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道間家 二人目の子
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アラスカでの運動会とハンティング・マラソンが終わり、俺たちは「ほんとの虎の穴」で祝杯を挙げていた。
ハンティング・マラソンで優勝した亜紀ちゃんが嬉しそうに笑っている。
準優勝の柳もみんなに褒められて、半泣きになって喜んでいた。
俺が真面目な柳の真骨頂が出ていたというと、大泣きになった。
「石神さーん!」
「おー、よちよち」
抱き締めて頭を抱いて撫でてやった。
本当に素晴らしい奴だ。
「それに引き換えお前らはよー」
「「ワハハハハハハ!」」
双子も元気そうだ。
「麗星さんも来られれば良かったですよね!」
亜紀ちゃんが牛カツを頬張りながら言った。
「まあ、しょうがねぇ」
「何か用事でも?」
「ああ、体調の問題でな」
「え! まさか御病気なんですか!」
「そうじゃねぇよ」
「だったら何なんですか!」
亜紀ちゃんが興奮している。
「まあ、もうすぐ出産だからな」
「「「「「エェッーーーー!!!!!」」」」」
子どもたちが驚く。
亜紀ちゃんが口の中の牛カツをテーブルに零した。
「汚ねぇな!」
慌てて手で拾い、口の中に突っ込む。
モグモグ。
「妊娠されてたんですかぁ!」
「そうだよ!」
「何で話してくれなかったんですかぁ!」
「うるせぇな!」
栞や鷹、六花や蓮花は笑っている。
こいつらにはもちろん話してあった。
「タカさーん!」
「あー! 悪かったよ! ちょっと恥ずかしかったんだよ!」
栞や六花、鷹と違って、麗星は蓮花以上にうちの子どもたちとそれほど会う機会は無い。
道間家という特殊な家の当主だからだ。
俺は月に1度は会いに行っていたが、そのたびにヤってたと思われるのは恥ずかしい。
別に俺もヤリに行っていたわけではないが、まあ、自然にそうなってた。
そうしたら、麗星が妊娠した。
子どもたちが麗星に会ったのは、夏の俺のコンサートの時か。
あの時に話しても良かったのだが、何しろ大勢の人間がいて、俺も忙しかった。
「じゃあ、ニューヨークでお会いした時にはもう!」
亜紀ちゃんが気付いた。
「そうだよ。だから麗星は出掛けずにずっとホテルにいただろう」
「そうでした!」
「そういうことで察しろ」
「無理ですよ! 私、友達って少ないんですからぁ!」
「そうだな」
「えーん」
ヘンな話になってきた。
「ま、まあよ。道間家は特殊な家だ。普通の家庭のように、あれこれ話せないんだよ」
「そうですね」
まあ、そんなこともないだろうが。
「タカさん、いつ生まれるの?」
ハーが聞いて来る。
「来週の土曜日が予定日だな。まあ、俺も顔を出すつもりだけど」
双子が指を折って「日付」を数えているので、頭を引っぱたいた。
「石神さん、バレンタインデーの少し前ですね」
空気を読まないムッツリ柳が別途計算していた。
「「ギャハハハハハハ!」」
双子が下品な笑いをした。
響子が六花とお祝いをどうしようかと話していた。
「ああ、今度は女の子な」
「そうなの!」
響子が嬉しそうだ。
虎のベビー服にしようとか言っている。
双子が「RUH=HER」で作ると言った。
「天狼ちゃんって綺麗な顔だよねー」
「士王ちゃんと吹雪ちゃんとは違った綺麗さだよねー」
双子がそう言い、響子とデザインを話し始めた。
「私も、クマのベビー服作ってぇ!」
「分かったよ」
亜紀ちゃんが叫ぶ。
栞や鷹も乗っかって来て、いろいろな動物のベビー服が出来そうだった。
蓮花たちが俺に近づいて来た。
「あの、石神様。わたくしたちは、是非護衛のデュールゲリエをお贈りしたいのですが」
「ああ、でもあそこにはハイファがいるからなぁ」
「ダメでしょうか?」
「話してみるよ。道間家にはもう皇紀システムも置いているしな」
「はい!」
「外見はどうするんだ?」
「それが、天使の形にしようかと思っているのですが」
「天使?」
意外なデザインだった。
