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《スノー・キャット》作戦 エピローグ
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《スノー・キャット》作戦を終え、日本に戻って来た。
俺は聖に電話した。
「よう、また世話になったな」
「そんなことねぇよ。俺も楽しかった」
聖は忙しい中を、俺たちのために一緒に作戦行動に来てくれた。
「双子に随分と教えてくれたようだな」
「まあ、あいつら楽しんでたぜ」
「お前のお陰だよ」
聖は笑っていた。
「あいつら、戦争だっていうのに、何の緊張も不安もねぇのな」
「まあ、ちょっと頭のネジがぶっ飛んでるからな」
「僅かな時間ですぐに熟睡するしよ。それに警戒も怠ってねぇ」
「ああ」
「遊んでいるように見えて、ちゃんとやるべきことは分かってる」
「バカだからな」
聖はわざとミスを連発してくれた。
ルーとハーがミスを補うようにさせてくれた。
「お前、ハッキングの機械を壊したんだってな」
「ああ、ちょっと遊び過ぎた」
「嘘つけ! お前が射撃でミスることなんか絶対にねぇ!」
「アハハハハハ!」
「あれで、いかにも俺たちがデータを盗めなかったように見せかけたんだろう?」
「まあな」
「ルーとハーが本気で怒ってよ。本当に失敗したみたいだろうな」
「だから、あのデータはトラが使えるよ」
「ありがとうな」
聖は俺たちがデータを盗めなかったように示してくれた。
だから、そのデータを利用するとは敵は考えないはずだった。
まだ、どのようなデータなのかは解析し切っていない。
でも、今分かっていることだけでも、重要な内容があることが判明している。
拉致した人間たちをどこへ送っているのかが分かるはずだ。
「これから、ロシアの拠点を強襲できるかもしれない」
「またいつでも呼んでくれ」
「ああ、頼む」
「ルーとハーはいい戦士になるぜ」
「そうか、ありがとうな」
聖はちゃんと二人の名前を憶えている。
あいつは一緒に戦場に立った人間のことは、絶対に忘れない。
とっくに覚えていた。
二人に緊張させないように、わざと間違えていたのだ。
聖にもう一度礼を言ってから電話を切った。
昼食を食べて、全員を集めて今回の《スノー・キャット》作戦のブリーフィングをした。
「基地から奪ったデータは、今アラスカで解析中だ。流石に暗号化されているからな」
アラスカの量子コンピューターにかかれば、大して時間は掛からないはずだが。
そこから更に、様々な情報と付き合わせて裏を取る作業もある。
データを100%信用はしない。
ディスインフォメーション(偽情報)の可能性もあるためだ。
「ルー! 作戦の詳細な進行を話せ!」
「はい!」
ルーが時系列で俺たちの行動を説明して行った。
基地内で、データを抜いている最中に、パワードスーツの襲撃を受けたと報告した。
映像は、二人のコンバットスーツに装着したカメラガ捉えている。
それについて、質疑応答をした。
「油圧方式でした。腰回りにバッテリーがあり、そこそこのパワーがありました」
「どの程度のパワー?」
「映像を見て分かるように、内装の壁は軽鉄を無視して破壊出来ます。人間であれば、車に跳ねられたくらいの衝撃はあると思われます」
「スピードは?」
「あまり早くありません。旋回のスピードで時速200キロと解析出来ました。それがトップスピードです。移動は時速10キロかな?」
「じゃあ、私たちなら回避出来るね?」
「はい!」
「重機関銃の他に武装は?」
「今回はありませんでした」
「手は何かを持てる?」
「可能だと思います」
様々な問いに、ルーとハーが答えた。
「腕の中で重機関銃の操作ボタンがあったようだ。まあ、俺たちならばもっと高性能のものが作れそうだけどな」
「タカさん、試作しましょうか?」
皇紀が言う。
「そうだな。「花岡」を習得していない人間が使えるかもな。でも、俺たちにはデュール・ゲリエがいるし、「花岡」の習得も千石が来てから効率的になったしなぁ」
「ちょっと必要な場面を考えてみます」
「ああ。建築関係で使えるかもな」
「なるほど!」
