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大阪の夜

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 焼き肉屋でヘンな雰囲気になりつつも、何とか戻して店を出た。
 風花の家に戻って、風呂に入る。
 大浴場にみんなで入った。
 皇紀が股間を隠しながら、ニコニコしていた。

 風呂から上がり、みんなで酒を飲んだ。
 前に六花と一緒に飲んだ最上階のドームの上の「幻想空間」だ。
 大阪の夜景が見える。
 ネコ耳メイドたちが用意してくれる。
 
 「あ! この子、トラちゃんって名前にしました!」
 「そうか」
 
 トラ縞のネコ耳メイドだ。
 風花が50体のメイド全員に名前を付けたようだ。
 トラちゃんはニッコリ笑って酒とつまみを置いて行った。

 「広い家なんで、あの子たちがいてくれて助かってるんです」
 「必要だからな」
 
 よしこはメイドロボットには慣れている。
 栃木でも「虎酔亭」で料理をアンドロイドが担っているためだ。

 俺にはワイルドターキーのロック、皇紀は水割り、よしこはキリンラガー、響子と六花と風花は甘酒だ。
 六花も飲みたいだろうが、母乳を与えている間は我慢だ。

 「しかし、今日はいろいろと驚きっぱなしでしたね」

 よしこがしんみりと言った。

 「そうでしょ、よしこさん。タカさんと一緒だと本当に大変なんですよ」
 「うるせぇ! 俺のせいじゃねぇ!」

 みんなが笑った。

 「吹雪が生まれてな。六花に言ったんだ」
 「何をです?」

 俺は風花に話した。

 「まだ「紅六花ビル」で静養している時にな。俺は六花に、吹雪を大事に育てて欲しいから、もう俺の戦いからは外れて欲しいってな」
 「石神さん……」

 よしこが微笑んで聞いている。

 「丁度よしこも来ていてな。それでいきなり六花がよしことタケを呼んだ。「吹雪を頼む」って言いやがってな」
 「え!」
 「「自分は俺と一緒にいるから、吹雪をみんなで育ててやって欲しい」ってよ。俺も焦ったぜ」
 「お姉ちゃん……」

 六花が俺の肩に頭を乗せて甘えた。

 「私は虎のために生きているんです」
 「な! こいつ最愛の息子すら手放そうとしやがって。俺もどうしようもねぇ。じゃあ、一蓮托生だってなぁ」
 「はい」

 六花が嬉しそうに笑った。

 「まあ、昔からな。「親の因果が子に報い」ってよ。こりゃしょうがねぇぜ」
 「はい」
 「風花、俺たちはこんなだ。よしこもな。どうも申し訳ねぇが付き合ってくれ」
 「「はい!」」

 「皇紀は自由にしていいからさ」
 「アハハハハハハ!」
 「よしこも皇紀ならいいぞ?」
 「いえ、自分は!」

 みんなで笑った。

 ロボが「幻想空間」に登って来た。
 俺たちが夕飯に出ている間、ネコ耳メイドたちに可愛がられていた。
 すっかり懐いて、一緒に遊んでいたようだ。

 「おう、ロボ!」
 
 ロボが俺と六花の膝に乗って来た。
 腹を出して甘えている。
 響子と風花にも挨拶に行く。
 ベビーベッドの吹雪の上にも乗って顔を舐める。
 よしこと皇紀にも足に顔をぶつけていく。

 「今日は何やってたんだ?」

 ロボが俺を見詰めて「にゃー」と鳴いた。

 「そうか、良かったな!」
 「石神さん! ロボさんの言葉が分かるんですか!」
 「ああ、東大でネコ語の講義を受けたからな」
 「すっげぇー!」

 風花と響子が笑った。
 六花が「にゃー」と言った。

 「そうか、じゃあそろそろ今日はこれで解散だな」
 「え! 総長もネコ語が分かるんですか!」
 
 六花が腕を組んで頷いている。
 よしこ以外が大笑いした。

 「じゃあ、風花は部屋でもう少し皇紀と話してくれな」
 「え、石神さん!」
 「皇紀も相談したいことがあるんだろ?」
 「は、はい」

 「俺は六花と夜間訓練があるからな」
 「はい!」
 「じゃあ、自分も一緒に」
 
 よしこが言う。
 六花がよしこの頭にチョップを入れた。

 「響子はロボと先に寝ててくれな」
 「うん。ロボ、行こう!」
 「にゃー」
 
 俺と六花はまた大浴場に行き、愛し合った。
 よしこは六花から耳打ちされて、頭を下げてから自分の部屋へ下がっていた。





 翌朝。
 俺は皇紀と大阪知事と面会し、府警の上の人間とも話し合って今後の大阪防衛の計画を打ち合わせた。
 風花たちは塩野社長のお宅へ行った。
 よしこが塩野社長を尊敬しており、大感激だったそうだ。
 みんな3時には戻り、お茶にした。

 「今日は平和だったな!」

 俺が言うと、みんな爆笑した。
 俺と皇紀、風花、よしこで夕飯を作った。
 
 タケノコの炊き込みご飯。
 鯛の煮物。
 根菜の吹き寄せ。
 唐揚げ(六花と皇紀用・風花作)。
 牛カツ。
 各種御造り。
 海藻サラダ。
 椀は俺の大好きなハマグリだ。
 ロボには鯛を焼いてやった。

 「こんな凄い料理、うちで初めてですよ!」
 「俺たちもだよ!」
 「にゃー!」

 風花が笑った。
 響子が牛カツが美味しいと言った。

 「絶怒のみなさんが、港湾の片付けを手伝いに行ったそうですよ」
 「あ? ああ!」
 「え、石神さん、忘れてました?」
 「い、いや。あいつらに昨日頼んだっけかな」
 「嘘ですよ!」
 「ワハハハハハ!」
 
 忘れてた。

 「じゃあ、あいつらにも何かやるかぁ」
 「レッドダイヤモンドはダメですよ!」
 「でも、うちに余ってんだよなぁ。なあ、皇紀?」
 「そうですね」
 「ダメですって! あれ、ほんとに困るんですから!」
 「風花、南の納戸って入ったことある?」
 「え? えぇー! まさか!」
 「ワハハハハハ!」

 慌てて行こうとするので止めた。

 「どうせ、俺たちの緊急コードが無きゃ開かないし」
 「もう! ここ私の家なんですよね!」
 「アハハハハハ! まあ、大阪で何かあった時の貯えみたいなものでな」
 「そうなんですか。それなら、まあ」
 「それと北の尖塔にはさ」
 「石神さん!」
 
 風花が本気で怒りそうになったので、冗談だと言った。

 「でもここは大阪のためになる、いろいろなものがあるんだからな」
 「それは分かってますけど」

 「じゃあ、今晩も皇紀とゆっくり話し合ってな」
 「え、それは、あの……」

 聞いてはいなかったが、夕べ皇紀とよろしくしたのが分かった。

 「じゃあ、今晩も夜間訓練ですね!」
 「おう!」

 六花が嬉しそうに言い、よしこが顔を赤くした。

 「響子はロボとちょっと訓練な!」
 「うん!」

 その晩は酒は飲まず、吹き抜けのテラスでみんなで紅茶を飲んだ。

 「はぁー。ここもいいですねぇ」

 よしこが呟いた。

 「おい、皇紀。よしこにせがまれてるぞ」
 「そうですね。じゃあ、栃木もやりますか」
 「おう」

 ハッとしたよしこが叫んだ。

 「絶対に辞めて下さいね!」




 みんなで笑った。
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