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街を歩く
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ジョナサンを「虎病院」に連れて行き、俺が薬を処方して止瀉薬を渡した。
すぐにぬるま湯を渡してその場で飲ませる。
「悪かったな。お前を見れば胃腸が弱いのは当然分かったはずなんだが」
「いいえ! かき氷、美味しかったですよ!」
ジョナサンが苦笑いをしていた。
「僕の方こそすみません。無理をしたつもりは無くて、本当に美味しくて。ご迷惑をおかけしました」
「まあ、あの家の人はびっくりしただろうけどなぁ」
「いきなりこの基地のトップの石神さんが来たんですもんね」
「ワハハハハハ!」
俺はジョナサンを送り、夕食は無理に付き合うなと言った。
「必ず行きますよ!」
「じゃあ、トイレの近くの席を取ってやるから」
「アハハハハハ!」
下痢が続くようなら、また薬を飲めと言った。
水分は温かいものを飲むようにとも。
俺は栞の区画へ戻った。
「あなた、おかえりなさい」
「子どもたちは?」
「あっちで士王と遊んでる」
「アハハハハハ!」
士王はもう立って歩き、言葉も話せる。
リヴィングへ行くと、子どもたちとじゃれて遊んでいた。
「おとーさん!」
「おう、帰ったぞ」
士王が俺に向かって歩いて来たので抱き上げた。
俺の首に抱き着く。
「みんなお前のことが大好きだからな。一杯遊んでもらったか?」
「うん! 亜紀姉も皇紀兄もルー姉もハー姉も、みんな優しいよ!」
「そうだろう!」
「ロボも!」
「そうだよな!」
ロボが嬉しそうに尻尾を振った。
「ロボに乗せてもらったか?」
「ううん?」
俺がロボに跨った。
ロボが歩き出すので、一緒に歩いた。
「あ!」
六花が叫んだ。
「どうした?」
「紫苑が言ってたんです!」
「なんだ?」
「ほら、白馬の王子様って言うじゃないですか」
「ああ?」
「紫苑が夢で王子様を見たんですって! でも白馬じゃなくて、真っ白いネコに乗ってたんですよ!」
「アハハハハハ!」
何だかよく分からなかったが、六花が懐かしそうな顔をするので嬉しかった。
「そうか。じゃあ、俺の姿を見たのかもな」
「そうですよ! 絶対石神先生です!」
俺は笑って、士王をロボの背中に乗せた。
今度は本当に士王を背負ってロボが歩き出した。
士王はロボの首に腕を回している。
みんなが笑った。
士王も楽しそうだった。
士王をまた抱き上げた。
「お前は強くなって、栞や桜花たちを乗せてやれるようになれ」
「はい!」
「毎日、お前のためにみんながいろいろしてくれてるんだからな。いつか、お前はみんなのために何かをしろ」
「はい!」
俺は士王を肩車した。
士王は高い目線を喜んだ。
少し休んで、「ほんとの虎の穴」へ行った。
途中でジョナサンを拾う。
「お腹は大丈夫か?」
「はい! あの薬ですっかり良くなりました」
「じゃあ、今日は無理しないで好きな物だけ食べろよ」
「はい!」
VIPルームで食事をした。
栞と六花が俺の隣に座っている。
「士王、お前の弟の吹雪だ。大事にしてやれ」
「はい!」
吹雪も士王を珍しそうに見ていた。
「吹雪、お兄ちゃんの士王だ。仲良くするんだぞ」
言葉は喋れないが、俺は同じように接する。
一人の人間なのだ。
六花は脇に置いたベビーベッドに吹雪を寝かせた。
料理はコースではなく、次々に様々なものが出るようにした。
それをみんなで取り分けて食べる。
それは俺の仕事だ。
俺が一通り配ると、あとは自由に食べさせた。
俺と栞、亜紀ちゃんはワインを飲んだ。
六花はまだ母乳を与えているので控える。
味見程度には飲ませた。
「美味しいです!」
「ここの雑賀さんは最高のバーテンダーだからな。どんなソムリエだって敵わないよ」
「ほんとうにそうですよね!」
ジョナサンはサーモンのムニエルが気に入ったようなので、追加で頼む。
ムール貝のアヒージョも絶品だったので追加する。
