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アラスカ ハンティング・マラソン Ⅳ
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山を駆け巡って、やっと満足できるサイズのヒグマを見つけた。
一応、額に星なんかが無いことを確認する。
前に、知らずに山の主を殺してしまい、大顰蹙を買ったからだ。
ゆっくりとヒグマに近づくと、向こうも気付いて威嚇して来る。
両足で立ち、両手を上げて吼えている。
身体のサイズが全然違うので、向こうは余裕があるようだった。
「なんだぁ? お前ヤルってかよ!」
余裕で獰猛に笑って見せた。
ヒグマは威嚇したままだ。
「オラァ!」
左足にローキックを放った。
手加減している。
一発で足を粉砕できるが、今は脅し程度だ。
目的がある。
「ガァオォー!」
「オラァ!」
何度もローキックを見舞い、ヒグマの爪の攻撃を左腕で受ける。
「オラァオラァオラァオラァ!」
ヒグマが痛みに耐えきれずに前に倒れた。
「ガォ」
「どうした! 立てぇ!」
顔面にサッカーボールキックを放つ。
ヒグマが仰向けに吹っ飛んだ。
「ガオ」
ヒグマが悲し気に叫んだ。
「もう終わりかよ!」
他愛もない。
ヒグマの口から血が滲んでいた。
「よし! じゃあ、これを喰え!」
ソフトボール大の石を口の前に持ってった。
戦意を喪失した相手に、岩をガンガン喰わせるつもりだった。
殺しては胃の中に押し込めない。
無理に体内に入れれば、違反となるだろう。
だから生きているうちに喰わせる必要がある。
「ガォ」
「早く喰え! 体重を増やすんだよ!」
口に石を押し付けた。
片手で口を開こうと掴んだ。
「ガゥ」
ヒグマが涙を流し始めた。
「お、おい!」
ボロボロと大粒の涙が零れて行く。
「な、なんだよ! おい!」
「ガゥ」
涙を前足で拭うが、どんどん溢れている。
本気で泣いてる。
「わ、悪かったよ! もう喰わなくていいから!」
「……」
デュールゲリエが降りて来た。
「おい、死んだフリをしろ!」
頭をポコンとやり、ヒグマを横に倒した。
「亜紀様、ハンティングの完了を確認。競技の計測を開始します!」
左腕の距離計が赤く光った。
デュールゲリエがそれを確認し、上空へ上がった。
「おし! じゃあ背負っていくから大人しくしろよ!」
「ガウ!」
ヒグマの頭を撫でてやり、山を駆け下りた。
絶対優勝するぞー!
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「おい、双子のってどうなんだよ!」
栞は副委員長の桜花と相談している。
「一応さ、ライフル弾なんかはそのまま計測するんだよね?」
「ライフル弾じゃねぇだろう!」
「槍とか銛とかも刺さったままでもとは思うんだ」
「だから全然ちげぇだろう!」
明らかに重量を稼ぐためにH鋼をぶっ刺した。
ムースの胸から1メートル以上飛び出している。
「あのさ! 私だってまさかあんなことすると思って無かったよ!」
栞が逆ギレした。
「あの二人が優勝したら揉めるぞー?」
「わ、分かってるよ! 今考えるから!」
「うーん」
「あなたもちゃんと考えて!」
「俺もかよ!」
「あなたの国でしょ!」
「分かったよ!」
まったく、悪知恵の働く奴らだ。
貴賓席の中にある、目の前の大モニターに別な映像が映る。
カリブーを狩った柳だ。
「柳、泣いてるなー」
「ちょっと可哀想だよね」
「あいつ、結構動物好きだからな」
「そうなの?」
「ああ。ロボとも一番仲良しだし、オロチも大好きだしなぁ。うちの近所のイヌネコとかも可愛がってるよ」
「そうなんだ」
「小学校のウサギ小屋の前で立ってるのを見たことある」
「へぇー」
映像では事故死だ。
まあ、一応ハンティングの評価にはなったようだが。
「頭にガンガンぶつかってるよね?」
「なんか恨まれてるみてぇだよな」
