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挿話: ネコ塗れ「秘密兵器」
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少しさかのぼって、4月のある晩。
柳が御堂と一緒に食事をして帰って来た。
俺も行きたかったのだが、ちょっとスケジュールが合わなかったのと、たまには御堂と柳で食事をさせようと思った。
新宿の「銀河宮殿」に行ったはずだ。
柳は酒を飲むので電車で出掛け、また電車で帰って来た。
満月の晩だった。
俺と亜紀ちゃんは風呂上がりに軽く飲んでいた。
柳が帰って来るなり、俺に興奮気味で語った。
「石神さん! スゴイのを見ちゃいましたよ!」
「御堂はスゴイよな」
「違いますよ!」
「なんだと! お前は御堂が凄くないって言うのか!」
「だから、なんでいつもお父さんの話になるんですか!」
「おい! 誤魔化すんじゃねぇ!」
亜紀ちゃんが御堂の話だから取敢えず謝った方がいいと言い、柳が頭を下げて謝った。
「すいませんでした」
「おし!」
「もう!」
柳のテンションが下がった。
それでも話を続ける。
「さっき、「花見の家」の庭を見たんですよ」
「ああ、あそこか」
「ネコの集会やってました!」
「マジか!」
ロボがいつも満月と新月に出掛けるので、そういうものがあるのだろうとは思っていた。
まさか本当にそうだったとは。
「数十匹いましたよ。ロボが中心でした」
「ほう!」
「石神さん、見たことあります?」
「いや、ねぇ」
「私、見たんですよ!」
なんかいつもこいつの言い方って気に障る。
「良かったな」
「はい!」
柳がニコニコしている。
「タカさん、今度見に行きましょうよ!」
「そうだなぁ。でも折角ネコ同士で仲良くしてるのに、人間がお邪魔しちゃなぁ」
「えー、ちょっとだけいいじゃないですかー」
「うーん」
柳が手を挙げた。
「私、ちょっと輪の中に入って来ました」
「えぇー」
またこいつはどこでも遠慮なしに何でもやりやがる。
それにちょっと自慢気なのも気に喰わない。
「お前よ、ちょっとは相手のことも考えろよな」
「大丈夫でしたよ?」
「ネコがどう感じるなんて分からないだろう」
「大丈夫ですって」
ロボが庭で鳴いていた。
気分のいい柳が、自分が中に入れると言って出迎えに行った。
「あぁー!」
柳の叫び声が聞こえ、亜紀ちゃんと見に行くとロボにぶっ飛ばされていた。
「「……」」
亜紀ちゃんがロボを抱きかかえて足を拭いてやった。
ロボは段ボール箱が大好きだ。
身体が大きいのでしょっちゅうではないが、大きな段ボール箱が空くとロボにやる。
ボロボロになるまで楽しむ。
リヴィングに置いておくと、ロボが中に入る。
中でスヤスヤ寝ていることもあるし、顔だけ出してジッと楽しそうに俺たちを見ていることもある。
誰かが近づくと箱の底に身を潜め、「遊べ」と合図する。
箱の縁をトントンすると、シュバっと手を出してくる。
俺たちも楽しく遊ぶ。
上のフタを閉じて、側面に穴を空けてやったりする。
そこから外を見るのも大好きで、時々手を出して「遊べ」と合図する。
箱の上と下をたたんで穴だけにすると、ロボが箱の中に飛び込んで床を滑る遊びを始める。
まあ、ロボも俺たちも楽しい。
御堂の実家からまたオロチの抜け殻が届いた。
軽いものなのだが何しろでかいので、大きな段ボール箱に入って来た。
特注で作ってくれたのだろう。
長さ2.4メートル、高さと幅1メートル。
中にはいつものように黄色のウコン布に包まれて、軽く折り返されてオロチの抜け殻が入っていた。
