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道間家のハイファ Ⅲ
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翌朝、俺は6時に起きて庭の水道を借りた。
ロボのトイレ掃除だ。
ライオンの非常に臭いを取るいいネコ砂を使っているが、時々トイレ自体も洗う。
ロボは綺麗好きだ。
いつもは子どもたちがやっているが、今はいないので俺がやる。
ロボが隣で俺の作業を見ていた。
「今綺麗にしてやるからなー」
「にゃー」
嬉しそうだ。
五平所が庭から回って来た。
「おはようございます!」
「おはようございます。お身体は大丈夫ですか?」
「はい! 夕べは本当にご迷惑をお掛けしました」
「アハハハハハ!」
まったくその通りだ。
「ロボさんがあれほどに凄いネコだとは思いも寄りませんでした」
「妖魔とは違いますからね」
「では、どのような」
「物凄いカワイイ猫」
「ワハハハハハハ!」
その通りなのだが。
「そのような作業、わたくし共に言って頂ければ」
「いいえ、うちのネコですし。それに他人の匂いがつくと、ロボが気にしますので」
「さようでございますか」
俺はトイレを洗い終え、タオルで水を拭ってしばらく干した。
縁側で五平所と一緒に座る。
「道間家はいろいろあるんですね」
「はい。お話し出来ずに申し訳ございません」
「いや、驚きはしましたけどね。でも、俺は道間家の人間ではないので、ああいうこともあるでしょう」
五平所が茶を運ぶと言ったが、俺は断って部屋へ戻った。
ロボのトイレに新しい砂を入れ、部屋の前に置く。
部屋に戻ると、吹雪が目を覚ましていた。
俺は抱き上げてあやしてやる。
吹雪が嬉しそうに手足を伸ばして喜んだ。
ベッドに横たえて、ロボと一緒に身体を撫でる。
ロボが楽しくなって暴れ、六花の顔を踏んづけた。
「おまえー」
六花も起きた。
俺たちは長いキスをした。
ロボも六花に「ロボちゅー」をした。
「吹雪は起きてるんですね」
「ああ」
六花は胸を出して吹雪に授乳した。
その後でおむつを替えてやる。
「お前もすっかりお母さんだな」
「はい!」
六花が嬉しそうに笑った。
寝ている間に、一度吹雪が起きて泣いた。
すぐに六花が起きたが、俺が寝かせてミルクをやった。
ぐっすりと眠る六花も、吹雪が泣けばすぐに起きて来る。
母親になったのだ。
麗星が朝食に呼びに来た。
俺たちは浴衣のままで食堂へ行った。
また豪勢な京料理だった。
豆腐に様々な薬味。
フクラギ(ブリの子)の甘辛煮。
加茂茄子の味噌がけなど。
椀は鱧だ。
「石神様、鮎は召し上がりますか?」
品目が多いので、外していたのだろう。
俺が是非食べたいと言うと、六花とよしこの分も用意してくれた。
朝食を食べて一段落すると、お茶を飲みながら、あらためて麗星が夕べのことを謝った。
「もういいよ。ハイファの独断だったんだろう?」
「はい、まさかあのような真似をあなた様と天狼にするとは予想も出来ず」
麗星はまた、ハイファが道間家の中心にいることを話した。
「道間家に従っているんじゃないのか?」
「そのような者ではありません。道間家を導くためにいる者なのです」
「よく分からんな」
「はい。実はわたくしたちにも。ただ、長年の道間家の歴史の中で、ハイファはそれを証明し続けているのです。道間家の危機を救い、道間家が発展するように動いてまいりました」
「でも、相当ヤバい奴だろうよ」
「ハイファの力は計り知れません。道間家が一時的にせよ、「大黒丸」と協調出来たのは、ハイファの力なのです」
「「クロピョン」を?」
「はい。もちろんあなた様のようなことまでは出来ませんでした。しかし、平安や平城の都を創る手助けをしてもらいました。あのアラスカの土地のようなことまではしてもらえませんでしたが」
「そうか」
スゴイじゃん。
「ハイファが「大黒丸」に力を貸してもらうように頼んだのです。ぶつかれば「大黒丸」の方が上なのでしょうが、ハイファもおいそれと見劣りがするようなことはないかと」