「ルーとハーも一緒に考えてみろよ」
「「はい!」」
俺たちは続いて原子炉の処理について話し合った。
「今後は同様の事態が想定されます」
「どこの軍事基地も、原子炉があっておかしくないからな」
「はい。送電施設を破壊されても稼働できるように、原子炉が基地内にあることは十分に考えられます」
「ということで、今後はどのように原子炉を「安全」に停止出来るかが課題になった。俺も原子炉については詳しくはない。今回はたまたまアラスカにマーロウという元原子力発電所の技術者がいて助かった」
「また大穴に落すのはどうなんですか?」
亜紀ちゃんが提案した。
「それはなるべく避けたい。今回は緊急避難出来にクロピョンを呼んだが、俺は妖魔を気軽に使うつもりはない」
そのことは、全員が心得ている。
「私の「最後の涙」であれば、数キロの穴も空けられると思いますが」
「亜紀ちゃんの「最後の涙」は、周辺への破壊力もでかい。一緒に原子炉も吹っ飛ばすだろうな」
「そうですかー」
亜紀ちゃんが残念がる。
「俺が考えているのは、ウランやプルトニウムを別な金属にすることだ。一般には「核変換」と呼ばれる技術だが、分子構造を変えることで性格が異なるものに出来るように、原子核も変換出来る。ただ、その方法はまだ確立されていない」
「「花岡」でそれをやるってことですね!」
「そうだ。その技を開発したいと考えている」
柳が立ち上がった。
「じゃあ、また「新技」の探求ですね!」
「そうだな」
「また、私の出番ですか!」
柳がニコニコしている。
新技開発担当だと思っている。
「いや、今回はルーとハーにやらせようと思ってる」
「なんでぇー!」
柳が泣きそうな顔になる。
やりたいのは分かるが。
「柳には引き続き、対妖魔の「技」を究めて欲しいからだ。お前が頼りだからな!」
「はい! 石神さん!」
まあ、その通りだが、柳よりも双子の方が早そうだからだ。
口には出さない。
「どうだ、二人は?」
「「はい!」」
「出来そうか?」
「うん! ウランとかの陽子の数を変えればいいんだよね? もしくは制御棒のような物質をぶち込むとか。プラズマを利用してどうかって今思い付いた!」
「中性子をガンガン打ち込んでもいいよね? 実効的かはわからないけど、「コキュートス」で冷却することもどうかって思う!」
「おお、そうだな」
なんか、早く出来そうだ。
「……」
柳が呆然とした顔で、また座った。
「ああそうだ。今回は臨界まで時間的余裕があったけどな。原子炉でどれだけ爆発を早められるかも研究してくれ。今後の対処に必要だ」
「「分かりましたー!」」
「な、柳!」
「は、はい」
さて、最後の問題だ。
「今回も妖魔が出て来た。基地内の人間が騙されて避難所に指定されていた場所に、召喚の魔法陣があったと考えられる。数百人を犠牲にして、妖魔を呼び出した」
「速い奴だったよね!」
「回避が上手かった」
「範囲殲滅の大技を使えば行けたと思うな」
「あの時は原子炉の問題があって出来なかったけどね」
双子が意見を言って行く。
「まあ、その通りだが、今回の妖魔は俺たちを攻撃しなかった」
「うん。タカさんに言われて初めて気付いたけど、ずっと避けてるだけだったよね?」
「悪い波動も無かったね?」
「そこだ。だから俺も見逃してみた」
「召喚されても、敵にならない奴がいるってこと?」
「そういうことだ。本当の所は確認できないけどな。でも、今回の召喚は「無人」だった。宇羅も「業」もいなかった。そういう場合、もしかしたら呼び出されはしても、自由意思で行動することもあるのかもしれない」
「いい妖魔だー!」
ハーが喜ぶ。
「まだ安心はするな。だけどな、俺もそんな感じがした。だから見逃した」
「味方になるかな?」
「分からん」
「タカさん、どうするの?」
俺は考え続けていた。
「分からんことは、また確認するしかないな」
「じゃあ、会いに行く?」
「それしかないだろうな」
「私たちも行くよ!」
「そうだな。じゃあ、その時は頼むな」
「「はい!」」
俺は、あの妖魔に見覚えがある気がすることは、まだ話さなかった。
ブリーフィングを終え、俺は地下へみんなを誘って、映画『D』をみんなで観た。
