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別荘の日々の終わり

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 ルーが話し終えた。
 全員が黙っていた。

 「ルー、お前……」
 「ごめんね、タカさん! 話さなきゃってハーと言ってたんだけど、どうしても話せなかった」
 「いいよ。俺の心を考えてくれてたんだろう?」
 「「うん!」」

 俺は双子の頭を抱き寄せていた。

 「タカさん、あそこで虎白さんと初めて会った時のことを話してたじゃない」
 「ああ、駅ビルでの話か」
 「うん。その時にね、虎白さんが「これが「虎」か」って聞いたんだって。でも虎影さんが、そうじゃないって」
 「え?」
 「「こいつはただの生意気でカワイイガキだ」って言ったんだって。虎影さんは、タカさんに普通に元気に育って欲しいばかりになってたんだってさ。大きな運命なんかどうでもいいからって」
 「そうか……」

 ハーが話した。

 「タカさんが子どもの頃に死に掛けたっていう話もでたじゃない。その時に虎白さんたちに虎影さんが何とか出来ないかって話したって」
 「ああ、そういう話もあったな」
 「あの時は大したことが出来なかったって、虎白さんが言ってた」
 「うん、そうだな。でも吉原龍子に出会わせてくれた」
 「それってね、普通のことじゃないんだよ。後から私たち、調べたの。吉原龍子って超有名な拝み屋で、あちこちに有力なコネがあって。だから、頼まれた依頼は大抵全部断ってたって」
 「そうなのか?」
 「連絡を取るのも普通は出来ないんだよ。どこにいるのか、誰も知らないの」
 「……」

 「だから、虎白さんたちは必死で探したんだと思う! 多分だけど、タカさんの運命があったから、吉原龍子も結局は引き受けてくれたんだろうけどね」
 「そうだったか」

 早乙女が言った。

 「でも、俺が出会ったのは、ヤクザの親分との揉め事だったよ? そういう依頼も受けていたのかな」
 「それってね、小島将軍の部下の話だよ」
 「相当ヤバい案件! 吉原龍子だから引き受けて何とかなってたんだって」
 「「!」」

 俺と早乙女は驚いた。

 「小島将軍の後釜を狙ってた奴がいたの。それを解決したんだ。吉原龍子は、小島将軍とも関わるようなスゴイ人だったんだって」
 「ほんとかよ……」

 何故双子がそんなことを調べられたのかは、何となく分かる。
 こいつらの「特殊能力」だ。

 「とにかく、ありがとうな。お前たちのお陰で、また親父のことが知れた。本当にありがとう」

 俺は立ち上がって頭を下げた。
 双子が俺に抱き着いて来た。

 「タカさんが一番大事!」
 「タカさんのためなら何でもするよ!」

 「ありがとうな」

 俺は双子を座らせ、自分の席に戻った。
 響子と六花が身体を寄せてきた。

 「親父が一度だけな、石神家のことを話してくれたんだ」
 「タカさん……」

 亜紀ちゃんが心配そうに俺に声を掛けてきた。

 「自分は石神家の当主だったけど、それを弟に押し付けて出て来たんだって。自由に生きたいからそうしたってさ。俺はその話を聞いた時に嫌だった。大好きな親父が、そんな自分勝手なことをして家を出て来たのかと思うとな」
 「タカさん……」

 「でも、やっぱり違ったんだな。まあ、虎白さんたちのあの態度を見てりゃな。親父を憎む気持ちなんて、これっぽっちも無かったよな。今でも慕ってくれててさ」
 「そうでしたよね」

 「何が何でも俺を石神家の当主にするんだってなぁ。迷惑千万だったけど、ルーの話を聞いて分かったよ」
 「はい」

 「でも、あれはやり過ぎだって! やっぱちょっとは親父を憎んでたんじゃねぇの?」

 みんなが小さく笑った。
 誰も、俺もそうは思っていない。
 多分、短い時間で俺に石神家の剣技を叩き込む必要があったのだ。
 それは、虎白さんたちが、その必要性を感じていたということだ。
 俺が取れる時間の中で。
 俺が間に合うように。

