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ネコ男 Ⅲ
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家に帰ってから、病院のタカさんに電話した。
こういうことは、早く報告しておいた方がいい。
「タカさん!」
「なんだ、何かあったのか?」
タカさんは丁度オペが終わった所らしい。
タイミングが良かった。
「実は……」
私は、今日渋谷で獅子丸という男と出会い、そいつがライカンスロープだったことを話した。
「千万組の野方さんから教えてもらって」
「なんで?」
「え、えーとー」
説明しにくい。
「お前! まさか渋谷で悪人狩りをしようとしたのか!」
「ごめんなさい!」
隣で真夜が笑っていた。
「まったくよー! それで教えてもらった奴がライカンスロープだったってか?」
「はい!」
「そいつは狂暴になってねぇんだな?」
「そうなんですよ! 20匹もネコ飼って可愛がってました!」
「そうか」
タカさんは信じてくれた。
「今日は6時に家に帰る。そいつを呼べるか?」
「はい、連絡します!」
「じゃあ、一度会ってみるかー。しかし、渋谷HELLでそんな奴がいたとはなぁ」
「他にもいるかもしれませんね?」
「そうだな。考えてもみなかったぜ」
「そうですよねー」
電話を切った。
5時を過ぎたので、食事の支度が始まっている。
今日はグリーンカレーだ。
「真夜も食べてく?」
「いいんですか! 石神家のカレーって美味しいんですよね!」
「うん!」
みんなでカレーを食べた。
絶品に美味しかった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
6時前に家に着いた。
獅子丸という男が来ているはずだ。
妖魔が身体に入ったライカンスロープとのことだったが、まあ、うちの子どもたちには危険は無い。
ガレージの前に、ハイエースが停めてあった。
獅子丸のものだろう。
玄関を開けると、ロボが飛んで来た。
いつもと違って、俺に必死に訴えている。
「なんだ?」
「にゃーにゃーにゃー!」
「?」
玄関に、でかい靴があった。
ロボを抱いて階段を上がると、小さな足音が一斉にした。
「?」
階段の上から、多数のネコが俺に向かってくる。
「おい!」
「にゃー!」
上に昇る途中からネコたちが俺の足元にまとわりつく。
「おい! なんだこりゃ!」
「タカさん!」
廊下もネコだらけだ。
でかい男がリヴィングから出て来た。
2メートルを超えている。
胸板も厚く広く、両腕も太い。
脚はジーンズを履いているが、パンパンに膨れ上がっている。
格闘家だ。
「石神さんですか!」
「おう、お前が獅子丸か?」
「はい! お会い出来て光栄です!」
「これ、お前のネコか?」
「そうです! 石神さん、ネコがお好きと聞いて全員連れて来ました!」
「なんとかしろ!」
「は、はい!」
ネコたちが俺にまとわりつき、前足で俺のズボンに昇ろうとする。
頭を押してやめさせようとするが、次から次に寄って来る。
獅子丸がネコたちを引き剥がそうとするが、数が多いのでどうにもならない。
「全員来い!」
俺が呼ぶと、子どもたちがみんな来てネコを離す。
「ロボ!」
ロボを廊下に降ろし、ロボが威嚇する。
ようやくネコたちがリヴィングへ戻った。
俺はその間に自分の部屋へ行き、着替えた。
タイガーストライプのコンバットスーツだ。
脱いだスーツの下を点検し、爪で引っ掻けられていないことを確認した。
躾はいいらしい。
「よう、待たせたな」
「いいえ!」
俺は食事をくれと言った。
「えーとですね」
「今日はグリーンカレーだろう?」
「それがですね。先ほど獅子丸さんに出しちゃって」
「あんだと!」
「え、すみません」
獅子丸の前にカレー皿があった。
「なんでこいつが喰ってんだよ!」
「急に呼び出して、夕飯がまだだと言うんで」
「お前よー」
「すぐ作ります!」
双子が慌ててキッチンに行く。
「あの、お替りもあったんですけど!」
