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焼きいもと便利屋
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1月5日。
散々出掛けたので、俺は今日明日とゆっくりするつもりだった。
響子と六花と吹雪、鷹はまだ一緒にいる。
朝食の後で、亜紀ちゃんが双子と一緒に食材の確認をしていた。
10日間も留守にしていたので、傷んだものがないかを見て行く。
「タカさん、サツマイモが結構余ってるんですけど」
「そうかー」
元患者さんから、紅はるかが大量に届いている。
日持ちするので、少しずつ食べていたが、そろそろ消費しないといけない。
20キロくらいあるようだ。
「タカさん! 焼き芋が食べたい!」
ルーが言った。
「いいな! でも、これだけあると喰い切れるかなぁ」
「みんなにも配ろうよ!」
「そうだな」
早乙女たちも呼ぼうということになった。
左門たちはいないので、玄関に1キロ置いておく。
院長にも挨拶がてら持って行こう。
一江と大森が午後に挨拶に来るはずだ。
「折角のものだから、美味く焼きたいな」
「それだったら、便利屋さんを呼ぼうよ!」
ルーが言う。
「おお、あいつか」
「うん! 前に焼きいもの屋台をやったことがあるって!」
「そうか!」
早速電話して呼んだ。
昼食の手巻き寿司を一緒に食べる前に、便利屋に焼き芋の段取りをさせた。
「炭は沢山あるんだ。バーベキューコンロでもいいかな?」
「はい! お任せくだせぇ!」
「おう!」
みんなで喜んだ。
ウッドデッキで、洗ったイモを大きなタライに入れて行く。
「おお、塩水に漬けるのか!」
「へい! 甘みが増すんでさぁ」
「流石だな!」
まあ、大量にあるので大変だ。
1時間漬けるというので、その間に昼食にした。
亜紀ちゃんと双子が大量の刺身などの食材を切り、それぞれ好きなように巻いて食べて行く。
響子が喜んだ。
便利屋にも遠慮させずに、どんどん食べさせた。
「こんなに美味いものを!」
「お前、いつも何喰ってんだよ?」
「はい、最近は女房がいろいろ作ってくれまして」
「「「「「なんだとぉー!」」」」」
俺と子どもたちが驚いた。
「へ?」
「おい! お前いつ結婚したんだよ!」
「はぁ、もう2年になりますか」
「知らねぇよ!」
「そうでした?」
「「「「「そうだよ!」」」」」
もう、喰うどころではない。
「子どもも生まれました」
「おい!」
「便利屋さん! なんで言ってくれなかったの!」
「はぁ、そうでしたっけ?」
俺たちは問い詰めた。
貧血で蹲っていた女性がいたそうだ。
声を掛けて車でお宅まで運んだ。
大きな御屋敷だったそうだ。
大変感謝され、便利屋だと知ると、いろいろと庭の植木の手入れや掃除などを頼まれるようになった。
真面目な仕事ぶりで、そのご家族に気に入られ、助けたお嬢さんが便利屋に惚れた。
結婚した。
「全然分かんねぇよ!」
「はぁ、あっしもでさぁ」
とにかく奥さんを呼べと言った。
サツマイモの手配は便利屋に聞いて、子どもたちが進めた。
1キロほどしか離れていないので、すぐに戻って来た。
ウッドデッキで出迎える。
「こいつが晴代です」
とんでもない美人の奥さんだった。
しかも若い。
1歳くらいの男の子を抱いていた。
真面目そうな人で、俺に緊張しながら頭を下げた。
俺も挨拶した。
「石神です。今日はわざわざすみません」
「いえ、主人にはいつも石神さんのお話を聞いていますので」
「そうですか」
何と言っていいのか分からない。
「あの、便利屋とは長い付き合いで」
「はい。石神さんにお助け頂いて、今日までなんとか生きて来られたと」
「いえ、そんな大げさなものでは……」
非常にいい奥さんだ。
「失礼ですが、便利屋、ああ、ずっとそう呼んでいるんで」
「はい、構いません」
「あの、便利屋とはどうして結婚しようと?」
