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占いロボ「李さん」 Ⅱ
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亜紀ちゃんが真夜と一緒に帰って来た。
亜紀ちゃんの髪がボサボサで、服も所々汚れている。
「本当に酷い目に遭いました!」
そう叫ぶと風呂に飛び込んでいった。
「何があったんだよ?」
俺が真夜に聞くと、歌舞伎町のお好み焼き屋で食べていると、天井からネズミとゴキブリが大量に降って来たのだと言う。
「亜紀さんが頭から全部被っちゃって」
「マジかよ!」
店内は大騒ぎで、外へ飛び出した亜紀ちゃんが「ブリューナク」を撃とうとするのを真夜が止めたそうだ。
「よ、よくやった!」
「死ぬかと思いました」
「だな!」
危ねぇ。
ルーが真夜にコーヒーを淹れて来た。
真夜が礼を言って飲む。
「お前は大丈夫だったのかよ?」
「はい。最初は亜紀さんを助けようとしたんですが、亜紀さんが一瞬で外に飛び出して行ったので」
「そっか」
「お店の人が謝りに来たんですが、亜紀さんがショックで呆然としてたんでそのまま帰って来ました」
「うん」
真夜がリヴィングの隅に置いてある「李さん」を見つけた。
「あれはなんですか?」
「ああ、「李さん」な。ルーとハーが造った占いロボットなんだよ」
「へぇー」
「今朝な、出掛ける前に亜紀ちゃんを占ったんだ。そうしたら「今日は出掛けない方がいい」って言われた」
「え?」
「出掛ければ酷い目に遭うからってな。当たったなぁ」
「そうなんですか!」
タクシーの中で亜紀ちゃんが「当たった」と呟いていたことを真夜が話した。
「柳の占いも当たったしな」
「はぁ」
「皇紀ちゃんもだよ!」
ハーが言う。
「そうだよな!」
真夜が不思議そうな目で「李さん」を見ていた。
「李さん」は今は電源を落としている。
「顔相と手相を観れるそうだよ」
「へぇー!」
「お前もやってみるか?」
「いいんですか!」
「おお」
ルーとハーが嬉しそうな顔をして「李さん」の電源を入れた。
「李さん」が目を開いて辺りを見渡す。
「真夜ちゃん、こっち来て!」
「うん」
ルーに手を引かれて「李さん」の前に行く。
「まずは挨拶ね」
「はい。柿崎真夜です。よろしくお願いします」
「うむ」
「李さん」がニコニコしてうなずいた。
どうやら、丁寧に来る相手が嬉しいらしい。
それ、必要な機能か?
「お前、ここの庭を掘ってみろ。素晴らしいものを見つけるじゃろう」
俺は「李さん」の頭を引っぱたいた。
前に真夜がレッドダイヤモンドの鉱脈を掘り出してとんでもないことになった。
「お前! 絶対に掘るなよ!」
「はい、掘りません!」
「よし!」
亜紀ちゃんがシャワーを浴びて戻って来た。
「あー、さっぱりしたー!」
「良かったですね」
「うん!」
亜紀ちゃんもコーヒーを飲み、落ち着いていた。
俺にあらためて「李さん」の占いが当たると言った。
「おい、どういうプログラムなんだよ?」
双子に聞いた。
「まずはね、顔相と手相の観方を入れてね」
「シンジュク・マザーのは結構役立った」
他に何人かの超有名占い師の名を挙げた。
「それとね、100万人くらいの顔と手相のデータを入れて、実際の人生とを擦り合わせたの」
「擦り合わせは今でもやってるよ?」
「共通項を抽出して」
「ビッグデータはスゴイね!」
それでも環境要因が複雑すぎて、あまり先のことは漠然とした解答になるようだ。
「それにね、あんまし先のことが分かるのもねー」
「だから最長一週間に限定したの」
「リミッターを外せばやれるけどね!」
「スゲェな」
驚いた。
双子に自分たちもやってみたのか聞いた。
「もちろんだよ。私は100円拾ったよ!」
「……」
お前ら何千兆円の金持じゃん。
「私はね、斉田君に会ったよ」
「あいつか!」
元プロ野球選手で、俺たちが鍛え上げた後に女性問題で自滅したアホウだ。
「なんかね、ジムのインストラクターやってるんだって」
「ほう、そうなってたか」
訴訟問題まで出たが、まあ何とか示談にして納めたようだ。
その後真面目にやってたか。
全然気にしてなかったが。
「こないだ浮気がバレて彼女に刺されたって」
「……」
俺は真夜に夕飯も食べて行けと言った。
亜紀ちゃんが喜んで、もう真夜は家に帰れなくなった。
夕飯のカレー大会で真夜も結構食べてくれた。
「美味しいですね!」
「そうでしょ!」
まあ、うちのカレーは美味い。
真夜がレシピを双子に聞いてメモしていた。
夕飯の後で、双子が俺に言った。
「タカさんもやってよ!」
「あ?」
「「李さん」だよ! タカさんだけやってないじゃん」
「俺はいいよ」
占いは興味が無い。
「お願い!」
双子が俺の手を取って「李さん」の前に引いて行く。
「しょうがねぇな。じゃあ「李さん」お願いします」
丁寧に挨拶したつもりだが、李さんがニコニコ顔ではなく俺を見詰めていた。
なんだ?
