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大銀河連合「天下一ぶ
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9月後半の土曜日の朝。
祝日が入り、今日からまた三連休だ。
ドタドタと双子が階段を駆け上がって来る音が聞こえる。
俺は家の中が静かでいないと怒るので、普段はそういうことはない。
何か慌てている。
「タカさん! 庭に《グランマザー》が来たよ!」
「上品に動け!」
ルーが説明したまま、代わりにハーが日本舞踊を踊る。
「私たちを誘いに来たんだって!」
「なんだよ?」
「タカさんに説明したいんだってさ!」
「まだ朝食も喰ってねぇんだ」
「亜紀ちゃんがウッドデッキに用意してる!」
慌ててる割に冷静じゃねぇか。
まあ、亜紀ちゃんは動じない人間だ。
俺はパジャマのまま、ウッドデッキに出た。
「石神様! 突然訪問してしまい、申し訳ございません!」
「いいよ。悪いけどこれから朝食なんだ。食べながら聞いてもいいか?」
「もちろんでございます!」
石神家の土曜日の朝食は簡単だ。
遅くまで寝ていることも多いので、基本はベーコンエッグとサラダ(必須)と味噌汁。
俺には焼き魚などが別途付くが、今朝は焼きたらこだった。
《グランマザー》が土産なのか「とろろ昆布」を「どうぞ」と言ってテーブルに置いた。
味噌汁に入れた。
俺が食べている前で、《グランマザー》は、俺たちを格闘技大会に誘いたいのだと話した。
何でも定期的に腕に覚えのある希望者が集まって、異種族の格闘技戦があるらしい。
「石神様方にも楽しんで頂けると思い、お誘いに参りました」
「いや、面白いのかもしれないけど、時間が無いよ。今日は休日だけど、遠方に行くんじゃなぁ」
《グランドマザー》の顔がニッコリと笑った。
「はい、その御心配には及びません。お身体はここにいらしたままで、大会にはハイパー相互通信で参加して頂けます」
「どういうことだ?」
《グランマザー》が合図し、上空からビーチベッドのようなものが運ばれて来た。
全部で6台。
「石神様、どうぞ横になってみて下さい」
子どもたちが全員来た。
俺は真ん中のベッドに横になった。
途端に周囲が暗くなり、すぐに何かの広大な会場にいることになった。
「「帰還」と仰って下さい」
俺がそう言うと、ビーチベッドに戻った。
「なるほど! VRのようなものか!」
「流石は石神様。その通りでございます。そのベッドが皆様の意識を観測して、ここにいらしたままで別な場所で行動できるようになるのです」
「俺たちも似たようなものがあるからな。分かったぜ!」
「異種族同士では必要な大気成分も異なりますし、その他様々な環境の違いがあります。ですので、このようなシステムで同時に存在出来るようにしているのです」
「なるほど! それで格闘技戦も出来るということか」
「はい! 技はわたくしが再現いたします。普段の動きや技がそのまま使え、ダメージも計算されて本当に戦っているのと変わりなく体験できるのです」
「スゴイな! 俺たちの技も大丈夫なのか?」
「はい。わたくしには理解出来なくとも、石神様の繰り出そうとするものは全て再現いたします。そういう観測をしているのでございます」
「ほう」
「仮想現実の空間でございますので、お怪我もありません。帰ってくることもいつでも可能です」
「なるほどな。楽しそうだけどな、でも大会って言うくらいだから結構時間も掛かるんだろう?」
「それも御心配なく。仮想現実の空間では時間も早まっておりますので、この地球の時間であれば、数時間で全て終了するかと」
「スッゲェー!」
「オホホホホ」
亜紀ちゃんがやる気になっていた。
「タカさん! お昼過ぎには戻れるじゃないですか!」
他の子どもたちも面白そうだと言っている。
「じゃあ、行くか!」
「「「「「はい!」」」」」
俺たちはビーチベッドに横になった。
全員が、どこかの広い会場に揃った。
大勢の異種族がおり、カウンターに並んでいる。
数万人はいそうだ。
身体の大きさも構造も違う。
大半は人型と言ってもいいが、そうではない触手だらけの奴や、岩の塊にしか見えない奴もいる。
「ここは受付会場でございます。石神様たちは既に登録が済んでおりますので、どうぞ専用の控室へ」
《グランマザー》も一緒に来ている。
俺はその案内で通路を進んだ。