ロシア軍が開発したパワードスーツで「隕石怪獣」と戦う男の物語だ。
ぶっとんだB級映画だが、非常に面白い。
子どもたちがみんな大興奮で観ていた。
俺は聖に電話した。
「よう、また世話になったな」
「そんなことねぇよ。俺も楽しかった」
聖は忙しい中を、俺たちのために一緒に作戦行動に来てくれた。
「双子に随分と教えてくれたようだな」
「まあ、あいつら楽しんでたぜ」
「お前のお陰だよ」
聖は笑っていた。
「あいつら、戦争だっていうのに、何の緊張も不安もねぇのな」
「まあ、ちょっと頭のネジがぶっ飛んでるからな」
「僅かな時間ですぐに熟睡するしよ。それに警戒も怠ってねぇ」
「ああ」
「遊んでいるように見えて、ちゃんとやるべきことは分かってる」
「バカだからな」
聖はわざとミスを連発してくれた。
ルーとハーがミスを補うようにさせてくれた。
「お前、ハッキングの機械を壊したんだってな」
「ああ、ちょっと遊び過ぎた」
「嘘つけ! お前が射撃でミスることなんか絶対にねぇ!」
「アハハハハハ!」
「あれで、いかにも俺たちがデータを盗めなかったように見せかけたんだろう?」
「まあな」
「ルーとハーが本気で怒ってよ。本当に失敗したみたいだろうな」
「だから、あのデータはトラが使えるよ」
「ありがとうな」
聖は俺たちがデータを盗めなかったように示してくれた。
だから、そのデータを利用するとは敵は考えないはずだった。
まだ、どのようなデータなのかは解析し切っていない。
でも、今分かっていることだけでも、重要な内容があることが判明している。
拉致した人間たちをどこへ送っているのかが分かるはずだ。
「これから、ロシアの拠点を強襲できるかもしれない」
「またいつでも呼んでくれ」
「ああ、頼む」
「ルーとハーはいい戦士になるぜ」
「そうか、ありがとうな」
聖はちゃんと二人の名前を憶えている。
あいつは一緒に戦場に立った人間のことは、絶対に忘れない。
とっくに覚えていた。
二人に緊張させないように、わざと間違えていたのだ。
聖にもう一度礼を言ってから電話を切った。
昼食を食べて、全員を集めて今回の《スノー・キャット》作戦のブリーフィングをした。
「基地から奪ったデータは、今アラスカで解析中だ。流石に暗号化されているからな」
アラスカの量子コンピューターにかかれば、大して時間は掛からないはずだが。
そこから更に、様々な情報と付き合わせて裏を取る作業もある。
データを100%信用はしない。
ディスインフォメーション(偽情報)の可能性もあるためだ。
「ルー! 作戦の詳細な進行を話せ!」
「はい!」
ルーが時系列で俺たちの行動を説明して行った。
基地内で、データを抜いている最中に、パワードスーツの襲撃を受けたと報告した。
映像は、二人のコンバットスーツに装着したカメラガ捉えている。
それについて、質疑応答をした。
「油圧方式でした。腰回りにバッテリーがあり、そこそこのパワーがありました」
「どの程度のパワー?」
「映像を見て分かるように、内装の壁は軽鉄を無視して破壊出来ます。人間であれば、車に跳ねられたくらいの衝撃はあると思われます」
「スピードは?」
「あまり早くありません。旋回のスピードで時速200キロと解析出来ました。それがトップスピードです。移動は時速10キロかな?」
「じゃあ、私たちなら回避出来るね?」
「はい!」
「重機関銃の他に武装は?」
「今回はありませんでした」
「手は何かを持てる?」
「可能だと思います」
様々な問いに、ルーとハーが答えた。
「腕の中で重機関銃の操作ボタンがあったようだ。まあ、俺たちならばもっと高性能のものが作れそうだけどな」
「タカさん、試作しましょうか?」
皇紀が言う。
「そうだな。「花岡」を習得していない人間が使えるかもな。でも、俺たちにはデュール・ゲリエがいるし、「花岡」の習得も千石が来てから効率的になったしなぁ」
「ちょっと必要な場面を考えてみます」
「ああ。建築関係で使えるかもな」
「なるほど!」
「ルーとハーも一緒に考えてみろよ」
「「はい!」」
俺たちは続いて原子炉の処理について話し合った。
「今後は同様の事態が想定されます」
「どこの軍事基地も、原子炉があっておかしくないからな」
