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素晴らしい贈り物 Ⅱ
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7時前に家に戻った。
ロボがいつも通りに出迎えに来る。
リヴィングに上がって、子どもたちに聞いた。
「アレはどうなった?」
亜紀ちゃんが俺の食事の支度を始め、柳が説明に来た。
「しばらく、うちで面倒を見るんですよね?」
「決めてねぇ!」
柳がキングペンギンの生態を調べたことを俺に報告した。
「今は真冬ですから、外気温は大丈夫かと。庭で放し飼いですね」
「決めてねぇ!」
「エサは魚介類ですが、一応昼と夜にイワシとエビをあげました」
「お前らなー」
「トイレは覚えないようなので、庭で適当に」
「おい! あちこちでやんのかよ!」
「そこは野生ですから」
「冗談じゃねぇ!」
俺はウッドデッキに出た。
子どもたちも来る。
俺が出ると、すぐにペンギンが寄って来た。
まあ、カワイイと言えばそうなのだが。
俺は頭を撫でてやり、こっちへ来いと手で示し、庭の隅を示した。
「いいか、トイレはここでしろ。いいな?」
「アァー!」
意外に野太い声で鳴いた。
羽をバタバタさせた。
子どもたちが見ていた。
「よし!」
俺がウッドデッキに戻ると、柳が言った。
「あの、石神さん。ペンギンは海水のプールが必要らしいんですけど」
「ねぇよ、そんなもん」
「ですので、用意していいですか?」
「どうすんだよ?」
「虎温泉をですね」
「却下!」
大事な憩いの場を、あんなものに使わせるわけにはいかない。
柳は他の子どもたちと相談し、子ども用のプールを購入することにしたようだ。
庭の景観が悪くなるが、仕方が無い。
俺が食事をしている間、子どもたちはペンギンの飼育に必要な品を検索していた。
夜中、眠っているとペンギンのでかい鳴き声で子どもたちが目が覚ました。
俺の部屋は防音だ。
亜紀ちゃんが俺を起こした。
「タカさん、ペンギンが鳴いてるんです」
「なんだよ、もう」
ウッドデッキに、また子どもたちが集まっている。
俺が行くまで、確かに鳴いていた。
結構でかい声だ。
俺の姿を見て、ペンギンが寄って来た。
「お前らはもう寝ろよ」
子どもたちはそれぞれの部屋へ戻った。
ロボもさっさと戻った。
「……」
ペンギンが俺の前で、さっきよりも小さな声で鳴いている。
「おい、なんだよ、寂しいのか?」
「アァー」
「しょうがねぇだろう。お前どっから来たんだ? 教えてくれりゃ届けてもやるんだけどな」
「アァー」
頭を撫でてやる。
ペンギンは目を閉じて気持ちよさそうに頭を差しだしていた。
まあ、カワイイ。
手が臭くなった。
翌日、俺が夜に帰ると、子どもたちがもう一通りの物は揃えたようだった。
縦3メートル、幅1.5m、深さ70センチものでかいプール。
そこに人工海水をジャンジャン入れた。
別途滑り台まで用意した。
それで出入りが楽に出来るようだった。
俺がウッドデッキに行くと、ペンギンが楽しそうにプールに入っていた。
「おい、良かったな」
「アァー!」
その晩は鳴かなかった。
翌日の土曜日の朝。
早乙女がうちに来た。
雪野さんと怜花も一緒だ。
「石神、こないだのペンギンってどうなったんだ!」
ちょっと怒っている。
ウッドデッキに案内した。
「雪野さん! ほんとにいるよ!」
「ええ、カワイイですね」
俺に寄って来る。
頭を撫でてやる。
「やっぱりお前に懐いているな」
「お前の家で飼えば、ちゃんとお前たちに懐くよ」
「絶対に嫌だ!」
雪野さんに「どうですか?」と聞いたが「うちではちょっと」と言われてしまった。
「中野の警察署にちょっと聴いてみたんだ」
「ああ、どうだった?」
「飼い主は見つからないようだ。今、引受先の動物園や水族館を探しているそうだよ」
「そっか」
「ここなら大丈夫だろう?」
「まあ、少しの間はな」
「そうか」
「でもさ」
「なんだ?」
「こいつ、寂しいんじゃないかな?」
「え?」
「突然こんな知らない場所に独りでさ」
「ああ、そうかもな」
翌週。
家に帰ると柳が俺に言った。
「石神さん。ペンちゃんなんですけど」
