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蓮花研究所 再生への祈り

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 4時になり、「宝探し」が終了になった。
 また登山口に全員が集まる。
 集合に遅れたら失格となるので、みんな早めに戻っていた。

 優勝は103枚を集めた大黒だった。
 移動速度の速いブランたちに有利だったが、日下部という研究所員も4位に入賞した。
 蓮花とジェシカは、シャドウの家で見つけた他は数枚だけだったようだ。
 何しろ体力のない蓮花が途中でへばった。
 ジェシカに言われて早々に降りて来たようだ。

 優勝者には「御堂家特製米」の俵と、コッコ卵。
 他の4人には米を5キロと御堂家卵1ダースを渡した。
 特別賞は「亜紀ちゃんとタイマン」権利だったが、蓮花とジェシカだったので、俺の特別マッサージとした。
 二人とも喜んだ。
 他に特別賞が9人おり、全員ブランだったので元々のタイマンをさせた。

 研究所に戻って、張り切る亜紀ちゃんが全員をぶっ飛ばした。

 俺は蓮花とジェシカを風呂に誘い、マッサージをしてやった。
 ジェシカは最初は恥ずかしがっていたが、大満足だった。

 「蓮花、お前大丈夫かよ」
 「はい、少々はっちゃけました」
 「お前なー」

 俺は双子を呼んで「手かざし」をさせた。
 蓮花が気持ちよさそうにしていた。





 子どもたちを中心に、みんなで鍋の用意をした。
 おでんが中心だが、蓮花が用意した石狩鍋やちゃんこ、鶏鍋、牡蠣の土手鍋などもあった。
 テーブルに数多くの鍋が置かれる。
 みんなで楽しく食べ始めた。
 席は自由で、各々好きな鍋の前で座って食べる。
 子どもたちにも散って食べるように言ったので、離れたテーブルで場を盛り上げながら食べていた。
 桜花たちも、久し振りに再会するブランや研究所員たちと楽しそうにしていた。

 俺は蓮花、ジェシカ、栞、鷹、士王、そしてシャドウと一緒に食べる。
 シャドウは熱いものが苦手なようで、蓮花が笑って団扇を持って来た。
 時々、ブランや研究所員たちが立ち寄って、一緒に食べながら話して行く。

 「宝探しは楽しかったですよ!」

 みんなが口々に言う。
 ミユキと前鬼、後鬼も来た。

 「優勝を狙っていたんですが」
 「大黒は特殊な探知能力があるようでして」
 
 「お前たちは3人で行動していたのか?」
 「いいえ、個人戦のようなものでしたので、バラバラに探していました」
 「なんだよ。いつもお前らは一緒だろう」
 「まあそうですが」

 俺は笑って攻略法を開示した。

 「こういうものは、集団で組織的にやるのがいいんだよ。誰が地面を、誰が木の上を、誰が石の下や木の洞を、誰が総指揮を。そうやって合理的に攻めて行くのな」
 「なるほど! でも、それでは均等に分けて行くしかないのでは?」
 「見つけられる数が違ってくるんだよ。均等に分けても、独りでうろつくより、よっぽど多く見つけられるはずだ」
 「そうですか!」

 ミユキたちが驚く。

 「あてもなく探してもダメなのな。今回に限って言えば、大黒が特殊能力を持っているのを知っているのなら、まずは大黒と組むことよな。一緒に探せばあいつだってもっと効率よく見つけたはずだ」
 「ああ! 私たちはまた柔軟思考を忘れていたのですね!」
 「まあ、そうだけどな。でも、今日はみんなに楽しんで貰いたかったからな。あれで良かったんだよ」

 ジェシカが言った。

 「私は蓮花さんと組んでいましたので! そのお陰でシャドウさんの家でコインを見つけられました!」
 「な、そういうことだ!」

 みんなが笑った。

 士王がチクワブを喜んで食べていた。

 「亜紀ちゃん! チクワブがもうねぇ! どっかにないか!」
 「はーい!」

 亜紀ちゃんと子どもたちが探して回る。
 
 「もう無いみたいですよー!」
 「なんだと!」

 俺がおでんにしたのは、大好きなチクワブを食べたいからだ。

 「蓮花! どうなってんだ!」
 「え、あれがお好きだったんですか?」
 「そうだよー」
 「すみません。あまり用意しておりませんで」

 栞と鷹が笑っていた。

 「しまったなぁ、ここは北関東だったか」
 「私も東京でしか食べて無いね」
 
 栞が言った。

 「あんなに美味いのに!」
 「私も好きですよ」
 「そうだよな、鷹!」

 士王が俺に食べ掛けをくれた。

 「お前は優しい子だな!」

 みんなで笑った。

 ブランたちが楽しそうに笑いながら鍋をつついていた。
 研究所員たちは一部交代で食べに来ている。
 蓮花も幸せそうに、みんなを見ていた。

 「ここは本当にいい場所になったな」
 「はい、石神様のお陰です」
 「まあ、俺がやってるのは世界を破滅させる戦争だけどな」
 「オホホホホホ」

 「でもな、だからこそみんなが一丸となって仲間意識を持っているとも言えるな」
 「さようでございますね」
 
 子どもたちがバーベキュー台で肉を焼いている。
 自分たちは争っているが、ブランや研究所員たちが近付くと、笑って焼いた肉を皿に乗せていた。
 
 俺は蓮花と栞、鷹を誘って庭に出た。
 士王は俺が抱いている。

 「二人はミユキの花壇を見たことがないだろう?」
 
 案内した。
 シロツメクサの花壇だ。
 花壇の前で、ミユキと皇紀の話をした。

 「ミユキがシロツメクサが好きだと皇紀が聴いてな。種を皇紀が持って来たのが始まりなんだ」
 
 みんな黙って聴いている。

 「ミユキが大切に育て、今じゃこんなに大きな花壇になった。他のブランたちや研究所員たちも手伝うようになり、双子が「手かざし」までしやがった。菊じゃねぇのかって花も咲くようになった」
 
 3人が笑った。
 俺は士王を自分で立たせ、蓮花と鷹の手を取った。

 「これはミユキがこの世に遺す子どもたちのようなものだ」
 
 二人が頷く。

 「ブランたちは、恐らく短命だ。子どもを遺すことも出来ない。だからこうやって花を大切にしている」

 俺は蓮花と鷹に言いたい言葉を呑み込んだ。



 《お前たちにも俺の子を産んで欲しい》



 そう言いたかった。
 鷹は自らその道を断った。
 俺のために「花岡」で飛行の技を習得するためにだ。
 生体チップを埋め込むために自分の子宮を切り裂き、美しかった髪を喪った。
 それでも一言も後悔の言葉を口にしたことは無い。
 今は親友の栞の生んだ士王を、栞と共に大切にしてくれている。
 ミユキがシロツメクサを愛するように。

 蓮花のことは斬から聞いた。
 「業」に会った時に、子宮を破壊されたのだと。
 ほとんど面白半分にやられた。
 蓮華もそうされたそうだ。

 蓮花の場合は子宮を喪ってはいないが、その機能を殺された。
 今はまだ二人には話せない。
 確実性のあることではない、ということもある。
 しかし、それ以上に俺が決めかねている。
 覚悟を持って自らそうした鷹。
 その決意を覆しても良いのか。
 蓮花も同じだ。
 俺のためにひたすらにその命を使うことしか考えていない女。
 自分の幸せなど、どうでもよいのだ。
 その決意でここまで俺に付いて来てくれた。

 だからこそ、俺は二人の女にしてやりたいのだ。
 俺が二人の幸せを思うのと同時に、二人の美しい覚悟を重要だとも思っている。
 




 食堂へ戻ると、いなくなった俺を見つけてロボが駆け寄って来る。
 俺はロボを抱き上げた。

 「おい、一杯食べたか?」
 「にゃー」

 俺の顔をロボが舐める。





 俺の命を何度も救ってくれたロボ。
 脳の多くの部分を喪ったブランたちを再生させたロボ。
 こいつには時間を遡るかのような脅威の再生能力がある。

 それを使ってしまっていいものかどうか、俺は迷っていた。
 こいつが決めて使うのならば構わない。
 しかし、俺などが頼んでやってもらうことなのか。
 
 しっかり考えなければならない。





 俺の心はとっくに望んでいる。
 だからこそ、考えなければならないのだ。
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