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皇紀 in フィリピン Ⅶ

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 最上階の10階には、まだ誰も来ていなかった。
 各階を殲滅しながらなので、下の階で戦っているのだろう。
 僕は廊下の突き当りの部屋へ向かった。
 廊下の前で4人の男たちが立っていて、僕に向かって撃って来た。
 左腕を振って、「震花」を前方に撃ち出す。
 4人と一緒に大きなドアも吹き飛んだ。
 
 「丁度いい加減に出来た!」

 中から喚く声が聞こえて来る。
 僕はゆっくりと部屋へ入った。

 「待て! その人を撃つんじゃない!」
 
 10人程の男たちが僕に銃口を向けていた。
 多少の英語は僕にも分かる。

 「降参だ! 我々はあなたたちに何もしない!」
 「……」

 意味は分かったけど、英語でどう言えばいいのか分からなかったので黙っていた。
 そのうちにルーとハーたちが来る。
 1分後に廊下で激しい音が聞こえて来た。
 どうやら来たようだ。

 「皇紀様!」

 デュールゲリエのハーが僕に駆け寄って来た。

 「皇紀ちゃん!」

 ルーとハーも来た。
 デュールゲリエのルーは銃を持っている10人の男たちを撃った。

 「さてと、じゃあ始めようか」

 ルーが幹部の老人たちに言った。

 「もう終わりにしてくれ」
 「終わってんじゃん」
 「頼む、もう殺さないで」
 「あ?」

 ルーが交渉を始めた。

 「散々皇紀ちゃんを襲っておきながら、今更何言ってんの?」
 「事前に話したはずだ。我々ではなく、本国の本部がやったことだ!」
 「お前の組織だろう!」
 「どうしようもない! 本部には逆らえないんだ!」
 「だったら死ねよ」
 「頼む! 殺さないでくれ! 本部にも掛け合う!」

 ルーがハーを見た。
 ハーが首を振っていた。
 僕を見る。

 「じゃあ、本部の場所と、主だった拠点。それと特にお前たちの中の強そうな奴の名前を言え」
 「分かった!」
 「一人ずつ連れ出して尋問する。矛盾があったら、全員殺す」
 『!』

 僕は持って来た中国の地図を拡げた。
 尋問はハーとデュールゲリエのルーに任せた。
 僕たちは部屋に残って見張ることにする。

 真岡さんも上がって来た。
 
 「終わったんですね」
 「ええ、今尋問中です」
 「なるほど」

 「ルー、ビル内の書類を見て来て」
 「はい、かしこまりました」

 尋問には3時間掛かった。
 中国の拠点、125か所が判明した。





 「タカさん!」
 「終わったか!」
 「はい! 中国の「三合会」の拠点125カ所を聞き出しました」
 「そうか」
 「これ、全部やっちゃっていいんですか?」
 「やれるか?」
 「はい!」
 「じゃあ、頼む」
 
 僕は僕は念のために確認した。

 「あの、軍事施設なんかも5か所あるんですけど」
 「構わん」
 
 良かった。

 「それと」
 「なんだ?」
 「今回は僕とデュールゲリエの二人でやりたいんですけど」
 「大丈夫か?」
 「はい!」

 タカさんが笑っていた。

 「殲滅戦装備がある。それでマッハ100で飛行できるはずだ」
 「分かりました!」
 「今晩中にカタを着けろ!」
 「はい!」
 「皆殺しにする必要はねぇ。拠点に「虚震花」か「ブリューナク」をぶち込んでくればいいからな」
 「はい!」
 「5分以内に、「業」からの攻撃宣告を中国や各国へ出す。お前たちはロシア側から侵入しろ。帰りもな」
 「分かりました! でも、中国は信用しますかね?」
 「どうでも構わん、とにかく国際世論をそう仕向けられればいいんだからな。中国がどう反論しようとも構わん。後のことは俺に任せろ」
 「はい!」

 僕たちは一旦屋敷に戻り、食事をした。
 久し振りにルーとハーと一緒に食べられて楽しかった。

 「皇紀ちゃん、私たちも行くよ」
 「いいんだ。これは僕たちにやらせて」
 「いいの?」
 「うん。二人の顔が見られただけで嬉しいよ」
 「「うん!」」

 二人に頬にキスをされた。
 二人が笑って帰って行った。
 僕を信頼してくれた。

 僕は「Ωコンバットスーツ」を着た。
 
 「じゃあ、行こうか」
 「「はい!」」

 ルーとハーが嬉しそうに笑った。
 5メートルにもなる殲滅戦装備を装着していたが、その笑顔はあどけない可愛らしいものだった。





 朝方までかかって、125カ所の拠点を潰した。
 屋敷に戻り、タカさんに報告し、お風呂に入った。
 ルーたちが朝食の支度をしていてくれた。
 テレビを点ける。
 ルーが通訳してくれた。

 〈昨夜、国際テロリスト「カルマ」が中国全土で無差別テロを行ないました〉

 タカさんは世界中で大騒ぎになっていると教えてくれた。
 街頭カメラや誰かのスマホの映像が次々に紹介される。
 上空から「ブリューナク」を撃った閃光だ。
 当然、高空にいる僕たちの姿は映っていない。

 〈軍事基地や市内のビル、施設などが100カ所以上も襲われ、崩壊しました。中国政府の発表によりますと「謎のテロリスト」は緊急出動した中国軍により撃退され、本日未明にテロ行為は終息したとされています〉

 いつもの中国の発表だ。
 自国が敗北したとは絶対に言わない。
 
 〈趙国家主席は「謎のテロリストは、まだどこの国とは判明していない。身柄は拘束しているので、これから調査する。被害は多数の地域であったが、死傷者は500人に上った。しかし、中国軍や警察の連携が早く、早期に撃退出来た」と述べています〉

 まあ、どういう発表でも構わない。
 しばらく中国のテロのニュースが流れたが、次のニュースに切り替わった。

 「マニラで話題のこの人!」

 キャスターが笑顔で言った。

 「「金髪頭の悪魔」です! 謎の人物ですが、ギャングやマフィアなどを潰して回っているようで、街では正義の味方と考える人も多く……」
 「……」

 「街ではこの髪型を望む人も増え……」

 理容店で金髪に染め、ポンパドールを自慢げに見せている男性たちの映像が流れる。
 ルーとハーがニコニコして僕を見ていた。

 「あのさ」
 「「はい!」」
 「ここでやってたのって、ほとんど君たちだよね?」
 「「いいえ!」」
 「……」

 ルーとハーが笑い、僕もそのうちにおかしくなって笑った。
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