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寮歌祭 暗殺戦 Ⅱ

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 俺は御堂と一緒に小島将軍の所へ行った。

 「妖魔が出ました。俺たちが迎撃しますがご注意下さい」
 「分かった。お前たちがいれば安心だろう」
 「お任せ下さい」

 俺は外の様子を見ようと会場を出ようとした。
 その瞬間、強烈なプレッシャーを感じた。
 後ろを振り向くと、5人が小島将軍を襲い、2人が御堂を襲おうとしていた。

 「御堂!」

 襲撃犯は人間の形をしていた。
 だが動きが明らかに違う。
 高速で移動している。
 
 「バイオノイドか!」

 御堂を襲った2体はダフニスとクロエに阻まれた。
 完成体のバイオノイドも、特別に作られたダフニスとクロエには及ばない。
 腰の「カサンドラ」で両断されていった。

 しかし小島将軍の護衛ではバイオノイドは斃せない。
 俺はそちらへ向かったが、4人の護衛は蹴散らされた。
 離れた位置から「震花」と思しき攻撃。
 しかし霧散するはずが、二人が吹っ飛ばされたが肉体は残っている。
 接近しての「螺旋花」。
 それも肉体はそのままで、吹っ飛ばされていく。
 だがその中で1体を銃で沈黙させたのは流石だった。

 どうして無事なのか?

 残る4体が小島将軍を襲う。
 あの人を喪っては、大変なことになる。
 「花岡」を使いたかったが、生憎大勢の人間がいて射線を確保出来ない。
 空中へ飛んで、「槍雷」で2体を破壊する。
 残る2体が小島将軍に迫った。
 俺は射線上の人間を巻き込む覚悟をした。

 小島将軍の身体がブレた。

 「!」

 目の前に迫ったバイオノイドが四散した。

 「なんだ!」

 小島将軍が立っていた。
 2人の護衛が起き上がり、小島将軍に近寄る。
 バイオノイドの攻撃を受けて、生きているとは思わなかった。
 1人が他の護衛の状態を見ていた。
 そちらも息はあるようだった。
 俺も近くに駆け寄った。

 「ご無事ですか!」
 「ああ、他愛もない連中だな」
 「でも、バイオノイドですよ!」
 「そうだったか」

 小島将軍は平然としている。

 「今のは「無影斬」ですね?」
 「そういう技だったか」
 「そうですよ! 世の中には知られていない武術のはずですけど!」
 「そんなもの。わしも長いこと生きているからな」
 「そういう問題ですか!」

 俺が笑うと、小島将軍も大笑した。
 いろいろと聞きたかったが、小島将軍が話すわけはないと思った。
 またこの人の底知れぬものを見てしまった。
 護衛たちが無事なのもおかしい。

 「他に犠牲者はいないようだな」
 「はい。まっすぐに小島将軍に向かって来ましたから」
 
 だからこそ、接近を許してしまった。

 「あいつら、会場に溶け込んでいたな」
 「はい。俺も気付きませんでした」
 「そういうことが出来るということだ。忘れるな」
 「はい!」

 500名以上の人間が集まっている。
 お互いに知らない同士も多い。
 しかし、小島将軍が俺に言った。

 「お前、本当に気付いていなかったのか?」
 「え?」
 「お前もまだまだだな」
 「!」

 この人は気付いていたというのか。
 どういうことだろう。
 日本を支配している人間だとは知っている。
 俺が知っている限り、最高度の威圧が出来る人だとも分かっている。
 だから、何らかの武術に通じているだろうことは予想していた。
 所作でも只者ではないとは分かっていたが、まさか神宮寺家の「無影斬」が使えるとは。
 そして、俺が気付かなかった気配を最初から感じていたのか。

 「小島将軍は、何者なんですか!」
 「ワハハハハハ!」

 そういえば、以前に吉野の山中で虎白さんが「無影斬」を使っていて驚いたことを思い出した。
 一子相伝の武術のはずだが、案外外でも知られているのだろうか。
 今度、虎白さんに聞いてみよう。

 寮歌祭は小島将軍の指示で、その後も続けられた。
 俺と子どもたちがバイオノイドを運び、駆けつけた早乙女たちに引き渡した。
 妖魔はすぐに子どもたちが始末したようだ。
 やはりそれほど強い連中では無かった。
 明らかに、俺たちを外へおびき出す陽動だったのだろう。

 小島将軍にまた呼ばれた。

 「おい、「カサンドラ」を50振りほど用立ててくれ」
 「はい?」
 「俺の護衛に持たせる。崋山家の銃を持たせているが、どうも生身の相手では通用せんな」
 「崋山家!」
 「それと「黒笛」か。あれも何振りかくれ」
 「なんで知ってるんですかぁ!」
 「どれだけ用意出来る?」

 全然俺の話を聞いてくれない。
 まあ、昔からそうだが。
 しかも、「カサンドラ」の数についてはまったく問題視していない。
 反対に、「黒笛」は数に限りがあることまで知っている。

 「今、お渡し出来るのは5振りほどしかありません」
 「それでいい。すぐにくれ」
 「分かりましたぁ!」

 俺は一旦会場を抜け出し、家から「黒笛」を持って来た。
 小島将軍は別に部屋を用意し、そこで検めた。

 「おお、いい刀だな」
 「大妖魔が作ったようです。使う人間にもよりますが、大妖魔の力が一部使えるようで」
 「そうだな。刀身の長さも随分と伸びるな」
 「分かるんですか!」
 「分かる。それに刃筋も幾本も出来る。なるほどな、曲げることも変形させることも出来るか」
 「えぇー!」

 また驚いた。
 もしかしたら、虎白さんたちよりも使えるのかもしれない。
 そんなはずはないのだが。

 「あの、「黒笛」のことはどこで御知りになりました?」
 「お前が石神家に送っただろう?」
 「はい!」

 だからそれをどうして知っているのかと思ったが、それ以上は怖くて聞けなかった。

 会場に戻ると、寮歌祭の最後の方だった。
 小島将軍は戻らずに帰って行った。
 後日、指定の場所に「カサンドラ」を用意することを約束した。
 会場に戻って、御堂と話した。

 「石神、とんでもないことになったな」
 「まーなー」
 「小島将軍って、本当に何者なんだ?」
 「俺も知りてぇよ」

 無影斬が使えて、崋山家の幻の銃を持っていて、「カサンドラ」と「黒笛」を知っている。
 本当に何者なのか。
 それに、あの護衛たちは絶対に「花岡」が使える。
 少なくとも「暗月花」で、バイオノイドの攻撃をレジストしたはずだ。
 ならば、やはり小島将軍も「花岡」に通じているのだろうか?
 「カサンドラ」は自衛隊にも卸しているので、まあ分かる。
 しかし、「黒笛」はブランの後鬼と石神家本家にしか渡していない。
 俺の子どもたちにも絶対に話すなと言ってある。
 蓮花研究所から漏れるはずもないのだ。




 夕方、家から虎白さんに電話した。

 「よう!」
 「はい! 当主の高虎です!」
 「みんな元気かよ?」
 「はい! お陰様で!」

 俺は虎白さんに、小島将軍のことを知っているか聞いてみた。

 「ああ、日本の頂点にいる人だろ? どうかしたのかよ」
 「いえ、ちょっと縁が会って若い頃から会ったりしてるんですが」
 「ほんとかよ!」
 「虎白さんも会ったことがありますか?」
 「あるわきゃねぇだろう! 俺たちは刀振り回してるだけだぞ!」
 「そうですよね!」
 
 俺は小島将軍が「黒笛」のことを知っていたと話した。

 「俺らは知らねぇよ。もちろん誰にも話してねぇしな。お前、疑ってんの?」
 「とんでもない!」

 虎白さんの機嫌を損ねたことは分かった。
 でも、もう一つだけ聞かねばならない。

 「あの、虎白さんって、前に神宮寺家の「無影斬」を使ってましたよね」
 「あー、あれか。だからあんだよ!」
 「いえ! どこで覚えたのかなーって」
 「怒貪虎さんに教わったんだよ。剣士はみんな使えっぞ?」
 「そうだったんですか!」
 「お前、何が言いてぇの?」
 「いえ! 小島将軍も今日使ってたんで!」
 「そうなのかよ」
 「はい!」
 
 「だからなんだってんだぁー!」
 「すみませんでしたぁー!」

 俺はひたすら謝り、近々また戦場を用意する約束をさせられた。
 なんとか勘弁してもらった。

 ふぅー。




 それにしても、小島将軍って何者なんだ?
 怒貪虎さんと知り合いということであれば、全部分かる。
 きっとそうなのだろう。
 怒貪虎さんから「無影斬」を教わり、また「黒笛」のことも聞いたということか。
 しかし、あの「ケロケロ」が分かるんだなー。

 ちょっと羨ましい。
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