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アラスカ ハンティング・マラソン
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少し遡る、7月初旬のアラスカ。
「栞さん、今年もやるんですね」
「そうよ! 去年は夏場だったけど、やっぱり暑いからね。11月くらいがいいよ」
「パピヨンさんが、競技場は使わせないって」
「大丈夫! そっちは一般の部で使うから、許可は下りると思うよ?」
「そうですか?」
「アラスカ運動会」大会実行委員。
委員長・花岡栞。
副委員長・桜花。
実行委員・椿姫、睡蓮。
「去年はさ、亜紀ちゃんたちが滅茶苦茶にしたからね。今年は参加の部を分けるの」
「なるほど」
「一般の部、花岡初級・中級の部、それと花岡上級の部」
「亜紀さんたちは上級ですか?」
「そう。まあ、みんな強くなったからね。去年みたいにはいかないよ」
「大丈夫ですかねー」
「大丈夫だって!」
栞はのんびりした性格だ。
「一般と花岡初級・中級は別な日に開催」
「花岡上級はどうするんです?」
「競技場は使わせない。フルマラソンとハンティングだよ!」
「はい?」
要は、長距離を走ることと、途中で獲物を狩って来ることらしい。
獲物は重量によって点数加算するが、重い獲物を担いで走ることは負担になる。
「幾つかレギュレーションは必要だけどね。まあ、どうやっても亜紀ちゃんたちが強いけど、みんなも楽しめるよ」
「なるほど」
「飛行」禁止などにしておけば、結構面白いレースになるかもしれないと桜花は思った。
「じゃあ、そういうことで! みんな準備を始めましょう!」
「「「はい!」」」
ド暇な栞の楽しみのためだ。
桜花たちも喜んで大会の準備を始めた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
栞の発案に付き合わされ、11月の初旬にアラスカへ行った。
まあ、子どもたちも息抜きになっていいだろう。
「タカさん! 私たちも参加していいんですよね!」
「そうらしいな」
去年の運動会では、うちの子どもらが大顰蹙を買った。
競技場を壊して、俺がパピヨンに物凄く怒られた。
だから、子どもたちが参加しても大丈夫なように、参加者の分別をやったらしい。
それに、アラスカでもソルジャーたちの「花岡」の習得が進み、「アヴァロン」に住む一般市民との格差も大きくなった。
そういうことも含めて、栞が参加者の区分けを実施し、競技も分けて行なうようだ。
「お前たちはハンティング・マラソンには参加していいようだな」
「はい!」
亜紀ちゃんが嬉しそうだ。
「優勝するぞー!」
ハンティング・マラソンは、途中で獲物を狩り、決められたコースを周回する。
獲物はどんなものでも、とにかく「重量」で得点が加算される。
重ければいいというものだ。
アラスカであれば、ヒグマかムースが最大だろう。
「タカさん! ミミクンを狩ってもいいですか!」
「やめろ!」
運ぶつもりかよ。
ミミクンは無理だろうが、ヒグマなどは500キロを超えるものもいる。
それを長距離運ぶのは、「花岡」上級者でも日頃の訓練が必要だ。
だから、狩った獲物は一部でも良いことになっている。
但し、今回のハンティング・マラソンでは着順の順位ではなく、移動距離の長さだ。
それに獲物の重量にやや加算点が傾いている。
なるべく重い獲物を持って帰った方が有利だ。
「一頭しか持ち帰っちゃいけないんですよね?」
「そうだ。それに狩れるのも1頭だけだ」
「ふーん」
そういう規定にしておかないと、うちの子どもたちは何十頭でも狩ろうとする。
つまり、最初にどんな獲物を狩るのかがレースのポイントになる。
獲物を背負ってからがレースの加算になるので、勝敗はそこで決まると言っていい。
ヘッジホッグに付き、俺たちは「タイガー・ファング」を降りた。
俺と子どもたち、それに響子と六花、吹雪。
麗星も誘ったが、今回は来られなかった。
他に、蓮花とジェシカ、それに護衛のミユキ、前鬼、後鬼が来る。
蓮花たちは仕事が本来の目的だ。
あいつらは休まないので、俺たちに付き合わせて少しゆっくりさせたい。
栞の居住区へ行った。
「あなたー!」
栞が嬉しそうに走って来た。
