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『虎は孤高に』《高校生篇》最終回
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8月第二週の金曜日。
明日からニューヨークへ行く。
明後日はブロード・ハーヴェイで『マリーゴールドの女』のこけら落としがあり、その後で俺のコンサートを開く予定だ。
本当は金曜の晩から行きたかったのだが、亜紀ちゃんが猛反発した。
「『虎は孤高に』の高校生篇の最後ですよ!」
「……」
仕方が無い。
他の子どもたちも異議を唱えることは出来ず、結局土曜日の早朝に出掛けることになった。
俺が夕方6時に家に帰ると、亜紀ちゃんがカレーを出して来た。
「今日は2杯ありますよ!」
「マジか!」
カレーの日は、俺には1杯しか残っていない。
カツカレーでは、カツが無い。
「大サービスですよ!」
俺は家長なのだが。
子どもたちは、5,6杯は食べているのだが。
俺は大人しくカレーを食べ、お替りをした。
「早く食べて下さいね!」
「分かったよ!」
鍋にこびり付いて固まったルーを乗せたカレーが来た。
「……」
全部食べた。
食べ終わると、亜紀ちゃんが来てその場で服を脱がされた。
「おい! コーヒーくらい飲ませろ!」
「テレビを見ながら幾らでもどうぞ!」
裸にされ、亜紀ちゃんに抱えられて風呂場へ入れられた。
亜紀ちゃんも裸になって、俺の身体を洗い始める。
「自分でやる!」
「はやくぅー!」
二人で急いで身体を洗い、猛スピードで背中を洗い合い、髪を洗い合った。
湯船に浸かる。
「100数えたら出ますよ!」
「おい!」
亜紀ちゃんが数え始める。
「まだ6時半だろう!」
「今日は最終回スペシャルで、また8時からなんですよ!」
「それにしたって早いだろう!」
「だって! もう待てませんよ!」
「何言ってんだぁ!」
本当に分からん。
100数え終えた亜紀ちゃんが俺を引っ張って行き、手早く俺の身体を拭いて脱衣所から蹴り出された。
「てめぇ!」
「早く服を着て来て下さい!」
「このやろう!」
まあ、この状態の亜紀ちゃんに何を言っても無駄だろう。
俺は諦めて自分の部屋へ行った。
スッポンポンだ。
途中で風呂に入りに行く柳とすれ違い、柳が呆然と俺を見ていた。
オチンチンをプルプルしてやると喜んだ。
俺はお気に入りのニャンコパジャマ(夏バージョン・半袖)を来て、またリヴィングへ降りた。
亜紀ちゃんたちが、つまみを作っている。
俺の前にホッとコーヒーがドンっと置かれた。
「アイスがいいな」
キッと睨まれ、氷を詰めたグラスにホットコーヒーを注がれた。
ドン
黙って飲んだ。
ソラマメのオリーブオイル炒め。
アスパラベーコン。
冷奴の和風タマネギソース。
唐揚げ(大量)。
カール(……)。
どんどん準備が進み、千疋屋の生ジュース各種をでかいアイスペールに入れた。
地下室へみんなで降りる。
皇紀が天井のスポットライトを調整していた。
各自のテーブルが淡く照らされるようにする。
今日は照明を落として観るようだ。
気合が入っている。
7時半になった。
「皇紀! チンコだけ洗って早く戻って!」
「うん!」
最後に皇紀が風呂に入りに行った。
亜紀ちゃんがもう録画を始める。
前回、番宣を録り逃したからだ。
冷房が効いているのだが、亜紀ちゃんの熱気で暑い。
15分で皇紀が戻り、遅いと怒鳴られた。
もう子どもたちは唐揚げを中心に食べ始めている。
夕飯はどうした。
10分前に、番宣が流れた。
「勝ったぁー!」
亜紀ちゃんが喜んだ。
今回は高校生篇の最後で、再来週から大学生篇が始まる予定だった。
「あー、傭兵時代はどうするんですかねー」
「ああ、回想シーンとかでやるみたいだぞ」
「エェー!」
亜紀ちゃんが俺に掴みかかって来る。
「おい!」
「なんで話しちゃうんですかー!」
「お前が聞いて来たんだろう!」
「黙ってて下さいよー!」
めんどくせぇ。
そして番組が始まった。
俺や井上さんたちの、最後のパレードの壮観なシーンからだった。
テーマソングが始まり、亜紀ちゃんが大声で歌う。
そして俺の東京大学合格の通知。
喜んで城戸さんや乾さん、佐野さんたちに報告に行く俺。
城戸さんが最後のバイト代と俺のために取っておいてくれたチップのでかい袋。
乾さんたちが合格祝いに陳さんのお店で豪勢な食事を奢ってくれる。
