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「砂漠の虎」作戦 Ⅲ

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 俺が着いたと同時に、MP(ミリタリー・ポリス)によってゴールドマン中将他参謀たちが逮捕されていた。
 桜に状況を聴き、留置場のゴールドマン中将たちに会いに行く。
 桜と東雲、月岡も同行する。
 MPのトップのオニール少佐自ら、俺たちを案内した。

 「お前! こんなことをしてどうなるのか分かっているのか!」
 「うるせぇよ。お前らこそ、俺にここまでの手間をかけさせたことを思い知れ」

 ゴールドマンたちは、まだ抵抗している。

 「タマ! 姿を見せずに来い!」
 「来たぞ、主」

 日本語を知らないオニール少佐には、何が起きているのか分からない。

 「こいつらにすべて自白させろ」
 「分かった」

 タマには俺の思考が伝わり、すべてを了解する。

 「それと、この基地内の全ての兵士で、俺たちに反感を抱く者をMPに出頭させ、自白させろ」
 「分かった」

 タマは去って行った。
 基地内の全ての人間の思考を走査するわけだが、タマにとっては何ほどのこともない。

 「じゃあ、すぐに取り調べを始めてくれ」
 「分かりました!」

 オニール少佐は怪訝な顔をしたが、俺の指示にすぐに従った。

 「おい、飯でも食おう」
 「はい!」
 「ところでよ、ちゃんと美味い飯が食えるように押さえているんだろうな?」
 「はい! 士官用の食堂を自由に使えるようにしてます!」
 「おし!」

 桜たちに、士官用の食堂に案内された。
 フランス軍の将校たちが利用する場所で、桜に全員を呼ばせた。
 フレンチのシェフが切り盛りしているとあって、悪くは無かった。
 みんな旺盛な食欲を見せる。

 隅で、フランス軍の将官と思しき人間たちが頭を下げて挨拶して来た。

 「まったくよ! 冗談じゃねぇぜ!」
 「本当に。石神さんにはお手数をお掛けしました」
 「まあ、いいよ。大事なお前らのためだからな」

 そうは言ったが、毎回俺が出張るわけにも行かない。
 早く、うちも優秀な将官を育てる必要がある。

 「ところでよ、今いる米軍の半数はいなくなると思っておけよ」
 「そうなんですか?」
 「ああ、恐らくそのくらいはゴールドマンの息の掛かった連中だろうからな」
 「そうなると、米軍もきついですね。レールガンも使えなくなりましたし」
 「まーなー」
 「作戦自体は、俺らで何とかしますよ」
 「いや、お前らはあくまでもジェヴォーダンとバイオノイド、ライカンスロープだからな。通常のロシア兵との戦闘は、米軍に任せないと厳しいぞ」
 「デュール・ゲリエもいますから大丈夫ですよ」

 桜はデュール・ゲリエとの共闘も経験している。

 「そうだけどな。まあ、最初から俺たちでやるつもりではいたんだがなぁ」
 「そうですって」

 妖魔が出なければ問題は無いだろう。
 だが、米軍がジェヴォーダンに対応出来なくなった今は、やはり手薄な感がある。

 「仕方ねぇ、あの人らを呼ぶかぁ」
 「あの人?」
 「ああ、石神家本家だよ。虎白さんたちに頼む」
 「はぁ」

 桜は石神家を知らない。
 俺は俺の実家で、古くからの剣術集団だと話した。

 「剣術ですか」

 桜が不安そうに言う。
 まあ、無理もない。
 この近代兵器だけの戦争になって久しい。
 今更剣術などとは思うだろう。

 「お前なぁ、分かって無いけど、相当なもんだぞ」
 「そうなんですか」
 「欧米じゃ、絶対に「石神ファミリー^には手出しするな」って今でも言われてんだ」
 「ほう」
 
 俺は話してやった。

 「前に、爆弾魔が俺たちを狙って来ただろう?」
 「ああ! はい!」
 「あれはバチカンの跳ねっかえりだったわけだけど、石神家の当主の俺を狙ったってよ」
 「はい!」
 「ローマ教皇が頭を下げに、うちに来た」
 「へ……」

