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ハーのガーディアン

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 話は少し遡って、2月の初旬。
 年始に謎の敵に襲われてハーが死に掛けた。
 その傷もすっかり癒えては来たが、俺の不安は拭えなかった。
 何故かハーはよく死に掛ける。
 俺はこういうことには何かがあると考える人間だ。
 人間の縁は深い。
 
 「ハー! ちょっと付き合え!」
 「はーい!」

 俺はハーにガーディアンを付けることを決意した。
 やはり妖魔に襲われやすい柳にも、ハスハというガーディアンを付けた。
 その後では、柳には何も問題は起きていない。

 「柳! お前も付き合え」
 「はい! 喜んで!」

 柳にアルファードを出させる。
 俺の車では絶対に嫌だ。
 あいつだからだ。

 俺がアルファードのナビに住所を入れさせた。

 「よし、行け!」
 「はい!」

 俺とハーは後ろのシートに座っている。
 イチャイチャする。

 「タカさん、どうして私一人なの?」
 「ルーはまだいらないからな」
 「何が?」
 「ハー、お前にガーディアンを付けることにした」
 「え!」
 「お前はルーと一緒にいても、いつもお前ばっか死ぬからなぁ」
 「死んでないもん!」
 「ついこないだヤバかったばっかりだろう!」
 「エヘヘヘヘヘ」

 オッパイが大きくなったんじゃないかと言うと、ハーが喜んだ。
 ちょっと触らせろと言うと、どんどん触れと言う。

 「石神さん!」

 柳が怒った。




 到着した。

 「石神さん、どこなんですか、ここは?」
 「ああ」

 塀に覆われているが、結構広い場所だ。
 1000平米はあるか。
 鉄の棒の門がある。
 門は大型車両が通れるほどに広い。
 平日は開いているが、今日は土曜日なので閉まっている。
 俺が鍵で門を開けた。
 柳にアルファードを入れさせる。
 地面の多くはコンクリートとアスファルトで覆われている。

 「何も無いですよね?」
 「今から呼ぶよ」

 俺は鉄製のマンホールの蓋の鍵を開けて、マンホールを捲った。

 「ウンちゃーん! 出て来い!」
 「石神様ですかー! すぐに出ますー!」

 ウンコの妖怪「ウンちゃん」が、マンホールから器用に身体を伸ばして出て来た。
 体長は5メートル以上になっていた。

 「あんたはぁー!」
 「えーん、また騙されたぁー」

 ハーが驚き、柳は泣いていた。

 「石神様! 今日、お会い出来て嬉しいですー」
 「そうか」
 「ここに来てからいつもいいウンコを頂いてまして!」
 「良かったな!」
 
 どう良いのかは知らねぇ。

 「今日はどうなさったのですか?」
 「実はな……」

 俺は何度かハーが殺されそうになった話をウンちゃんにした。
 ウンちゃんは真面目に聴いている。

 「それは大変でしたね!」
 「そうなんだよ。そこでな、お前にハーのガーディアンになって欲しいんだ」
 「タカさん! 私は嫌だよ!」
 「私も嫌です!」

 何で柳が嫌がる。

 「お前は関係ねぇだろう?」
 「だって! また私のアルファードで運ぶんですよね!」

 ああ、そういうことか。

 「ウンちゃんはここから動けねぇよ。大事な仕事もあるしな」
 「そうなんですか?」

 「ウンちゃん、離れていてもハーを護れるか?」
 「はいー!」
 「だそうだ!」
 「「……」」

 二人とも嬉しがらない。

 「なんだよ、ノリが悪いな」
 「だってタカさん、ウンちゃんって臭いじゃない」
 「え?」
 「そうでしょう! だって、ウンコの妖怪なんだよ?」
 「ああ!」

 俺は今臭いか二人に聞いた。

 「アレ?」
 「臭くないですよ!」
 「そうだろう!」

 俺は笑って二人に説明した。

 「ウンちゃんはな、頑張ってウンコを浄化する能力を発展させたんだ」
 「そうなの!」
 「ここには毎日大量のウンコが持って来られるんだ。それをウンちゃんが全部綺麗な真水に浄化してくれているんだよ」
 「「エェー!」」
 