「「李さん」! タカさんのこと占って!」
「好き……」
「ん?」
「好きです……」
「李さん」が俺の顔を見ながら顔を赤らめていた。
さっき「李さん」の頭を殴ったせいか?
「おい」
「美しく甘いお顔。それでいて精悍で野獣の迫力のあるお顔。あなたが好きです」
「なんだよ!」
「もっとよく見せて下さい」
「ルー! 何とかしろ!」
「「李さん」!」
「電源を切れ!」
「あ、やめて」
「なんだこいつ!」
「あ、あなたはらいしゅ」
ぷつん
ハーが電源を落とした。
「李さん」が目を閉じた。
「おい、今なんか言い掛けたんじゃないか?」
「そうだった?」
「来週とか言おうとして無かったかよ!」
「何かそんなこと言ってましたよね?」
亜紀ちゃんも聞いてた。
「もう一度起こせ!」
「「はーい」」
ハーがまた電源を入れた。
「ぱぴぱぴぱぴぱぴ」
「あ、壊れちゃった」
「なんだと!」
「時々CMOSと仮想メモリーが飛んじゃうんだよね」
「制御OSが同期取れなくなっちゃうしね」
「おい!」
「こうなると自己修復プログラムが走るから」
「2週間は使えないね」
「おい、来週の話だったぞ!」
「「むりー」」
「……」
俺に一体来週何があるのか。
「あ、来週は吉野だよね!」
「楽しみだね!」
「!」
虎白さんたちと吉野の妖魔狩に行くんだった。
おい、一体何があんだよ!
世界で一番ヤバい人たちじゃねぇか!
亜紀ちゃんの髪がボサボサで、服も所々汚れている。
「本当に酷い目に遭いました!」
そう叫ぶと風呂に飛び込んでいった。
「何があったんだよ?」
俺が真夜に聞くと、歌舞伎町のお好み焼き屋で食べていると、天井からネズミとゴキブリが大量に降って来たのだと言う。
「亜紀さんが頭から全部被っちゃって」
「マジかよ!」
店内は大騒ぎで、外へ飛び出した亜紀ちゃんが「ブリューナク」を撃とうとするのを真夜が止めたそうだ。
「よ、よくやった!」
「死ぬかと思いました」
「だな!」
危ねぇ。
ルーが真夜にコーヒーを淹れて来た。
真夜が礼を言って飲む。
「お前は大丈夫だったのかよ?」
「はい。最初は亜紀さんを助けようとしたんですが、亜紀さんが一瞬で外に飛び出して行ったので」
「そっか」
「お店の人が謝りに来たんですが、亜紀さんがショックで呆然としてたんでそのまま帰って来ました」
「うん」
真夜がリヴィングの隅に置いてある「李さん」を見つけた。
「あれはなんですか?」
「ああ、「李さん」な。ルーとハーが造った占いロボットなんだよ」
「へぇー」
「今朝な、出掛ける前に亜紀ちゃんを占ったんだ。そうしたら「今日は出掛けない方がいい」って言われた」
「え?」
「出掛ければ酷い目に遭うからってな。当たったなぁ」
「そうなんですか!」
タクシーの中で亜紀ちゃんが「当たった」と呟いていたことを真夜が話した。
「柳の占いも当たったしな」
「はぁ」
「皇紀ちゃんもだよ!」
ハーが言う。
「そうだよな!」
真夜が不思議そうな目で「李さん」を見ていた。
「李さん」は今は電源を落としている。
「顔相と手相を観れるそうだよ」
「へぇー!」
「お前もやってみるか?」
「いいんですか!」
「おお」
ルーとハーが嬉しそうな顔をして「李さん」の電源を入れた。
「李さん」が目を開いて辺りを見渡す。
「真夜ちゃん、こっち来て!」
「うん」
ルーに手を引かれて「李さん」の前に行く。
「まずは挨拶ね」
「はい。柿崎真夜です。よろしくお願いします」
「うむ」
「李さん」がニコニコしてうなずいた。
どうやら、丁寧に来る相手が嬉しいらしい。
それ、必要な機能か?