俺たちの控室で、スクリーンのようなものを出して《グランマザー》が大会の説明をしてくれた。
「今回は約50万人の参加となりました。各星系で予備選を勝ち上がって来た代表者たちです。6名一組での参加です。最初に1万人ずつでのバトルロイヤルで予選を行ないます。残った50組でトーナメント方式で決勝まで進むというものです」
「分かりやすいな。俺たちは予備選を経てないけどいいのか?」
「はい! 石神様たちは特別ですので。何なら、予選も割愛いたしますが」
「いや、出させてくれ。どういう格闘戦になるのか分からないからな。自分たちの程度も知っておきたい」
「はい、かしこまりました。戦いは相手の戦闘不能か降参で決まります。死んでも問題ありませんので、ご心配なく」
VRだからだ。
「素手であれば、どのような攻撃も構わないんだな?」
「はい。このような大会ですので、中には途轍もない破壊力の技を使う者もおります。存分に発揮して下さいませ」
「分かった」
「もうすぐ、バトルロイヤルが始まります。その前に規定で、一度皆様の武器の所持やその他の検査がございます」
「ああ、そうか」
ドアを開けて、初老の紳士のような奴が入って来た。
姿に関しては、俺たちに会わせて《グランマザー》が変換しているのかもしれない。
「失礼します」
通信アンテナのようなものが付いた眼鏡の形をしたものを顔に掛けた。
「スカウターだよ!」
「私たちの強さを測るんだよ!」
言ったルーとハーの頭を引っぱたいた。
「申し訳ございません。最近、目がすっかり老いてしまいまして」
「「……」」
ただの眼鏡だった。
「おお! この炎に包まれた方は! まるでスーパーサイ……」
俺は老人の頭を引っぱたいて辞めろと言った。
「失礼いたしました。問題ございません。存分に戦いをお楽しみください」
俺たちはいつの間にかタイガーストライプのコンバットスーツを着ていた。
《グランマザー》の配慮だろう。
俺たちのことをよく知っている。
広大な円形闘技場に案内された。
宙に浮いているようだ、周囲は闇に閉ざされている。
1万人の闘技者がいるはずだが、全く混み合ってはいない。
ほとんどが、俺たちよりも体格が良かった。
《グランマザー》が、彼らの言葉を翻訳してくれた。
「なんだよ、あいつら。あんな身体でよくここまで来たな」
「逃げるのが上手いんだろうよ」
「でも、速いタイプにも見えねぇぜ」
「瞬殺だな」
「ちげぇねぇ」
「ちっちゃすぎて、殺してから盾にもならねぇぜ」
酷い言われようだ。
俺たちの傍へ、幾つかの集団が来る。
「お前ら、何しに来たんだ?」
「金積んで来たか!」
「たまに、そんな奴らがいるよなぁ」
「この本戦に来るだけでも自慢出来るからな!」
全員が嗤っていた。
「おい、毛虫!」
全身毛だらけの連中に亜紀ちゃんが言った。
「お前らは真っ先に殺してやる」
「へぇ!」
アナウンスが流れた。
5秒後に開始と言っている。
サイレンが鳴った。
亜紀ちゃんが飛び出し、毛虫の集団に向かう。
毛虫が体毛を逆立て、全身に電撃が走った。
亜紀ちゃんは右手を一振りした。
毛虫たちが両断され、大量の緑色の血液と内臓を振りまきながら絶命した。
「龍刀」だ。
「緒戦であまり見せるな! 「龍刀」と「槍雷」で行け!」
「「「「「はい!」」」」」
俺たちの強さを知って、徐々に集まって来る。
強い奴を最初に全員で殺そうというつもりのはずだ。
俺たちはここでは強い部類だと分かった。
全員でどんどん斬って行く。
俺は「龍刀」で「連山」を使って、吹き飛ばしながら集団に突っ込んだ。
亜紀ちゃんと双子がそれを解析し、同様に突っ込んで行く。
皇紀と柳は一緒にいて、遠方から「槍雷」で屠って行く。
二人の巨大な「槍雷」は集団を吹き飛ばしながら引き千切って行った。
「「「「「「ギャハハハハハハ!」」」」」」
悲鳴が上がっているので、ダメージや痛覚は感じているようだ。
5分後、残った数百名が戦うことなく降参していた。
仮想現実とはいえ、悲惨な死に方をしたくないのだろう。
根性が無いとも言えるが、文化的な違いもあるのかもしれない。
俺たちの闘技場での予選が終わった。
「お見事です! 歴代最速で予選が終了致しました!」
「へぇ」
《グランマザー》が俺たちを褒め称えた。
「これで銀河大連合の中で、石神様たちを見下す者はもうおりません」
「なるほどね」
《グランマザー》は、そういう意図もあって俺たちをこの大会に誘ったらしい。
「今回の「天下一ぶ……」
俺は《グランマザー》の口(?)を押さえて遮った。