「カワイソー」
「そうだなー」
他の競技者も何とか獲物を狩って行く。
野生動物は探すのが難しいので、うちの子どもらのように大型動物はなかなか狩れないようだった。
タヌキのようなものを背負っている者もいる。
「問題は亜紀ちゃんかー」
「あれってハンティングってことでいいの?」
「生きてるよな」
「亜紀ちゃんなら瞬殺と思ってたけど」
「岩を喰わせて重量を増そうと考えたみたいだな」
「悪魔だよね!」
「でも、なんか仲良くなってるしよ」
「うーん」
「クマ、泣いてたもんな」
「そうだよね」
シロクマのことを思い出した。
「前にうちの庭にシロクマが来てさ」
「ど、どういうこと!」
クロピョン便の説明をした。
ヘンな動物たちがクロピョンに運ばれてくると話すと、栞と桜花たちが驚いている。
「そのシロクマを亜紀ちゃんがぶっ倒してさ。それから仲良くなったんだよ」
「なにそれ?」
「別れる時に泣いてたなー」
「へぇ」
栞はあまり動物への愛着は無い。
ロボを可愛がるくらいだ。
俺のネコだからだろう。
ロボはカワイイし。
「まあ、最後まで観てみるか。3時に競技場だよな?」
「うん」
「じゃあ、美味い物を喰って待とう!」
「石神様! すぐにご用意します!」
「ああ、頼む!」
桜花たちが繋がっているキッチンへ向かった。
「蓮花、お前もゆっくりしろよな!」
「はい! 楽しいですね!」
「そうだよな!」
ミユキたちも笑った。
蓮花が楽しんでいることが嬉しいのだ。
栞と六花は俺の隣でそれぞれの子どもをあやしている。
ロボも俺の足の下で横になっている。
柔らかい毛足の長い絨毯が敷いてある。
画面では、デュールゲリエが撮影した様々な選手の映像が流れている。
野生動物を背負って真面目に走る選手たちが楽しい。
桜花たちが豪華な食事を持って来た。
俺たちは食事を始めた。
一応、額に星なんかが無いことを確認する。
前に、知らずに山の主を殺してしまい、大顰蹙を買ったからだ。
ゆっくりとヒグマに近づくと、向こうも気付いて威嚇して来る。
両足で立ち、両手を上げて吼えている。
身体のサイズが全然違うので、向こうは余裕があるようだった。
「なんだぁ? お前ヤルってかよ!」
余裕で獰猛に笑って見せた。
ヒグマは威嚇したままだ。
「オラァ!」
左足にローキックを放った。
手加減している。
一発で足を粉砕できるが、今は脅し程度だ。
目的がある。
「ガァオォー!」
「オラァ!」
何度もローキックを見舞い、ヒグマの爪の攻撃を左腕で受ける。
「オラァオラァオラァオラァ!」
ヒグマが痛みに耐えきれずに前に倒れた。
「ガォ」
「どうした! 立てぇ!」
顔面にサッカーボールキックを放つ。
ヒグマが仰向けに吹っ飛んだ。
「ガオ」
ヒグマが悲し気に叫んだ。
「もう終わりかよ!」
他愛もない。
ヒグマの口から血が滲んでいた。
「よし! じゃあ、これを喰え!」
ソフトボール大の石を口の前に持ってった。
戦意を喪失した相手に、岩をガンガン喰わせるつもりだった。
殺しては胃の中に押し込めない。
無理に体内に入れれば、違反となるだろう。
だから生きているうちに喰わせる必要がある。
「ガォ」
「早く喰え! 体重を増やすんだよ!」
口に石を押し付けた。
片手で口を開こうと掴んだ。
「ガゥ」
ヒグマが涙を流し始めた。
「お、おい!」
ボロボロと大粒の涙が零れて行く。
「な、なんだよ! おい!」
「ガゥ」
涙を前足で拭うが、どんどん溢れている。
本気で泣いてる。
「わ、悪かったよ! もう喰わなくていいから!」
「……」
デュールゲリエが降りて来た。
「おい、死んだフリをしろ!」
頭をポコンとやり、ヒグマを横に倒した。
「亜紀様、ハンティングの完了を確認。競技の計測を開始します!」
左腕の距離計が赤く光った。
デュールゲリエがそれを確認し、上空へ上がった。
「おし! じゃあ背負っていくから大人しくしろよ!」
「ガウ!」
ヒグマの頭を撫でてやり、山を駆け下りた。
絶対優勝するぞー!
