2,056 / 2,840
挿話: 真夜と真昼のNY観光 Ⅱ
しおりを挟む
「ジャンニーニさん、やっぱり「ドラコ」の連中が狙ってるらしいですよ」
ロダーリが俺に言った。
「ドラコ」は中国系マフィア14Kの組織だ。
最近になって構成員を増やし、俺のシマを荒らし始めた。
気の強い連中で、全米最大の組織となった俺たちに、真っ向から逆らってくる。
「ケッ! まったく面倒な奴らだな」
「まったく。どうします、またセイントに頼みますか?」
「いや、「ドラコ」程度ならうちでやれるだろう」
「はい、じゃあアラスカに行ってる連中を呼び戻しますね」
「ああ、トラには俺から言っておく」
「分かりました」
「ドラコ」は総勢200名ほどの組だ。
但し、武器は結構持っているらしい。
本格的にニューヨークで拠点を作るつもりのようだった。
これまで、うちの息の掛かった店が襲撃されていた。
被害はそれほどでもないが、恣意行為のつもりなのだろう。
俺たちが本格的に動けば全面戦争だ。
それも辞さないつもりだろうが、俺たちがケツをまくるとでも思ってやがるのだろう。
マフィアなど、自分たちの敵ではないと。
いいだろう、思い知らせてやる。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
エミーのお店はハーレムの奥にあるはずだった。
蜘蛛子さんは場所を知っているようで、迷い無く進んで行った。
やはりここでも物凄く注目を浴びた。
エミーのお店は小奇麗な建物だった。
テラスがあり、大きなガラスで明るい店内が見える。
「エミー!」
料理を運んでいたエミーに声を掛けた。
「マヤ! マヒルも! 本当に来てくれたのね!」
「うん! 亜紀さんに連れて来てもらったの」
「そうなんだ! どうぞ入って!」
昼時で結構な客が入っていたが、エミーが話しかけてテーブルを空けてくれた。
私たちが友達だと紹介してくれ、馴染みの客たちが歓迎してくれた。
後から入って来た蜘蛛子さんの姿に驚く。
「あ、あのね! 亜紀さんが付けてくれたガードなの!」
「そ、そうなんだ」
蜘蛛子さんを紹介し、エミーも客たちも驚いてはいたが何も言わなかった。
「日本って、ロボットの技術が進んでるよね」
「そ、そうなんだよね!」
そういうことになった。
しかし、蜘蛛子さんが隅にいた客に近づいて行った。
東洋系の男だった。
「おい、お前」
「なんだ!」
「ガンを持っているな?」
「なに?」
「出せ」
「何だ、この野郎!」
蜘蛛子さんが脚で男の方を刺す。
「グェェー!」
みんな驚いて立ち上がった。
蜘蛛子さんはそのまま足で男の上着を斬り裂く。
脇に拳銃を吊っていた。
「出て行け。見逃してやる」
「てめぇ! 俺は「ドラコ」の人間だぞ!」
「だからどうした。死ぬのか?」
「!」
男の人は蜘蛛子さんの本気が分かった。
他の客は「ドラコ」と聞いて騒いでいた。
男の人が出て行くと、みんなが蜘蛛子さんの所へ来る。
「おい、あんたスゲェな!」
「「ドラコ」ってよ、この辺じゃ最近暴れ回ってて手が付けられねぇんだ」
蜘蛛子さんは微笑んで食事を続けるように言った。
「マヤ! あんたのボディガード、凄いね!」
「うん、亜紀さんが付けてくれたんだ」
「そうなんだ! ああ、何を食べる?」
「お勧めは?」
「Tボーンステーキ!」
「じゃあ、それ!」
「マヒルちゃんも同じでいい?」
「はい!」
エミーは笑って厨房に行った。
Tボーンステーキは本当に美味しかった。
私たちは他にピザも頼み、満腹になった。
食後のコーヒーを飲んでいると、蜘蛛子さんが言った。
「どうやら、集まってきているようです」
「え?」
「御安心下さい。今「スズメバチ」を集めました。皆さんはそのままお寛ぎ下さい」
「はい?」
その時銃声が響いた。
みんなその音が何なのか気付いていた。
しかし、こちらへは一発も来ない。
外を見ると、無数の50センチほどの物体が飛んでいて、通りの男たちを襲撃していた。
叫び声があちこちで聞こえる。
「応援を呼べ!」
「なんだ、こいつら!」
30人程いたようだが、全員地面に倒れた。
ほんの30秒ほどのことだ。
「また来ましたよ。今度は多い」
さっきよりも外の悲鳴が多く聞こえ、通りが倒れた男たちで埋まって行く。
「ああ、あれは私が行きましょう」
蜘蛛子さんが笑顔で外へ出て行った。
重機関銃を装備した4WDが向かってくる。
蜘蛛子さんが超高速で飛び、車両ごと粉砕した。
「お姉ちゃん!」
「……」
全部終わった。
200名近い人間が倒れていた。
黒塗りの車が猛スピードで来た。
蜘蛛子さんは動かない。
エミーのお店の前で車が停まり、4人の男の人たちが駈け込んで来た。
「エミー! 無事か!」
「ジャンニーニさん! ロダーリさんも!」
「さっきこの店が襲われているって連絡が入った! おい、怪我はないか!」
「はい、大丈夫です! マヤさんたちのボディガードの方が全部」
「あの奇妙な女か! あ、おい、お前、トラの知り合いだよな?」
「は、はい、真夜です。こっちは妹の真昼です!」
ジャンニーニさんが大笑いした。
前にお会いしているので、すぐに思い出してくれた。
「なんだ、トラんとこの人間がいたのか。じゃあ、納得だぜ!」
「はい?」
「あんなチンピラはよ、何のこともねぇな」
「はぁ」
いや、十分に驚いてるんですけどー!
