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挿話: 真夜と真昼のNY観光 Ⅱ

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 「ジャンニーニさん、やっぱり「ドラコ」の連中が狙ってるらしいですよ」

 ロダーリが俺に言った。
 「ドラコ」は中国系マフィア14Kの組織だ。
 最近になって構成員を増やし、俺のシマを荒らし始めた。
 気の強い連中で、全米最大の組織となった俺たちに、真っ向から逆らってくる。

 「ケッ! まったく面倒な奴らだな」
 「まったく。どうします、またセイントに頼みますか?」
 「いや、「ドラコ」程度ならうちでやれるだろう」
 「はい、じゃあアラスカに行ってる連中を呼び戻しますね」
 「ああ、トラには俺から言っておく」
 「分かりました」

 「ドラコ」は総勢200名ほどの組だ。
 但し、武器は結構持っているらしい。
 本格的にニューヨークで拠点を作るつもりのようだった。
 これまで、うちの息の掛かった店が襲撃されていた。
 被害はそれほどでもないが、恣意行為のつもりなのだろう。
 俺たちが本格的に動けば全面戦争だ。
 それも辞さないつもりだろうが、俺たちがケツをまくるとでも思ってやがるのだろう。
 マフィアなど、自分たちの敵ではないと。

 いいだろう、思い知らせてやる。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 エミーのお店はハーレムの奥にあるはずだった。
 蜘蛛子さんは場所を知っているようで、迷い無く進んで行った。
 やはりここでも物凄く注目を浴びた。

 エミーのお店は小奇麗な建物だった。
 テラスがあり、大きなガラスで明るい店内が見える。

 「エミー!」

 料理を運んでいたエミーに声を掛けた。

 「マヤ! マヒルも! 本当に来てくれたのね!」
 「うん! 亜紀さんに連れて来てもらったの」
 「そうなんだ! どうぞ入って!」

 昼時で結構な客が入っていたが、エミーが話しかけてテーブルを空けてくれた。
 私たちが友達だと紹介してくれ、馴染みの客たちが歓迎してくれた。
 後から入って来た蜘蛛子さんの姿に驚く。

 「あ、あのね! 亜紀さんが付けてくれたガードなの!」
 「そ、そうなんだ」

 蜘蛛子さんを紹介し、エミーも客たちも驚いてはいたが何も言わなかった。

 「日本って、ロボットの技術が進んでるよね」
 「そ、そうなんだよね!」

 そういうことになった。
 しかし、蜘蛛子さんが隅にいた客に近づいて行った。
 東洋系の男だった。

 「おい、お前」
 「なんだ!」
 「ガンを持っているな?」
 「なに?」
 「出せ」
 「何だ、この野郎!」

 蜘蛛子さんが脚で男の方を刺す。

 「グェェー!」

 みんな驚いて立ち上がった。
 蜘蛛子さんはそのまま足で男の上着を斬り裂く。
 脇に拳銃を吊っていた。

 「出て行け。見逃してやる」
 「てめぇ! 俺は「ドラコ」の人間だぞ!」
 「だからどうした。死ぬのか?」
 「!」

 男の人は蜘蛛子さんの本気が分かった。
 他の客は「ドラコ」と聞いて騒いでいた。
 男の人が出て行くと、みんなが蜘蛛子さんの所へ来る。

 「おい、あんたスゲェな!」
 「「ドラコ」ってよ、この辺じゃ最近暴れ回ってて手が付けられねぇんだ」
 
 蜘蛛子さんは微笑んで食事を続けるように言った。

 「マヤ! あんたのボディガード、凄いね!」
 「うん、亜紀さんが付けてくれたんだ」
 「そうなんだ! ああ、何を食べる?」
 「お勧めは?」
 「Tボーンステーキ!」
 「じゃあ、それ!」
 「マヒルちゃんも同じでいい?」
 「はい!」

 エミーは笑って厨房に行った。




 Tボーンステーキは本当に美味しかった。
 私たちは他にピザも頼み、満腹になった。

 食後のコーヒーを飲んでいると、蜘蛛子さんが言った。

 「どうやら、集まってきているようです」
 「え?」
 「御安心下さい。今「スズメバチ」を集めました。皆さんはそのままお寛ぎ下さい」
 「はい?」

 その時銃声が響いた。
 みんなその音が何なのか気付いていた。
 しかし、こちらへは一発も来ない。
 外を見ると、無数の50センチほどの物体が飛んでいて、通りの男たちを襲撃していた。
 叫び声があちこちで聞こえる。

 「応援を呼べ!」
 「なんだ、こいつら!」

 30人程いたようだが、全員地面に倒れた。
 ほんの30秒ほどのことだ。
 
 「また来ましたよ。今度は多い」

 さっきよりも外の悲鳴が多く聞こえ、通りが倒れた男たちで埋まって行く。

 「ああ、あれは私が行きましょう」

 蜘蛛子さんが笑顔で外へ出て行った。
 重機関銃を装備した4WDが向かってくる。
 蜘蛛子さんが超高速で飛び、車両ごと粉砕した。

 「お姉ちゃん!」
 「……」

 全部終わった。
 200名近い人間が倒れていた。

 黒塗りの車が猛スピードで来た。
 蜘蛛子さんは動かない。
 エミーのお店の前で車が停まり、4人の男の人たちが駈け込んで来た。

 「エミー! 無事か!」
 「ジャンニーニさん! ロダーリさんも!」
 「さっきこの店が襲われているって連絡が入った! おい、怪我はないか!」
 「はい、大丈夫です! マヤさんたちのボディガードの方が全部」
 「あの奇妙な女か! あ、おい、お前、トラの知り合いだよな?」
 「は、はい、真夜です。こっちは妹の真昼です!」
 
 ジャンニーニさんが大笑いした。
 前にお会いしているので、すぐに思い出してくれた。

 「なんだ、トラんとこの人間がいたのか。じゃあ、納得だぜ!」
 「はい?」
 「あんなチンピラはよ、何のこともねぇな」
 「はぁ」

 いや、十分に驚いてるんですけどー!

 「すぐに警察も来る。あんたらはもう行っていいよ。あとは俺らで片付ける」
 「で、でも!」
 「「虎」の軍がいたって言えば、それで終わりだよ」
 「そうなんですか!」

 私と真昼はエミーに会計を頼んだ。

 「おい、いいよ! 俺のおごりだ!」
 「え、でも!」

 ジャンニーニさんがまた大笑いした。

 「丁度よ、「ドラコ」の連中には手を焼いていたんだ。お前らが片付けてくれたんで助かったぜ」
 「そうなんですか?」

 何にもしてないんですけどー!

 「さあ、行きなよ」
 「はい! すいませんがお願いします!」

 私と真昼が蜘蛛子さんの背中に乗るのを見て、ジャンニーニさんたちがまた大笑いしていた。

 「お前ら! 最高だな!」
 「じゃあ、また! 本当にありがとうございました!」
 「いいって!」





 帰る途中で何台ものパトカーとすれ違った。
 多くの警官たちが私たちに敬礼をして行った。

 えーと、一応良いことをしたのかな?

 ロックハート家の夕飯の時に、亜紀さんに話すと大笑いされた。

 「あー、私も行けばよかったー!」
 「そうなんです?」

 よく分からないが、亜紀さんが楽しそうで真昼も喜んでいたからそれでいいか。
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