2,052 / 2,840
挿話: 蓼科夫妻のNY見物
しおりを挟む
朝食の会場は非常に賑やかだった。
石神の大勢の下良い仲間が集まり、俺や静子の所へみんなが挨拶に来てくれる。
「花岡さん、また一段と綺麗になったね」
「まあ! 院長先生、ありがとうございます! でも院長先生たちもお若くなりましたよね?」
「そうかな」
「そうですよ! 前にお会いした時も思いましたけど、また一段と」
「石神のお陰かな」
「アレですよね?」
「うん。アレのもっと効能の上がるものが出来たと言ってな。二人で口にしたんだ」
「それで!」
花岡さんと子どもの士王君、それに桜花さんたちと一緒のテーブルだ。
「士王君もしっかりしてきたね」
「はい! もう歩き出したんで、毎日大変です」
「こないだレストランで食事をしてたら、いつの間にか知らない女性のテーブルに行ってしまって」
桜花さんが話してくれた。
「あれは困ったよねー」
「何があったんだ?」
「金髪のカナダ人の女性だったんですけどね。オッパイが大きくて」
「ああ!」
「女性の膝に乗って、胸を……」
「ワハハハハハハ!」
士王君は女性の胸が大好きだ。
静子もやられた。
「その女性は笑ってくれてましたけどね。説明が大変で」
「コンピューター技師の方だったんですけど。「虎スパ」の招待券を差し上げたら喜んでくれまして」
「そうだったか」
「虎スパ」は、花岡さんの提案で出来た浴場施設らしい。
俺は行ったことは無いが、日本でも人気の、様々な風呂が体験できるもののようだ。
「あの、院長先生。本当に私たちと一緒にニューヨークを周りませんか?」
花岡さんが気を遣ってくれる。
でも、俺たちのような年寄りと一緒では楽しめないだろう。
「いや、静子と二人でのんびりと周るよ。石神がガードと案内の人間を手配してくれたしな」
「そうですか」
石神が、それぞれの招待客が楽しめるように添乗員を大勢手配してくれた。
事前に行きたい場所などを相談し、万事調整してくれている。
俺たちはマウントサイナイ病院の視察を頼んでいた。
全米で最高峰の病院だ。
新たにアラスカでの病院長就任の前に、海外の病院を見ておきたかった。
その他は、石神の勧めでニューヨーク近代美術館に行くことにしている。
大きな建物なので、石神が見ておくといいという場所も聞いた。
ガードに着く人たちに任せておけば大丈夫ということだった。
ずっと車で案内してくれるそうだ。
部屋で待っていると、二人の女性が迎えに来た。
「ルーシーです!」
「ハーマイオニーです!」
身長175センチの外国人の双子の女性のようだった。
キラキラの銀色のストレートの長髪。
目の色がルーシーさんが空色で、ハーマイオニーさんがピンクだった。
ピンクの瞳は珍しい。
「ルーとハーって呼んで下さいね!」
「皇紀様とはフィリピンで親しくさせていただいていました!」
それで分かった。
人間にしか見えないが、この二人は石神が作ったデュールゲリエなのだ。
「ルーちゃんとハーちゃんか! そうか、じゃあ今日は一日お願いします」
「「はい!」」
明るい性格のようで、静子も楽しそうだ。
二人に連れられて、俺たちはホテルの地下の駐車場へ向かった。
「この車です。ベントレーの「FLYING SPUR MULLINER W12」というモデルになります」
「へ、へぇ」
紫色の大きな車だった。
俺がいつも乗っているダイムラー・ジャガーよりも大きく見える。
ルーちゃんとハーちゃんが後ろのドアを開けてくれた。
「「どうぞ!」」
静子と二人で乗り込んだ。
やはりシートが素晴らしい。
「じゃあ、最初はマウントサイナイ病院で宜しいですね?」
「ああ、宜しく頼むよ」
「「はい!」」
ルーちゃんが嬉しそうに発進させた。
車の中で、二人からいろいろ話し掛けられた。
フィリピンでの皇紀君の活躍や日常などで、楽しい話ばかりだった。
静子もすぐに打ち解けて一緒に話して笑っていた。
「石神様から、蓼科様たちをご案内するように命じられて、本当に嬉しかったんです!」