「栞様! タコですよ!」
桜花たちが栞にタコの唐揚げを持って来た。
「おお、栞の好物だよな!」
「もう!」
文句を言いたげだったが、黙って食べた。
俺と六花も手伝ってやる。
ロボはサシミを食べ、特に貝に唸っていた。
ここは動物の同伴は厳禁だが、もちろんロボは別だ。
ないだろうが、ロボがふらりと寄っても食事が提供される。
亜紀ちゃんたちも、次々と美味い料理が来るので、争うことなく楽しんで食べていた。
「なんか、久し振りにまともに食事をしてる気がするぜ」
「アハハハハハ!」
栞が笑った。
食事の後で、俺は「アヴァロン」にみんなを連れて行った。
途中で電動移送車を降りて歩く。
俺は士王をまた肩車して歩いた。
士王が喜んだ。
「士王は今日のことを覚えているかしらね」
「多分覚えているよ」
「でも、まだ一歳半よ?」
「だって、俺がこのくらいの時のことを覚えてるからな」
「えぇ!」
亜紀ちゃんが叫んだ。
「そう言えば! 前にタカさんが、一歳くらいの時に近所の子のパンツを脱がせて遊んでたって言ってましたよね!」
「ああ、ヤっちゃんな」
栞が驚いていた。
「あなたって、子どもの頃からおかしかったのね!」
「おかしくねぇよ!」
「吹雪も覚えてますよね!」
「それは無理だろう」
六花がちょっと不満そうな顔をしていた。
「まあ、覚えてるかもな!」
「はい!」
嬉しそうに笑った。
ジョナサンは幻想的な街に魅了されていた。
「どうだ、ジョナサン。綺麗な街だろう?」
「はい。こんな美しい街があるなんて」
「お前は実家へ帰らないのか?」
「はい。家族とはあまり仲も良くないので。兄がいるから両親も安心ですし」
「そうか。まあ、俺たちが家族みたいなものだからな!」
「石神さん!」
ジョナサンが笑った。
「お前はお前が大事にしたい人間を大事にすればいいよ。それが自分じゃなければ、誰だって何だっていいんだ」
「はい!」
俺たちは美しい街を歩いた。
誰にどのような思い出になるのかは分からない。
それはどうだっていい。
思い出にするために歩いているのではない。
俺たちは大事な仲間だから、一緒に歩いているのだ。
すぐにぬるま湯を渡してその場で飲ませる。
「悪かったな。お前を見れば胃腸が弱いのは当然分かったはずなんだが」
「いいえ! かき氷、美味しかったですよ!」
ジョナサンが苦笑いをしていた。
「僕の方こそすみません。無理をしたつもりは無くて、本当に美味しくて。ご迷惑をおかけしました」
「まあ、あの家の人はびっくりしただろうけどなぁ」
「いきなりこの基地のトップの石神さんが来たんですもんね」
「ワハハハハハ!」
俺はジョナサンを送り、夕食は無理に付き合うなと言った。
「必ず行きますよ!」
「じゃあ、トイレの近くの席を取ってやるから」
「アハハハハハ!」
下痢が続くようなら、また薬を飲めと言った。
水分は温かいものを飲むようにとも。
俺は栞の区画へ戻った。
「あなた、おかえりなさい」
「子どもたちは?」
「あっちで士王と遊んでる」
「アハハハハハ!」
士王はもう立って歩き、言葉も話せる。
リヴィングへ行くと、子どもたちとじゃれて遊んでいた。
「おとーさん!」
「おう、帰ったぞ」
士王が俺に向かって歩いて来たので抱き上げた。
俺の首に抱き着く。
「みんなお前のことが大好きだからな。一杯遊んでもらったか?」
「うん! 亜紀姉も皇紀兄もルー姉もハー姉も、みんな優しいよ!」
「そうだろう!」
「ロボも!」
「そうだよな!」
ロボが嬉しそうに尻尾を振った。
「ロボに乗せてもらったか?」
「ううん?」
俺がロボに跨った。
ロボが歩き出すので、一緒に歩いた。
「あ!」
六花が叫んだ。
「どうした?」
「紫苑が言ってたんです!」
「なんだ?」
「ほら、白馬の王子様って言うじゃないですか」
「ああ?」
「紫苑が夢で王子様を見たんですって! でも白馬じゃなくて、真っ白いネコに乗ってたんですよ!」
「アハハハハハ!」
何だかよく分からなかったが、六花が懐かしそうな顔をするので嬉しかった。
