を優先する。
「AEDがあったら持ってきてくれ!」
すぐに何人かが走る。
虎白さんが心停止だった。
俺はすぐに蘇生措置を施した。
「虎白さん!」
「おう」
信じれないくらいに自然に目をさました。
あの巨大な落雷が直撃したはずなのだが。
「虎白さん、大丈夫ですか!」
「おう」
立ち上がろうとするので、押し留めて俺が担いだ。
他の剣士たちもどんどん座敷へ運んでいく。
途中で目を覚ます人間もいた。
他に心肺停止の剣士が3人もいて、急いで蘇生させた。
座敷で俺が容態を見ていくと、みんな目を覚まして行った。
虎白さんはもう普通に座っている。
頑丈だなー。
「びっくりしたなぁ」
「おい、誰だよ、あの状況で「雷電」撃った奴は!」
「すいません、自分です!」
若い剣士がやったらしい。
「でもよ、虎白、その前に結構ヤバい状況になってたろ?」
「まあなぁ。参ったぜ」
俺は全員に「Ω」と「オロチ」の粉末を配って飲ませた。
道間家に常備してあるものを使った。
双子にも「手かざし」をさせている。
幸いなことに、誰も大きな異常は無いようだった。
道間家の人間が茶を運んできた。
虎白さんが俺を睨んでいる。
手招きされた。
「高虎、俺、お前に言ったよな?」
「はい?」
「お前に、危ないことをする奴がいたら止めろってよ!」
「えぇ!」
「ちゃんと言ったじゃねぇか! 何なんだ、このザマはぁ!」
「ハイィィィー????」
聞いてねぇ。
大体、何やるのかも話してくれてない。
「また高虎かぁ!」
「そうだよ。こいつのせいで、俺、虎葉がニコニコして待ってたぞ!」
「死んだお袋が手を振ってたぞ!」
「じいちゃんが花畑にいた!」
「足元にポチがいた!」
「ちょ、ちょっとぉー!」
「今度こそぶっ殺す!」
「てめぇ! 覚悟しろぉ!」
「あの! 今日は祝いの席ですからぁ! 血はまずいですってぇ!」
俺が叫ぶと、虎白さんがみんなを止めてくれた。
「まったくよ! お前、いい加減にしろよな!」
「すいませんでしたぁ!」
言うしかねぇ。
ほんとに勘弁して。
天狼が五平所と来て、大笑いしていた。
まあ、笑顔がカワイイからいいかぁ。
「剣の舞」といいことなので、当然刀を持って来ている。
俺は念のために「黒笛」を持っていないか確認した。
ハイファを中心に、五平所たちも、何とか結界や敷地を守護するあれこれを調整したようだ。
五平所が直接虎白さんにも相談し「あー、そういえば」と言われて顔を青くしていた。
考えてなかったんかい!
俺は双子と縁側に座って、準備の様子を眺めていた。
「どんなことすんだろうなー」
「虎白さんが歌うんだって」
「どうして知ってんだよ?」
さっき、双子が虎白さんから聞いたらしい。
俺には何も話してくれないのに、双子には結構優しく説明してくれる。
俺、当主なんだけどなー。
「中島みゆきの『地上の星』を虎白さんが歌うんだって」
「ナンデ?」
「好きなんだってさ」
「まじか」
あの、古い儀式とかじゃないの?
とにかく、虎白さんが歌って他の剣士が舞うらしい。
へー。
庭に道間家の人間によってテーブルや椅子、ソファが運ばれた。
俺が生まれたばかりの奈々を抱き、庭に出た。
奈々は大人しく眠っている。
天狼は五平所に手を握られ、歩いてくる。
ハイファが麗星の車いすを押して来たので驚いた。
虎白さんたちが振り向く。
「ハイファ、お前に剣技を見せるのは久しぶりだな!」
「はい、皆さまご壮健のご様子。有難いことでございます」
「虎白さん、さっきも引っ掛かってましたけど、以前にもハイファに会ってるんですか?」
虎白さんがハイファを他の剣士に紹介していたので、不思議に思っていた。
「ああ。前に虎影のことでちょっと揉めてな。その時に会ってる」
「!」
親父が道間宇羅に騙されて殺されたことは虎白さんたちも知っている。
でも、以前に俺がそのことを聞いた時には、手出しはしていないと聞いていたのだが。
「まあ、最初はぶっ込もうとしたんだけどよ。ちょっと遣り合った後でハイファから事情を聞いて、まあ全部虎影の納得してのことだと分かったからな」
「虎白さんはハイファの言葉を信じたんですか?」
「ああ。こいつは嘘が吐けねぇだろう。だったらな」
「……」
流石に虎白さんはこの世のものでない存在のことをよく分かっている。
感情的には相当なものが渦巻いていただろうが、親父が決めたことだと、無理矢理自分を捻じ曲げたのだろう。
しかし、まさかハイファに挑もうとしていたとは。
俺の両脇に麗星と天狼が座り、俺が奈々を抱いた。
ハイファは俺たちの後ろに立っている。
道間家の人間が50人ほど集まった。
天狼と奈々を取り上げてくれた助産婦さんもいる。
蓑原が虎白さんたちに挨拶していた。
