上 下
1,634 / 2,806

石神家の七不思議

しおりを挟む
 8月27日水曜日の夜7時。
 アラスカからニューヨークへ寄り、響子を伴って日本へ戻った。
 響子と六花・吹雪は俺の家に泊る。

 作るのが面倒なので、夕飯は出前を取ることにした。

 「た、タカさん」
 「おう」
 「う、鰻にします?」

 亜紀ちゃんが恐る恐る聞いて来た。
 先日の事件がまだ尾を引いている。

 「いいよ。事前に連絡しておかないと、あの店が大変だからな」
 
 亜紀ちゃんがホッとする。
 笑顔を作って明るく言った。

 「じゃあ、何にしましょうかねー」
 「そうだな。おい、何か喰いたいものはあるか?」

 みんなに聞いた。
 ピザや寿司など言ってくる。
 まあ、どうせ一軒では賄えないので、幾つか頼むことにした。

 「じゃー、俺、鰻な」
 「!」

 響子と六花も鰻がいいと言うので、三人前注文する。
 子どもたちは寿司とピザなどを頼んだ。
 ロボには解凍したマグロやヒラメの柵を切った。
 鰻はやはり美味かった。

 満足して「虎温泉」にみんなで入り、のんびりした。
 ロボは「ロボボート」で楽しむ。
 吹雪は身体を洗ってから、涼しい座敷に寝かせた。

 「響子、疲れてないか?」
 「うん、大丈夫!」

 双子がかき氷を作り始めた。
 響子にも小さな器で食べさせた。
 温泉に入っているので大丈夫だろう。
 六花が輝く笑顔で俺と同じイチゴ練乳を頼んだ。

 双子が自分たちのかき氷を抱えて、湯船に来る。
 ゆったりと温めの湯を味わいながら、他愛ない話をしていた。

 「タカさーん」
 「なんだ?」

 「うちの学校でさー。「七不思議」があるんだって」
 「へぇー」

 目隠しをされた皇紀も聞いたことがあると言った。

 「音楽室で夜中にピアノが鳴るとかさー」
 「理科室の人体模型がこっちを見てるとかさー」

 どこの学校でもある話だ。

 「まあ、ありふれてるよなー」
 「うん」

 丁度季節は真夏だ。
 ちょっと涼む話もいいだろう。

 「じゃあ、石神家の「七不思議」な!」

 みんながノって拍手をする。
 双子はちょっと怖がって俺の両脇に来た。

 「1 うちの庭には時々ヘンなものが来る」
 「あー、それはそうですねー」
 「私たちは慣れちゃったけど。他所の人からすればコワイよねー」

 「2 時々亜紀ちゃんが両手を血まみれにして帰って来る」
 「「「「「ワハハハハハハ!」」」」」
 「なによー!」

 悪人退治だ。

 「お前! あんまり酷いことはすんなよな!」
 「あ、亜紀ちゃん、いい子ですよー!」

 「3 屋上に上がる梯子の数が違う」
 「「「「「エェー!」」」」」

 「ハー! お前がこないだふざけてぶら下がって引っこ抜いたんだろう!」
 「あー! そうでした!」

 みんなが笑った。

 「便利屋に連絡したか?」
 「ごめんなさい! すぐにします!」

 「あとは何かなー」

 俺もネタが尽きた。
 ルーが言った。

 「はい! 4 よく知らない女の人が訪ねて来る!」
 「なんだ?」

 そんなのがあるのか。

 「タカさんのファンみたいですよ」
 「なんだよ、それ?」
 「時々、タカさんをつけてくるみたいなんです」
 「どうしてんだよ?」
 「亜紀ちゃんと柳さんが、よくお話しして追い返してます」
 「おい、暴力は振るってないだろうな!」
 「だいじょーぶですよー 亜紀ちゃん、いい子ですよー」
 「ほんとかよ。無茶するなよな」
 「はーい!」

 まったく、何をやっているのだか。

 「はい!」
 「よし、ハー!」
 「時々夜中に、タカさんのお部屋で女の人の声が聞こえる!」
 「……」

 「タカさん?」

 亜紀ちゃんに聞かれる。

 「お、俺の部屋は防音じゃんか!」
 「コンクリートマイクで音を拾ってます」
 「お前! 何でそんなもの使ってんだよ!」
 「だって! タカさん以外の気配がするから」

 ハーが文句を言う。

 「あー、ほら。時々タマとかタヌ吉とかイリスとかと話すこともあってよ」
 「タカさん! ヤってますね!」
 「おい!」
 「ちょっとオチンチンを見せて下さい!」
 
 俺は湯船の上に出した。

 「ヤってますよね!」
 「……」
 「あ! 今オチンチンが目をそらしましたよ!」
 「お前、こえぇよ!」

 「タカさん!」
 「ヤってねぇ!」
 
 ヤってる。
 響子が俺の腹をつねった。
 亜紀ちゃんはまだコワイ顔で見ている。

 「もう!」

 「そういえば、ロボは時々、何もない空中を見てますね」
 
 六花が言った。

 「ああ、見てるよな!」

 俺は変わった話題に飛びついた。

 「なんでしょう?」
 「さー」
 
 双子がちょっとまた怖がって俺にくっつく。

 「ネコって、見えるみたい」
 「すぐにうちは消えるけどね」
 「タカさんがいるからね」

 そう悪いものではないらしい。
 悪意があるものは、うちには近づけないそうだ。

 「あー、6つ出たか」
 「もう無いよね!」
 「もういいよね!」

 双子が終わりたがっている。
 まあ、下らない話だ。
 思わぬ墓穴もあったが。

 「あのー」

 目隠しチンコが手を挙げた。

 「なんだよ、皇紀?」
 「たまになんですけど」
 「おう」

 「裏の研究棟に、知らないおじいさんがいませんか?」
 「「「「「!」」」」」

 「僕が一人で夜中にいると、廊下の向こうを歩いてたり」
 「おい! マジか!」
 「一瞬なんで、見間違いかも」

 双子がブルブル震えている。

 「そういえばさ、柳ちゃんも前に言ってたよね?」
 「こっちから研究棟を見てたら、誰かが廊下を歩いてたって!」
 「うちの誰かかもしれないけどって!」
 「でも、みんなこっちで寝てたんだよね!」

 「おい……」

 「「「「「……」」」」」

 「……明日麗星に電話するから……」
 「「「「「はい!」」」」」
 「にゃー」




 その晩はみんな俺と一緒に寝たがった。
 双子の部屋からベッドを運び、ソファをどかしてみんなで寝た。
 ロボが楽しくなったか、ずっと飛び回っていた。
 俺が冷房の温度を下げると寒がってすぐに俺の布団に潜り込んだ。
 やっとみんなで寝た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、

ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、 私のおにいちゃんは↓ 泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

イケメン歯科医の日常

moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。 親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。 イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。 しかし彼には裏の顔が… 歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。 ※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。

処理中です...