「お前、ここの庭を掘ってみろ。素晴らしいものを見つけるじゃろう」
俺は「李さん」の頭を引っぱたいた。
前に真夜がレッドダイヤモンドの鉱脈を掘り出してとんでもないことになった。
「お前! 絶対に掘るなよ!」
「はい、掘りません!」
「よし!」
亜紀ちゃんがシャワーを浴びて戻って来た。
「あー、さっぱりしたー!」
「良かったですね」
「うん!」
亜紀ちゃんもコーヒーを飲み、落ち着いていた。
俺にあらためて「李さん」の占いが当たると言った。
「おい、どういうプログラムなんだよ?」
双子に聞いた。
「まずはね、顔相と手相の観方を入れてね」
「シンジュク・マザーのは結構役立った」
他に何人かの超有名占い師の名を挙げた。
「それとね、100万人くらいの顔と手相のデータを入れて、実際の人生とを擦り合わせたの」
「擦り合わせは今でもやってるよ?」
「共通項を抽出して」
「ビッグデータはスゴイね!」
それでも環境要因が複雑すぎて、あまり先のことは漠然とした解答になるようだ。
「それにね、あんまし先のことが分かるのもねー」
「だから最長一週間に限定したの」
「リミッターを外せばやれるけどね!」
「スゲェな」
驚いた。
双子に自分たちもやってみたのか聞いた。
「もちろんだよ。私は100円拾ったよ!」
「……」
お前ら何千兆円の金持じゃん。
「私はね、斉田君に会ったよ」
「あいつか!」
元プロ野球選手で、俺たちが鍛え上げた後に女性問題で自滅したアホウだ。
「なんかね、ジムのインストラクターやってるんだって」
「ほう、そうなってたか」
訴訟問題まで出たが、まあ何とか示談にして納めたようだ。
その後真面目にやってたか。
全然気にしてなかったが。
「こないだ浮気がバレて彼女に刺されたって」
「……」
俺は真夜に夕飯も食べて行けと言った。
亜紀ちゃんが喜んで、もう真夜は家に帰れなくなった。
夕飯のカレー大会で真夜も結構食べてくれた。
「美味しいですね!」
「そうでしょ!」
まあ、うちのカレーは美味い。
真夜がレシピを双子に聞いてメモしていた。
夕飯の後で、双子が俺に言った。
「タカさんもやってよ!」
「あ?」
「「李さん」だよ! タカさんだけやってないじゃん」
「俺はいいよ」
占いは興味が無い。
「お願い!」
双子が俺の手を取って「李さん」の前に引いて行く。
「しょうがねぇな。じゃあ「李さん」お願いします」
丁寧に挨拶したつもりだが、李さんがニコニコ顔ではなく俺を見詰めていた。
なんだ?
「「李さん」! タカさんのこと占って!」
「好き……」
「ん?」
「好きです……」
「李さん」が俺の顔を見ながら顔を赤らめていた。
さっき「李さん」の頭を殴ったせいか?
「おい」
「美しく甘いお顔。それでいて精悍で野獣の迫力のあるお顔。あなたが好きです」
「なんだよ!」
「もっとよく見せて下さい」
「ルー! 何とかしろ!」
「「李さん」!」
「電源を切れ!」
「あ、やめて」
「なんだこいつ!」
「あ、あなたはらいしゅ」
ぷつん
ハーが電源を落とした。
「李さん」が目を閉じた。
「おい、今なんか言い掛けたんじゃないか?」
「そうだった?」
「来週とか言おうとして無かったかよ!」
「何かそんなこと言ってましたよね?」
亜紀ちゃんも聞いてた。
「もう一度起こせ!」
「「はーい」」
ハーがまた電源を入れた。
「ぱぴぱぴぱぴぱぴ」
「あ、壊れちゃった」
「なんだと!」
「時々CMOSと仮想メモリーが飛んじゃうんだよね」
「制御OSが同期取れなくなっちゃうしね」
「おい!」
「こうなると自己修復プログラムが走るから」
「2週間は使えないね」
「おい、来週の話だったぞ!」
「「むりー」」
「……」
俺に一体来週何があるのか。
「あ、来週は吉野だよね!」
「楽しみだね!」
「!」
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