 桜が呆然としている。
 羽入が大笑いした。
 俺は明治時代からの因縁だったと話した。
 バチカンの精鋭たち数百を、石神家の剣士数十人で圧倒したためだ。

 「流石、石神さんはスゲェや!」
 「おう!」

 俺が笑って羽入に手を挙げてやると、紅も喜んだ。

 「でもな、軍隊的に、指揮下で戦える人たちじゃねぇ。お任せの遊撃でしか使えねぇからな」
 「はぁ」
 「でも腕は確かだし、確実に役立ってくれる」
 「まあ、よく分かりませんが、宜しくお願いします」

 俺は皇紀に連絡し、虎白さんたちの移動の手配を頼んだ。
 虎白さんに電話する。

 「こんにちわ! 当主の高虎です!」
 「おう! 何の用だ!」
 「はい! 虎白さんたちに手伝ってもらいたく!」
 「何をすんだよ?」
 
 俺はロシア軍がアラブに攻めて来て、恐らくジェヴォーダンやバイオノイド、ライカンスロープ、そして妖魔が出て来る可能性を話した。
 
 「分かった! じゃあ剣士18名全員で行くな!」
 「お願いします! あれ、増えましたよね?」
 「おう! みんなヤリたくて頑張ってるからな!」
 「ありがとうございます!」

 俺は皇紀から連絡が行くと言った。
 虎白さんは楽しみだと言って電話を切った。

 「ふー」

 桜が俺を見ていた。

 「あんだよ?」
 「石神さん、腰が低いですね?」
 「当たり前だぁ! あの人らって本当に怖いんだよ!」
 「そうなんですか!」
 
 俺は鍛錬に呼び出されて死に掛けた話をした。

 「でも、石神さんが当主なんですよね?」
 「そうなんだよなー」
 「なんなんですかね?」
 「分かんねぇんだよなー」

 みんなが笑った。
 まあ、これで打つ手は打った。




 ゴールドマンと参謀たちは自ら「反「虎」同盟」の一員であることを自白した。
 アメリカと俺との密約ではあるが、それは重大な軍規違反であり、極刑の対象となる。
 またゴールドマンに繋がった多くの将兵がMPに自白しに現われ、米軍は大混乱に陥った。
 戦闘そのものよりも、「虎」の軍の兵力を知ることを重視していたようだ。
 本国のペンタゴンに集まった連中も驚愕し、すぐに対応していった。
 ゴールドマンの自白により、「反「虎」同盟」のメンバーが発覚し、軍や政府機関の再編成が行なわれる。
 後に外国の同調者も判明していき、世界的に衝撃が走った。
 ジャングル・マスターが乗り出して調整し、上手く収まって行った。



 翌日に虎白さんたち18名が現地に入った。
 「タイガーファング」だ。
 その時だけ、俺もまた現地に行って出迎えた。

 「虎白さん! みなさん!」
 「おう! 暑いなぁ!」
 「す、すぐに涼しくしますー!」
 
 虎白さんが笑った。

 「いいって! こういうのがいいんだろうよ!」
 「はい!」
 「敵は何人だ?」
 「はい! ロシア兵だけで6万はいるかと!」
 「おぉ!」
 「その他に化け物たちが!」
 「楽しみだな!」
 「宜しくお願いします!」

 俺は桜たちを紹介した。

 「ほう、なかなかいい面構えだな」
 
 虎白さんが笑顔になっていた。

 「じゃあ、俺らは好きにやっていいんだよな?」
 「はい! 戦場にはお連れしますんで、存分に」
 「おう! じゃあ、そこの若いの!」

 虎白さんが羽入を呼んだ。

 「お前、ちょっとは使えるんだろ?」
 「はい?」

 剣術のことだ。

 「一緒に鍛錬しようぜ」
 「はい」
 「まあ、他の連中も良かったら来いよ」
 「はい!」

 桜が嬉しそうに返事する。
 しらねー。

 「じゃあ、俺はこれで!」

 虎白さんに肩を掴まれた。

 「高虎! お前ふざけてんの?」
 「とんでもない! 俺、当主ですからね!」
 「その通りだぁ!」

 俺も散々相手させられた。
 桜たちも羽入も死に掛けた。
 俺は帰ったが、桜たちはずっと鍛錬に付き合わされた。
 紅もだ。
 紅が初めて全エネルギーを消費し、クールタイムを持った。

 毎日のように桜から愚痴の電話が来た。

 「早くロシア軍は来ないですかね」
 「そうだなー」




 その10日後にロシア軍が侵攻を始めた。
 桜たちは断然強くなった。 
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