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桜花たちの墓参り
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「新宿に出て、そこから京王線だよね?」
私は石神様から頂いたメモを手に、椿姫と睡蓮に確認した。
パスモというカードを三人分頂いている。
「これを改札の機械に翳せばいいんだね」
「分かるかな」
三人とも電車での移動はしたことがない。
子どもの頃の記憶とはすっかり変わってしまったようだ。
地下鉄丸ノ内線の改札には行ったが、ゲートがあるがどうすればいいのか分からない。
一人の女性が、ゲートの上にスマートフォンを翳して中へ入るのを見た。
「あそこだ!」
私がパスモをそこに翳すと、ゲートが開いた。
椿姫と睡蓮も笑って潜って来た。
丁度電車が来たので、走って乗った。
「ちゃんと出来たね!」
「もう大丈夫だよ!」
ゲートの使い方が分かった。
新宿駅で降りて、すぐに駅員さんに聞いた。
「京王線はどっちですか?」
駅員さんは丁寧に教えてくれた。
「天井の案内板を見て行けば大丈夫ですよ」
「ありがとうございます!」
ゲートを出るのもすぐに分かった。
階段を上がって地上に出る。
案内板を睡蓮が見つけて、その指示通りに進むと京王線のゲートに着いた。
三人で喜ぶ。
「こういうのっていいね!」
睡蓮が嬉しそうに笑った。
「パスモってカードはどの鉄道でも使えるらしよ」
「便利なものが出来たね!」
昔は毎回券売機で切符を買っていた。
駅員さんが立っていない機械のゲートは本当に不思議だった。
石神さんのメモをもう一度確認し、橋本行の電車を探す。
石神さんから迷ったら駅員に聞けと言われているので、すぐに聞いた。
また親切に一番早い電車のホームを教えてもらった。
既に電車は到着していたので、三人で空いた椅子に座る。
みんなウキウキしていた。
終点だから気も楽だ。
三人でいろいろな話をした。
石神様のこと、栞様のこと、士王様のこと。
そして石神様に御馳走になったこの二日間の美味しい食べ物の話を。
「今晩は焼き肉屋さんって言われたよね?」
「食べたことないよね?」
「まあ、お肉を焼くんだろうけど」
三人とも全然知らない。
楽しみにしていた。
橋本駅に着き、横浜線に乗り換える。
暫く電車の到着を待った。
三人でベンチに座り、缶コーヒーを買ってみた。
「ねぇ! この販売機でもパスモが使えるよ!」
「ほんと!」
睡蓮が恐る恐るパスモをセンサーに当てた。
何も起きない。
「アレ?」
私たちが使い方が分からないでいると、若い男性が教えてくれた。
「最初に欲しい飲み物のボタンを押すんですよ」
「なるほど!」
三人でお礼を言うと、恥ずかしそうに笑って男性は離れて行った。
「みんな親切だね!」
缶コーヒーを飲みながら、電車を待った。
横浜線で鴨井駅に着き、駅前の花屋さんでお墓に供える花を買った。
石神様が、そういうことも教えてくれた。
きっと、何度も来ているのだ。
ここからはタクシーを使うように言われている。
ロータリーで待っているタクシーに乗って、門土さんのお墓のある寺へ向かった。
タクシーでもパスモが使えたので、また三人で驚いた。
お墓の場所も教えて頂いている。
掃除用具を持って、私たちはお墓へ向かった。
三人で綺麗に墓石を磨き、掃除をする。
お花を挿して線香を焚いた。
「じゃあ、やるよ」
「「うん」」
門土さんの家は曹洞宗ということで、石神様に「般若心経」と「大悲心陀羅尼」を唱えるといいと言われた。
石神様も、いつも門土さんのお墓でその二つを唱えているそうだ。
私たちも、それを練習して来た。
門土さんは音楽家だったので、三人で音楽的な読経を考えた。
石神様に御相談すると、港区の増上寺で素晴らしいお経を聞いたと教えて頂き、後日、そのCDを頂いた。
複数の御坊様たちでする読経で、まるで荘厳な合唱を聴いているようだった。
三人で感動し、是非こういうものをやろうということになった。
石神様にお話すると大層喜んでくれ、手伝って下さった。
音楽的な和音を駆使した譜面も作って下さり、大変お世話になった。
「門土のためにそこまで考えてくれてありがとうな!」
三人で一生懸命に練習した。
門土さんのお墓でそれを披露した。
素人の三人のものであり、拙いもので申し訳ないが、精一杯に門土さんの生涯を湛え、安らかにお休み頂くように心を込めた。
私たちが読経を終えると、離れた場所から女性が歩いて来た。
御年は召していたが綺麗な方で、私たちに微笑みまがら声を掛けて来られた。
「あなたたちはどちらの方?」
「はい、石神様から門土さんのお話を伺い、是非日本に来たらお参りしたいと思っておりまして」
「トラの身内の方!」
女性が驚いて私たちに嬉しそうに微笑んだ。
「そうなの! トラのね!」
「あの、石神様から大変お世話になっておりまして。申し訳ありません、門土さんのお身内の方でしょうか」
「ええ、母親よ」
「それは大変申し訳ないことを!」
お母上を差し置いて、私たちがずっとお墓に居座ってしまった。
「いいのよ! さっきは素敵なお経だったわ。感動したの」
「そんな、私たちなど」
「いいえ、門土も喜んでいると思うわ」
橘様にいろいろ聞かれ、私たちも門土さんのことを聞いた話をした。
読経も石神様が譜面を創ってくれたと話した。
「ああ、トラだったのね! 本当に素晴らしかった!」
橘様が有名なピアニストであることは聞いている。
拙い物をお聞かせし、申し訳ないと思った。
その後もお茶に誘われしばらく話した。
「トラに言っておいて。私も決心したわ。年が明けたら家に行くからって」
「はい、かしこまりました」
「前回もね、私が押し掛けてようやく観念したのよ。今度もまた手間を掛けさせるんだから」
「はい?」
「必ず伝えてね!」
「「「はい!」」」
とても迫力のある方で、三人で返事をした。
その後、また横浜線を乗り継いで関内に向かった。
石神様に言われた「陳さんの店」に行った。
「トラちゃんから聞いているよ! 今日は一杯食べていってね!」
陳さんが笑顔で迎えて下さり、個室へ案内された。
「トラちゃんから言われているから、どんどんお料理出すね! 気に入ったものや他に食べたいものあったら言ってね」
「は、はい」
もう注文は決まっているらしい。
どうせ三人とも本格的な中華料理など分からないから、助かった。
そういうことも気遣って下さったか、料理が運ばれるたびに、どういうお料理かを説明して下さった。
量が多かったが、どれも素晴らしく美味しく、三人で喜んで食べた。
北京ダックが本当に絶品だった。
最後のタピオカココナッツミルクが出て来て、最後を飾るまた素晴らしい美味しさだった。
お会計を頼むと陳さんがニコニコして来られた。
「トラちゃんからもうもらってるよ。三人とも美味しかった?」
「「「はい!」」」
「いつも遠くにいて、日本は久しぶりだって聞いてるよ。一杯美味しい物食べさせて欲しいってトラちゃん言ってた」
「そうなんですか!」
三人で泣きそうになった。
陳さんにお礼を言い、お店を出た。
陳さんが出口まで見送ってくれ、三人で頭を何度も下げて駅に向かった。
「今日はみんな親切な人ばかりだったね」
「本当に!」
「石神様のお陰だよ!」
三人で楽しく話しながら帰った。
「早く石神様に橘様の御伝言を伝えたいね」
「きっと喜ぶよね!」
石神様にお話しすると、頭を抱えて唸っておられた。
私は石神様から頂いたメモを手に、椿姫と睡蓮に確認した。
パスモというカードを三人分頂いている。
「これを改札の機械に翳せばいいんだね」
「分かるかな」
三人とも電車での移動はしたことがない。
子どもの頃の記憶とはすっかり変わってしまったようだ。
地下鉄丸ノ内線の改札には行ったが、ゲートがあるがどうすればいいのか分からない。
一人の女性が、ゲートの上にスマートフォンを翳して中へ入るのを見た。
「あそこだ!」
私がパスモをそこに翳すと、ゲートが開いた。
椿姫と睡蓮も笑って潜って来た。
丁度電車が来たので、走って乗った。
「ちゃんと出来たね!」
「もう大丈夫だよ!」
ゲートの使い方が分かった。
新宿駅で降りて、すぐに駅員さんに聞いた。
「京王線はどっちですか?」
駅員さんは丁寧に教えてくれた。
「天井の案内板を見て行けば大丈夫ですよ」
「ありがとうございます!」
ゲートを出るのもすぐに分かった。
階段を上がって地上に出る。
案内板を睡蓮が見つけて、その指示通りに進むと京王線のゲートに着いた。
三人で喜ぶ。
「こういうのっていいね!」
睡蓮が嬉しそうに笑った。
「パスモってカードはどの鉄道でも使えるらしよ」
「便利なものが出来たね!」
昔は毎回券売機で切符を買っていた。
駅員さんが立っていない機械のゲートは本当に不思議だった。
石神さんのメモをもう一度確認し、橋本行の電車を探す。
石神さんから迷ったら駅員に聞けと言われているので、すぐに聞いた。
また親切に一番早い電車のホームを教えてもらった。
既に電車は到着していたので、三人で空いた椅子に座る。
みんなウキウキしていた。
終点だから気も楽だ。
三人でいろいろな話をした。
石神様のこと、栞様のこと、士王様のこと。
そして石神様に御馳走になったこの二日間の美味しい食べ物の話を。
「今晩は焼き肉屋さんって言われたよね?」
「食べたことないよね?」
「まあ、お肉を焼くんだろうけど」
三人とも全然知らない。
楽しみにしていた。
橋本駅に着き、横浜線に乗り換える。
暫く電車の到着を待った。
三人でベンチに座り、缶コーヒーを買ってみた。
「ねぇ! この販売機でもパスモが使えるよ!」
「ほんと!」
睡蓮が恐る恐るパスモをセンサーに当てた。
何も起きない。
「アレ?」
私たちが使い方が分からないでいると、若い男性が教えてくれた。
「最初に欲しい飲み物のボタンを押すんですよ」
「なるほど!」
三人でお礼を言うと、恥ずかしそうに笑って男性は離れて行った。
「みんな親切だね!」
缶コーヒーを飲みながら、電車を待った。
横浜線で鴨井駅に着き、駅前の花屋さんでお墓に供える花を買った。
石神様が、そういうことも教えてくれた。
きっと、何度も来ているのだ。
ここからはタクシーを使うように言われている。
ロータリーで待っているタクシーに乗って、門土さんのお墓のある寺へ向かった。
タクシーでもパスモが使えたので、また三人で驚いた。
お墓の場所も教えて頂いている。
掃除用具を持って、私たちはお墓へ向かった。
三人で綺麗に墓石を磨き、掃除をする。
お花を挿して線香を焚いた。
「じゃあ、やるよ」
「「うん」」
門土さんの家は曹洞宗ということで、石神様に「般若心経」と「大悲心陀羅尼」を唱えるといいと言われた。
石神様も、いつも門土さんのお墓でその二つを唱えているそうだ。
私たちも、それを練習して来た。
門土さんは音楽家だったので、三人で音楽的な読経を考えた。
石神様に御相談すると、港区の増上寺で素晴らしいお経を聞いたと教えて頂き、後日、そのCDを頂いた。
複数の御坊様たちでする読経で、まるで荘厳な合唱を聴いているようだった。
三人で感動し、是非こういうものをやろうということになった。
石神様にお話すると大層喜んでくれ、手伝って下さった。
音楽的な和音を駆使した譜面も作って下さり、大変お世話になった。
「門土のためにそこまで考えてくれてありがとうな!」
三人で一生懸命に練習した。
門土さんのお墓でそれを披露した。
素人の三人のものであり、拙いもので申し訳ないが、精一杯に門土さんの生涯を湛え、安らかにお休み頂くように心を込めた。
私たちが読経を終えると、離れた場所から女性が歩いて来た。
御年は召していたが綺麗な方で、私たちに微笑みまがら声を掛けて来られた。
「あなたたちはどちらの方?」
「はい、石神様から門土さんのお話を伺い、是非日本に来たらお参りしたいと思っておりまして」
「トラの身内の方!」
女性が驚いて私たちに嬉しそうに微笑んだ。
「そうなの! トラのね!」
「あの、石神様から大変お世話になっておりまして。申し訳ありません、門土さんのお身内の方でしょうか」
「ええ、母親よ」
「それは大変申し訳ないことを!」
お母上を差し置いて、私たちがずっとお墓に居座ってしまった。
「いいのよ! さっきは素敵なお経だったわ。感動したの」
「そんな、私たちなど」
「いいえ、門土も喜んでいると思うわ」
橘様にいろいろ聞かれ、私たちも門土さんのことを聞いた話をした。
読経も石神様が譜面を創ってくれたと話した。
「ああ、トラだったのね! 本当に素晴らしかった!」
橘様が有名なピアニストであることは聞いている。
拙い物をお聞かせし、申し訳ないと思った。
その後もお茶に誘われしばらく話した。
「トラに言っておいて。私も決心したわ。年が明けたら家に行くからって」
「はい、かしこまりました」
「前回もね、私が押し掛けてようやく観念したのよ。今度もまた手間を掛けさせるんだから」
「はい?」
「必ず伝えてね!」
「「「はい!」」」
とても迫力のある方で、三人で返事をした。
その後、また横浜線を乗り継いで関内に向かった。
石神様に言われた「陳さんの店」に行った。
「トラちゃんから聞いているよ! 今日は一杯食べていってね!」
陳さんが笑顔で迎えて下さり、個室へ案内された。
「トラちゃんから言われているから、どんどんお料理出すね! 気に入ったものや他に食べたいものあったら言ってね」
「は、はい」
もう注文は決まっているらしい。
どうせ三人とも本格的な中華料理など分からないから、助かった。
そういうことも気遣って下さったか、料理が運ばれるたびに、どういうお料理かを説明して下さった。
量が多かったが、どれも素晴らしく美味しく、三人で喜んで食べた。
北京ダックが本当に絶品だった。
最後のタピオカココナッツミルクが出て来て、最後を飾るまた素晴らしい美味しさだった。
お会計を頼むと陳さんがニコニコして来られた。
「トラちゃんからもうもらってるよ。三人とも美味しかった?」
「「「はい!」」」
「いつも遠くにいて、日本は久しぶりだって聞いてるよ。一杯美味しい物食べさせて欲しいってトラちゃん言ってた」
「そうなんですか!」
三人で泣きそうになった。
陳さんにお礼を言い、お店を出た。
陳さんが出口まで見送ってくれ、三人で頭を何度も下げて駅に向かった。
「今日はみんな親切な人ばかりだったね」
「本当に!」
「石神様のお陰だよ!」
三人で楽しく話しながら帰った。
「早く石神様に橘様の御伝言を伝えたいね」
「きっと喜ぶよね!」
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