 もちろん、あの短い時間の中で俺が習得出来たものは僅かだ。
 しかし、そこから俺が鍛錬していけば何とかなる。
 
 俺は響子と早めに寝ることにした。
 六花とロボも一緒に来る。

 「つまみは全部食べてから寝ろよな!」

 



 俺を挟んで二人の女が寝てくれた。
 俺の手を響子が握ってくれる。
 六花はオッパイに乗せてくれる。
 ロボは枕に乗って俺の頭に顔をくっつけてくれた。

 「俺って、モテモテだよな」
 
 二人が笑った。

 「ガキの頃はさ、とにかくお袋と親父がいてくれればそれで良かった。それと、時々腹いっぱいに飯が食えればな」

 二人がまた笑う。

 「貧乏なんて、何でも無かった。病気も怪我も、俺にとっては何ほどのこともなかったんだ。まあ、病気に関しては親を悲しませることだけが辛かったけどな」
 「タカトラ……」

 「俺が誰かのために傷だらけになって、なんて言う奴もいるけどな。そうじゃないんだよ。俺はお袋と親父に目一杯の愛情を貰ってたから。だから誰かが苦しんでいたら、自分を投げ出すことなんて何でもなかったんだ。俺は愛の大金持ちだったからな」
 
 響子が俺の手を強く握るので、そっちを向いて額にキスをしてやった。
 響子の顔を隠したので、思い切り六花のオッパイを揉んだ。
 六花が俺の手をパンツの中に移動させる。

 「今は金も十分にあってさ。美味いものを幾らでも食べれる。今も大事な人間のために出来るだけのことをしたい。それは俺が使い切れないほどの愛情を両親から貰ったからだ」

 響子が俺の胸に顔を埋め、六花の股間で俺の指が高速運動をする。

 「それなのに、今でもこんなにいい女たちが俺に愛情をくれる。俺、どうにかなっちまうぜ」
 「タカトラ、好き」
 「俺も好きだよ、響子」

 「石神先生、そろそろ夜の訓練に行きますか!」
 「おう!」
 「もう一緒に寝ようよ」
 「「うん」」

 俺は六花のパンツから手を抜いた。
 六花が俺の背中に歯を立てた。
 響子の髪を撫でてやる。

 「あれ、タカトラの指、濡れてるよ?」
 「おお!」

 ちょっと暑くて汗を掻いたと言うと、響子が安心した。

 「ちょっと風呂で汗を流して来るな」
 「うん」
 「あ、私も」
 「二人とも、早く戻ってね」
 「「うん!」」

 六花と風呂場で愛し合っていると、脱衣所に早乙女と雪野さんが入って来たのを感じた。
 
 「六花ぁー!」

 俺が大きな声で叫ぶと、二人は慌てて出て行った。
 六花と笑った。

 部屋に戻ると、響子はロボとスヤスヤ寝ていた。
 俺と六花も眠った。



 翌朝、朝食を食べて掃除をし、俺たちは別荘を出た。
 
 「タカさん! アラスカから緊急入電!」
 
 皇紀が叫んだ。

 「オープンにしろ!」
 「はい!」

 スピーカーでターナー少将の声が響く。

 「タイガー! 聞こえるか!」
 「ああ、聞いている。子どもたちも一緒だ!」
 「先ほど、大統領から連絡があった! ロシア軍の動きが怪しい。多分シベリアのラーゲリ(収容所)に向かうらしいと潜入したエージェントからの情報だ」
 「なんだと!」
 「俺たちの「大脱走計画」が漏れたのかもしれん」
 「出撃の日時は!」
 「三日後だ。多分、四日後には襲われる可能性が高い」
 「分かった。明日中に準備をして、明後日にはそっちへ行く」
 「頼むぞ!」

 子どもたちも全員聴いている。

 「明後日には動くぞ!」
 「「「「はい!」」」」





 ロシアとの初の交戦が決まった。
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