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最高のクリスマス

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 皇紀が呼びに行ったか、亜紀ちゃんが半裸で駈け込んで来た。
 
 「タカさん!」

 亜紀ちゃんに抱き締められる。

 「ああ、大丈夫だよ」

 俺は無理に笑顔を作って言った。
 激しい動揺はあるが、嬉しかったのだ。
 レイがレイと一緒に俺たちの傍にいる。
 それが嬉しかったのだ。

 「亜紀ちゃんも見ておけよ」
 「はい!」

 皇紀が亜紀ちゃんに画像を見せる。
 他の連中も入って来た。
 みんな何があったのかは承知しているようだ。

 俺は離れてソファに座って落ち着こうと思った。
 いつの間にか、みんなが集まって来て、いろんな奴らが俺に抱き着いた。
 
 「タカトラ……」

 響子が俺の膝に跨って抱き着いて来た。
 俺も抱き締めた。

 「レイを見たか」
 「うん。笑ってたね」
 「ああ、嬉しそうに笑ってた。本当に良かったな」
 「うん」

 亜紀ちゃんたちが酒の用意を始めた。
 「幻想空間」で飲むが、大勢いるのでテーブルや椅子も運ぶ。
 鷹と栞も料理を手伝う。

 俺は院長夫妻を先に案内して、お茶を頼んだ。

 「石神、大丈夫か?」
 「ええ。流石にね。レイの奴にやられましたよ」
 「そうだな」

 「石神さん、良かったわね」
 「ええ、本当に。こんなに嬉しいことはありませんよ」

 料理と酒が運ばれ、みんなが席に着いて行く。
 俺と同じシートに響子と院長夫妻。
 早乙女夫婦と鷹と栞。
 六花と麗星と亜紀ちゃん、柳。
 桜花、椿姫、睡蓮。
 大きなベビーベッドで士王、天狼、吹雪、ロボが寝ている。

 皇紀と双子は別なテーブルに座った。

 「光明」を開け、あとは好きなビールなどを飲んだ。
 先ほどの写真の話題は出さずに、みんなで楽しく話した。

 「こないださ、丹沢の山の主って奴をちょっと締めてな」
 「なにそれ!」

 栞が笑っている。

 「そうしたら、詫びにドングリをくれたんだよ」
 「そうなの?」
 「ルーとハーが興味を持って、いろいろドングリ料理を作ったよな!」
 「タカさん、あの話はもう辞めようよ!」

 ルーが言う。
 俺は笑って続けた。

 「それで結構美味かったんだよ。だから礼に栗をみんなで持ってってさ」
 「喜んだ?」
 「それがな。また山の主がドングリを運んで来てて、目の前でドングリを口から「ゲェー!」って吐き出してたんだ」
 
 みんなが爆笑する。

 「イノシシのでっかい奴だったけど、四つ足でどうやって運んでたのかと思ってたんだよ。ああやってたんだよな」
 「タカさん、もう辞めよう!」
 「栗はそのまま持って帰ったよな」
 「栗ご飯やりましたね!」

 亜紀ちゃんが明るく言う。

 「まったく、石神はとんでもないな」
 「そんなこと! 俺だって嫌ですよ!」
 
 みんながまた笑う。
 ルーが話した。

 「そう言えば、亜紀ちゃん「山の主殺し」の称号があるんだよね?」
 「え……」
 「前にさ、アラスカでハンティングしたじゃない」
 「ああ、お前らで行ったよな?」
 「あの時にね、亜紀ちゃんがアラスカの山の主を殺しちゃったの」
 「なにぃ!」

 俺も初めて聞いた。

 「知らないで額に星のマークのある熊を殺しちゃって。後からソロンさんが、新しい山の主が楽しみだって」
 「それがその熊だったのかよ」
 「うん。額に星のマークがある熊なんだってソロンさんが言ってた」
 「お前よー」
 
 「ルー!」
 「だって! 殺しちゃったの亜紀ちゃんだもん!」

 亜紀ちゃんがルーの頭を引っぱたこうとしてもみ合いになった。

 「もういい! やっちまったことはしょうがねぇ。ただな、石神家の家訓では、やったらすぐに俺に話せ」
 「すいません!」

 亜紀ちゃんが席に戻った。
 麗星が睨んでいる。

 「あの、やっぱりマズイです?」
 「当然です。山に悪い影響があるのはもちろんですが、亜紀さんにも良くないことが起きてもおかしくないのですから」
 「そうなんですか!」
 「まあ、でもあの土地は産土の神が強力ですから。それで守られたのでしょう」
 「よかったー!」

 「ソロンさんが極彩色の大きな鳥が来るって言ってたよね?」

 ハーが言った。

 「ワキンか」

 麗星がちょっと緊張する。

 「まあ、今後は本当に気を付けろよな」
 「麗星さん、白い星のマークが目印ですか?」
 「そういうこともありますが、目印が無い場合もあります。あなたたちならば、波動で感じて下さい」
 「うーん」

 感じないからぶっ殺したのだろうが。

 しばらく楽しく話し、一旦解散にした。
 院長夫妻を客室へ案内する。
 子どもがいる栞、麗星、六花もそれぞれの部屋へ行く。
 早乙女夫婦も帰った。
 響子もロボと一緒に俺の部屋で寝る。

 「響子、今日は良かったな」
 「うん! いいクリスマスだったね」
 「そうだよな」

 響子は俺とお揃いのニャンコ柄のパジャマを着ている。
 布団に湯たんぽを入れていた。
 響子が温かいと喜んだ。
 響子が眠るまで傍にいて、また「幻想空間」に戻った。
 鷹と子どもたちがいた。

 「タカさーん!」

 亜紀ちゃんが明るく声を掛けて来た。
 もうテーブルなども片付いており、大量の料理が残っていた。
 子どもたちが夢中で食べている。

 俺は鷹の隣に座った。
 鷹が嬉しそうにしていた。

 柳をじっと見た。

 「ん? なんですか?」
 「御堂も来れればなー」
 「あぁー!」

 「まあ、柳で我慢するか」
 「それは言っちゃいけないことですよー!」

 


 みんなが笑った。
 最高に幸せだった。
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