「はい、何となくそのような姿が頭に浮かびまして」
「そうなのか?」
道間家は和風な家だ。
蓮花もそれは知っての上のことだろう。
俺が考えていると、蓮花が話した。
俺が麗星の妊娠を告げた日の晩に、蓮花が夢を見たと言うのだ。
「広い大きな庭でした。一面に様々な美しい花が咲き乱れていて」
「そうなのか」
「あまりの美しさに呆然としていたのですが、小さな女の子が、美しい天使に手を引かれて来たのです」
「え?」
「女の子は日本人で、小学1年生くらいでしょうか。可愛らしい子でした」
「ほう」
俺は何かを思い出し掛けていた。
「女の子は名前を言ったのですが、それはよく覚えていなくて。でも、やっとあの人の子どもに生まれることが出来るのだと嬉しそうに話していたのは覚えています」
「……」
思い出した。
数年前に、突然うちに来たナッチャンのことだ。
元々はうちの裏に住んでいたイタリアン・シェフの大串さんの娘で、引っ越した先の土佐から電車を乗り継いでうちまで来た。
不思議な子で、自分がもうすぐ死ぬのだと言っていた。
そしてその通りに、うちに来てしばらく後で交通事故で死んでしまった。
「ナッチャン……」
「あ! その名前でした! 自分のことをナッチャンだと!」
蓮花が興奮して言った。
俺は蓮花たちを離れた場所に移動させ、ナッチャンのことを話した。
「ナッチャンと一緒に寝た夜にな、夢の中でゲッセマネにいると言っていた。俺の子として生まれて来るんだって言ってたんだよ」
「石神様!」
蓮花もジェシカもミユキたちも驚いていた。
「すっかり忘れていたんだがなぁ」
「では、麗星様のお子様は!」
「まあ、待て。何も決まったわけじゃないし、どんな子でも俺の子だというだけだ。あまり考えすぎるな。それと、この話は他の人間には黙っていてくれ」
「わ、分かりました」
ミユキたちも承諾した。
「しかし、道間家に天使とはなぁ」
「はい。わたくしも少し迷ったのですが、あの夢がどうにも忘れられずに」
「そうか。とにかく麗星と話してみてからだ。出産祝いとしては、ちょっと高価過ぎるけどな」
「そうですね!」
みんなで笑い、その話を終えた。
ハンティング・マラソンで優勝した亜紀ちゃんが嬉しそうに笑っている。
準優勝の柳もみんなに褒められて、半泣きになって喜んでいた。
俺が真面目な柳の真骨頂が出ていたというと、大泣きになった。
「石神さーん!」
「おー、よちよち」
抱き締めて頭を抱いて撫でてやった。
本当に素晴らしい奴だ。
「それに引き換えお前らはよー」
「「ワハハハハハハ!」」
双子も元気そうだ。
「麗星さんも来られれば良かったですよね!」
亜紀ちゃんが牛カツを頬張りながら言った。
「まあ、しょうがねぇ」
「何か用事でも?」
「ああ、体調の問題でな」
「え! まさか御病気なんですか!」
「そうじゃねぇよ」
「だったら何なんですか!」
亜紀ちゃんが興奮している。
「まあ、もうすぐ出産だからな」
「「「「「エェッーーーー!!!!!」」」」」
子どもたちが驚く。
亜紀ちゃんが口の中の牛カツをテーブルに零した。
「汚ねぇな!」
慌てて手で拾い、口の中に突っ込む。
モグモグ。
「妊娠されてたんですかぁ!」
「そうだよ!」
「何で話してくれなかったんですかぁ!」
「うるせぇな!」
栞や鷹、六花や蓮花は笑っている。
こいつらにはもちろん話してあった。
「タカさーん!」
「あー! 悪かったよ! ちょっと恥ずかしかったんだよ!」
栞や六花、鷹と違って、麗星は蓮花以上にうちの子どもたちとそれほど会う機会は無い。
道間家という特殊な家の当主だからだ。
俺は月に1度は会いに行っていたが、そのたびにヤってたと思われるのは恥ずかしい。
別に俺もヤリに行っていたわけではないが、まあ、自然にそうなってた。
そうしたら、麗星が妊娠した。
子どもたちが麗星に会ったのは、夏の俺のコンサートの時か。
あの時に話しても良かったのだが、何しろ大勢の人間がいて、俺も忙しかった。
「じゃあ、ニューヨークでお会いした時にはもう!」
亜紀ちゃんが気付いた。