 二人が叫ぶ。

 「な! ウンちゃんのお陰でここは非常にクリーンな場所になってる。そうだよな、ウンちゃん?」
 「はいー! 毎日ウンコを食べて綺麗にしてますよー!」
 「「げ」」

 二人が微妙な顔になる。

 「おい! ウンちゃんに失礼だろう!」

 ウンちゃんがちょっと悲しそうな顔をしていた。

 「あ、ごめん」
 「ごめんなさい」
 「い、いいんですー」

 「おい、本当にウンちゃんは素晴らしいんだぞ!」
 
 ハーが俺に聞いた。

 「タカさん、ウンちゃんが素晴らしいのは分かったけど」

 ウンちゃんが嬉しそうな顔になった。

 「でもさ、戦う力はどうなの?」
 「ああ、それか。ウンちゃんはな、なんでも「ウンコ」に変えてしまう能力があるんだよ」
 「「ゲェ!」」
 「おい! お前らいい加減にしろ!」
 「だってぇー!」

 「いいんですよ。でも、その能力も最近です。ちょっと前までは相手にウンコになってもいいと、自分で言わせなければなりませんでしたからー」
 「そうなんだ」

 ハーがやっと感心する。

 「しばらく前に、雲国斎という妖怪が来ましたが、その時にはやっとウンコになるのを認めさせてウンコにしましたー」
 「え! あいつらって、相当な手練れだよね!」
 「そうですか。でもウンコになれば関係ありませんからー」
 「ウンちゃん、スゴイよ!」
 「いいえー、それほどでもー」
 
 ウンちゃんが嬉しそうに笑った。
 ウンちゃんの力は分かったようだ。

 「じゃあ、ハー。いいな?」
 「うーん」
 「なんだよ?」
 「本当に臭くならない?」
 「どうだよ、ウンちゃん」

 「はいー! 一応私の分体を着けることになりますがー」
 「え!」
 「大丈夫ですよー。お尻の穴がちょっと香ばしくなるくらいでー」
 「!」

 「まあ、一度やってみろよ」
 「はいー」

 ウンちゃんから何かの波動が来た。

 「これで大丈夫ですよー」
 
 ハーにお尻の穴を出せと言った。
 普通の人間は嫌がるが、裸族のこいつには何の抵抗もない。
 パンツを脱いで、俺に尻を拡げる。

 「お! 本当にちょっと香ばしいくらいだぞ!」
 「ほんと! 臭くない?」
 「おお! 大丈夫だ。いい匂い系だよ」
 「やったぁー!」
 「柳も嗅いでみろ」
 「え、私もですか」
 「早くしろ!」

 柳が顔をしかめながら、ハーのお尻に鼻を近づける。

 「あ、ほんとだ! 臭くはないよ!」
 「やったぁー!」

 「ウンちゃん、ありがとうな!」
 「いーえー!」
 「ねぇ、ウンちゃん」
 「なんですかー」
 「ルーにも同じことが出来るかな?」
 「はいー。ハーさんとルーさんは繋がってますからねー」
 「じゃあ、お願い!」
 「分かりましたー」

 ハーにルーの分も波動を重ねた。
 手を握ればルーにも付くらしい。
 まあ、双子はやっぱりそれがいいか。

 ウンちゃんに礼を言って家に帰った。





 しばらく後で、ハーがまた妖魔の攻撃を喰らった。
 その妖魔はオートカウンター的に、たちまちウンコになった。

 「ハー!」
 
 助けに行った亜紀ちゃんが、巨大なウンコの塊に驚く。

 「何これぇ!」
 「ウンちゃんが守ってくれたの」
 「くっさいよー!」
 「そうだね」

 高さ1メートルもの巨大なウンコ。

 「これ、どうすんの?」
 「えーと、片付ける?」
 「がんばってね」
 「亜紀ちゃんも手伝って、あー! まてぇー!」

 亜紀ちゃんは飛び去った。

 ハーの受難は続く。 
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