嬉しそうだ。
それにしても悪い気配ではないが、背中のハイファから噴き出すエネルギーを感じる。
やはり尋常な存在ではない。
虎白さんたちの準備が出来た。
虎白さんを中心に、剣士たちが輪を作っていた。
「どっかで見たな、アレ」
「うん」
「そうだね」
双子も同意する。
虎白さんが歌い出した。
♪ 風の中のすばる 砂の中の銀河 みんな何処へ行った 見送られることもなく ♪
虎白さんの朗々と歌う見事な歌声が響いた。
麗星や五平所、その他の道間家の人間たちが驚いている。
剣士たちが舞い始めた。
「あれって、舞なのか?」
みんなバラバラに、それぞれ刀を鞘から抜いて動かしている。
もちろん、一つ一つは演武として素晴らしいのだが、とにかく一体感が無い。
全員が好き勝手な型を披露している気がする。
そもそも、『地上の星』を独りで歌っている虎白さんからしておかしい。
「なんだ、こりゃ」
でも、黙ってみんな見ていた。
歌がクライマックスになると、それぞれの人間が奥儀を見せ始めた。
「連山」「煉獄」「飛燕」……
空中に向けているので地上に被害は無いが、空が段々と崩れていく。
「おい……」
先ほどまで快晴だった空が、何か傷ついたかのように濁って行き、傷を覆うかのように暗雲が立ち込めてきた。
「なんだよ……」
突然、見たことも無いようなでかい雷が頭上を走った。
突風も吹き始める。
麗星が徐々に落ち着かなくなって行く。
「五平所! 地下はどうなっていますか!」
「はい! すべて第八層まで移動していますが!」
「間に合わないかもしれません」
「はい……」
なんか大変そうだぞー。
でも俺は怒られるので、ジッと演武を見ていた。
雨が降って来た。
土砂降りだ。
でも、虎白さんたちが真剣にやっているので、誰も動けない。
五平所が大きな傘を持ってきて、俺たちの上に翳してくれた。
ドッドゥオォォォーーーン!
庭に巨大な落雷があった。
一瞬目の前が真っ白になり、皮膚が痺れる感覚の後で、濃いオゾンの臭気が満ちた。
多分、離れて見ていた俺たちは、ハイファがガードしてくれた。
「オイ!」
俺は五平所に奈々を預け、飛び出した。
石神家の剣士が全員倒れていた。
凄い水蒸気が上がっている。
「……」
後ろから慌てて道間家の人間が向かってきてくれた。
剣士たちが全員気絶しており、俺は手近な人間から急いで確認していった。
落雷の場合、外傷が無ければ心停止の確認を優先する。
「AEDがあったら持ってきてくれ!」
すぐに何人かが走る。
虎白さんが心停止だった。
俺はすぐに蘇生措置を施した。
「虎白さん!」
「おう」
信じれないくらいに自然に目をさました。
あの巨大な落雷が直撃したはずなのだが。
「虎白さん、大丈夫ですか!」
「おう」
立ち上がろうとするので、押し留めて俺が担いだ。
他の剣士たちもどんどん座敷へ運んでいく。
途中で目を覚ます人間もいた。
他に心肺停止の剣士が3人もいて、急いで蘇生させた。
座敷で俺が容態を見ていくと、みんな目を覚まして行った。
虎白さんはもう普通に座っている。
頑丈だなー。
「びっくりしたなぁ」
「おい、誰だよ、あの状況で「雷電」撃った奴は!」
「すいません、自分です!」
若い剣士がやったらしい。
「でもよ、虎白、その前に結構ヤバい状況になってたろ?」
「まあなぁ。参ったぜ」
俺は全員に「Ω」と「オロチ」の粉末を配って飲ませた。
道間家に常備してあるものを使った。
双子にも「手かざし」をさせている。
幸いなことに、誰も大きな異常は無いようだった。
道間家の人間が茶を運んできた。
虎白さんが俺を睨んでいる。
手招きされた。
「高虎、俺、お前に言ったよな?」
「はい?」
「お前に、危ないことをする奴がいたら止めろってよ!」
「えぇ!」
「ちゃんと言ったじゃねぇか! 何なんだ、このザマはぁ!」
「ハイィィィー????」
聞いてねぇ。
大体、何やるのかも話してくれてない。
「また高虎かぁ!」
「そうだよ。こいつのせいで、俺、虎葉がニコニコして待ってたぞ!」
「死んだお袋が手を振ってたぞ!」
「じいちゃんが花畑にいた!」
「足元にポチがいた!」
「ちょ、ちょっとぉー!」
「今度こそぶっ殺す!」
「てめぇ! 覚悟しろぉ!」
「あの! 今日は祝いの席ですからぁ! 血はまずいですってぇ!」
俺が叫ぶと、虎白さんがみんなを止めてくれた。
「まったくよ! お前、いい加減にしろよな!」
「すいませんでしたぁ!」
言うしかねぇ。
ほんとに勘弁して。
天狼が五平所と来て、大笑いしていた。
まあ、笑顔がカワイイからいいかぁ。
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