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柳オッパイ受難、再び

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 《スノー・キャット》作戦が終わった週の土曜日。
 夕食後に、みんなで「虎温泉」に入った。

 双子がいつものように、かき氷を作り、俺はメロン味のシロップに、バニラアイスを乗せて欲しいとリクエストした。

 「え! そんな発想は無かったよ!」
 「クリームメロンじゃん!」

 双子が裸のまま庭を横切り、家の2階の冷蔵庫からバニラアイスを取って来た。
 びしょびしょに廊下を濡らし、皇紀が呼ばれて拭かされた。

 「なんだよー」

 皇紀は大好きな双子だから、文句をいいつつやる。

 「はい、タカさん!」
 「おう!」

 双子は自分たちも俺と同じにしてニコニコしている。
 亜紀ちゃんは練乳イチゴにバニラアイスを乗せ、柳はイチゴシロップにバニラアイスを乗せた。
 ルーが柳にかき氷を渡し、柳は食べやすいように上体を湯船の上に出した。

 「あ」
 「?」

 ルーが何か言いたげだったが、そのまま湯船に浸かる。
 みんなでかき氷を食べた。
 温かい湯に浸かりながら、冷たいかき氷は贅沢で美味しかった。

 ルーがまだ柳を見ている。
 隣のハーの耳元に何か囁く。
 ハーも柳を見て、ルーの耳元で何か言う。
 ちょっと嫌な感じだ。

 「おい、何か言いたいことがあるのか?」

 だから俺が問い詰めた。

 「柳ちゃん」
 「え、なに?」
 「あのさ、またちょっとオッパイが大きくなった?」
 「え!」

 みんなが柳のオッパイを見る。
 亜紀ちゃんが一番気にして近くに来て見る。

 「ちょ、ちょっと!」
 
 柳が堪らずに湯船の下にオッパイを沈める。

 「柳さん! どういうことですかぁ!」
 「亜紀ちゃん! なんで怒ってるのよ!」

 隠されると見たくなる。

 「柳、オッパイを見せろ」
 「石神さん!」

 双子がかき氷を置き、柳を持ち上げる。
 みんなでよく見た。

 「やめてぇー!」
 「おい、おっきいな」
 「そうですよね!」
 「ちょっと触ってみるね」
 「やめてよー!」

 ハーが手で揉んでみた。

 「間違いないよ!」
 「柳さん!」
 「なんなのよー!」

 柳が泣きそうになるので離してやった。

 「柳さん、いくらなんでも、ちょっとそれは酷いんじゃないですか?」
 「なんでそうなるのー!」
 「これは裏切りだよね」
 「あんなに誓い合ったのにね」
 「何をよー!」

 「まあ、そこまでにしてやれよ」
 「私、何か悪いことしたんですかー!」
 「まあまあ」

 取り敢えずかき氷を楽しんだ。
 柳はオッパイを出さずに食べた。




 「虎温泉」を上がって、酒を飲んだ。
 いつもの亜紀ちゃんと柳の他、双子もジュースを飲んで付き合う。
 つまみが柳から遠ざけられていた。
 俺が可哀そうなことをするなと、柳に小皿に取ってやった。

 「亜紀ちゃん、どうする?」
 「許せないね」
 「亜紀ちゃん!」

 「柳ちゃん。そこまでオッパイが大きいと、もう「ちっぱい同盟」から除名するしかないよ?」

 ルーがそう言い、両手を拡げて外人の呆れたポーズをした。
 ああ、そんな同盟があったな。

 「私、別にいいんだけど」
 「「「!」」」
 
 亜紀ちゃんと双子が話し合っている。

 「じゃあ、残念だけど」
 「亜紀ちゃん、脱退はどうする?」
 「トイレでヤキだね」
 「ちょっとぉー!」

 亜紀ちゃんが俺を見る。
 
 「タカさん、「ルート20」を抜けたいって奴はヤキ入れてましたよね?」
 「してねぇよ!」

 「柳ちゃん、「ちっぱい同盟」を抜けるってことは、もう牛乳をゴクゴク飲めなくなるんだよ?」
 「え、私、牛乳ってそんなに好きじゃないし」
 「なんだってぇ!」

 くだらねぇ。

 「柳ちゃん、もう「ちっぱい同盟」仲間の鷹さんのお料理が食べられないんだよ?」
 「えぇー!」
 「そんなことはねぇ!」
 「チッ!」

 何を言いやがる。

 「柳さん、タカさんも「ちっぱい同盟」なんですよ?」
 「え?」
 「俺は入ってねぇよ!」

 俺は立ち上がった。

 「お前ら! いい加減にしろ! 柳が可哀そうだろうがぁ!」

 三人の頭に拳骨を落として行く。

 「「「すいませんでしたぁー!」」」

 三人が柳に謝った。
 まったく調子に乗りやがって。

 「じゃあ、しょうがないね」
 「卒業式をするかー」
 「柳さん、卒業しても私たちを忘れないでね」
 「え、うん」
 「……」

 三人が『蛍の光』を謡った。
 俺も一緒に歌えと目で訴えるので、一緒に歌った。
 柳がヘンな顔で聴いていた。
 まあ、どう反応していいのか分からないだろう。
 ルーが立ち上がった。

 「御堂柳殿! あなたは本日をもって栄えある「ちっぱい同盟」を卒業し、オッパイ自慢人間になったことを証明します!」
 「栞ちゃん、六花ちゃん、麗星ちゃんと末永く自慢していって下さい!」
 「いつかオッパイが誰かにもがれませんように!」
 「亜紀ちゃん、怖いよ!」

 「……」

 三人が柳に、どうしてオッパイが大きくなったのか、また聞き始める。
 散々いじめておいて、いい性格をしている。

 「そんな、何もしてないよ」
 「またお部屋を探しますよ?」
 「絶対やめて!」

 俺も絶対にするなと言った。

 「あのなぁ。人間は姿形じゃねぇんだ。魂だって俺がいつも言っているだろう」
 「「「はーい」」」
 「もう「ちっぱい同盟」なんて解散しろ!」
 「「「はーい!」」」

 みんなで『仰げば尊し』を歌った。
 何故か俺も歌わされ、更にギターを持って来て、もう一度みんなで歌った。





 一体、何をやっているんだろう。
 それにしても、柳は20歳を過ぎてから、どうしてオッパイが成長したのだろうか。
 子どもたちの手前何も言わなかったが、ちょっと気になる。
 まあ、別に俺は今の自分のオッパイでいいのだが。
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