「それほどかよ」
ヤバいじゃん。
「ただ、ハイファ自体が動くことはそれほど多くはありません。あくまでも道間の人間が動いて何かを為すのです」
「最低限の手助けということか?」
「はい、そのような表現もあるかと。でも、ハイファのことは、わたくしたちにもよくは分からないのです。一つだけ、道間家のためにいる者としか」
「そうか」
俺はハイファがどのような字になるのか聞いてみた。
「文字では表現できないのです。音のみでしか」
「名付け大好きのお前たちがやってないのかよ」
麗星が笑った。
「そのような。でも、畏れ多いことでございます」
俺は話題を変えた。
「天狼はどうしている?」
麗星は微笑んで部屋を出て、しばらくすると天狼を抱いて戻った。
「元気でございます。今朝もたっぷりとお乳を飲みました」
「そうか」
俺は麗星が差し出す天狼を抱いた。
俺を見て手を伸ばして来るので、顔を近づけてキスをした。
「六花、お前も抱いてやってくれ」
「いいんですか!」
麗星も嬉しそうに頷いている。
「わたくしも吹雪ちゃんを抱いてもよろしいですか?」
「もちろんです!」
麗星が吹雪をベッドから抱き、六花は俺から天狼を受け取った。
「カワイイー!」
「吹雪ちゃんも可愛らしいですね」
二人の母が微笑み合っていた。
「庭に出よう。写真を撮ろう」
俺が言うと、五平所がすぐにカメラと三脚を持って来てくれた。
俺が六花と麗星と撮り、それぞれ子どもを入れ替えて撮り、また五人で撮り、五平所とよしこを入れてみんなで撮った。
ロボは全部の写真に入った。
「ハイファ! お前も撮ろう!」
庭の向こうからハイファがやって来た。
昨日と違う、水色の着物を着ていた。
「ほら! 早く来い!」
ハイファが嬉しそうに微笑んで一緒に入った。
麗星と五平所が驚いていた。
「みんな前を向け! 笑え!」
後日、ハイファと一緒に写った写真が送られて来た。
二度撮った一枚に、俺たちの周りに大勢の人間が写っていた。
双子が以前に麗星に送った絵と同じ人物たちだった。
みんなが笑っていた。
ロボのトイレ掃除だ。
ライオンの非常に臭いを取るいいネコ砂を使っているが、時々トイレ自体も洗う。
ロボは綺麗好きだ。
いつもは子どもたちがやっているが、今はいないので俺がやる。
ロボが隣で俺の作業を見ていた。
「今綺麗にしてやるからなー」
「にゃー」
嬉しそうだ。
五平所が庭から回って来た。
「おはようございます!」
「おはようございます。お身体は大丈夫ですか?」
「はい! 夕べは本当にご迷惑をお掛けしました」
「アハハハハハ!」
まったくその通りだ。
「ロボさんがあれほどに凄いネコだとは思いも寄りませんでした」
「妖魔とは違いますからね」
「では、どのような」
「物凄いカワイイ猫」
「ワハハハハハハ!」
その通りなのだが。
「そのような作業、わたくし共に言って頂ければ」
「いいえ、うちのネコですし。それに他人の匂いがつくと、ロボが気にしますので」
「さようでございますか」
俺はトイレを洗い終え、タオルで水を拭ってしばらく干した。
縁側で五平所と一緒に座る。
「道間家はいろいろあるんですね」
「はい。お話し出来ずに申し訳ございません」
「いや、驚きはしましたけどね。でも、俺は道間家の人間ではないので、ああいうこともあるでしょう」
五平所が茶を運ぶと言ったが、俺は断って部屋へ戻った。
ロボのトイレに新しい砂を入れ、部屋の前に置く。
部屋に戻ると、吹雪が目を覚ましていた。
俺は抱き上げてあやしてやる。
吹雪が嬉しそうに手足を伸ばして喜んだ。
ベッドに横たえて、ロボと一緒に身体を撫でる。
ロボが楽しくなって暴れ、六花の顔を踏んづけた。
「おまえー」
六花も起きた。
俺たちは長いキスをした。
ロボも六花に「ロボちゅー」をした。
「吹雪は起きてるんですね」
「ああ」
六花は胸を出して吹雪に授乳した。
その後でおむつを替えてやる。
「お前もすっかりお母さんだな」
「はい!」
六花が嬉しそうに笑った。