「はい。送電施設を破壊されても稼働できるように、原子炉が基地内にあることは十分に考えられます」
「ということで、今後はどのように原子炉を「安全」に停止出来るかが課題になった。俺も原子炉については詳しくはない。今回はたまたまアラスカにマーロウという元原子力発電所の技術者がいて助かった」
「また大穴に落すのはどうなんですか?」
亜紀ちゃんが提案した。
「それはなるべく避けたい。今回は緊急避難出来にクロピョンを呼んだが、俺は妖魔を気軽に使うつもりはない」
そのことは、全員が心得ている。
「私の「最後の涙」であれば、数キロの穴も空けられると思いますが」
「亜紀ちゃんの「最後の涙」は、周辺への破壊力もでかい。一緒に原子炉も吹っ飛ばすだろうな」
「そうですかー」
亜紀ちゃんが残念がる。
「俺が考えているのは、ウランやプルトニウムを別な金属にすることだ。一般には「核変換」と呼ばれる技術だが、分子構造を変えることで性格が異なるものに出来るように、原子核も変換出来る。ただ、その方法はまだ確立されていない」
「「花岡」でそれをやるってことですね!」
「そうだ。その技を開発したいと考えている」
柳が立ち上がった。
「じゃあ、また「新技」の探求ですね!」
「そうだな」
「また、私の出番ですか!」
柳がニコニコしている。
新技開発担当だと思っている。
「いや、今回はルーとハーにやらせようと思ってる」
「なんでぇー!」
柳が泣きそうな顔になる。
やりたいのは分かるが。
「柳には引き続き、対妖魔の「技」を究めて欲しいからだ。お前が頼りだからな!」
「はい! 石神さん!」
まあ、その通りだが、柳よりも双子の方が早そうだからだ。
口には出さない。
「どうだ、二人は?」
「「はい!」」
「出来そうか?」
「うん! ウランとかの陽子の数を変えればいいんだよね? もしくは制御棒のような物質をぶち込むとか。プラズマを利用してどうかって今思い付いた!」
「中性子をガンガン打ち込んでもいいよね? 実効的かはわからないけど、「コキュートス」で冷却することもどうかって思う!」
「おお、そうだな」
なんか、早く出来そうだ。
「……」
柳が呆然とした顔で、また座った。
「ああそうだ。今回は臨界まで時間的余裕があったけどな。原子炉でどれだけ爆発を早められるかも研究してくれ。今後の対処に必要だ」
「「分かりましたー!」」
「な、柳!」
「は、はい」
さて、最後の問題だ。
「今回も妖魔が出て来た。基地内の人間が騙されて避難所に指定されていた場所に、召喚の魔法陣があったと考えられる。数百人を犠牲にして、妖魔を呼び出した」
「速い奴だったよね!」
「回避が上手かった」
「範囲殲滅の大技を使えば行けたと思うな」
「あの時は原子炉の問題があって出来なかったけどね」
双子が意見を言って行く。
「まあ、その通りだが、今回の妖魔は俺たちを攻撃しなかった」
「うん。タカさんに言われて初めて気付いたけど、ずっと避けてるだけだったよね?」
「悪い波動も無かったね?」
「そこだ。だから俺も見逃してみた」
「召喚されても、敵にならない奴がいるってこと?」
「そういうことだ。本当の所は確認できないけどな。でも、今回の召喚は「無人」だった。宇羅も「業」もいなかった。そういう場合、もしかしたら呼び出されはしても、自由意思で行動することもあるのかもしれない」
「いい妖魔だー!」
ハーが喜ぶ。
「まだ安心はするな。だけどな、俺もそんな感じがした。だから見逃した」
「味方になるかな?」
「分からん」
「タカさん、どうするの?」
俺は考え続けていた。
「分からんことは、また確認するしかないな」
「じゃあ、会いに行く?」
「それしかないだろうな」
「私たちも行くよ!」
「そうだな。じゃあ、その時は頼むな」
「「はい!」」
俺は、あの妖魔に見覚えがある気がすることは、まだ話さなかった。
ブリーフィングを終え、俺は地下へみんなを誘って、映画『D』をみんなで観た。
ロシア軍が開発したパワードスーツで「隕石怪獣」と戦う男の物語だ。
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