失礼な物言いだが、最も知りたいことを聞いた。
「はい、真面目な人柄と、何よりも優しい人ですので」
「まあ、それはそうですね」
晴代さんが笑顔で応えるので、驚いた。
その通りなのだが、こいつには常人には無いヘンな所がある。
顔もサミュエル・L・ジャクソンを踏みつぶしで痩せさせたようなヘチャムクレだ。
まあ、長く付き合うとその愛らしさが感じられるようにもなるのだが。
「ちょっと変わった奴ですけどね」
「ええ、そこも大好きです!」
「そうなんだ……」
変わった人のようだ。
「〇〇女子大に通っていた時に、助けてもらって」
超有名御嬢様女子大の名前を口にした。
「卒業と同時に籍を入れました」
「こいつと!」
思わず叫んでしまったが、晴代さんが笑った。
「はい、私の方からお願いしました」
「へぇー」
子どもたちも驚いている。
響子や六花、鷹もだ。
「今のお宅は石神さんから頂いたのだと」
「ええ、こいつにはいろいろ世話になってますんで」
「驚きました。義徳さんの良さを分かる人は少ないと思いましたので」
「まあ、本当にいい奴ですよね」
「はい!」
便利屋がヘンな奴だとは分かっているらしい。
「失礼ですが、随分と良いお宅のお嬢さんと聞きましたが」
「そんなことは。うちは代々法曹家の家系なんですが」
「えぇ!」
「父は弁護士で、祖父は裁判官でした」
「それはまた!」
ガチガチの家なんじゃないかと思った。
「よく、犯罪者みたいな顔のこいつと結婚しましたね!」
「まあ!」
明るく晴代さんが笑った。
「道間家の方と知り、父も母も賛成してくれました」
「ああ!」
そう言えば、便利屋は道間家の傍系だった。
「しかし、仕事もカタギじゃないですよね?」
「そんなことは。あの、失礼ですが石神さんとのことも調べさせて頂きました」
「俺の?」
「はい。夫が石神様と懇意になさっていること、それに警察の特殊なセクションのお仕事も担っていることが分かりまして。それで父も母も、良い縁だと」
「はぁ……」
まあ、便利屋が認めてもらえたのは俺も素直に嬉しいのだが。
「おい、お前結婚したなら言ってくれよ。俺たちの仲で水臭いじゃないか」
「はぁ。まあ大したことではないので」
「お前よー!」
「旦那には目一杯にお世話になってますんで。今更自分のことなどお話ししても」
そういう奴だった。
「亜紀ちゃん!」
「はい!」
「後でご祝儀「箱」!」
「はい!」
亜紀ちゃんが笑顔で中に入った。
俺も一緒に入り、金庫から1億円を出して亜紀ちゃんに渡す。
桐箱に亜紀ちゃんが納め、「御祝儀」の熨斗を巻く。
早乙女家で10億円用のものを作ってから、幾つかのサイズで桐箱を用意してある。
「これ、遅くなったけど」
「へ! こんなもの、頂けやせん!」
「いいからとっといてくれ」
何度か遣り取りがあったが、便利屋が折れてくれた。
「申し訳ありやせん。美味しく頂きやす」
「うん」
菓子折りか何かと思っているのだろう。
受け取ったから構わないが。
子どもの名前は義龍だそうだ。
随分と豪快な名前を付けたものだ。
吹雪と一緒にベビーベッドに寝かせる。
便利屋がしきりにまた遠慮したが、俺が強制した。
「俺も3人の子どもが生まれたんだよ」
「そうなんですか! すいやせん! 知らずにいて!」
「いいって。俺もそんなに言いふらしてないからな」
「じゃあ、今日は腕に寄りを振るって美味いイモを焼きやす!」
「おう、頼むな」
物の遣り取りなど考えない奴で良かった。
便利屋は丁寧に塩水を拭き取ってから、濡らした新聞紙でイモを包み、更にアルミホイルを巻いて行く。
子どもたちも手伝った。
10キロ程、焼き芋の準備が出来る。
皇紀が4台のバーベキュー台の用意をし、便利屋の指示で炭に火を入れてイモを並べて行く。
響子と六花が楽しそうに見ていた。
二人で何か話している。
晴代さんとテーブルに座った。
「あいつには本当にいろいろ世話になってて。何かあったら言って下さいね」
「はい、ありがとうございます!」
まあ、本当に驚いた。
散々出掛けたので、俺は今日明日とゆっくりするつもりだった。
響子と六花と吹雪、鷹はまだ一緒にいる。
朝食の後で、亜紀ちゃんが双子と一緒に食材の確認をしていた。
10日間も留守にしていたので、傷んだものがないかを見て行く。
「タカさん、サツマイモが結構余ってるんですけど」
「そうかー」
元患者さんから、紅はるかが大量に届いている。
日持ちするので、少しずつ食べていたが、そろそろ消費しないといけない。
20キロくらいあるようだ。
「タカさん! 焼き芋が食べたい!」
ルーが言った。
「いいな! でも、これだけあると喰い切れるかなぁ」
「みんなにも配ろうよ!」
「そうだな」
早乙女たちも呼ぼうということになった。
左門たちはいないので、玄関に1キロ置いておく。
院長にも挨拶がてら持って行こう。
一江と大森が午後に挨拶に来るはずだ。
「折角のものだから、美味く焼きたいな」
「それだったら、便利屋さんを呼ぼうよ!」
ルーが言う。
「おお、あいつか」
「うん! 前に焼きいもの屋台をやったことがあるって!」
「そうか!」
早速電話して呼んだ。
昼食の手巻き寿司を一緒に食べる前に、便利屋に焼き芋の段取りをさせた。
「炭は沢山あるんだ。バーベキューコンロでもいいかな?」
「はい! お任せくだせぇ!」
「おう!」
みんなで喜んだ。
ウッドデッキで、洗ったイモを大きなタライに入れて行く。
「おお、塩水に漬けるのか!」
「へい! 甘みが増すんでさぁ」
「流石だな!」
まあ、大量にあるので大変だ。
1時間漬けるというので、その間に昼食にした。
亜紀ちゃんと双子が大量の刺身などの食材を切り、それぞれ好きなように巻いて食べて行く。
響子が喜んだ。
便利屋にも遠慮させずに、どんどん食べさせた。
「こんなに美味いものを!」
「お前、いつも何喰ってんだよ?」
「はい、最近は女房がいろいろ作ってくれまして」
「「「「「なんだとぉー!」」」」」
俺と子どもたちが驚いた。
「へ?」
「おい! お前いつ結婚したんだよ!」
「はぁ、もう2年になりますか」
「知らねぇよ!」
「そうでした?」
「「「「「そうだよ!」」」」」
もう、喰うどころではない。
「子どもも生まれました」
「おい!」
「便利屋さん! なんで言ってくれなかったの!」
「はぁ、そうでしたっけ?」
俺たちは問い詰めた。
貧血で蹲っていた女性がいたそうだ。
声を掛けて車でお宅まで運んだ。
大きな御屋敷だったそうだ。
大変感謝され、便利屋だと知ると、いろいろと庭の植木の手入れや掃除などを頼まれるようになった。
真面目な仕事ぶりで、そのご家族に気に入られ、助けたお嬢さんが便利屋に惚れた。
結婚した。
「全然分かんねぇよ!」
「はぁ、あっしもでさぁ」
とにかく奥さんを呼べと言った。
サツマイモの手配は便利屋に聞いて、子どもたちが進めた。
1キロほどしか離れていないので、すぐに戻って来た。
ウッドデッキで出迎える。
「こいつが晴代です」
とんでもない美人の奥さんだった。
しかも若い。
1歳くらいの男の子を抱いていた。
真面目そうな人で、俺に緊張しながら頭を下げた。
俺も挨拶した。
「石神です。今日はわざわざすみません」
「いえ、主人にはいつも石神さんのお話を聞いていますので」
「そうですか」
何と言っていいのか分からない。
「あの、便利屋とは長い付き合いで」
「はい。石神さんにお助け頂いて、今日までなんとか生きて来られたと」
「いえ、そんな大げさなものでは……」
非常にいい奥さんだ。
「失礼ですが、便利屋、ああ、ずっとそう呼んでいるんで」
「はい、構いません」
「あの、便利屋とはどうして結婚しようと?」
失礼な物言いだが、最も知りたいことを聞いた。
「はい、真面目な人柄と、何よりも優しい人ですので」
「まあ、それはそうですね」
晴代さんが笑顔で応えるので、驚いた。
