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アラスカのドライブ

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 昼食を食べて、一休みしてからドライブに出掛けた。
 栞が運転すると言うと、桜花たちが驚いて止めた。

 「私が運転いたしますから!」

 操縦全般が得意な椿姫が言った。

 「旦那の許可を得てるから!」
 「石神様! 本当ですか!」
 「ああ。たまにはいいだろう。院長をそっちに乗せるから、お前たちは絶対に守れよな」
 「は、はい!」

 静子さんは俺の運転する方に乗せる。

 「私も栞さんの方で」
 「死んじゃいますよ!」
 「え?」

 栞の方に院長、桜花、椿姫、睡蓮、六花と柳。
 俺の方に静子さん、響子、亜紀ちゃん、吹雪と双子とロボ。
 それに二人掛けのソファを積んだ。
 蓮花が合流する。
 院長たちと挨拶を済ませた。

 「群馬の俺たちの中枢になってる研究所の所長です」
 「蓼科文学様ですね! お話は石神様からいろいろと伺っています!」
 「そうですか。蓮花さんのことも多少は。石神を宜しくお願いします」
 「はい! もちろんでございます!」

 蓮花にどちらに乗るか聞いた。

 「ここはやはり、経験しておいた方が宜しいでしょうか」
 「マジか! おい、睡蓮!」
 「は、はい!」
 「蓮花も絶対に守れ! 俺たちの中核だからな!」
 「はい! 命に代えても!」
 「おう! 頼むぞ!」

 院長がよく分からないという顔をしていた。
 まあ、すぐに分かるぜぇー。

 俺が先に出た。
 が、すぐに栞が追い越して行く。
 電動移送車が一台鼻先をぶつけられた。

 「まだ5秒だぞ!」
 
 隣で静子さんが驚いていた。

 「「首都高の人喰いランクル」って有名でしてね」
 「え?」
 「栞がよくドライブに出て、必ず何台も犠牲になったんですよ」
 「エェー!」
 「俺は一度だけ乗りました。みんなに絶対に乗るなと命じました」
 「!」
 「響子には「ドライブ」と聞いたらすぐに俺の所へ逃げて来いと言ったよな?」
 「うん!」
 「石神さん……」

 前方で早くも絶叫が聞こえる。
 桜花たちの必死に止める叫び声も。
 基地から出るまでに、トラック1台、電動移送車6台が犠牲になり、すぐに量子コンピューターが避難指示を出した。
 6度、栞の運転するハンヴィが横転しそうになった。
 俺が後ろから必死に追い上げ、前方を制して停車させた。

 「よう、楽しんだか?」
 「うん。でもまだ先でしょう?」
 「そうだが、六花! お前が運転しろ」
 「はい!」

 「院長は無事か!」
 「はい! でも大分弱っておられます!」

 俺は一旦中へ入って確認した。

 「おし! まだまだお元気だ!」
 「い、いしがみ……」

 声が枯れてよく聞こえない。
 顔も青い。

 「大丈夫だそうだ!」

 栞が双子に引きずり降ろされ、尻を蹴られていた。
 再出発し、アラスカの原野に出た。

 六花の運転で、院長も多少持ち直したようだった。

 「じゃあ、いつもの呼ぶぞー!」
 
 子どもたちが笑った。
 柳は初めてのはずだ。

 「柳! ハーネスを装着しろ!」
 「はい?」
 「亜紀ちゃん! 付き合ってやれ!」
 「はーい!」

 ワキンとミミクンを呼ぶ。

 「我が主! また御呼び頂きまして!」
 「我が主! 今日も如何様にも御命じください!」

 院長と静子さんが硬直している。
 極彩色のでかいワキンと、超巨大ヘビのミミクンだ。

 「こいつらがここを護ってくれているんですよ。最高の連中です!」
 「「……」」
 「おい、このお二人は俺にとって最も大切な方々だ! 今後とも宜しくな!」
 「かしこまりました」
 「必ずやお守りいたします」
 「「……」」

 もはや、院長たちは何が起きているのか分からないでいる。
 亜紀ちゃんと柳がハーネスを掴まれて空中に消えて行った。

 「いーしーがーみーさーんー」

 柳の悲鳴がドップラー効果で小さくなって行った。

 「じゃあ、俺たちも行こうか!」

 双子が院長を静子さんを抱いてミミクンの上に乗る。
 もう一度戻って、用意したソファを上に上げる。
 俺たちも飛び上がって、上に座った。

 「よし! いつもの遊覧コースで頼む!」
 「かしこまりました!」

 院長たちをソファに座らせた。
 万一の場合に備えて、双子が両脇に立った。
 響子は俺の足の間に座って喜んでいる。
 ロボは桜花たちに囲まれて嬉しそうに寝そべっている。
 六花と栞も、俺の両脇で子どもを抱えて笑っていた。

 「院長! どうですかー!」
 「あ、ああ」

 どうなんだろうか?

 ミミクンはいつもの景色の綺麗な場所に着いて止まった。
 みんながアラスカの雄大な自然に感動する。
 院長と静子さんもソファから立ち上がって眺めていた。
 温かくなったが、ここは岩の間に氷河がまだ拡がっている。

 「凄いな、石神……」
 「ニューヨークの夜景もいいですけど、ここもいいでしょう?」
 「ああ」

 静子さんが院長の腰に手を回している。
 ミミクンの上は安定しているが、少し怖いのだろう。
 俺たちはゆっくりと戻った。
 柳と亜紀ちゃんも帰って来る。
 柳は泣いて来るかと思ったが、意外にニコニコとしていた。

 「綺麗でしたよ!」
 「そうか!」

 まあ、喜んでいるようで嬉しい。

 「斬はそのまま鷲掴みだったからなぁ」
 「御堂さんも飛びましたよね?」
 「そうだそうだ!」

 みんなで笑った。
 ワキンとミミクンに礼を言って帰した。
 桜花たちが全員に紅茶とクッキーを配った。

 「石神、とんでもないな」
 「ワハハハハハハ!」

 院長がようやく緊張が解けたようだ。

 「静子さん、大丈夫ですか?」
 「もう一杯一杯よ! あなたのお母さんは考え直したいわ」
 「そんなこと言わずに!」

 院長が笑っていた。

 「まあ、石神じゃなければこんな体験は出来んな」
 「たしかにね」

 和やかにお茶を楽しんだ。





 「じゃあ、帰りはまた私が運転するね!」

 全員が栞を止めた。
 栞が大泣きして運転したいと言うので、仕方なく俺と亜紀ちゃんが乗った。

 途中で横転して引っ繰り返り、俺たちは六花の運転するハンヴィの屋根に乗って帰った。
 俺がターナー少将にめっちゃ怒られた。
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