「こいつが喰ったのか!」
「いえ、真夜がいたんで」
「……」
一人5杯以上喰ってるくせに、俺の分は残さねぇ奴らだ。
もう理屈ではない。
コーヒーを淹れさせ、獅子丸にも出した。
ロボはソファに行く。
知らないネコが嫌なのか。
それでも自分の縄張りに入れて威嚇しないのは、嫌いな奴らではないからだろう。
どのネコも非常に愛らしい。
また俺の周囲に寄って来て、俺のヒザに乗ろうとする。
「石神さん、ネコに好かれるんですね!」
「まあなー」
「こいつら、慣れるまで結構敏感なんですよ。俺の仲間も最初はダメで。家に来ると、みんな隠れて出て来ないんです」
「そうかよ」
「石神さんは初対面なのに、もうみんな夢中ですね!」
「いろいろあってなー」
1匹だけ、ずっと獅子丸の膝にいるネコがいた。
茶色の毛並みの美しいネコだった。
俺が見ていることに、獅子丸が気付いた。
「こいつはゴールドって言うんです」
「そうか。随分とお前が好きなんだな」
「はい。最初に一緒に暮らし始めた奴で」
「そうなのか」
ゴールドが俺を見ていた。
俺が呼ぶと、やっと近づいて来た。
他のネコが場所を開ける。
ゴールドが俺の膝に乗った。
「おう、獅子丸が大好きなんだな」
頭を撫でると、気持ちよさそうな顔をする。
「ゴールドが俺以外に懐くのは初めてですよ」
「そうか」
俺はゴールドを獅子丸の所へ戻した。
カレーが出来て来る。
俺は食べ始めた。
「獅子丸さんも、もう一杯如何ですか?」
「ほんとですか! ありがたく頂きます! 本当に美味いカレーだ!」
「エヘヘヘヘ!」
亜紀ちゃんが嬉しそうに笑い、獅子丸にカレーを出した。
「お替り」
「あ! もうありませんよ!」
「なんでだよ! 作り直したんだろう!」
「今、獅子丸さんが……」
「お前らぁ!」
「だって、タカさんいつもカレーは1杯しか食べないじゃないですか!」
「お前らがそれしか残してないんだろう!」
「「「「「あ!」」」」」
「……」
まあ、うちはカレーの呪いの家だ。
「あの、すいません」
獅子丸が謝った。
「いいよ!」
グリーンカレーは大好物なのに。
こういうことは、早く報告しておいた方がいい。
「タカさん!」
「なんだ、何かあったのか?」
タカさんは丁度オペが終わった所らしい。
タイミングが良かった。
「実は……」
私は、今日渋谷で獅子丸という男と出会い、そいつがライカンスロープだったことを話した。
「千万組の野方さんから教えてもらって」
「なんで?」
「え、えーとー」
説明しにくい。
「お前! まさか渋谷で悪人狩りをしようとしたのか!」
「ごめんなさい!」
隣で真夜が笑っていた。
「まったくよー! それで教えてもらった奴がライカンスロープだったってか?」
「はい!」
「そいつは狂暴になってねぇんだな?」
「そうなんですよ! 20匹もネコ飼って可愛がってました!」
「そうか」
タカさんは信じてくれた。
「今日は6時に家に帰る。そいつを呼べるか?」
「はい、連絡します!」
「じゃあ、一度会ってみるかー。しかし、渋谷HELLでそんな奴がいたとはなぁ」
「他にもいるかもしれませんね?」
「そうだな。考えてもみなかったぜ」
「そうですよねー」
電話を切った。
5時を過ぎたので、食事の支度が始まっている。
今日はグリーンカレーだ。
「真夜も食べてく?」
「いいんですか! 石神家のカレーって美味しいんですよね!」
「うん!」
みんなでカレーを食べた。
絶品に美味しかった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
6時前に家に着いた。
獅子丸という男が来ているはずだ。
妖魔が身体に入ったライカンスロープとのことだったが、まあ、うちの子どもたちには危険は無い。
ガレージの前に、ハイエースが停めてあった。
獅子丸のものだろう。
玄関を開けると、ロボが飛んで来た。
いつもと違って、俺に必死に訴えている。
「なんだ?」
「にゃーにゃーにゃー!」
「?」
玄関に、でかい靴があった。
