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別荘のバーベキュー

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 夕飯のバーベキューが始まり、いつものごとく、子どもたちが激しいバトルを繰り広げる。
 吹雪は先輩ママの雪野さんが預かってくれ、六花が久し振りにケダモノランドへ参戦した。

 「六花ちゃんだー!」
 
 子どもたちが大喜びで迎え、六花も嬉しそうに肉奪いバトルに加わった。

 「皇紀くん、オッパイへの攻撃はやめてね」
 「うん」

 近接戦闘最高の戦士が、心理戦まで組み込むようになった。
 六花は皇紀の攻撃を制限し、その分を他の三人に集中して肉を大量にゲットしていく。

 ついにハーが禁断の生物兵器をぶち込んだ。
 下を脱いで、バーベキュー台に向かってオナラをする。
 爆発したかのような緑色の炎が上がり、上で焼かれていた食材を覆う。

 「「「「ギャァァァァァーーーー!!!!」」」」
 「「「「……」」」」
 「にゃー!」
 「「ばぶー」」

 「ワハハハハハハハ!」

 ハーがパンツを履きながら大笑いしていた。

 「こいつ! やりがやった!」
 「もう食べられないよー!」
 「ウンコの悪魔だよー!」
 「チェーンソーさまー!」
 「私はタカさんに心臓をもらった!」
 
 やってねぇ。

 少しの間、網に肉を乗せるのをみんなが躊躇う。
 その間にハーは悠々と肉を食べた。
 その後で、ハーは集中攻撃を喰らっていた。

 「いつもながら楽しいですね」

 雪野さんが笑って吹雪に微笑む。
 響子と早乙女が目を丸くして雪野さんを見た。

 「もっと上品に喰え!」

 子どもたちが日本舞踊を踊った。




 六花がこっちへ戻って来た。

 「お前らなー」
 「私じゃありませんよ!」

 笑って六花にホタテバター醤油を作ってやる。
 ニコニコして食べた。
 雪野さんに礼を言って吹雪を抱き上げて、別荘に入った。
 授乳だろう。

 響子に焼いた伊勢海老にカボスを掛けて食べさせた。

 「美味しいよ!」
 「お前もすっかり日本人だな!」
 「うん!」

 子どもたちが肉を喰い切ってこっちに来た。

 「タカさん! ハーのあの技は禁じ手にして下さい!」
 「ワハハハハハハ!」

 まあ、室内と早乙女達以外がいたら使うなと言った。

 「ハー、お前トイレでタバコを吸うなよな」
 「吸わないよ!」

 大爆発になる。

 子どもたちが、野菜と海鮮を味わいながら食べた。
 怜花が、雪野さんが作ったカニのすり身のスープを飲んでいる。
 スプーンで口に近づけると、嬉しそうに食べる。
 戻って来た六花が興味深げに見ていた。

 「そうやってあげるんですね!」
 「うん。六花さんも楽しみね」
 「はい!」

 雪野さんに言われて、六花も怜花にスプーンで食べさせた。

 「あ! 食べたー!」
 「ウフフフフ」

 「たかとらー!」

 響子がホイル焼きにしたタラの身を俺の口元へ持って来た。
 口に入れてニコニコしてやる。
 早乙女と雪野さんが牡蠣を焼いていた。
 うちでは買わないものだ。
 二人が笑いながら食べているので、子どもたちが興味を持った。
 俺は牡蠣の殻の中へオリーブオイルとバーターを少し、それに刻んだアサツキを乗せて焼いた。
 汁が零れないように気を付け、最後にポン酢を掛けて六花と響子と子どもたちに食べさせた。

 「なにこれ!」
 「美味しいよ!」
 「なんか、海が濃厚!」
 「タカトラー!」
 「僕は好きだな」

 それぞれに勝手なことを言いながら、牡蠣を味わった。
 早乙女達も、同じようにして食べる。

 「石神は食べないのか?」
 「ああ、俺は牡蠣はあまり好きではないんだ」
 「お前も好き嫌いがあるんだな」
 「当たり前だ!」

 俺が好きな物は子どもたちの好物になり、俺の嫌いなものは食べないままで来た。
 子どもたちが牡蠣を喜んで食べている。
 
 「タカさん! 牡蠣、美味しいですよ!」

 亜紀ちゃんがニコニコして言った。

 「そうか。じゃあこれからはどんどん食べような」
 「でも、タカさんは嫌いなんですよね?」
 「お前らは自分が好きなものを食べればいいんだよ」
 「はい!」

 亜紀ちゃんが嬉しそうに笑った。

 「タカさん、シイタケも好きじゃないよね?」
 「すき焼きに入れないよね?」
 「まあ、そうだな」
 「肉の脂身もそうですよね?」
 「そうだな」
 「ラーメンも食べないですよね?」
 「喰えないことはないんだけどな。自分から喰おうとは思わないなぁ」
 
 双子はラーメンが大好きだ。
 だから自分たちで好きに食べている。
 それでいい。
 
 「石神、嫌いなのに、どうして牡蠣のこんな美味しい食べ方を知ってるんだ?」
 「好きな人間のためにだよ」
 「え?」
 「奈津江が好きだったんだ。前に牡蠣料理の美味い居酒屋へ行ってな。嬉しそうに食べていた」
 「そうなのか」

 「まあ、奈津江が牡蠣ばかり注文するんでまいったぜ。生牡蠣やフライなんかをな」
 「タカさんが苦手なのを知らなかったんですか?」
 「まあな。自分が好物だから、みんなそうなんだろうと思っていたんだろう」
 「ああ」

 誰でもよくあることだ。
 特に若い時期には。

 「俺があんまり食べないんでな。「もしかして嫌い?」って聞かれた」
 「どうしたんですか?」
 「正直に言ったよ。奈津江が驚いて、必死に謝って来た」
 「可哀そうですね」
 「そうだよな。俺に喜んでもらおうと思ってたのにな。まあ、そういうこともあるさ。その店は広島に本店があってな。だからいい牡蠣だったんで助かった」

 「え、タカさんも食べたんですか!」
 「奈津江が大食いの俺が食べると思って、結構注文しちゃったからな。でも、その店のものは食べられたよ。やっぱり新鮮な食材はいいよな」
 「タカさん! 嫌いなものがあったら言って下さいね!」
 「別にいいよ。喰えないものって無いからな」
 「でも!」
 
 六花も亜紀ちゃんの腕を掴んで一緒にうなずいていた。

 「お前らは自分が好きなものを食べればいいんだよ。まあ、俺の場合、うちが貧乏だったからな。偏ってしまっただけだ。六花、吹雪にはいろんなものを食べさせてくれよな。俺もそうするし」
 「はい!」
 「牡蠣が美味いっていうことは知っているんだ。吹雪には、できるだけ多くのものを美味しいと感じて欲しいからな」
 「そうですね!」
 「六花は好き嫌いがないよな?」
 「はい」
 「じゃあ、大丈夫だな」

 それでも好悪が自然に出来て行くのが人間だ。
 俺たちは出来るだけのことをするしかない。

 「響子も好き嫌いはないよな!」
 「う、うん」

 俺がニンジンを焼き始めると、「今日は一杯食べたからいい」と言った。




 みんなで笑った。
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