すぐに双子が「Ωケース」に入れて、「飛行」で蓮花研究所へ運んだ。
御堂の実家から直送はしない。
蓮花の研究所との関連を隠すためだ。
段ボール箱なので、ロボにやった。
俺を一度見てから、中へ入った。
「……」
ジッとしていて俺をまた見ていた。
なんか、楽しくないらしい。
やはりでか過ぎるのだろう。
近づいて撫でてやり、俺も入って横になった。
「にゃ!」
容積が狭くなったことで、いつもの感覚になったか、ロボが喜んで箱の中で遊んだ。
俺に身体をすりよせ、子どもたちが箱の縁を指でトントンし、ロボが楽しそうにシュパッとやる。
大喜びだった。
次の新月の晩。
俺はオロチの入っていた箱を持って、「花見の家」に行った。
子どもたちも付いてくる。
ロボたちが集会をしていた。
みんな俺をジッと見ていた。
俺はそっとその中に入り、箱を横たえた。
「ニャー!」
ネコたちが喜び、俺の傍に寄って来る。
「タカさん、いーなー」
亜紀ちゃんたちは刺激しないように離れて見ていて、俺は段ボール箱の中に入って寝転がった。
「にゃー!」
まずロボが嬉しそうに中に入り、続いて他のネコたちも一斉に入って来る。
数十匹のネコが全部入り、俺はネコ塗れになった。
「おぉー! すげぇぞ!」
ネコたちが中で喜んでくんずほぐれつで動き回る。
「た、タカさん! わたしもー!」
「石神さん! わたしもー!」
亜紀ちゃんと柳が入ってこようとしたが、ネコでいっぱいなので足の踏み場がない。
「「えーん!」」
しばらくネコ塗れ風呂を楽しみ、俺は外へ出た。
ネコたちはしばらく中で遊んでいたが、出て来て俺の傍に寄って来る。
亜紀ちゃんと柳が段ボール箱に入ると、残っていたネコたちが一斉に逃げて出た。
「「えーん!」」
「あー、楽しかったぜ!」
俺は周りにいるネコたちの頭を撫でて、空になった箱を抱えた。
「じゃー、帰るよ! 邪魔したな!」
「にゃー」
ネコたちが一斉に鳴いて挨拶した。
柳が御堂と一緒に食事をして帰って来た。
俺も行きたかったのだが、ちょっとスケジュールが合わなかったのと、たまには御堂と柳で食事をさせようと思った。
新宿の「銀河宮殿」に行ったはずだ。
柳は酒を飲むので電車で出掛け、また電車で帰って来た。
満月の晩だった。
俺と亜紀ちゃんは風呂上がりに軽く飲んでいた。
柳が帰って来るなり、俺に興奮気味で語った。
「石神さん! スゴイのを見ちゃいましたよ!」
「御堂はスゴイよな」
「違いますよ!」
「なんだと! お前は御堂が凄くないって言うのか!」
「だから、なんでいつもお父さんの話になるんですか!」
「おい! 誤魔化すんじゃねぇ!」
亜紀ちゃんが御堂の話だから取敢えず謝った方がいいと言い、柳が頭を下げて謝った。
「すいませんでした」
「おし!」
「もう!」
柳のテンションが下がった。
それでも話を続ける。
「さっき、「花見の家」の庭を見たんですよ」
「ああ、あそこか」
「ネコの集会やってました!」
「マジか!」
ロボがいつも満月と新月に出掛けるので、そういうものがあるのだろうとは思っていた。
まさか本当にそうだったとは。
「数十匹いましたよ。ロボが中心でした」
「ほう!」
「石神さん、見たことあります?」
「いや、ねぇ」
「私、見たんですよ!」
なんかいつもこいつの言い方って気に障る。
「良かったな」
「はい!」
柳がニコニコしている。
「タカさん、今度見に行きましょうよ!」
「そうだなぁ。でも折角ネコ同士で仲良くしてるのに、人間がお邪魔しちゃなぁ」
「えー、ちょっとだけいいじゃないですかー」
「うーん」
柳が手を挙げた。
「私、ちょっと輪の中に入って来ました」
「えぇー」