「あのさ、そういうのはいいから」
「そうですの?」
怒られたくない。
祝日が入り、今日からまた三連休だ。
ドタドタと双子が階段を駆け上がって来る音が聞こえる。
俺は家の中が静かでいないと怒るので、普段はそういうことはない。
何か慌てている。
「タカさん! 庭に《グランマザー》が来たよ!」
「上品に動け!」
ルーが説明したまま、代わりにハーが日本舞踊を踊る。
「私たちを誘いに来たんだって!」
「なんだよ?」
「タカさんに説明したいんだってさ!」
「まだ朝食も喰ってねぇんだ」
「亜紀ちゃんがウッドデッキに用意してる!」
慌ててる割に冷静じゃねぇか。
まあ、亜紀ちゃんは動じない人間だ。
俺はパジャマのまま、ウッドデッキに出た。
「石神様! 突然訪問してしまい、申し訳ございません!」
「いいよ。悪いけどこれから朝食なんだ。食べながら聞いてもいいか?」
「もちろんでございます!」
石神家の土曜日の朝食は簡単だ。
遅くまで寝ていることも多いので、基本はベーコンエッグとサラダ(必須)と味噌汁。
俺には焼き魚などが別途付くが、今朝は焼きたらこだった。
《グランマザー》が土産なのか「とろろ昆布」を「どうぞ」と言ってテーブルに置いた。
味噌汁に入れた。
俺が食べている前で、《グランマザー》は、俺たちを格闘技大会に誘いたいのだと話した。
何でも定期的に腕に覚えのある希望者が集まって、異種族の格闘技戦があるらしい。
「石神様方にも楽しんで頂けると思い、お誘いに参りました」
「いや、面白いのかもしれないけど、時間が無いよ。今日は休日だけど、遠方に行くんじゃなぁ」
《グランドマザー》の顔がニッコリと笑った。
「はい、その御心配には及びません。お身体はここにいらしたままで、大会にはハイパー相互通信で参加して頂けます」
「どういうことだ?」
《グランマザー》が合図し、上空からビーチベッドのようなものが運ばれて来た。
全部で6台。
「石神様、どうぞ横になってみて下さい」
子どもたちが全員来た。
俺は真ん中のベッドに横になった。
途端に周囲が暗くなり、すぐに何かの広大な会場にいることになった。
「「帰還」と仰って下さい」
俺がそう言うと、ビーチベッドに戻った。
「なるほど! VRのようなものか!」
「流石は石神様。その通りでございます。そのベッドが皆様の意識を観測して、ここにいらしたままで別な場所で行動できるようになるのです」
「俺たちも似たようなものがあるからな。分かったぜ!」
「異種族同士では必要な大気成分も異なりますし、その他様々な環境の違いがあります。ですので、このようなシステムで同時に存在出来るようにしているのです」
「なるほど! それで格闘技戦も出来るということか」
「はい! 技はわたくしが再現いたします。普段の動きや技がそのまま使え、ダメージも計算されて本当に戦っているのと変わりなく体験できるのです」
「スゴイな! 俺たちの技も大丈夫なのか?」
「はい。わたくしには理解出来なくとも、石神様の繰り出そうとするものは全て再現いたします。そういう観測をしているのでございます」
「ほう」
「仮想現実の空間でございますので、お怪我もありません。帰ってくることもいつでも可能です」
「なるほどな。楽しそうだけどな、でも大会って言うくらいだから結構時間も掛かるんだろう?」
「それも御心配なく。仮想現実の空間では時間も早まっておりますので、この地球の時間であれば、数時間で全て終了するかと」
「スッゲェー!」
「オホホホホ」
亜紀ちゃんがやる気になっていた。
「タカさん! お昼過ぎには戻れるじゃないですか!」
他の子どもたちも面白そうだと言っている。
「じゃあ、行くか!」
「「「「「はい!」」」」」
俺たちはビーチベッドに横になった。
全員が、どこかの広い会場に揃った。
大勢の異種族がおり、カウンターに並んでいる。
数万人はいそうだ。
身体の大きさも構造も違う。
大半は人型と言ってもいいが、そうではない触手だらけの奴や、岩の塊にしか見えない奴もいる。
「ここは受付会場でございます。石神様たちは既に登録が済んでおりますので、どうぞ専用の控室へ」
《グランマザー》も一緒に来ている。
俺はその案内で通路を進んだ。
俺たちの控室で、スクリーンのようなものを出して《グランマザー》が大会の説明をしてくれた。
「今回は約50万人の参加となりました。各星系で予備選を勝ち上がって来た代表者たちです。6名一組での参加です。最初に1万人ずつでのバトルロイヤルで予選を行ないます。残った50組でトーナメント方式で決勝まで進むというものです」