「そうだよ。だから麗星は出掛けずにずっとホテルにいただろう」
「そうでした!」
「そういうことで察しろ」
「無理ですよ! 私、友達って少ないんですからぁ!」
「そうだな」
「えーん」
ヘンな話になってきた。
「ま、まあよ。道間家は特殊な家だ。普通の家庭のように、あれこれ話せないんだよ」
「そうですね」
まあ、そんなこともないだろうが。
「タカさん、いつ生まれるの?」
ハーが聞いて来る。
「来週の土曜日が予定日だな。まあ、俺も顔を出すつもりだけど」
双子が指を折って「日付」を数えているので、頭を引っぱたいた。
「石神さん、バレンタインデーの少し前ですね」
空気を読まないムッツリ柳が別途計算していた。
「「ギャハハハハハハ!」」
双子が下品な笑いをした。
響子が六花とお祝いをどうしようかと話していた。
「ああ、今度は女の子な」
「そうなの!」
響子が嬉しそうだ。
虎のベビー服にしようとか言っている。
双子が「RUH=HER」で作ると言った。
「天狼ちゃんって綺麗な顔だよねー」
「士王ちゃんと吹雪ちゃんとは違った綺麗さだよねー」
双子がそう言い、響子とデザインを話し始めた。
「私も、クマのベビー服作ってぇ!」
「分かったよ」
亜紀ちゃんが叫ぶ。
栞や鷹も乗っかって来て、いろいろな動物のベビー服が出来そうだった。
蓮花たちが俺に近づいて来た。
「あの、石神様。わたくしたちは、是非護衛のデュールゲリエをお贈りしたいのですが」
「ああ、でもあそこにはハイファがいるからなぁ」
「ダメでしょうか?」
「話してみるよ。道間家にはもう皇紀システムも置いているしな」
「はい!」
「外見はどうするんだ?」
「それが、天使の形にしようかと思っているのですが」
「天使?」
意外なデザインだった。
「はい、何となくそのような姿が頭に浮かびまして」
「そうなのか?」
道間家は和風な家だ。
蓮花もそれは知っての上のことだろう。
俺が考えていると、蓮花が話した。
俺が麗星の妊娠を告げた日の晩に、蓮花が夢を見たと言うのだ。
「広い大きな庭でした。一面に様々な美しい花が咲き乱れていて」
「そうなのか」
「あまりの美しさに呆然としていたのですが、小さな女の子が、美しい天使に手を引かれて来たのです」
「え?」
「女の子は日本人で、小学1年生くらいでしょうか。可愛らしい子でした」
「ほう」
俺は何かを思い出し掛けていた。
「女の子は名前を言ったのですが、それはよく覚えていなくて。でも、やっとあの人の子どもに生まれることが出来るのだと嬉しそうに話していたのは覚えています」
「……」
思い出した。
数年前に、突然うちに来たナッチャンのことだ。
元々はうちの裏に住んでいたイタリアン・シェフの大串さんの娘で、引っ越した先の土佐から電車を乗り継いでうちまで来た。
不思議な子で、自分がもうすぐ死ぬのだと言っていた。
そしてその通りに、うちに来てしばらく後で交通事故で死んでしまった。
「ナッチャン……」
「あ! その名前でした! 自分のことをナッチャンだと!」
蓮花が興奮して言った。
俺は蓮花たちを離れた場所に移動させ、ナッチャンのことを話した。
「ナッチャンと一緒に寝た夜にな、夢の中でゲッセマネにいると言っていた。俺の子として生まれて来るんだって言ってたんだよ」
「石神様!」
蓮花もジェシカもミユキたちも驚いていた。
「すっかり忘れていたんだがなぁ」
「では、麗星様のお子様は!」
「まあ、待て。何も決まったわけじゃないし、どんな子でも俺の子だというだけだ。あまり考えすぎるな。それと、この話は他の人間には黙っていてくれ」
「わ、分かりました」
ミユキたちも承諾した。
「しかし、道間家に天使とはなぁ」
「はい。わたくしも少し迷ったのですが、あの夢がどうにも忘れられずに」
「そうか。とにかく麗星と話してみてからだ。出産祝いとしては、ちょっと高価過ぎるけどな」
「そうですね!」
みんなで笑い、その話を終えた。
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