またこいつはどこでも遠慮なしに何でもやりやがる。
それにちょっと自慢気なのも気に喰わない。
「お前よ、ちょっとは相手のことも考えろよな」
「大丈夫でしたよ?」
「ネコがどう感じるなんて分からないだろう」
「大丈夫ですって」
ロボが庭で鳴いていた。
気分のいい柳が、自分が中に入れると言って出迎えに行った。
「あぁー!」
柳の叫び声が聞こえ、亜紀ちゃんと見に行くとロボにぶっ飛ばされていた。
「「……」」
亜紀ちゃんがロボを抱きかかえて足を拭いてやった。
ロボは段ボール箱が大好きだ。
身体が大きいのでしょっちゅうではないが、大きな段ボール箱が空くとロボにやる。
ボロボロになるまで楽しむ。
リヴィングに置いておくと、ロボが中に入る。
中でスヤスヤ寝ていることもあるし、顔だけ出してジッと楽しそうに俺たちを見ていることもある。
誰かが近づくと箱の底に身を潜め、「遊べ」と合図する。
箱の縁をトントンすると、シュバっと手を出してくる。
俺たちも楽しく遊ぶ。
上のフタを閉じて、側面に穴を空けてやったりする。
そこから外を見るのも大好きで、時々手を出して「遊べ」と合図する。
箱の上と下をたたんで穴だけにすると、ロボが箱の中に飛び込んで床を滑る遊びを始める。
まあ、ロボも俺たちも楽しい。
御堂の実家からまたオロチの抜け殻が届いた。
軽いものなのだが何しろでかいので、大きな段ボール箱に入って来た。
特注で作ってくれたのだろう。
長さ2.4メートル、高さと幅1メートル。
中にはいつものように黄色のウコン布に包まれて、軽く折り返されてオロチの抜け殻が入っていた。
すぐに双子が「Ωケース」に入れて、「飛行」で蓮花研究所へ運んだ。
御堂の実家から直送はしない。
蓮花の研究所との関連を隠すためだ。
段ボール箱なので、ロボにやった。
俺を一度見てから、中へ入った。
「……」
ジッとしていて俺をまた見ていた。
なんか、楽しくないらしい。
やはりでか過ぎるのだろう。
近づいて撫でてやり、俺も入って横になった。
「にゃ!」
容積が狭くなったことで、いつもの感覚になったか、ロボが喜んで箱の中で遊んだ。
俺に身体をすりよせ、子どもたちが箱の縁を指でトントンし、ロボが楽しそうにシュパッとやる。
大喜びだった。
次の新月の晩。
俺はオロチの入っていた箱を持って、「花見の家」に行った。
子どもたちも付いてくる。
ロボたちが集会をしていた。
みんな俺をジッと見ていた。
俺はそっとその中に入り、箱を横たえた。
「ニャー!」
ネコたちが喜び、俺の傍に寄って来る。
「タカさん、いーなー」
亜紀ちゃんたちは刺激しないように離れて見ていて、俺は段ボール箱の中に入って寝転がった。
「にゃー!」
まずロボが嬉しそうに中に入り、続いて他のネコたちも一斉に入って来る。
数十匹のネコが全部入り、俺はネコ塗れになった。
「おぉー! すげぇぞ!」
ネコたちが中で喜んでくんずほぐれつで動き回る。
「た、タカさん! わたしもー!」
「石神さん! わたしもー!」
亜紀ちゃんと柳が入ってこようとしたが、ネコでいっぱいなので足の踏み場がない。
「「えーん!」」
しばらくネコ塗れ風呂を楽しみ、俺は外へ出た。
ネコたちはしばらく中で遊んでいたが、出て来て俺の傍に寄って来る。
亜紀ちゃんと柳が段ボール箱に入ると、残っていたネコたちが一斉に逃げて出た。
「「えーん!」」
「あー、楽しかったぜ!」
俺は周りにいるネコたちの頭を撫でて、空になった箱を抱えた。
「じゃー、帰るよ! 邪魔したな!」
「にゃー」
ネコたちが一斉に鳴いて挨拶した。
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