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「紅六花ビル」 帰宅

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 「虎酔花」を出て、「紅六花ビル」へ戻った。
 随分と遅くなったので、響子を六花と手早く風呂に入れて寝かせた。
 吹雪はとっくに眠っていて、六花が抱いても起きなかった。
 肝が据わっている。
 子どもたちも風呂を早めに上がって、みんなででかいベッドに一緒に寝た。

 「響子は明日、何時に起こすかなぁ」
 「こんなに遅いのは滅多にないですね」
 「いや、こいつ意外と夜遊びを覚えたからな。時々こんな時間もあるぞ」

 夜勤のナースから聞いている。

 「ああ、そういえば」
 「俺たちと一緒の時には早く寝かせてたからなぁ」
 「そうですね」

 響子が涙を流していた。
 まだ青のことを夢で見ているのか。
 六花が柔らかいタオルを持って来て、涙を拭いてやった。
 響子の頭を優しく撫でると、響子が少し笑った。

 「こいつ、単純な奴だな」
 「はい!」

 二人で抑えて笑った。
 六花にキスをして、俺たちも眠った。




 翌朝。
 俺は響子に起こされた。
 朝の6時半だ。

 「タカトラ」
 「おい、もう起きたのかよ」
 「うん。なんか目が覚めちゃった」
 「俺を起こすことないだろう!」
 「うーん。いいじゃん」
 「おい!」

 俺は笑って響子にキスをした。

 「眠くないのか?」
 「うん、全然」
 
 いつもと違う環境なので、神経が高ぶっているのかもしれない。
 まあ、この後ででも、帰りの車ででも眠ればいい。

 「じゃあ、起きちゃうか」
 「うん!」

 六花や子どもたちはまだ寝ている。
 俺たちはそっとベッドを抜け出して、洗面所に行った。
 ロボもついてくる。

 着替えて下に降りると、もう小鉄が厨房にいた。

 「お前も働き者だな!」
 「アハハハハハハ!」

 朝食を用意すると言われたが、ロボのササミだけ貰ってハマーで出掛けた。

 「まだ竹流がいるかもしれねぇ」
 「うん!」

 7時頃に「紫苑六花公園」に着く。
 駐車場から公園に近づくと、ギターの音がした。
 響子と二人で笑った。

 「よう!」
 「神様!」

 竹流が長いベンチでギターを弾いていた。

 「今日は来ないと思ってました!」
 「でもお前は来てたのかよ」
 「はい!」

 響子とも挨拶する。
 俺が自動販売機でジュースを買い、三人でのんびりと飲んだ。
 ロボは皿に水筒からミルクを出してやる。
 ササミを食べながら、ミルクを舐める。

 「ここはいつ来ても気持ちがいいな!」
 「はい!」
 「竹流が一生懸命に掃除をしてくれているからな」
 「いいえ。でもみなさん、本当に綺麗に使ってくれてますよ」
 「なんか悪さしたら、「紅六花」の連中がコワイしな」
 「アハハハハハハ!」

 響子がギターに触らせて欲しいと言い、竹流が渡した。
 弦を奏でてみる。

 「へたくそ」
 「初めてだもん!」
 「アハハハハハハ!」

 竹流が笑った。
 そして響子に簡単なコードを教えてやる。
 
 「あ! 音になったよ!」
 「そうだったか?」

 でも響子は喜んで、Gm7の音を鳴らした。
 
 「私もなかなかだよね!」
 「そうですね」

 竹流に褒められると、響子はこれからギターをやると言い出した。

 「タカトラ、買って!」
 「お前、フルートはどうしたよ?」
 「ん?」

 響子のおもちゃ箱に入ったままだ。
 音が出ないので、早々に捨てた。

 「時々は……」
 「嘘つけ!」

 竹流がそろそろ帰ると言い、俺たちも「紅六花ビル」に戻った。
 小鉄に朝食をもらい、響子と食べていると子どもたちが起きて来た。
 珍しく響子が先に起きているので驚く。

 「響子ちゃん、早いね!」
 「みんなたるんでるよ」

 子どもたちが笑った。
 子どもたちが食事を始め、響子を任せて俺は六花を起こしに行った。

 「おい、そろそろ……」

 ベッドの六花を揺すると、下から抱き着かれた。

 「おい!」

 そのまま物凄い勢いで顔を抱かれ、濃厚なキスをされる。
 布団が捲られ、両足で腰を挟まれた。

 「なんだよ!」
 「だって! 全然シテませんよ!」
 「!」

 すぐに服を脱いでヤった。

 「お前よー」

 笑って吹雪を抱いて、早く来いと言った。
 六花は満足そうに手を振った。




 みんな食事を終え、俺たちは帰ることにする。
 子どもたちは簡単に掃除をし、布団を干した。
 その間、集まった「紅六花」の連中と話をしていた。

 「おい、響子」

 響子が目を閉じて身体を揺らしていた。
 六花と笑った。

 「眠いのか?」
 「うん」

 抱きかかえてハマーのベッドに横にしてやった。
 ロボも一緒に入って、一緒に眠り始めた。

 子どもたちが支度を終えて駐車場に来た。
 「紅六花」の連中も外に出て来る。

 「じゃあ、今回も世話になったな!」
 「こちらこそ!」
 
 「みんな! またな!」

 六花が言うと怒号が湧き、響子がベッドから飛び起きた。
 でも、すぐにまた寝た。
 子どもたちが笑って乗り込み、出発する。

 


 「タカさん、「紅オイシーズ」を一杯もらっちゃいましたよ!」

 助手席の亜紀ちゃんが嬉しそうに言う。

 「じゃあ、ニューヨークにも持って行くか!」
 「はい!」

 明後日からニューヨークだ。
 
 「ちゃんと取り分けておけよな」
 「大丈夫ですよ!」
 「お前らの食事に関しては大丈夫だったことはねぇ!」
 「ワハハハハハハ!」

 亜紀ちゃんがお昼はどうしようかと言った。

 「さっき朝食を喰ったばっかりだろう!」
 「だからお昼の話じゃないですか!」
 「まったく意味が分からん!」

 亜紀ちゃんが後ろに座っている六花と、サービスエリアのメニューを見せながら相談を始める。
 まったく、こいつらの元気さはいい。
 
 「六花さん、どうですか?」
 「ここの焼肉丼を食べたいですね」
 「やっぱ!」
 「はい!」

 少し先のサービスエリアらしい。

 「タカさん! 急いで下さい!」
 「分かったよ!」

 俺はアクセルを踏み込んだ。





 ハマーのV8エンジンが嬉しそうに吼えた。 
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