「そうか。じゃあ、俺の姿を見たのかもな」
「そうですよ! 絶対石神先生です!」
俺は笑って、士王をロボの背中に乗せた。
今度は本当に士王を背負ってロボが歩き出した。
士王はロボの首に腕を回している。
みんなが笑った。
士王も楽しそうだった。
士王をまた抱き上げた。
「お前は強くなって、栞や桜花たちを乗せてやれるようになれ」
「はい!」
「毎日、お前のためにみんながいろいろしてくれてるんだからな。いつか、お前はみんなのために何かをしろ」
「はい!」
俺は士王を肩車した。
士王は高い目線を喜んだ。
少し休んで、「ほんとの虎の穴」へ行った。
途中でジョナサンを拾う。
「お腹は大丈夫か?」
「はい! あの薬ですっかり良くなりました」
「じゃあ、今日は無理しないで好きな物だけ食べろよ」
「はい!」
VIPルームで食事をした。
栞と六花が俺の隣に座っている。
「士王、お前の弟の吹雪だ。大事にしてやれ」
「はい!」
吹雪も士王を珍しそうに見ていた。
「吹雪、お兄ちゃんの士王だ。仲良くするんだぞ」
言葉は喋れないが、俺は同じように接する。
一人の人間なのだ。
六花は脇に置いたベビーベッドに吹雪を寝かせた。
料理はコースではなく、次々に様々なものが出るようにした。
それをみんなで取り分けて食べる。
それは俺の仕事だ。
俺が一通り配ると、あとは自由に食べさせた。
俺と栞、亜紀ちゃんはワインを飲んだ。
六花はまだ母乳を与えているので控える。
味見程度には飲ませた。
「美味しいです!」
「ここの雑賀さんは最高のバーテンダーだからな。どんなソムリエだって敵わないよ」
「ほんとうにそうですよね!」
ジョナサンはサーモンのムニエルが気に入ったようなので、追加で頼む。
ムール貝のアヒージョも絶品だったので追加する。
「栞様! タコですよ!」
桜花たちが栞にタコの唐揚げを持って来た。
「おお、栞の好物だよな!」
「もう!」
文句を言いたげだったが、黙って食べた。
俺と六花も手伝ってやる。
ロボはサシミを食べ、特に貝に唸っていた。
ここは動物の同伴は厳禁だが、もちろんロボは別だ。
ないだろうが、ロボがふらりと寄っても食事が提供される。
亜紀ちゃんたちも、次々と美味い料理が来るので、争うことなく楽しんで食べていた。
「なんか、久し振りにまともに食事をしてる気がするぜ」
「アハハハハハ!」
栞が笑った。
食事の後で、俺は「アヴァロン」にみんなを連れて行った。
途中で電動移送車を降りて歩く。
俺は士王をまた肩車して歩いた。
士王が喜んだ。
「士王は今日のことを覚えているかしらね」
「多分覚えているよ」
「でも、まだ一歳半よ?」
「だって、俺がこのくらいの時のことを覚えてるからな」
「えぇ!」
亜紀ちゃんが叫んだ。
「そう言えば! 前にタカさんが、一歳くらいの時に近所の子のパンツを脱がせて遊んでたって言ってましたよね!」
「ああ、ヤっちゃんな」
栞が驚いていた。
「あなたって、子どもの頃からおかしかったのね!」
「おかしくねぇよ!」
「吹雪も覚えてますよね!」
「それは無理だろう」
六花がちょっと不満そうな顔をしていた。
「まあ、覚えてるかもな!」
「はい!」
嬉しそうに笑った。
ジョナサンは幻想的な街に魅了されていた。
「どうだ、ジョナサン。綺麗な街だろう?」
「はい。こんな美しい街があるなんて」
「お前は実家へ帰らないのか?」
「はい。家族とはあまり仲も良くないので。兄がいるから両親も安心ですし」
「そうか。まあ、俺たちが家族みたいなものだからな!」
「石神さん!」
ジョナサンが笑った。
「お前はお前が大事にしたい人間を大事にすればいいよ。それが自分じゃなければ、誰だって何だっていいんだ」
「はい!」
俺たちは美しい街を歩いた。
誰にどのような思い出になるのかは分からない。
それはどうだっていい。
思い出にするために歩いているのではない。
俺たちは大事な仲間だから、一緒に歩いているのだ。
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