「お前、名前を付けたのか」
「あの、段々元気がなくて」
「そうか」
「昨日の晩から何も食べてくれないんです」
「分かった」
俺は「Ωスーツ」に着替えた。
「石神さん?」
「こいつをよ、戻してやろうぜ」
「え?」
「場所は皇紀に聞いたよ。プリンス・エドワード島あたりにでも行ってみるよ」
「これからですか!」
「早い方がいいだろう」
「そうですね」
柳は寂しそうだったが、仕方が無いと分かっている。
一番柳が可愛がっていた。
俺は大型の「Ωボックス」にペンギンを入れた。
もうほとんど動かず、俺の腕を嘴でこすっただけだった。
GPSで位置を確認しながら飛んだ。
プリンス・エドワード島に着き、周辺でキングペンギンの群れを探す。
手間取ったが、何とか見つけることが出来た。
俺が地上に降りると、沢山のキングペンギンが集まって来た。
「Ωボックス」からペンギンを出してやる。
「おい、着いたぞ」
ペンギンは立ち上がり、周囲を見回した。
「アァー!」
俺は持って来たイワシやイカを食わせた。
旺盛に食べ始める。
集まって来た連中にも少しずつ分けてやった。
「おい、良かったな」
俺は最後にもう一度頭を撫で、そのまま帰った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「山が好き!」(シロピョン)
「海が好き!」(どうしたのですか、クロピョン?)
「山が好き!」(タカトラ様は、先日のペンギンはお気に召さなかったようだ)
「海が好き!」(そうなのですか)
「山が好き!」(これまで献上したものもそうだった)
「海が好き!」(残念です)
「山が好き!」(他に何かないものだろうか)
「海が好き!」(そうですねぇ)
「山が好き!」(是非、タカトラ様を喜ばせたいのだ)
「海が好き!」(それはそうですが。ああ、丁度いいのがいますよ!)」
「山が好き!」(ほんとうか!)
ぐるぐる
「ガォー!」
パシャン、ポーン
パシッ(キャッチ)
そろそろ~
トン
「ガォー!」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
ある日、うちの庭にホッキョクグマがいた。
もう辞めて。
ロボがいつも通りに出迎えに来る。
リヴィングに上がって、子どもたちに聞いた。
「アレはどうなった?」
亜紀ちゃんが俺の食事の支度を始め、柳が説明に来た。
「しばらく、うちで面倒を見るんですよね?」
「決めてねぇ!」
柳がキングペンギンの生態を調べたことを俺に報告した。
「今は真冬ですから、外気温は大丈夫かと。庭で放し飼いですね」
「決めてねぇ!」
「エサは魚介類ですが、一応昼と夜にイワシとエビをあげました」
「お前らなー」
「トイレは覚えないようなので、庭で適当に」
「おい! あちこちでやんのかよ!」
「そこは野生ですから」
「冗談じゃねぇ!」
俺はウッドデッキに出た。
子どもたちも来る。
俺が出ると、すぐにペンギンが寄って来た。
まあ、カワイイと言えばそうなのだが。
俺は頭を撫でてやり、こっちへ来いと手で示し、庭の隅を示した。
「いいか、トイレはここでしろ。いいな?」
「アァー!」
意外に野太い声で鳴いた。
羽をバタバタさせた。
子どもたちが見ていた。
「よし!」
俺がウッドデッキに戻ると、柳が言った。
「あの、石神さん。ペンギンは海水のプールが必要らしいんですけど」
「ねぇよ、そんなもん」
「ですので、用意していいですか?」
「どうすんだよ?」
「虎温泉をですね」
「却下!」
大事な憩いの場を、あんなものに使わせるわけにはいかない。
柳は他の子どもたちと相談し、子ども用のプールを購入することにしたようだ。
庭の景観が悪くなるが、仕方が無い。
俺が食事をしている間、子どもたちはペンギンの飼育に必要な品を検索していた。
夜中、眠っているとペンギンのでかい鳴き声で子どもたちが目が覚ました。
俺の部屋は防音だ。
亜紀ちゃんが俺を起こした。
「タカさん、ペンギンが鳴いてるんです」
「なんだよ、もう」
ウッドデッキに、また子どもたちが集まっている。
俺が行くまで、確かに鳴いていた。
結構でかい声だ。
俺の姿を見て、ペンギンが寄って来た。
「お前らはもう寝ろよ」
子どもたちはそれぞれの部屋へ戻った。