その通りなのだが、こいつには常人には無いヘンな所がある。
顔もサミュエル・L・ジャクソンを踏みつぶしで痩せさせたようなヘチャムクレだ。
まあ、長く付き合うとその愛らしさが感じられるようにもなるのだが。
「ちょっと変わった奴ですけどね」
「ええ、そこも大好きです!」
「そうなんだ……」
変わった人のようだ。
「〇〇女子大に通っていた時に、助けてもらって」
超有名御嬢様女子大の名前を口にした。
「卒業と同時に籍を入れました」
「こいつと!」
思わず叫んでしまったが、晴代さんが笑った。
「はい、私の方からお願いしました」
「へぇー」
子どもたちも驚いている。
響子や六花、鷹もだ。
「今のお宅は石神さんから頂いたのだと」
「ええ、こいつにはいろいろ世話になってますんで」
「驚きました。義徳さんの良さを分かる人は少ないと思いましたので」
「まあ、本当にいい奴ですよね」
「はい!」
便利屋がヘンな奴だとは分かっているらしい。
「失礼ですが、随分と良いお宅のお嬢さんと聞きましたが」
「そんなことは。うちは代々法曹家の家系なんですが」
「えぇ!」
「父は弁護士で、祖父は裁判官でした」
「それはまた!」
ガチガチの家なんじゃないかと思った。
「よく、犯罪者みたいな顔のこいつと結婚しましたね!」
「まあ!」
明るく晴代さんが笑った。
「道間家の方と知り、父も母も賛成してくれました」
「ああ!」
そう言えば、便利屋は道間家の傍系だった。
「しかし、仕事もカタギじゃないですよね?」
「そんなことは。あの、失礼ですが石神さんとのことも調べさせて頂きました」
「俺の?」
「はい。夫が石神様と懇意になさっていること、それに警察の特殊なセクションのお仕事も担っていることが分かりまして。それで父も母も、良い縁だと」
「はぁ……」
まあ、便利屋が認めてもらえたのは俺も素直に嬉しいのだが。
「おい、お前結婚したなら言ってくれよ。俺たちの仲で水臭いじゃないか」
「はぁ。まあ大したことではないので」
「お前よー!」
「旦那には目一杯にお世話になってますんで。今更自分のことなどお話ししても」
そういう奴だった。
「亜紀ちゃん!」
「はい!」
「後でご祝儀「箱」!」
「はい!」
亜紀ちゃんが笑顔で中に入った。
俺も一緒に入り、金庫から1億円を出して亜紀ちゃんに渡す。
桐箱に亜紀ちゃんが納め、「御祝儀」の熨斗を巻く。
早乙女家で10億円用のものを作ってから、幾つかのサイズで桐箱を用意してある。
「これ、遅くなったけど」
「へ! こんなもの、頂けやせん!」
「いいからとっといてくれ」
何度か遣り取りがあったが、便利屋が折れてくれた。
「申し訳ありやせん。美味しく頂きやす」
「うん」
菓子折りか何かと思っているのだろう。
受け取ったから構わないが。
子どもの名前は義龍だそうだ。
随分と豪快な名前を付けたものだ。
吹雪と一緒にベビーベッドに寝かせる。
便利屋がしきりにまた遠慮したが、俺が強制した。
「俺も3人の子どもが生まれたんだよ」
「そうなんですか! すいやせん! 知らずにいて!」
「いいって。俺もそんなに言いふらしてないからな」
「じゃあ、今日は腕に寄りを振るって美味いイモを焼きやす!」
「おう、頼むな」
物の遣り取りなど考えない奴で良かった。
便利屋は丁寧に塩水を拭き取ってから、濡らした新聞紙でイモを包み、更にアルミホイルを巻いて行く。
子どもたちも手伝った。
10キロ程、焼き芋の準備が出来る。
皇紀が4台のバーベキュー台の用意をし、便利屋の指示で炭に火を入れてイモを並べて行く。
響子と六花が楽しそうに見ていた。
二人で何か話している。
晴代さんとテーブルに座った。
「あいつには本当にいろいろ世話になってて。何かあったら言って下さいね」
「はい、ありがとうございます!」
まあ、本当に驚いた。
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