寝ている間に、一度吹雪が起きて泣いた。
すぐに六花が起きたが、俺が寝かせてミルクをやった。
ぐっすりと眠る六花も、吹雪が泣けばすぐに起きて来る。
母親になったのだ。
麗星が朝食に呼びに来た。
俺たちは浴衣のままで食堂へ行った。
また豪勢な京料理だった。
豆腐に様々な薬味。
フクラギ(ブリの子)の甘辛煮。
加茂茄子の味噌がけなど。
椀は鱧だ。
「石神様、鮎は召し上がりますか?」
品目が多いので、外していたのだろう。
俺が是非食べたいと言うと、六花とよしこの分も用意してくれた。
朝食を食べて一段落すると、お茶を飲みながら、あらためて麗星が夕べのことを謝った。
「もういいよ。ハイファの独断だったんだろう?」
「はい、まさかあのような真似をあなた様と天狼にするとは予想も出来ず」
麗星はまた、ハイファが道間家の中心にいることを話した。
「道間家に従っているんじゃないのか?」
「そのような者ではありません。道間家を導くためにいる者なのです」
「よく分からんな」
「はい。実はわたくしたちにも。ただ、長年の道間家の歴史の中で、ハイファはそれを証明し続けているのです。道間家の危機を救い、道間家が発展するように動いてまいりました」
「でも、相当ヤバい奴だろうよ」
「ハイファの力は計り知れません。道間家が一時的にせよ、「大黒丸」と協調出来たのは、ハイファの力なのです」
「「クロピョン」を?」
「はい。もちろんあなた様のようなことまでは出来ませんでした。しかし、平安や平城の都を創る手助けをしてもらいました。あのアラスカの土地のようなことまではしてもらえませんでしたが」
「そうか」
スゴイじゃん。
「ハイファが「大黒丸」に力を貸してもらうように頼んだのです。ぶつかれば「大黒丸」の方が上なのでしょうが、ハイファもおいそれと見劣りがするようなことはないかと」
「それほどかよ」
ヤバいじゃん。
「ただ、ハイファ自体が動くことはそれほど多くはありません。あくまでも道間の人間が動いて何かを為すのです」
「最低限の手助けということか?」
「はい、そのような表現もあるかと。でも、ハイファのことは、わたくしたちにもよくは分からないのです。一つだけ、道間家のためにいる者としか」
「そうか」
俺はハイファがどのような字になるのか聞いてみた。
「文字では表現できないのです。音のみでしか」
「名付け大好きのお前たちがやってないのかよ」
麗星が笑った。
「そのような。でも、畏れ多いことでございます」
俺は話題を変えた。
「天狼はどうしている?」
麗星は微笑んで部屋を出て、しばらくすると天狼を抱いて戻った。
「元気でございます。今朝もたっぷりとお乳を飲みました」
「そうか」
俺は麗星が差し出す天狼を抱いた。
俺を見て手を伸ばして来るので、顔を近づけてキスをした。
「六花、お前も抱いてやってくれ」
「いいんですか!」
麗星も嬉しそうに頷いている。
「わたくしも吹雪ちゃんを抱いてもよろしいですか?」
「もちろんです!」
麗星が吹雪をベッドから抱き、六花は俺から天狼を受け取った。
「カワイイー!」
「吹雪ちゃんも可愛らしいですね」
二人の母が微笑み合っていた。
「庭に出よう。写真を撮ろう」
俺が言うと、五平所がすぐにカメラと三脚を持って来てくれた。
俺が六花と麗星と撮り、それぞれ子どもを入れ替えて撮り、また五人で撮り、五平所とよしこを入れてみんなで撮った。
ロボは全部の写真に入った。
「ハイファ! お前も撮ろう!」
庭の向こうからハイファがやって来た。
昨日と違う、水色の着物を着ていた。
「ほら! 早く来い!」
ハイファが嬉しそうに微笑んで一緒に入った。
麗星と五平所が驚いていた。
「みんな前を向け! 笑え!」
後日、ハイファと一緒に写った写真が送られて来た。
二度撮った一枚に、俺たちの周りに大勢の人間が写っていた。
双子が以前に麗星に送った絵と同じ人物たちだった。
みんなが笑っていた。
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