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ふりむきポンチ

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 12月中旬の土曜日。
 今週までが本格的なオペの連続で、来週からは比較的簡単なオペになっていく。
 年末年始で病院も休暇に入るためだ。
 術後の経過が動くような患者は、休暇中に掛からないように調整している。
 もちろん病院は365日24時間稼働だ。
 しかし、多くの医師やナース、技師たちが休暇に入るので、緊急対応が常よりも低いものになってしまうためだ。
 俺も今日からのんびりできる。

 いつものように、双子が起こしに来た。
 どこの家でもそうだと思うが、別に誰が決めたことでもなく、自然に役割のようなものが出来上がって行く。
 休日に俺を起こしにくるのは、双子の役目になってきた。

 「タカさーん! 朝ですよー」
 「タカさーん! パンツ脱がしますよー」

 双子が起こしに来ると楽しい。
 俺を楽しませようと考えて、様々なことをしてくるからだ。
 もちろん、俺もする。

 「おーし!」

 俺はベッドを降りて腕を組んで背を向けて立った。

 「えい!」

 ルーが俺のパジャマの下を降ろす。
 俺は振り向いてオチンチンでルーの顔をびっぱたく。

 ぱちん

 「「ギャハハハハハハハ!」」
 「ワハハハハハハハ!」

 楽しい。

 「ねぇ、わたしもー」
 「おう!」
 「えい!」

 ぱちん

 「「「「ギャハハハハハハハ!」」」」

 三人で大笑いした。

 「これ! なんかずっと前にやった気がする!」
 「おお!」

 こいつらがまだ小さい頃に、やった。
 俺が起こしに来た二人のパンツを脱がしたら、反撃されて俺も脱がされた。
 それで俺が二人の顔にオチンチンでパチパチやったことを思い出した。

 「なんか、懐かしいな!」
 「「うん!」」

 俺は一度下を履いて、二人一遍にたった。

 「「えい!」」
 
 ぱちんぱちん

 「「「ギャハハハハハハハハハ!」」」

 「お前らもやってみろ!」
 「「うん!」」

 二人の下を両手で降ろす。
 振り向いた。

 すー

 何も起きない。

 「「「ギャハハハハハハハハハ!」」」

 三人で笑いながら下へ降りた。

 「なーに? 随分楽しそうだね」

 亜紀ちゃんが微笑みながら言った。

 「タカさんとね、懐かしいことをしたの」
 「え、なに?」

 ルーが亜紀ちゃんに俺のパンツを降ろすように言った。

 「えー?」

 亜紀ちゃんが笑いながら俺のパンツを後ろから降ろした。

 ぱちん

 「!」

 「「ギャハハハハハハハ!」」
 「ギャハハハハハハハ!」

 双子が大笑いし、亜紀ちゃんも爆笑した。
 皇紀も笑っていた。
 柳は何とも言えない顔をしていた。
 またなんか始めた、という顔だ。

 「皇紀ちゃん!」

 皇紀がルーに呼ばれた。
 同じように俺のパンツを降ろす。

 ぱちん

 「アハハハハハハ!」
 「「「ギャハハハハハハハハハ!」」」

 「柳さーん!」
 「え、私も?」
 「はやくー」
 「わ、私は無理だから」

 ノリの悪い柳だからしょうがない。
 別に誰もうちでは強制はしない。
 やりたくなければ、しなければいい。
 自分の「役目」以外は全てそうだ。

 みんなで朝食にした。

 「タカさん、あれはね、確か私たちが小学4年生の時だよ」
 「そうだったかー」

 懐かしい。

 「いつもあんたたちって、ヘンなことやるもんね」
 「「ヒモダンス」も最初は私たちだもんね!」
 「ワハハハハハ!」

 みんなで食べながら楽しく話した。

 「さっきね、私たちもやったの」
 「えぇー?」
 「そしたらね、何も起きなかったの!」

 「ギャハハハハハ!」

 亜紀ちゃんが大笑いした。
 
 食後に皇紀もやらされた。
 ハーがパンツを降ろす。

 「えい!」
 
 ちょん

 「「「「ギャハハハハハハハ!」」」」
 「アハハハハハハ」
 「……」

 みんな爆笑したが、柳が辛そうな顔をしている。
 「ヒモダンス」も、柳が吹っ切ったのはしばらく後だった。
 こいつは石神家のダークサイドには、まだ染まっていない。
 まあ、全然構わないのだが。
 うちのダークサイドに付いて来れるのは、六花くらいだろう。

 「命名! 「ふりむきポンチ!」

 「「「「ギャハハハハハハハ!」」」」

 朝食を終え、それぞれ部屋に戻って着替える。
 俺も部屋へロボと戻った。
 着替えていると、ロボが背中から俺のパンツを脱がした。

 「ワハハハハハ!」
 
 ぱちん

 ロボが喜んだ。

 柳がドアを開けて見ていた。

 「!」
 「お、おう」

 柳はこれから顕さんの家に行くと言った。

 「ああ、頼むな」
 「はい」

 柳は動かない。

 「ロボまで……」

 小声で柳が呟いたのが聞こえた。

 「石神さん」
 「なんだ?」
 
 「あの、私もいいですか?」
 「あ?」
 「わ、私もこの家の人間ですから」
 「ああ、まあな」

 柳が入って来た。
 俺の背中に回る。

 「いいですか、いきますよ!」
 「お、おう」

 なんか、物凄く恥ずかしい。
 柳の緊張が伝わって来る。
 そんな、無理してやるようなことじゃねぇんだが。
 本当に下らないことなのだが。

 「えい!」

 ぱちん

 「あ、やった!」
 「おめでとう」
 「はい! ありがとうございました!」
 「じゃ、じゃあな」
 「はい! 行ってきます!」

 柳が走って階段を降りながら、掃除を始めた亜紀ちゃんに「私もやったよー!」と言っていた。
 俺は厚手のFOXフランネルの紺のパンツにオフホワイトのフィッシャーマンズセーターを着た。

 「なあ、ロボ」
 「にゃー」
 「うちってなんかおかしいかな?」
 「にゃー」




 俺にはよく分からないが、多分、御堂家ではやらないだろうとは思った。
 なんか、すまん。
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