佐野さんがお祝いに何がいいと聞き、拳銃を撃たせてくれと言う俺を引っぱたく。
そして入学金を払おうとして、家に金が一切残っていないことを知る俺とお袋。
行方不明の親父。
泣きながら乾さんの店にRZを届ける俺。
亜紀ちゃんと柳が号泣した。
お袋の入院。
そして途方に暮れる俺の所へ、聖がやって来る。
アメリカで傭兵になると決めた俺。
エンディングが流れ、傭兵として命懸けで戦う俺と聖の映像がバックで流れる。
いいドラマだった。
亜紀ちゃんが俺の足の間で大泣きしている。
他の子どもたちも泣いていた。
「タカさんは! こんなに悲しい目に遭ってたんですね!」
「前に話しただろう!」
「だって! 悲し過ぎますよ! どうしてタカさんはこんなに!」
「うるせぇ!」
怒鳴りながらも、亜紀ちゃんの頭を抱き寄せて撫でてやった。
「過ぎてしまえばよ、何のこともねぇよ」
「そんなの!」
まだ大泣きだ。
困った。
誰かに唐揚げをもらおうとしたが、みんな泣いていた。
「俺の人生の最悪の一つだったな。でも、あの日があったから、俺は俺になったんだ」
「タカさーん!」
子どもたちがみんな寄って来た。
ロボが亜紀ちゃんの背中を登って来て、俺に抱き着く。
肩に前足を置いて、俺の顔を舐めている。
付き合いがいい。
「バカ! 今はもうこんなになってるだろう! 俺はお前たちと一緒で幸せだぜ」
「「「「「タカさーん!」」」」」
まったく困った。
話にはしているが、実際に映像で見せられてショックだったのだろう。
ドラマとしても、本当にいい出来だったためだ。
仕方ないので、子どもたちが落ち着くまでしばらくそうやっていた。
残った食べ物を持ってリヴィングへ上がり、軽く飲んだ。
明日は早いので、食べ終わったら寝ることにする。
亜紀ちゃんと柳が俺と一緒に寝たがった。
仕方ないのでベッドにみんなで横になる。
「おい、今日は観直さないでいいのかよ?」
「あれは、しばらおく置かないと観れませんよ」
「そうかよ」
小学生、中学生でも、悲しいことはあった。
でも、高校生にもなると、悲しさが深くなって行く。
大人になるほど、どうしようもなく悲しく感じる。
人間は悲しいのだ。
こいつらも、成長した。
だからなのだろう。
俺は子どもたちの成長を見守るしかない。
こいつらの悲しみを、少しでも和らげてやりたい。
そう思っている。
明日からニューヨークへ行く。
明後日はブロード・ハーヴェイで『マリーゴールドの女』のこけら落としがあり、その後で俺のコンサートを開く予定だ。
本当は金曜の晩から行きたかったのだが、亜紀ちゃんが猛反発した。
「『虎は孤高に』の高校生篇の最後ですよ!」
「……」
仕方が無い。
他の子どもたちも異議を唱えることは出来ず、結局土曜日の早朝に出掛けることになった。
俺が夕方6時に家に帰ると、亜紀ちゃんがカレーを出して来た。
「今日は2杯ありますよ!」
「マジか!」
カレーの日は、俺には1杯しか残っていない。
カツカレーでは、カツが無い。
「大サービスですよ!」
俺は家長なのだが。
子どもたちは、5,6杯は食べているのだが。
俺は大人しくカレーを食べ、お替りをした。
「早く食べて下さいね!」
「分かったよ!」
鍋にこびり付いて固まったルーを乗せたカレーが来た。
「……」
全部食べた。
食べ終わると、亜紀ちゃんが来てその場で服を脱がされた。
「おい! コーヒーくらい飲ませろ!」
「テレビを見ながら幾らでもどうぞ!」
裸にされ、亜紀ちゃんに抱えられて風呂場へ入れられた。
亜紀ちゃんも裸になって、俺の身体を洗い始める。
「自分でやる!」
「はやくぅー!」
二人で急いで身体を洗い、猛スピードで背中を洗い合い、髪を洗い合った。
湯船に浸かる。
「100数えたら出ますよ!」
「おい!」
亜紀ちゃんが数え始める。
「まだ6時半だろう!」
「今日は最終回スペシャルで、また8時からなんですよ!」
「それにしたって早いだろう!」
「だって! もう待てませんよ!」
「何言ってんだぁ!」
本当に分からん。
100数え終えた亜紀ちゃんが俺を引っ張って行き、手早く俺の身体を拭いて脱衣所から蹴り出された。
「てめぇ!」
「早く服を着て来て下さい!」
「このやろう!」
まあ、この状態の亜紀ちゃんに何を言っても無駄だろう。
俺は諦めて自分の部屋へ行った。
スッポンポンだ。
途中で風呂に入りに行く柳とすれ違い、柳が呆然と俺を見ていた。
オチンチンをプルプルしてやると喜んだ。