ロボを抱いて階段を上がると、小さな足音が一斉にした。
「?」
階段の上から、多数のネコが俺に向かってくる。
「おい!」
「にゃー!」
上に昇る途中からネコたちが俺の足元にまとわりつく。
「おい! なんだこりゃ!」
「タカさん!」
廊下もネコだらけだ。
でかい男がリヴィングから出て来た。
2メートルを超えている。
胸板も厚く広く、両腕も太い。
脚はジーンズを履いているが、パンパンに膨れ上がっている。
格闘家だ。
「石神さんですか!」
「おう、お前が獅子丸か?」
「はい! お会い出来て光栄です!」
「これ、お前のネコか?」
「そうです! 石神さん、ネコがお好きと聞いて全員連れて来ました!」
「なんとかしろ!」
「は、はい!」
ネコたちが俺にまとわりつき、前足で俺のズボンに昇ろうとする。
頭を押してやめさせようとするが、次から次に寄って来る。
獅子丸がネコたちを引き剥がそうとするが、数が多いのでどうにもならない。
「全員来い!」
俺が呼ぶと、子どもたちがみんな来てネコを離す。
「ロボ!」
ロボを廊下に降ろし、ロボが威嚇する。
ようやくネコたちがリヴィングへ戻った。
俺はその間に自分の部屋へ行き、着替えた。
タイガーストライプのコンバットスーツだ。
脱いだスーツの下を点検し、爪で引っ掻けられていないことを確認した。
躾はいいらしい。
「よう、待たせたな」
「いいえ!」
俺は食事をくれと言った。
「えーとですね」
「今日はグリーンカレーだろう?」
「それがですね。先ほど獅子丸さんに出しちゃって」
「あんだと!」
「え、すみません」
獅子丸の前にカレー皿があった。
「なんでこいつが喰ってんだよ!」
「急に呼び出して、夕飯がまだだと言うんで」
「お前よー」
「すぐ作ります!」
双子が慌ててキッチンに行く。
「あの、お替りもあったんですけど!」
「こいつが喰ったのか!」
「いえ、真夜がいたんで」
「……」
一人5杯以上喰ってるくせに、俺の分は残さねぇ奴らだ。
もう理屈ではない。
コーヒーを淹れさせ、獅子丸にも出した。
ロボはソファに行く。
知らないネコが嫌なのか。
それでも自分の縄張りに入れて威嚇しないのは、嫌いな奴らではないからだろう。
どのネコも非常に愛らしい。
また俺の周囲に寄って来て、俺のヒザに乗ろうとする。
「石神さん、ネコに好かれるんですね!」
「まあなー」
「こいつら、慣れるまで結構敏感なんですよ。俺の仲間も最初はダメで。家に来ると、みんな隠れて出て来ないんです」
「そうかよ」
「石神さんは初対面なのに、もうみんな夢中ですね!」
「いろいろあってなー」
1匹だけ、ずっと獅子丸の膝にいるネコがいた。
茶色の毛並みの美しいネコだった。
俺が見ていることに、獅子丸が気付いた。
「こいつはゴールドって言うんです」
「そうか。随分とお前が好きなんだな」
「はい。最初に一緒に暮らし始めた奴で」
「そうなのか」
ゴールドが俺を見ていた。
俺が呼ぶと、やっと近づいて来た。
他のネコが場所を開ける。
ゴールドが俺の膝に乗った。
「おう、獅子丸が大好きなんだな」
頭を撫でると、気持ちよさそうな顔をする。
「ゴールドが俺以外に懐くのは初めてですよ」
「そうか」
俺はゴールドを獅子丸の所へ戻した。
カレーが出来て来る。
俺は食べ始めた。
「獅子丸さんも、もう一杯如何ですか?」
「ほんとですか! ありがたく頂きます! 本当に美味いカレーだ!」
「エヘヘヘヘ!」
亜紀ちゃんが嬉しそうに笑い、獅子丸にカレーを出した。
「お替り」
「あ! もうありませんよ!」
「なんでだよ! 作り直したんだろう!」
「今、獅子丸さんが……」
「お前らぁ!」
「だって、タカさんいつもカレーは1杯しか食べないじゃないですか!」
「お前らがそれしか残してないんだろう!」
「「「「「あ!」」」」」
「……」
まあ、うちはカレーの呪いの家だ。
「あの、すいません」
獅子丸が謝った。
「いいよ!」
グリーンカレーは大好物なのに。
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