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「おい、双子のってどうなんだよ!」
栞は副委員長の桜花と相談している。
「一応さ、ライフル弾なんかはそのまま計測するんだよね?」
「ライフル弾じゃねぇだろう!」
「槍とか銛とかも刺さったままでもとは思うんだ」
「だから全然ちげぇだろう!」
明らかに重量を稼ぐためにH鋼をぶっ刺した。
ムースの胸から1メートル以上飛び出している。
「あのさ! 私だってまさかあんなことすると思って無かったよ!」
栞が逆ギレした。
「あの二人が優勝したら揉めるぞー?」
「わ、分かってるよ! 今考えるから!」
「うーん」
「あなたもちゃんと考えて!」
「俺もかよ!」
「あなたの国でしょ!」
「分かったよ!」
まったく、悪知恵の働く奴らだ。
貴賓席の中にある、目の前の大モニターに別な映像が映る。
カリブーを狩った柳だ。
「柳、泣いてるなー」
「ちょっと可哀想だよね」
「あいつ、結構動物好きだからな」
「そうなの?」
「ああ。ロボとも一番仲良しだし、オロチも大好きだしなぁ。うちの近所のイヌネコとかも可愛がってるよ」
「そうなんだ」
「小学校のウサギ小屋の前で立ってるのを見たことある」
「へぇー」
映像では事故死だ。
まあ、一応ハンティングの評価にはなったようだが。
「頭にガンガンぶつかってるよね?」
「なんか恨まれてるみてぇだよな」
「カワイソー」
「そうだなー」
他の競技者も何とか獲物を狩って行く。
野生動物は探すのが難しいので、うちの子どもらのように大型動物はなかなか狩れないようだった。
タヌキのようなものを背負っている者もいる。
「問題は亜紀ちゃんかー」
「あれってハンティングってことでいいの?」
「生きてるよな」
「亜紀ちゃんなら瞬殺と思ってたけど」
「岩を喰わせて重量を増そうと考えたみたいだな」
「悪魔だよね!」
「でも、なんか仲良くなってるしよ」
「うーん」
「クマ、泣いてたもんな」
「そうだよね」
シロクマのことを思い出した。
「前にうちの庭にシロクマが来てさ」
「ど、どういうこと!」
クロピョン便の説明をした。
ヘンな動物たちがクロピョンに運ばれてくると話すと、栞と桜花たちが驚いている。
「そのシロクマを亜紀ちゃんがぶっ倒してさ。それから仲良くなったんだよ」
「なにそれ?」
「別れる時に泣いてたなー」
「へぇ」
栞はあまり動物への愛着は無い。
ロボを可愛がるくらいだ。
俺のネコだからだろう。
ロボはカワイイし。
「まあ、最後まで観てみるか。3時に競技場だよな?」
「うん」
「じゃあ、美味い物を喰って待とう!」
「石神様! すぐにご用意します!」
「ああ、頼む!」
桜花たちが繋がっているキッチンへ向かった。
「蓮花、お前もゆっくりしろよな!」
「はい! 楽しいですね!」
「そうだよな!」
ミユキたちも笑った。
蓮花が楽しんでいることが嬉しいのだ。
栞と六花は俺の隣でそれぞれの子どもをあやしている。
ロボも俺の足の下で横になっている。
柔らかい毛足の長い絨毯が敷いてある。
画面では、デュールゲリエが撮影した様々な選手の映像が流れている。
野生動物を背負って真面目に走る選手たちが楽しい。
桜花たちが豪華な食事を持って来た。
俺たちは食事を始めた。
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