「分かりやすいな。俺たちは予備選を経てないけどいいのか?」
「はい! 石神様たちは特別ですので。何なら、予選も割愛いたしますが」
「いや、出させてくれ。どういう格闘戦になるのか分からないからな。自分たちの程度も知っておきたい」
「はい、かしこまりました。戦いは相手の戦闘不能か降参で決まります。死んでも問題ありませんので、ご心配なく」
VRだからだ。
「素手であれば、どのような攻撃も構わないんだな?」
「はい。このような大会ですので、中には途轍もない破壊力の技を使う者もおります。存分に発揮して下さいませ」
「分かった」
「もうすぐ、バトルロイヤルが始まります。その前に規定で、一度皆様の武器の所持やその他の検査がございます」
「ああ、そうか」
ドアを開けて、初老の紳士のような奴が入って来た。
姿に関しては、俺たちに会わせて《グランマザー》が変換しているのかもしれない。
「失礼します」
通信アンテナのようなものが付いた眼鏡の形をしたものを顔に掛けた。
「スカウターだよ!」
「私たちの強さを測るんだよ!」
言ったルーとハーの頭を引っぱたいた。
「申し訳ございません。最近、目がすっかり老いてしまいまして」
「「……」」
ただの眼鏡だった。
「おお! この炎に包まれた方は! まるでスーパーサイ……」
俺は老人の頭を引っぱたいて辞めろと言った。
「失礼いたしました。問題ございません。存分に戦いをお楽しみください」
俺たちはいつの間にかタイガーストライプのコンバットスーツを着ていた。
《グランマザー》の配慮だろう。
俺たちのことをよく知っている。
広大な円形闘技場に案内された。
宙に浮いているようだ、周囲は闇に閉ざされている。
1万人の闘技者がいるはずだが、全く混み合ってはいない。
ほとんどが、俺たちよりも体格が良かった。
《グランマザー》が、彼らの言葉を翻訳してくれた。
「なんだよ、あいつら。あんな身体でよくここまで来たな」
「逃げるのが上手いんだろうよ」
「でも、速いタイプにも見えねぇぜ」
「瞬殺だな」
「ちげぇねぇ」
「ちっちゃすぎて、殺してから盾にもならねぇぜ」
酷い言われようだ。
俺たちの傍へ、幾つかの集団が来る。
「お前ら、何しに来たんだ?」
「金積んで来たか!」
「たまに、そんな奴らがいるよなぁ」
「この本戦に来るだけでも自慢出来るからな!」
全員が嗤っていた。
「おい、毛虫!」
全身毛だらけの連中に亜紀ちゃんが言った。
「お前らは真っ先に殺してやる」
「へぇ!」
アナウンスが流れた。
5秒後に開始と言っている。
サイレンが鳴った。
亜紀ちゃんが飛び出し、毛虫の集団に向かう。
毛虫が体毛を逆立て、全身に電撃が走った。
亜紀ちゃんは右手を一振りした。
毛虫たちが両断され、大量の緑色の血液と内臓を振りまきながら絶命した。
「龍刀」だ。
「緒戦であまり見せるな! 「龍刀」と「槍雷」で行け!」
「「「「「はい!」」」」」
俺たちの強さを知って、徐々に集まって来る。
強い奴を最初に全員で殺そうというつもりのはずだ。
俺たちはここでは強い部類だと分かった。
全員でどんどん斬って行く。
俺は「龍刀」で「連山」を使って、吹き飛ばしながら集団に突っ込んだ。
亜紀ちゃんと双子がそれを解析し、同様に突っ込んで行く。
皇紀と柳は一緒にいて、遠方から「槍雷」で屠って行く。
二人の巨大な「槍雷」は集団を吹き飛ばしながら引き千切って行った。
「「「「「「ギャハハハハハハ!」」」」」」
悲鳴が上がっているので、ダメージや痛覚は感じているようだ。
5分後、残った数百名が戦うことなく降参していた。
仮想現実とはいえ、悲惨な死に方をしたくないのだろう。
根性が無いとも言えるが、文化的な違いもあるのかもしれない。
俺たちの闘技場での予選が終わった。
「お見事です! 歴代最速で予選が終了致しました!」
「へぇ」
《グランマザー》が俺たちを褒め称えた。
「これで銀河大連合の中で、石神様たちを見下す者はもうおりません」
「なるほどね」
《グランマザー》は、そういう意図もあって俺たちをこの大会に誘ったらしい。
「今回の「天下一ぶ……」
俺は《グランマザー》の口(?)を押さえて遮った。
「あのさ、そういうのはいいから」
「そうですの?」
怒られたくない。
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