俺も笑って抱き締めてやる。
士王も走って来る。
「お前も走れるようになったのか!」
「うん!」
俺が抱き上げると士王が喜んだ。
「さあ、みんなも入って! 食事を用意しているから」
「「「「「おじゃましまーす!」」」」」
響子と六花も挨拶して中へ入った。
士王は吹雪の手を引いている。
吹雪はまだ歩くのが得意ではないが、士王の手を握って笑っていた。
吹雪はいつでも御機嫌だ。
六花の愛情のせいだろう。
世の中を、人間をまったく疑っていない。
それは士王も同じなのだが、吹雪は一段と六花の深い愛情を注がれている。
昼食はいつものサーモンステーキだ。
俺も無理して特別なものを用意しないように言っている。
今はまだ午前11時で、早目の昼食だ。
まあ、子どもたちにはあまり関係ないが。
ロボもサーモンステーキを嬉しそうに食べている。
うちではあまり出ないものだ。
「このオニオンスライスがいいな!」
「そうでしょう! まあ、サーモンが多いからいろいろ工夫してるのよ」
他にもチーズを乗せたり、サワークリームもいい。
子どもたちも争って食べている。
桜花たちが笑って見ていた。
響子はチーズを乗せて食べる。
「タカトラ、美味しいよ!」
「そうか」
ニコニコしている響子の頭を撫でた。
士王と吹雪は丼にしている。
バター醤油のタレを掛けたものだ。
二人とも夢中で食べている。
「ねえ、今日はドライブに出ない?」
「え?」
「いいじゃない! あなたがいないと私、運転させてもらえないから」
「栞が運転すんのかよ!」
「そうよ! ねえ、お願い!」
「うーん」
これまで散々の事故を起こしたので、俺の命令で栞の運転は厳禁にしていた。
ターナー少将からの懇願もある。
但し、俺が付き添う場合には運転出来るようにしていた。
栞は酷い運転だが、本人はドライブが大好きだ。
「分かったよ。じゃあ、外に出てから交代な」
「うん!」
周りを見ると、みんなが目を伏せていた。
まあ、一緒に乗りたくないらしい。
常に護衛でくっついている桜花たちも、沈痛な顔でうつむいている。
一緒に行かざるを得ないことを覚悟している。
「じゃあ、久し振りに二人でドライブに行くかぁ!」
「うん!」
栞だけが嬉しそうな顔をした。
仕方ねぇ。
桜花たちがニコニコしていた。
「栞さん、今年もやるんですね」
「そうよ! 去年は夏場だったけど、やっぱり暑いからね。11月くらいがいいよ」
「パピヨンさんが、競技場は使わせないって」
「大丈夫! そっちは一般の部で使うから、許可は下りると思うよ?」
「そうですか?」
「アラスカ運動会」大会実行委員。
委員長・花岡栞。
副委員長・桜花。
実行委員・椿姫、睡蓮。
「去年はさ、亜紀ちゃんたちが滅茶苦茶にしたからね。今年は参加の部を分けるの」
「なるほど」
「一般の部、花岡初級・中級の部、それと花岡上級の部」
「亜紀さんたちは上級ですか?」
「そう。まあ、みんな強くなったからね。去年みたいにはいかないよ」
「大丈夫ですかねー」
「大丈夫だって!」
栞はのんびりした性格だ。
「一般と花岡初級・中級は別な日に開催」
「花岡上級はどうするんです?」
「競技場は使わせない。フルマラソンとハンティングだよ!」
「はい?」
要は、長距離を走ることと、途中で獲物を狩って来ることらしい。
獲物は重量によって点数加算するが、重い獲物を担いで走ることは負担になる。
「幾つかレギュレーションは必要だけどね。まあ、どうやっても亜紀ちゃんたちが強いけど、みんなも楽しめるよ」
「なるほど」
「飛行」禁止などにしておけば、結構面白いレースになるかもしれないと桜花は思った。
「じゃあ、そういうことで! みんな準備を始めましょう!」
「「「はい!」」」
ド暇な栞の楽しみのためだ。
桜花たちも喜んで大会の準備を始めた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
栞の発案に付き合わされ、11月の初旬にアラスカへ行った。
まあ、子どもたちも息抜きになっていいだろう。
「タカさん! 私たちも参加していいんですよね!」
「そうらしいな」
去年の運動会では、うちの子どもらが大顰蹙を買った。
競技場を壊して、俺がパピヨンに物凄く怒られた。
だから、子どもたちが参加しても大丈夫なように、参加者の分別をやったらしい。
それに、アラスカでもソルジャーたちの「花岡」の習得が進み、「アヴァロン」に住む一般市民との格差も大きくなった。
そういうことも含めて、栞が参加者の区分けを実施し、競技も分けて行なうようだ。
「お前たちはハンティング・マラソンには参加していいようだな」
「はい!」
亜紀ちゃんが嬉しそうだ。
「優勝するぞー!」
ハンティング・マラソンは、途中で獲物を狩り、決められたコースを周回する。
獲物はどんなものでも、とにかく「重量」で得点が加算される。
重ければいいというものだ。
アラスカであれば、ヒグマかムースが最大だろう。
「タカさん! ミミクンを狩ってもいいですか!」
「やめろ!」
運ぶつもりかよ。
ミミクンは無理だろうが、ヒグマなどは500キロを超えるものもいる。
それを長距離運ぶのは、「花岡」上級者でも日頃の訓練が必要だ。
だから、狩った獲物は一部でも良いことになっている。
但し、今回のハンティング・マラソンでは着順の順位ではなく、移動距離の長さだ。
それに獲物の重量にやや加算点が傾いている。
なるべく重い獲物を持って帰った方が有利だ。
「一頭しか持ち帰っちゃいけないんですよね?」
「そうだ。それに狩れるのも1頭だけだ」
「ふーん」
そういう規定にしておかないと、うちの子どもたちは何十頭でも狩ろうとする。
つまり、最初にどんな獲物を狩るのかがレースのポイントになる。
獲物を背負ってからがレースの加算になるので、勝敗はそこで決まると言っていい。
ヘッジホッグに付き、俺たちは「タイガー・ファング」を降りた。
俺と子どもたち、それに響子と六花、吹雪。
麗星も誘ったが、今回は来られなかった。
他に、蓮花とジェシカ、それに護衛のミユキ、前鬼、後鬼が来る。
蓮花たちは仕事が本来の目的だ。
あいつらは休まないので、俺たちに付き合わせて少しゆっくりさせたい。
栞の居住区へ行った。
「あなたー!」
栞が嬉しそうに走って来た。
俺も笑って抱き締めてやる。
士王も走って来る。
「お前も走れるようになったのか!」
「うん!」
俺が抱き上げると士王が喜んだ。
「さあ、みんなも入って! 食事を用意しているから」
「「「「「おじゃましまーす!」」」」」
響子と六花も挨拶して中へ入った。
士王は吹雪の手を引いている。
吹雪はまだ歩くのが得意ではないが、士王の手を握って笑っていた。
吹雪はいつでも御機嫌だ。
六花の愛情のせいだろう。
世の中を、人間をまったく疑っていない。
それは士王も同じなのだが、吹雪は一段と六花の深い愛情を注がれている。
昼食はいつものサーモンステーキだ。
俺も無理して特別なものを用意しないように言っている。
今はまだ午前11時で、早目の昼食だ。
まあ、子どもたちにはあまり関係ないが。
ロボもサーモンステーキを嬉しそうに食べている。
うちではあまり出ないものだ。
「このオニオンスライスがいいな!」
「そうでしょう! まあ、サーモンが多いからいろいろ工夫してるのよ」
他にもチーズを乗せたり、サワークリームもいい。
子どもたちも争って食べている。
桜花たちが笑って見ていた。
響子はチーズを乗せて食べる。
「タカトラ、美味しいよ!」
「そうか」
ニコニコしている響子の頭を撫でた。
士王と吹雪は丼にしている。
バター醤油のタレを掛けたものだ。
二人とも夢中で食べている。
「ねえ、今日はドライブに出ない?」
「え?」
「いいじゃない! あなたがいないと私、運転させてもらえないから」
「栞が運転すんのかよ!」
「そうよ! ねえ、お願い!」
「うーん」
これまで散々の事故を起こしたので、俺の命令で栞の運転は厳禁にしていた。
ターナー少将からの懇願もある。
但し、俺が付き添う場合には運転出来るようにしていた。
栞は酷い運転だが、本人はドライブが大好きだ。
「分かったよ。じゃあ、外に出てから交代な」
「うん!」
周りを見ると、みんなが目を伏せていた。
まあ、一緒に乗りたくないらしい。
常に護衛でくっついている桜花たちも、沈痛な顔でうつむいている。
一緒に行かざるを得ないことを覚悟している。
「じゃあ、久し振りに二人でドライブに行くかぁ!」
「うん!」
栞だけが嬉しそうな顔をした。
仕方ねぇ。
桜花たちがニコニコしていた。
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