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ロボの御飯皿

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 響子と六花が昼食後に帰った。
 
 「あぁー! なんか疲れたぜぇー!」
 「お疲れ様でした」
 「亜紀ちゃんも御苦労さん! まったく、「柱」関連はコワイよなぁ」
 「アハハハハハ!」

 疲れたので、甘いものが欲しくなった。

 「ああ、ポアール・デ・ロワの「アローマ・メロン」があったな。あれを一切れくれよ」
 「つ、ついにあれを食べるんですね!」
 「うん。お前らもよかったら……」

 亜紀ちゃんが吹っ飛んで行った。
 カゲナウの冷凍庫からそっと取り出す。
 先月亜紀ちゃんとまたお中元の頂き物の整理をしていた中で、亜紀ちゃんが夢中になった一つだ。
 明彦の会社、和田商事からのものだった。

 「流石、明彦さんですよね!」
 「そうだな」

 亜紀ちゃんが大興奮で「これは絶対に最高に美味しい」と予見していた。
 俺も知らなかったものだ。
 明彦がきっと、いろいろと探してくれたのだろうと思う。
 亜紀ちゃんが調べてみると、相当高いものだった。
 一つが2万5千円以上のもので、それが6つもあった。
 他にも別な様々なフルーツのソルベが入っている。

 「タカさん! 一人一個いっときますか!」
 「バカヤロウ! 大事に喰え! 一個をカットしろ!」
 「はーい」

 亜紀ちゃんがカットする。

 「あれ、柳さん、そろそろ鍛錬の時間じゃ?」
 「亜紀ちゃん、意地悪なこと言わないでよ!」
 「アハハハハハ!」

 六等分にする。

 ルーが紅茶を淹れてみんなに配り、亜紀ちゃんとハーがソルベを皿に盛ってみんなに配った。
 まだ凍っているのでしばらく待つ。
 亜紀ちゃんはジッと見ている。

 「皇紀、明日は蓮花の所へヒヒイロカネの運搬を頼むな」
 「はい。一緒に行って、向こうの格納庫も確認して来ます」
 「ああ。百家からなんか御札も来るようだから、その置き場所も作んなきゃな」
 「それは来てから考えますね」
 「必要なら、神棚のこととかも聞いてくれ」
 「分かりました!」

 俺の所へロボが来た。
 隣の椅子に昇る。

 「ちょっと舐めてみるか?」
 「にゃ」

 ロボにソルベの皿を近づけた。
 匂いを嗅いでから舌で舐めてみる。
 
 「にゃ」
 
 満足したようだ。
 亜紀ちゃんが我慢できずにスプーンを入れた。
 まだ硬いようだが、僅かにスプーンに削れたものを口に入れる。

 「美味しいぃー!」

 もうしばらく待って、俺もスプーンを入れた。
 ソルベなのに、口に入れるとサラリと溶け、メロンの風味が優しく拡がる。
 生クリームとの混合らしいが、見事な技術だった。
 みんなで感動しながら食べた。

 美味かったので、俺は鷹にも持って行こうと亜紀ちゃんに半分カットさせた。
 ドライアイスを詰めて、鷹のマンションへ行った。
 鷹が喜んでくれ、夕飯を食べて行ってくれと言う。
 喜んでそうした。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「亜紀ちゃん、夕飯は何を作るんだっけ?」
 「ステーキ野菜炒めだよ」
 「あ、そっか」

 私とルーとハーで作り始めた。
 私が野菜のカットをし、ルーがステーキを焼き、ハーが豆のスープを作る。
 もう手慣れたもので、大して手間も掛からない。

 「ソルベ、美味しかったね!」
 「ダメだよ、タカさんが言った時しか食べちゃダメ」
 「分かってるよ」

 「亜紀ちゃんって真面目だよね」
 「当たり前よ!」

 双子は時々タカさんの分も食べて殴られている。

 「タカさんの分はいらないんだよね?」
 「うん、鷹さんのとこで食べて来るって」
 「「ギャハハハハ!」」

 何故笑う。

 すぐに準備が出来て、柳さんと皇紀を呼ぶ。
 ロボには先にステーキを焼いて食べさせた。
 みんなが揃ったので夕飯にする。

 「いただきまーす」
 「「「「いただきまーす!」」」」

 野菜炒めの上に、5枚重ねたステーキが乗っている。
 グレーヴィーソースがボウルに入っていて、みんな好きなように掛けていく。

 「タカさん、ステーキ野菜炒めって好きじゃないよね?」
 「うん、どうしてだろうね?」

 分からない。

 「ご飯がすすむー!」

 みんなでワイワイと食べた。
 
 「そうだ、皇紀、バイクの免許を取れば?」
 「え、ああ。そうだね。そろそろ自分の移動手段もあった方がいいかもね」
 「そうだよ。練習するならCBR貸すよ?」
 「ありがとう。じゃあ、ちょっと考えてみるよ」

 「皇紀ちゃん、たまには中学に来なよ」
 「そうだよ。結構皇紀ちゃん、先生たちに人気だし」

 「皇紀君、「カタ研」にも来ない?」

 みんなが皇紀に声を掛ける。
 みんなのために高校へ進学せずに頑張っている皇紀だからだ。

 「みんなありがとう。うん、今度是非そうするね」

 最初のステーキ野菜炒めを食べ終えて、一斉にキッチンへお替りに向かう。
 皇紀がルーにぶっ飛ばされていた。
 声は掛けるが食い物はやらん。




 皇紀以外のみんなで後片付けをする。
 皇紀に最初にお風呂へ行かせた。

 「縮れっ毛を落とすなよ!」
 「分かってるよー」

 片づけを終えて、私たちもお風呂と思っていた。
 皇紀が早々に上がって来た。
 暑いので、飲み物を探しに来たようだ。
 ルーが気付いた。

 「皇紀ちゃん、何飲むー?」
 「ああ、じゃあジンジャーエールにしようかな」
 「おっけー!」

 ルーが冷蔵庫からジンジャーエールの瓶を出した。
 皇紀に放る。

 「おっと」

 皇紀がちょっと動いた。
 ちゃんと受け取った。

 バキン

 何かが割れた音がした。
 皇紀が硬直している。
 顔が蒼ざめて来る。

 「ニャァァァァーーー!」

 ロボが叫んでいる。
 見に行くと、ロボの古伊万里の大皿が割れていた。
 皇紀が踏んでしまったらしい。

 「「「「!」」」」

 みんなが気付いて皇紀と同じく青くなる。
 ロボがお皿の前で俯いている。
 私が抱き上げようとすると、ロボの目から涙が出ていた。
 そんなロボは初めて見た。
 みんながショックを受けていた。

 「ぼ、僕が悪いんだ」
 「私が投げちゃったからだよ!」
 「違うよ! ちゃんと片付けなかった私たちも悪いんだよ!」  
 「みんな落ち着こう! とにかくタカさんに連絡しないと」

 抱き上げたロボの目から涙がボロボロと零れていた。
 相当気に入っていたのだろう。
 
 私がタカさんに電話をした。
 タカさんがすぐに帰ると言った。
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