ロボもさっさと戻った。
「……」
ペンギンが俺の前で、さっきよりも小さな声で鳴いている。
「おい、なんだよ、寂しいのか?」
「アァー」
「しょうがねぇだろう。お前どっから来たんだ? 教えてくれりゃ届けてもやるんだけどな」
「アァー」
頭を撫でてやる。
ペンギンは目を閉じて気持ちよさそうに頭を差しだしていた。
まあ、カワイイ。
手が臭くなった。
翌日、俺が夜に帰ると、子どもたちがもう一通りの物は揃えたようだった。
縦3メートル、幅1.5m、深さ70センチものでかいプール。
そこに人工海水をジャンジャン入れた。
別途滑り台まで用意した。
それで出入りが楽に出来るようだった。
俺がウッドデッキに行くと、ペンギンが楽しそうにプールに入っていた。
「おい、良かったな」
「アァー!」
その晩は鳴かなかった。
翌日の土曜日の朝。
早乙女がうちに来た。
雪野さんと怜花も一緒だ。
「石神、こないだのペンギンってどうなったんだ!」
ちょっと怒っている。
ウッドデッキに案内した。
「雪野さん! ほんとにいるよ!」
「ええ、カワイイですね」
俺に寄って来る。
頭を撫でてやる。
「やっぱりお前に懐いているな」
「お前の家で飼えば、ちゃんとお前たちに懐くよ」
「絶対に嫌だ!」
雪野さんに「どうですか?」と聞いたが「うちではちょっと」と言われてしまった。
「中野の警察署にちょっと聴いてみたんだ」
「ああ、どうだった?」
「飼い主は見つからないようだ。今、引受先の動物園や水族館を探しているそうだよ」
「そっか」
「ここなら大丈夫だろう?」
「まあ、少しの間はな」
「そうか」
「でもさ」
「なんだ?」
「こいつ、寂しいんじゃないかな?」
「え?」
「突然こんな知らない場所に独りでさ」
「ああ、そうかもな」
翌週。
家に帰ると柳が俺に言った。
「石神さん。ペンちゃんなんですけど」
「お前、名前を付けたのか」
「あの、段々元気がなくて」
「そうか」
「昨日の晩から何も食べてくれないんです」
「分かった」
俺は「Ωスーツ」に着替えた。
「石神さん?」
「こいつをよ、戻してやろうぜ」
「え?」
「場所は皇紀に聞いたよ。プリンス・エドワード島あたりにでも行ってみるよ」
「これからですか!」
「早い方がいいだろう」
「そうですね」
柳は寂しそうだったが、仕方が無いと分かっている。
一番柳が可愛がっていた。
俺は大型の「Ωボックス」にペンギンを入れた。
もうほとんど動かず、俺の腕を嘴でこすっただけだった。
GPSで位置を確認しながら飛んだ。
プリンス・エドワード島に着き、周辺でキングペンギンの群れを探す。
手間取ったが、何とか見つけることが出来た。
俺が地上に降りると、沢山のキングペンギンが集まって来た。
「Ωボックス」からペンギンを出してやる。
「おい、着いたぞ」
ペンギンは立ち上がり、周囲を見回した。
「アァー!」
俺は持って来たイワシやイカを食わせた。
旺盛に食べ始める。
集まって来た連中にも少しずつ分けてやった。
「おい、良かったな」
俺は最後にもう一度頭を撫で、そのまま帰った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「山が好き!」(シロピョン)
「海が好き!」(どうしたのですか、クロピョン?)
「山が好き!」(タカトラ様は、先日のペンギンはお気に召さなかったようだ)
「海が好き!」(そうなのですか)
「山が好き!」(これまで献上したものもそうだった)
「海が好き!」(残念です)
「山が好き!」(他に何かないものだろうか)
「海が好き!」(そうですねぇ)
「山が好き!」(是非、タカトラ様を喜ばせたいのだ)
「海が好き!」(それはそうですが。ああ、丁度いいのがいますよ!)」
「山が好き!」(ほんとうか!)
ぐるぐる
「ガォー!」
パシャン、ポーン
パシッ(キャッチ)
そろそろ~
トン
「ガォー!」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
ある日、うちの庭にホッキョクグマがいた。
もう辞めて。
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