「それはどうしてだい?」
「だって! 石神様が最も尊敬して敬愛されているお二人ですよ! 最高の栄誉じゃないですか!」
「そんなことはないよ」
でもそう言われて嬉しかった。
石神が言っていた。
デュールゲリエは純粋なのだと。
だから二人が本当に喜んで俺たちを案内してくれていることが分かった。
石神が二人に話したことも、その通りなのだろう。
だから嬉しかった。
「あ! どこか行きたい場所がありましたら、いつでも言って下さいね!」
「ニューヨークのことは大体把握してます! 行けない場所は多分殆どないですからね!」
「分かった、ありがとう」
「ホワイトハウス、行っときます?」
「いや、そこはいいよ」
「「ワハハハハハ!」」
本当に行けるのか。
デュールゲリエは大勢いるが、ほとんどは画一的な鏡面仕上げの頭部だ。
ルーちゃんとハーちゃんのような人間的なタイプは「ユニーク・モデル」と言うらしい。
「でも、他のデュールゲリエも感情はあるんですよ」
「最初は違いましたけど、今は全て会話が出来るようになっています」
「そうなのか」
知らなかった。
石神と蓮花さんがデュールゲリエを本当の仲間だと思っている証だろう。
「オッパイもついてますよー!」
「士王さんに気を付けろと言われてます!」
俺と静子で笑った。
マウントサイナイ病院に着き、玄関で案内してくれる人間が待っていた。
サイモン・ガーナーという副病院長らしい。
俺は名刺を交換して、今日の礼を言った。
「「タイガー・ホール」の方をお迎え出来て名誉に思っております。何なりと仰って下さい」
「ありがとうございます。お世話になります」
俺は英語で話しているが、静子にルーちゃんたちが同時通訳をしてくれていた。
静子には退屈かもしれないが、ルーちゃんたちがいろいろ話し掛けてくれている。
一度ティールームへ案内され、病院の概要を説明してくれた。
7400人の専門医と、42000人の従業員。
桁外れの規模だ。
アラスカの「虎病院」は更にそれを上回る規模になるらしい。
驚いたのは、うちの病院でも一部でやっているが、研究機関の充実だった。
「高度な技術を持つことは重要です。でも、それ以上に重要なのは、新たな技術を求める精神です」
「なるほど」
俺が興味を持ったので、研究施設から案内してもらった。
免疫学、細菌学、血液学、薬学、その他あらゆる治療に必要な学問の専門研究機関があった。
医科大学も設立され、そちらでも重要な研究が進んでいる。
企業の協賛も多く、資金面でも盤石の態勢が整っていた。
そして実際の診療の風景や最新の医療機器、その他の設備も見て回った。
その間に、俺や静子の体調を気遣って、時々ルーちゃんたちが休憩を進言してくれた。
ちょっとソファに座ったりして、俺と静子は快適に病院を回ることが出来た。
「今日はいろいろとありがとうございました」
「いいえ、御満足いただけたでしょうか」
「もちろん! 貴重な体験を致しました」
「それは何より」
ガーナー副院長は、帰り際にハードディスクをくれた。
「今日だけでは全てを周れませんでしたので、うちの病院のことをまとめておきました」
「それは有難い!」
「私たちは「タイガー・ホール」に全面的に協力いたします。これからも、どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ!」
握手を交わして駐車場へ向かった。
「あ、ちょっとテストしてみていいですか?」
「ん?」
ルーちゃんが言うので、駐車場前で立ち止まった。
何かが飛んで来た。
大きなごつい機関銃と、大きな曲がった刀剣が猛スピードで何かに運ばれて来た。
XM250という機関銃と、クックリナイフというものらしい。
運んで来たのは、ハチの形をした50センチほどの飛行体だ。
他にも拳銃の入ったベルトやよく分からないものを吊って来ていた。
「大丈夫でした!」
「お二人を護る体制はバッチリですよ!」
「「……」」
そういうの、必要なのか?
石神の大勢の下良い仲間が集まり、俺や静子の所へみんなが挨拶に来てくれる。
「花岡さん、また一段と綺麗になったね」
「まあ! 院長先生、ありがとうございます! でも院長先生たちもお若くなりましたよね?」
「そうかな」
「そうですよ! 前にお会いした時も思いましたけど、また一段と」
「石神のお陰かな」
「アレですよね?」
「うん。アレのもっと効能の上がるものが出来たと言ってな。二人で口にしたんだ」
「それで!」
花岡さんと子どもの士王君、それに桜花さんたちと一緒のテーブルだ。
「士王君もしっかりしてきたね」
「はい! もう歩き出したんで、毎日大変です」
「こないだレストランで食事をしてたら、いつの間にか知らない女性のテーブルに行ってしまって」
桜花さんが話してくれた。
「あれは困ったよねー」
「何があったんだ?」
「金髪のカナダ人の女性だったんですけどね。オッパイが大きくて」
「ああ!」
「女性の膝に乗って、胸を……」
「ワハハハハハハ!」
士王君は女性の胸が大好きだ。
静子もやられた。
「その女性は笑ってくれてましたけどね。説明が大変で」
「コンピューター技師の方だったんですけど。「虎スパ」の招待券を差し上げたら喜んでくれまして」
「そうだったか」
「虎スパ」は、花岡さんの提案で出来た浴場施設らしい。
俺は行ったことは無いが、日本でも人気の、様々な風呂が体験できるもののようだ。
「あの、院長先生。本当に私たちと一緒にニューヨークを周りませんか?」
花岡さんが気を遣ってくれる。
でも、俺たちのような年寄りと一緒では楽しめないだろう。
「いや、静子と二人でのんびりと周るよ。石神がガードと案内の人間を手配してくれたしな」
「そうですか」
石神が、それぞれの招待客が楽しめるように添乗員を大勢手配してくれた。
事前に行きたい場所などを相談し、万事調整してくれている。
俺たちはマウントサイナイ病院の視察を頼んでいた。
全米で最高峰の病院だ。
新たにアラスカでの病院長就任の前に、海外の病院を見ておきたかった。
その他は、石神の勧めでニューヨーク近代美術館に行くことにしている。
大きな建物なので、石神が見ておくといいという場所も聞いた。
ガードに着く人たちに任せておけば大丈夫ということだった。
ずっと車で案内してくれるそうだ。
部屋で待っていると、二人の女性が迎えに来た。
「ルーシーです!」
「ハーマイオニーです!」
身長175センチの外国人の双子の女性のようだった。
キラキラの銀色のストレートの長髪。
目の色がルーシーさんが空色で、ハーマイオニーさんがピンクだった。
ピンクの瞳は珍しい。
「ルーとハーって呼んで下さいね!」
「皇紀様とはフィリピンで親しくさせていただいていました!」
それで分かった。
人間にしか見えないが、この二人は石神が作ったデュールゲリエなのだ。
「ルーちゃんとハーちゃんか! そうか、じゃあ今日は一日お願いします」
「「はい!」」
明るい性格のようで、静子も楽しそうだ。
二人に連れられて、俺たちはホテルの地下の駐車場へ向かった。
「この車です。ベントレーの「FLYING SPUR MULLINER W12」というモデルになります」
「へ、へぇ」
紫色の大きな車だった。
俺がいつも乗っているダイムラー・ジャガーよりも大きく見える。
ルーちゃんとハーちゃんが後ろのドアを開けてくれた。
「「どうぞ!」」
静子と二人で乗り込んだ。
やはりシートが素晴らしい。
「じゃあ、最初はマウントサイナイ病院で宜しいですね?」
「ああ、宜しく頼むよ」
「「はい!」」
ルーちゃんが嬉しそうに発進させた。
車の中で、二人からいろいろ話し掛けられた。
フィリピンでの皇紀君の活躍や日常などで、楽しい話ばかりだった。
静子もすぐに打ち解けて一緒に話して笑っていた。
「石神様から、蓼科様たちをご案内するように命じられて、本当に嬉しかったんです!」
「それはどうしてだい?」
「だって! 石神様が最も尊敬して敬愛されているお二人ですよ! 最高の栄誉じゃないですか!」
「そんなことはないよ」
でもそう言われて嬉しかった。
石神が言っていた。
デュールゲリエは純粋なのだと。
だから二人が本当に喜んで俺たちを案内してくれていることが分かった。
石神が二人に話したことも、その通りなのだろう。
だから嬉しかった。
「あ! どこか行きたい場所がありましたら、いつでも言って下さいね!」
「ニューヨークのことは大体把握してます! 行けない場所は多分殆どないですからね!」
「分かった、ありがとう」
「ホワイトハウス、行っときます?」
「いや、そこはいいよ」
「「ワハハハハハ!」」
本当に行けるのか。
デュールゲリエは大勢いるが、ほとんどは画一的な鏡面仕上げの頭部だ。
ルーちゃんとハーちゃんのような人間的なタイプは「ユニーク・モデル」と言うらしい。
「でも、他のデュールゲリエも感情はあるんですよ」
「最初は違いましたけど、今は全て会話が出来るようになっています」
「そうなのか」
知らなかった。
石神と蓮花さんがデュールゲリエを本当の仲間だと思っている証だろう。
「オッパイもついてますよー!」
「士王さんに気を付けろと言われてます!」
俺と静子で笑った。
マウントサイナイ病院に着き、玄関で案内してくれる人間が待っていた。
サイモン・ガーナーという副病院長らしい。
俺は名刺を交換して、今日の礼を言った。
「「タイガー・ホール」の方をお迎え出来て名誉に思っております。何なりと仰って下さい」
「ありがとうございます。お世話になります」
俺は英語で話しているが、静子にルーちゃんたちが同時通訳をしてくれていた。
静子には退屈かもしれないが、ルーちゃんたちがいろいろ話し掛けてくれている。
一度ティールームへ案内され、病院の概要を説明してくれた。
7400人の専門医と、42000人の従業員。
桁外れの規模だ。
アラスカの「虎病院」は更にそれを上回る規模になるらしい。
驚いたのは、うちの病院でも一部でやっているが、研究機関の充実だった。
「高度な技術を持つことは重要です。でも、それ以上に重要なのは、新たな技術を求める精神です」
「なるほど」
俺が興味を持ったので、研究施設から案内してもらった。
免疫学、細菌学、血液学、薬学、その他あらゆる治療に必要な学問の専門研究機関があった。
医科大学も設立され、そちらでも重要な研究が進んでいる。
企業の協賛も多く、資金面でも盤石の態勢が整っていた。
そして実際の診療の風景や最新の医療機器、その他の設備も見て回った。
その間に、俺や静子の体調を気遣って、時々ルーちゃんたちが休憩を進言してくれた。
ちょっとソファに座ったりして、俺と静子は快適に病院を回ることが出来た。
「今日はいろいろとありがとうございました」
「いいえ、御満足いただけたでしょうか」
「もちろん! 貴重な体験を致しました」
「それは何より」
ガーナー副院長は、帰り際にハードディスクをくれた。
「今日だけでは全てを周れませんでしたので、うちの病院のことをまとめておきました」
「それは有難い!」
「私たちは「タイガー・ホール」に全面的に協力いたします。これからも、どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ!」
握手を交わして駐車場へ向かった。
「あ、ちょっとテストしてみていいですか?」
「ん?」
ルーちゃんが言うので、駐車場前で立ち止まった。
何かが飛んで来た。
大きなごつい機関銃と、大きな曲がった刀剣が猛スピードで何かに運ばれて来た。
XM250という機関銃と、クックリナイフというものらしい。
運んで来たのは、ハチの形をした50センチほどの飛行体だ。
他にも拳銃の入ったベルトやよく分からないものを吊って来ていた。
「大丈夫でした!」
「お二人を護る体制はバッチリですよ!」
「「……」」
そういうの、必要なのか?
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~
みつまめ つぼみ
キャラ文芸
ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。
彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。
そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!
彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。
離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。
香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる