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ミユキの来訪 Ⅱ
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子どもたちがあまりにもミユキに遠慮なく話しかけるので、いい加減にしろと言った。
「ミユキは遠くから来て疲れてるんだ!」
「え、私全然平気だよ?」
「おい」
「みんなとこんなに話せて嬉しい!」
「ミユキよー」
それでも一旦ミユキを連れて、丁度挿し込んで来た階段のガラスの帯を見せた。
「一日に一回しか見れないからな」
「素敵!」
ミユキは嬉しそうに眺めていた。
「星のスペクトル解析とかしてるんだけどね。本当に太陽って綺麗だよね」
「そうだな」
俺が客室に案内して、しばらく休んでくれと言ったが、ミユキは子どもたちと一緒にいたいと言った。
俺は笑ってまたリヴィングへ連れて行った。
子どもたちとまた少し話し、子どもたちは夕飯の準備を始めた。
「みんなで作るんだ!」
「奴隷たちだからな!」
「今日も馬車馬のようにやるよー!」
「「「「おぉー!」」」」
ミユキが大笑いした。
今日はミユキを歓迎してウッドデッキでバーベキューをする。
暖房器具を配置する。
俺とミユキはロボと遊んだ。
ミユキがロボピンポンで爆笑した。
「南のネット小説版って知っているでしょう?」
「ああ」
「あれって不思議な話。本になった小説にリンクもしてるんだけど、何だかあれが本当の石神くんのような気がする」
「そうか」
ネット版の『虎は孤高に』は、俺が医者をしながら悪の組織と戦っているという設定になっている。
ダヴィドフ財閥の力を借りながら、北海道に秘密基地を作り、という俺の現実の一部が脚色されて使われている。
「なんかね、ほら、今話題の「虎」の軍と似ているなーって」
「おお」
「石神くんが「虎」の軍の人だったら、ピッタリだなって思うの」
「アハハハハハ!」
鋭い人間だった。
「石神くんは、どうして結婚しなかったの?」
「俺がろくでもない人間だからだよ」
「そんなことないよ! 今だってこうして親友のお子さんたちを引き取って育ててるんでしょ?」
「それは成り行きだよ」
ミユキが真剣な顔で俺に聞いた。
「ネット版の方では、ヒロインの南ちゃんが死んじゃったよね?」
「ああ、そうだな」
「あの小説は、南ちゃんが自分と石神くんを重ねて書いたものじゃない」
「まあ、そうなのかな」
「だから、石神くんと幸せになるのが南ちゃんの夢だったんでしょ? だからショックだった」
「そっか」
「あれって、石神くんから何か聞いたからじゃないのかな?」
「え?」
「石神くんが結婚しない理由。それって、大事な人が死んじゃったからじゃないの?」
「……」
ミユキは本当に鋭い人間だった。
俺は奈津江のことを話した。
ミユキは黙って聴いていた。
「やっぱりそうだったんだ。石神くんは今でも奈津江さんを愛しているんだね」
「そうだ。俺の全てだった」
「そうかー」
ミユキはうつむいて、膝に乗ったロボを撫でていた。
夕飯の支度が出来た。
ウッドデッキにミユキを連れて行く。
「ねえ、なんで台が分かれているの?」
「見てりゃ分かる」
「ん?」
俺の号令で食事が始まる。
いつも通り、子どもたちは殴り合いながら肉を奪い合う。
「石神くん、あれ!」
「大丈夫だから」
俺は笑ってミユキのために食材を焼いて行く。
子どもたちはたびたびぶっ飛びながら、怪我もせずにまた戦場に戻って行く。
「あのさ、念のために言っとくけど、俺が食事の量を減らして奪い合ってるんじゃないからな!」
「え?」
「肉は一人5キロもあるんだよ! それでも自分が少しでも多くってああやって血を分けた兄弟で奪い合ってるんだ」
「そ、そうなんだ」
「10キロにしたって同じだからな! 俺のせいじゃないからな!」
「アハハハハハ!」
床暖房を最大にし、セラミックヒーターもミユキの周囲に並べている。
寒くはないはずだ。
「最初はさ、普通のバーベキューのように串に刺して焼いてたんだよ。そうしたら串を武器に使うようになって辞めた」
「えぇー!」
そのうちに落ち着くからと、ミユキに無理矢理食べさせた。
「なんであんなことになっちゃったのか、俺にも分からないんだよ。あの双子が小学2年生の時から、3キロも喰ってたんだからなぁ。それで腹を壊したことが一度もないんだよ」
「スゴイね」
「皿に盛って出すとそんなこともねぇのな。まあ、3人前は喰うけどさ。ああいう自由競争にすると、もうダメなんだ。一番上の亜紀ちゃんなんて、食べ放題の店はどこも出入り禁止になってるから」
「アハハハハハ!」
「こないださ。百均で「石神亜紀 出入り禁止」ってプレートが売っててさ。亜紀ちゃんが激怒してた」
「アハハハハハ!」
高校の学食で、亜紀ちゃんが来る時には事前に連絡が必要だったと話すと、ミユキが爆笑していた。
「こんな家に住んでるけどよ。いつもはメザシだからな」
「絶対嘘だよね」
「分かるか?」
「分かるよ!」
「でも、空き缶は拾ってるんだぞ?」
「アハハハハハ!」
俺たちが楽しく話しているので、獣たちも肉を咥えながら、時々ニコニコ見ていた。
「石神くんは変わらないね」
「そうかな」
「うん。子どもの頃のまま。優しくて、楽しくて、無茶苦茶なの」
「俺、そんなだったか?」
「そうだよ。、雲竜寺のお祭りでびっくりしちゃったもん」
「ああ!」
「屋台の人たちと仲良しでさ。今でも懐かしい楽しい思い出」
「そうだな!」
俺は何度も子どもたちに俺の食事を奪われた話をした。
「別荘に行くのに俺がいつも運転してさ。途中で俺の分のおにぎりを寄越せって言ったら、あいつら全部喰ってんだよ!」
「アハハハハハ!」
「こないだもさ。俺が楽しみに家に帰ったら、こいつらあの戦争に夢中になってて、俺の鰻まで喰ってたのな。頭に来たぜ!」
「大変だよね!」
「おうよ! 外に喰いに行って帰ったら、全員門の前で正座よ」
「アハハハハハ!」
「ああ、思い出した! 俺が車検の間に借りてたフェラーリをさ。双子が悪戯して全損だったんだ!」
「えぇー!」
「もう修理とかって段階じゃねぇの。すげぇ出費だったよ」
ミユキが爆笑していた。
「本当に酷い悪戯と事件ばかりでなぁ」
「そうだね」
「でもな、あいつらが来てくれて、本当に毎日が楽しいんだ。奈津江のことはずっと誰にも話せなかった。あいつらが来てからなんだよ。20年ぶりに誰かに話せるようになった。そのお陰もあって奈津江のお兄さんとも再会して許してもらってさ」
「そうなんだ」
「奈津江に出来なかったことを、お兄さんにほんのちょっとだけ出来るようになったんだよ」
「良かったね!」
「ああ!」
ミユキがもう食べられないと言った。
俺の話を聞きながら、夢中で食べていた。
俺は笑ってミユキにコーヒーを淹れて自分もゆっくりと食べた。
「ミユキはお酒は飲めるのか?」
「うん、大好き!」
「そうか、じゃあ後で飲もう」
「うん!」
ミユキを「虎温泉」に案内した。
亜紀ちゃんたちに一緒に入るように言った。
「奴隷が全身を洗ってくれるからな!」
「なに!」
「ヒモダンス」の声が聞こえた。
あいつらもミユキを歓迎してくれている。
ミユキの爆笑の声も聞こえた。
堅苦しいお上品な奴じゃなくて良かった。
「ミユキは遠くから来て疲れてるんだ!」
「え、私全然平気だよ?」
「おい」
「みんなとこんなに話せて嬉しい!」
「ミユキよー」
それでも一旦ミユキを連れて、丁度挿し込んで来た階段のガラスの帯を見せた。
「一日に一回しか見れないからな」
「素敵!」
ミユキは嬉しそうに眺めていた。
「星のスペクトル解析とかしてるんだけどね。本当に太陽って綺麗だよね」
「そうだな」
俺が客室に案内して、しばらく休んでくれと言ったが、ミユキは子どもたちと一緒にいたいと言った。
俺は笑ってまたリヴィングへ連れて行った。
子どもたちとまた少し話し、子どもたちは夕飯の準備を始めた。
「みんなで作るんだ!」
「奴隷たちだからな!」
「今日も馬車馬のようにやるよー!」
「「「「おぉー!」」」」
ミユキが大笑いした。
今日はミユキを歓迎してウッドデッキでバーベキューをする。
暖房器具を配置する。
俺とミユキはロボと遊んだ。
ミユキがロボピンポンで爆笑した。
「南のネット小説版って知っているでしょう?」
「ああ」
「あれって不思議な話。本になった小説にリンクもしてるんだけど、何だかあれが本当の石神くんのような気がする」
「そうか」
ネット版の『虎は孤高に』は、俺が医者をしながら悪の組織と戦っているという設定になっている。
ダヴィドフ財閥の力を借りながら、北海道に秘密基地を作り、という俺の現実の一部が脚色されて使われている。
「なんかね、ほら、今話題の「虎」の軍と似ているなーって」
「おお」
「石神くんが「虎」の軍の人だったら、ピッタリだなって思うの」
「アハハハハハ!」
鋭い人間だった。
「石神くんは、どうして結婚しなかったの?」
「俺がろくでもない人間だからだよ」
「そんなことないよ! 今だってこうして親友のお子さんたちを引き取って育ててるんでしょ?」
「それは成り行きだよ」
ミユキが真剣な顔で俺に聞いた。
「ネット版の方では、ヒロインの南ちゃんが死んじゃったよね?」
「ああ、そうだな」
「あの小説は、南ちゃんが自分と石神くんを重ねて書いたものじゃない」
「まあ、そうなのかな」
「だから、石神くんと幸せになるのが南ちゃんの夢だったんでしょ? だからショックだった」
「そっか」
「あれって、石神くんから何か聞いたからじゃないのかな?」
「え?」
「石神くんが結婚しない理由。それって、大事な人が死んじゃったからじゃないの?」
「……」
ミユキは本当に鋭い人間だった。
俺は奈津江のことを話した。
ミユキは黙って聴いていた。
「やっぱりそうだったんだ。石神くんは今でも奈津江さんを愛しているんだね」
「そうだ。俺の全てだった」
「そうかー」
ミユキはうつむいて、膝に乗ったロボを撫でていた。
夕飯の支度が出来た。
ウッドデッキにミユキを連れて行く。
「ねえ、なんで台が分かれているの?」
「見てりゃ分かる」
「ん?」
俺の号令で食事が始まる。
いつも通り、子どもたちは殴り合いながら肉を奪い合う。
「石神くん、あれ!」
「大丈夫だから」
俺は笑ってミユキのために食材を焼いて行く。
子どもたちはたびたびぶっ飛びながら、怪我もせずにまた戦場に戻って行く。
「あのさ、念のために言っとくけど、俺が食事の量を減らして奪い合ってるんじゃないからな!」
「え?」
「肉は一人5キロもあるんだよ! それでも自分が少しでも多くってああやって血を分けた兄弟で奪い合ってるんだ」
「そ、そうなんだ」
「10キロにしたって同じだからな! 俺のせいじゃないからな!」
「アハハハハハ!」
床暖房を最大にし、セラミックヒーターもミユキの周囲に並べている。
寒くはないはずだ。
「最初はさ、普通のバーベキューのように串に刺して焼いてたんだよ。そうしたら串を武器に使うようになって辞めた」
「えぇー!」
そのうちに落ち着くからと、ミユキに無理矢理食べさせた。
「なんであんなことになっちゃったのか、俺にも分からないんだよ。あの双子が小学2年生の時から、3キロも喰ってたんだからなぁ。それで腹を壊したことが一度もないんだよ」
「スゴイね」
「皿に盛って出すとそんなこともねぇのな。まあ、3人前は喰うけどさ。ああいう自由競争にすると、もうダメなんだ。一番上の亜紀ちゃんなんて、食べ放題の店はどこも出入り禁止になってるから」
「アハハハハハ!」
「こないださ。百均で「石神亜紀 出入り禁止」ってプレートが売っててさ。亜紀ちゃんが激怒してた」
「アハハハハハ!」
高校の学食で、亜紀ちゃんが来る時には事前に連絡が必要だったと話すと、ミユキが爆笑していた。
「こんな家に住んでるけどよ。いつもはメザシだからな」
「絶対嘘だよね」
「分かるか?」
「分かるよ!」
「でも、空き缶は拾ってるんだぞ?」
「アハハハハハ!」
俺たちが楽しく話しているので、獣たちも肉を咥えながら、時々ニコニコ見ていた。
「石神くんは変わらないね」
「そうかな」
「うん。子どもの頃のまま。優しくて、楽しくて、無茶苦茶なの」
「俺、そんなだったか?」
「そうだよ。、雲竜寺のお祭りでびっくりしちゃったもん」
「ああ!」
「屋台の人たちと仲良しでさ。今でも懐かしい楽しい思い出」
「そうだな!」
俺は何度も子どもたちに俺の食事を奪われた話をした。
「別荘に行くのに俺がいつも運転してさ。途中で俺の分のおにぎりを寄越せって言ったら、あいつら全部喰ってんだよ!」
「アハハハハハ!」
「こないだもさ。俺が楽しみに家に帰ったら、こいつらあの戦争に夢中になってて、俺の鰻まで喰ってたのな。頭に来たぜ!」
「大変だよね!」
「おうよ! 外に喰いに行って帰ったら、全員門の前で正座よ」
「アハハハハハ!」
「ああ、思い出した! 俺が車検の間に借りてたフェラーリをさ。双子が悪戯して全損だったんだ!」
「えぇー!」
「もう修理とかって段階じゃねぇの。すげぇ出費だったよ」
ミユキが爆笑していた。
「本当に酷い悪戯と事件ばかりでなぁ」
「そうだね」
「でもな、あいつらが来てくれて、本当に毎日が楽しいんだ。奈津江のことはずっと誰にも話せなかった。あいつらが来てからなんだよ。20年ぶりに誰かに話せるようになった。そのお陰もあって奈津江のお兄さんとも再会して許してもらってさ」
「そうなんだ」
「奈津江に出来なかったことを、お兄さんにほんのちょっとだけ出来るようになったんだよ」
「良かったね!」
「ああ!」
ミユキがもう食べられないと言った。
俺の話を聞きながら、夢中で食べていた。
俺は笑ってミユキにコーヒーを淹れて自分もゆっくりと食べた。
「ミユキはお酒は飲めるのか?」
「うん、大好き!」
「そうか、じゃあ後で飲もう」
「うん!」
ミユキを「虎温泉」に案内した。
亜紀ちゃんたちに一緒に入るように言った。
「奴隷が全身を洗ってくれるからな!」
「なに!」
「ヒモダンス」の声が聞こえた。
あいつらもミユキを歓迎してくれている。
ミユキの爆笑の声も聞こえた。
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