俺はお気に入りのニャンコパジャマ(夏バージョン・半袖)を来て、またリヴィングへ降りた。
亜紀ちゃんたちが、つまみを作っている。
俺の前にホッとコーヒーがドンっと置かれた。
「アイスがいいな」
キッと睨まれ、氷を詰めたグラスにホットコーヒーを注がれた。
ドン
黙って飲んだ。
ソラマメのオリーブオイル炒め。
アスパラベーコン。
冷奴の和風タマネギソース。
唐揚げ(大量)。
カール(……)。
どんどん準備が進み、千疋屋の生ジュース各種をでかいアイスペールに入れた。
地下室へみんなで降りる。
皇紀が天井のスポットライトを調整していた。
各自のテーブルが淡く照らされるようにする。
今日は照明を落として観るようだ。
気合が入っている。
7時半になった。
「皇紀! チンコだけ洗って早く戻って!」
「うん!」
最後に皇紀が風呂に入りに行った。
亜紀ちゃんがもう録画を始める。
前回、番宣を録り逃したからだ。
冷房が効いているのだが、亜紀ちゃんの熱気で暑い。
15分で皇紀が戻り、遅いと怒鳴られた。
もう子どもたちは唐揚げを中心に食べ始めている。
夕飯はどうした。
10分前に、番宣が流れた。
「勝ったぁー!」
亜紀ちゃんが喜んだ。
今回は高校生篇の最後で、再来週から大学生篇が始まる予定だった。
「あー、傭兵時代はどうするんですかねー」
「ああ、回想シーンとかでやるみたいだぞ」
「エェー!」
亜紀ちゃんが俺に掴みかかって来る。
「おい!」
「なんで話しちゃうんですかー!」
「お前が聞いて来たんだろう!」
「黙ってて下さいよー!」
めんどくせぇ。
そして番組が始まった。
俺や井上さんたちの、最後のパレードの壮観なシーンからだった。
テーマソングが始まり、亜紀ちゃんが大声で歌う。
そして俺の東京大学合格の通知。
喜んで城戸さんや乾さん、佐野さんたちに報告に行く俺。
城戸さんが最後のバイト代と俺のために取っておいてくれたチップのでかい袋。
乾さんたちが合格祝いに陳さんのお店で豪勢な食事を奢ってくれる。
佐野さんがお祝いに何がいいと聞き、拳銃を撃たせてくれと言う俺を引っぱたく。
そして入学金を払おうとして、家に金が一切残っていないことを知る俺とお袋。
行方不明の親父。
泣きながら乾さんの店にRZを届ける俺。
亜紀ちゃんと柳が号泣した。
お袋の入院。
そして途方に暮れる俺の所へ、聖がやって来る。
アメリカで傭兵になると決めた俺。
エンディングが流れ、傭兵として命懸けで戦う俺と聖の映像がバックで流れる。
いいドラマだった。
亜紀ちゃんが俺の足の間で大泣きしている。
他の子どもたちも泣いていた。
「タカさんは! こんなに悲しい目に遭ってたんですね!」
「前に話しただろう!」
「だって! 悲し過ぎますよ! どうしてタカさんはこんなに!」
「うるせぇ!」
怒鳴りながらも、亜紀ちゃんの頭を抱き寄せて撫でてやった。
「過ぎてしまえばよ、何のこともねぇよ」
「そんなの!」
まだ大泣きだ。
困った。
誰かに唐揚げをもらおうとしたが、みんな泣いていた。
「俺の人生の最悪の一つだったな。でも、あの日があったから、俺は俺になったんだ」
「タカさーん!」
子どもたちがみんな寄って来た。
ロボが亜紀ちゃんの背中を登って来て、俺に抱き着く。
肩に前足を置いて、俺の顔を舐めている。
付き合いがいい。
「バカ! 今はもうこんなになってるだろう! 俺はお前たちと一緒で幸せだぜ」
「「「「「タカさーん!」」」」」
まったく困った。
話にはしているが、実際に映像で見せられてショックだったのだろう。
ドラマとしても、本当にいい出来だったためだ。
仕方ないので、子どもたちが落ち着くまでしばらくそうやっていた。
残った食べ物を持ってリヴィングへ上がり、軽く飲んだ。
明日は早いので、食べ終わったら寝ることにする。
亜紀ちゃんと柳が俺と一緒に寝たがった。
仕方ないのでベッドにみんなで横になる。
「おい、今日は観直さないでいいのかよ?」
「あれは、しばらおく置かないと観れませんよ」
「そうかよ」
小学生、中学生でも、悲しいことはあった。
でも、高校生にもなると、悲しさが深くなって行く。
大人になるほど、どうしようもなく悲しく感じる。
人間は悲しいのだ。
こいつらも、成長した。
だからなのだろう。
俺は子どもたちの成長を見守るしかない。
こいつらの悲しみを、少しでも和らげてやりたい。
そう思っている。
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