「すぐに警察も来る。あんたらはもう行っていいよ。あとは俺らで片付ける」
「で、でも!」
「「虎」の軍がいたって言えば、それで終わりだよ」
「そうなんですか!」
私と真昼はエミーに会計を頼んだ。
「おい、いいよ! 俺のおごりだ!」
「え、でも!」
ジャンニーニさんがまた大笑いした。
「丁度よ、「ドラコ」の連中には手を焼いていたんだ。お前らが片付けてくれたんで助かったぜ」
「そうなんですか?」
何にもしてないんですけどー!
「さあ、行きなよ」
「はい! すいませんがお願いします!」
私と真昼が蜘蛛子さんの背中に乗るのを見て、ジャンニーニさんたちがまた大笑いしていた。
「お前ら! 最高だな!」
「じゃあ、また! 本当にありがとうございました!」
「いいって!」
帰る途中で何台ものパトカーとすれ違った。
多くの警官たちが私たちに敬礼をして行った。
えーと、一応良いことをしたのかな?
ロックハート家の夕飯の時に、亜紀さんに話すと大笑いされた。
「あー、私も行けばよかったー!」
「そうなんです?」
よく分からないが、亜紀さんが楽しそうで真昼も喜んでいたからそれでいいか。
ロダーリが俺に言った。
「ドラコ」は中国系マフィア14Kの組織だ。
最近になって構成員を増やし、俺のシマを荒らし始めた。
気の強い連中で、全米最大の組織となった俺たちに、真っ向から逆らってくる。
「ケッ! まったく面倒な奴らだな」
「まったく。どうします、またセイントに頼みますか?」
「いや、「ドラコ」程度ならうちでやれるだろう」
「はい、じゃあアラスカに行ってる連中を呼び戻しますね」
「ああ、トラには俺から言っておく」
「分かりました」
「ドラコ」は総勢200名ほどの組だ。
但し、武器は結構持っているらしい。
本格的にニューヨークで拠点を作るつもりのようだった。
これまで、うちの息の掛かった店が襲撃されていた。
被害はそれほどでもないが、恣意行為のつもりなのだろう。
俺たちが本格的に動けば全面戦争だ。
それも辞さないつもりだろうが、俺たちがケツをまくるとでも思ってやがるのだろう。
マフィアなど、自分たちの敵ではないと。
いいだろう、思い知らせてやる。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
エミーのお店はハーレムの奥にあるはずだった。
蜘蛛子さんは場所を知っているようで、迷い無く進んで行った。
やはりここでも物凄く注目を浴びた。
エミーのお店は小奇麗な建物だった。
テラスがあり、大きなガラスで明るい店内が見える。
「エミー!」
料理を運んでいたエミーに声を掛けた。
「マヤ! マヒルも! 本当に来てくれたのね!」
「うん! 亜紀さんに連れて来てもらったの」
「そうなんだ! どうぞ入って!」
昼時で結構な客が入っていたが、エミーが話しかけてテーブルを空けてくれた。
私たちが友達だと紹介してくれ、馴染みの客たちが歓迎してくれた。
後から入って来た蜘蛛子さんの姿に驚く。
「あ、あのね! 亜紀さんが付けてくれたガードなの!」
「そ、そうなんだ」
蜘蛛子さんを紹介し、エミーも客たちも驚いてはいたが何も言わなかった。
「日本って、ロボットの技術が進んでるよね」
「そ、そうなんだよね!」
そういうことになった。
しかし、蜘蛛子さんが隅にいた客に近づいて行った。
東洋系の男だった。
「おい、お前」
「なんだ!」
「ガンを持っているな?」
「なに?」
「出せ」
「何だ、この野郎!」
蜘蛛子さんが脚で男の方を刺す。
「グェェー!」
みんな驚いて立ち上がった。
蜘蛛子さんはそのまま足で男の上着を斬り裂く。
脇に拳銃を吊っていた。
「出て行け。見逃してやる」
「てめぇ! 俺は「ドラコ」の人間だぞ!」
「だからどうした。死ぬのか?」
「!」
男の人は蜘蛛子さんの本気が分かった。
他の客は「ドラコ」と聞いて騒いでいた。
男の人が出て行くと、みんなが蜘蛛子さんの所へ来る。
「おい、あんたスゲェな!」
「「ドラコ」ってよ、この辺じゃ最近暴れ回ってて手が付けられねぇんだ」
蜘蛛子さんは微笑んで食事を続けるように言った。
「マヤ! あんたのボディガード、凄いね!」
「うん、亜紀さんが付けてくれたんだ」
「そうなんだ! ああ、何を食べる?」
「お勧めは?」
「Tボーンステーキ!」
「じゃあ、それ!」
「マヒルちゃんも同じでいい?」
「はい!」
エミーは笑って厨房に行った。
Tボーンステーキは本当に美味しかった。
私たちは他にピザも頼み、満腹になった。
食後のコーヒーを飲んでいると、蜘蛛子さんが言った。
「どうやら、集まってきているようです」
「え?」
「御安心下さい。今「スズメバチ」を集めました。皆さんはそのままお寛ぎ下さい」
「はい?」
その時銃声が響いた。
みんなその音が何なのか気付いていた。
しかし、こちらへは一発も来ない。
外を見ると、無数の50センチほどの物体が飛んでいて、通りの男たちを襲撃していた。
叫び声があちこちで聞こえる。
「応援を呼べ!」
「なんだ、こいつら!」
30人程いたようだが、全員地面に倒れた。
ほんの30秒ほどのことだ。
「また来ましたよ。今度は多い」
さっきよりも外の悲鳴が多く聞こえ、通りが倒れた男たちで埋まって行く。
「ああ、あれは私が行きましょう」
蜘蛛子さんが笑顔で外へ出て行った。
重機関銃を装備した4WDが向かってくる。
蜘蛛子さんが超高速で飛び、車両ごと粉砕した。
「お姉ちゃん!」
「……」
全部終わった。
200名近い人間が倒れていた。
黒塗りの車が猛スピードで来た。
蜘蛛子さんは動かない。
エミーのお店の前で車が停まり、4人の男の人たちが駈け込んで来た。
「エミー! 無事か!」
「ジャンニーニさん! ロダーリさんも!」
「さっきこの店が襲われているって連絡が入った! おい、怪我はないか!」
「はい、大丈夫です! マヤさんたちのボディガードの方が全部」
「あの奇妙な女か! あ、おい、お前、トラの知り合いだよな?」
「は、はい、真夜です。こっちは妹の真昼です!」
ジャンニーニさんが大笑いした。
前にお会いしているので、すぐに思い出してくれた。
「なんだ、トラんとこの人間がいたのか。じゃあ、納得だぜ!」
「はい?」
「あんなチンピラはよ、何のこともねぇな」
「はぁ」
いや、十分に驚いてるんですけどー!
「すぐに警察も来る。あんたらはもう行っていいよ。あとは俺らで片付ける」
「で、でも!」
「「虎」の軍がいたって言えば、それで終わりだよ」
「そうなんですか!」
私と真昼はエミーに会計を頼んだ。
「おい、いいよ! 俺のおごりだ!」
「え、でも!」
ジャンニーニさんがまた大笑いした。
「丁度よ、「ドラコ」の連中には手を焼いていたんだ。お前らが片付けてくれたんで助かったぜ」
「そうなんですか?」
何にもしてないんですけどー!
「さあ、行きなよ」
「はい! すいませんがお願いします!」
私と真昼が蜘蛛子さんの背中に乗るのを見て、ジャンニーニさんたちがまた大笑いしていた。
「お前ら! 最高だな!」
「じゃあ、また! 本当にありがとうございました!」
「いいって!」
帰る途中で何台ものパトカーとすれ違った。
多くの警官たちが私たちに敬礼をして行った。
えーと、一応良いことをしたのかな?
ロックハート家の夕飯の時に、亜紀さんに話すと大笑いされた。
「あー、私も行けばよかったー!」
「そうなんです?」
よく分からないが、亜紀さんが楽しそうで真昼も喜んでいたからそれでいいか。
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~
みつまめ つぼみ
キャラ文芸
ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。
彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。
そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!
彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。
離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。
香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる