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士王・天狼・吹雪

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 12月24日。
 俺は一足早く休暇に入っている。
 今日は栞たちが帰国する予定だ。
 別段、そっちは特に準備することがないが、クリスマスパーティの準備に追われていた。
 鷹と子どもたちがだが。

 鷹はクリスマスだが、栞たちが和食を食べたいだろうと張り切っている。
 クリスマスは、鶏を料理するのがメインで、あとはクリスマスらしいパーティ食だ。
 そっちは亜紀ちゃん、柳、皇紀で賄う。
 双子は鷹の手足となって、懸命に作っている。
 俺は栞たちが来るまでロボとのんびりだ。
 今は午前10時。

 栞たちは3時に到着予定で、院長夫妻をその後で迎えに行く。
 六花も響子を連れて4時くらいに来るはずだ。
 麗星もその頃だ。
 早乙女が東京駅まで迎えに行く。
 ロボはいつになくみんなが料理に精を出しているので、ワクワクしている。
 何度も鷹の足に突進し、楽しみだと訴えている。
 鷹も笑いながら、俺に何とかしてくれと言った。

 散歩に出た。
 ロボが寒がるので、早乙女家に行った。

 「石神さん!」
 「すいません。ロボがいるとみんなの邪魔なんで」
 「どうぞ、入って下さい!」

 雪野さんがすぐに入れてくれた。
 早乙女は仕事でいない。
 「柱」たちにも挨拶し、上に上がった。

 「今日は楽しみなんですよ」
 「まあ、いつも通りですから」

 ロボが雪野さんに甘えてくっつく。
 雪野さんがコーヒーを持って来てくれた。
 ロボにはササミとミルクだ。

 「ロボちゃんも楽しみなんですね」
 「すいませんね。散歩に出たら「雪野さんに会いたい」って言うもんで」
 「にゃー」
 「ね?」
 「アハハハハハ!」

 怜花が絨毯の上でハイハイしていた。
 俺が呼ぶと一生懸命に来る。
 ちゃんと待ってやって、抱き上げる。

 「おお! 今日も元気だな!」
 「ウフフフフ」
 「早乙女にちょっとも似ないで良かったですね!」
 「そんなことありませんよ!」
 「まあ、あのクライ性格にさえならなければ」
 「もう、石神さん!」

 俺は先週の「ザ・オトメン・ポエム」が良かったと言った。

 「あいつ、俳句まで詠んでましたよね?」

 雪野さんが爆笑した。
 その後で笑ったのは黙ってて欲しいと言われた。

 ロボが怜花を背中に乗せて歩いた。
 雪野さんが慌ててスマホで写真を撮った。

 「良かった! 撮れましたよ!」

 嬉しそうに画像を確認していた。
 俺はハムちゃんに跨って、雪野さんに写真を撮らせた。
 また爆笑した。

 「お邪魔しました。良かったらうちで昼食を食べに来て下さいよ」
 「よろしいのですか?」
 「もちろん! 鷹が天ぷら蕎麦を作るはずです」
 「でも、予定にない人間が行くとご迷惑なのでは」
 「うちの食事を散々見ているでしょう! 一般人が100人くらい来たって大丈夫ですよ!」
 「アハハハハハ!」

 一緒に家を出た。
 雪野さんがいれば、ロボも大人しくしているだろう。
 俺がゆっくり出来る。

 


 昼食を食べて、みんなで一休みした。
 雪野さんが、さっきの画像をみんなに見せる。
 みんな大笑いしていた。

 2時になり、また食事作りが始まった。
 雪野さんも手伝うと言ったが、ロボの相手をして欲しいと頼んだ。

 「俺はこれからいろいろと迎えに出なくちゃいけないので」
 「でも、申し訳ないです」
 
 雪野さんをキッチンに入れた。
 ロボが鷹と雪野さんに突進していく。

 「ね?」
 「分かりました」

 ロボピンポンを始めた。

 「しばらくやれば飽きて寝ますから」
 「はい」
 「そうしたら、一緒にソファで寝てて下さい」
 「分かりました」

 3時前になり、俺は「花見の家」に向かった。
 時間通りに「タイガー・ファング」が到着した。

 後部が開き、栞と士王が降りて来る。

 「あなたー!」
 「おう! 待ってたぞ!」
 
 栞と士王を抱き締める。
 
 「おとーさん!」
 「士王! よく来たな!」
 「うん!」

 士王を抱き上げた。
 桜花たちも挨拶し、機体を降りて青嵐と紫嵐も挨拶に来た。

 「お前たちはこのまま蓮花の所だな」
 「はい!」
 「うちでパーティに来てくれてもいいんだが、あっちの方が気楽だろう」
 「いえ、ありがとうございます」

 みんなで見送った。

 「じゃあ、行くか!」

 栞が俺に腕を絡めて来る。

 「久し振りのあなたの家だね!」
 「そうだな。もう2年か」
 「そうだよ! いきなりあんなとこへ押し込めて!」
 「ワハハハハハハハ!」

 桜花たちも笑っている。

 「お前たち、本当に蓮花の所じゃなくて良かったのか?」
 「はい! 石神様の御宅も来たかったですし」
 「そうか。まあゆっくりしてくれな。しばらくは休暇だ。栞が呼んでも聞こえない振りしていいからな」
 「あなた!」

 みんなで笑った。




 俺の家を見て、桜花たちが驚いた。

 「なんだよ?」
 「いえ、大きいですね」
 「ヘッジホッグほどじゃねぇだろう」
 「それはそうですが……」

 笑って家の中へ入れた。
 リヴィングで全員に歓迎される。
 雪野さんに紹介した。

 「これが怜花だ。この子も俺の子な」
 「えぇ!」
 
 雪野さんが冗談だと言った。

 「あなた!」

 桜花たちが怜花を見て喜んだ。

 「可愛らしいお子さんですね!」
 
 雪野さんに抱かせてもらう。
 一通り顔合わせは済んだので、院長夫妻を迎えに出た。
 ロールスロイスだ。

 3時半前に着いて、お二人を乗せて出発した。

 「花岡さんに会えるのは久しぶりだな」
 「士王も連れて来てますから」
 「そうだな! 楽しみだ!」

 院長はご機嫌だ。
 まあ、楽しんで欲しい。

 「そう言えば院長、秘書課の二人が髪が濃くなったって評判ですよ」
 「そうか! お前もそう思うか!」
 「いえ、俺は別に興味ないんで」
 「石神!」

 静子さんが大笑いしていた。

 「でも、本当に元気になったんですよ。なんだか私まで」
 「そうですか」

 静子さんにも隠して「Ω」と「オロチ」の粉末を召し上がっていただいた。
 その効果が出ているようで嬉しい。

 30分ほどで俺の家に着き、リヴィングで大歓迎される。

 「院長先生!」
 「花岡くん!」

 院長が泣くのは予想していたが、栞まで泣き出したので驚いた。

 「院長先生、本当にお元気そうで」
 「花岡くんもな! ああ、その子が士王くんだね」
 「はい。どうか抱いてやって下さい」
 
 院長が嬉しそうに士王を抱き上げる。

 「院長先生よ」
 「いんちょーせんせー」
 「おお!」

 静子さんにも抱いてもらった。

 「まあ、重たい子ね!」
 
 士王が嬉しそうに笑った。

 六花と吹雪、響子が到着し、しばらくして早乙女が麗星と天狼を連れて来た。
 ハイファも一緒のはずだが、姿は見えない。
 護衛に徹するようだ。

 士王、天狼、吹雪が揃った。
 3人の母親と子どもたちが一緒になっている。





 「あれ? タカさん! また泣いちゃったんですか!」

 亜紀ちゃんに叫ばれた。
 みんなが俺を見ている。

 「涙は心の汗なんだ!」
 「なんです、それ?」

 みんなが爆笑した。
 俺は嬉しくて仕方が無かった。
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