1,596 / 2,806
「堕乱我」狩り
しおりを挟む
翌日の日曜日。
院長にはゆっくりと眠ってもらい、俺が9時頃に起きても、まだ部屋で寝ていた。
静子さんは何も言わずに7時頃に起きられ、子どもたちと一緒に朝食を作って食べられていた。
「夕べは長いことお話ししていたのね」
「はい。俺に付き合ってもらって。すいません」
「いいのよ。文学ちゃんも楽しかったでしょう」
「そうですね」
六花と響子も俺と一緒に起きて来た。
こいつらは早くに寝たはずだが。
一緒に朝食を食べる。
今朝は簡単なものだ。
サニーサイドアップの目玉焼きとレタスのサラダ。
塩昆布とタケノコの味噌汁。
六花はウインナーを別に食べる。
「昼食を摂ったら送って行くからな」
「はい!」
その時、電話が鳴った。
ハーが受けた。
「タカさーん!」
「ああ、俺か」
「虎白さんですよー!」
「!」
俺の顔色が変わった。
六花も緊張して俺を見ている。
「出掛けてるって言え!」
「ダメですよ。あの人分かっちゃいますから」
「仕方ねぇ」
俺は電話を取った。
「はい! 当主の高虎です!」
「待たせんなぁー!」
「す、すみませんでした!」
いきなり怒鳴られた。
当主なのだが。
「おう、来週出掛けっからな!」
「はい?」
「頑丈な刀を2,3本用意しとけ!」
「なんです?」
「熊野の〇〇に、昼に集合な! 遅れんなよな!」
「だから、なんなんですか!」
「妖魔狩りだぁ! 時々頼まれて行ってんだよ」
「そうなんですか?」
虎白さんはめんどくさそうに説明した。
「堕乱我(ダランガ)」という、コウモリ型の妖魔らしい。
「外来種なんだよ。何しろ増えるのが早くてなぁ。時々間引きしねぇと大変なんだ」
「そうなんですか」
「前に修験者が大勢襲われたんだ。それからうちに討伐依頼が来んだよ」
「へぇー」
「お前も当主なんだから顔を出せってこった」
「困りますよ!」
「ああ、「虎王」はダメだぞ」
「なんでです?」
「獲物が一遍に無くなるだろう! 楽しめねぇじゃんか!」
「なるほど」
「じゃあ、伝えたからな!」
「おい!」
「あんだぁ!」
「すみませんでした!」
「絶対来いよ! 来なきゃお前の家を討伐すっからな!」
「分かりました! 当主の高虎、電話を切ります」
行くしかなさそうだ。
俺は全員に話した。
「タカさん、私たちもいこっか?」
「うん、頼むよ」
双子が気を遣ってくれた。
まあ、前回のようなリンチは無いだろうが。
子どもたちはもう夏休みだ。
俺もいろいろ予定はあったが、仕方がない。
暗鬱な気分で、一週間を過ごした。
金曜日の夜。
俺はハマー出掛けた。
斬からもらった虎徹、それに「流星剣」と「黒笛」を積んでいる。
朝方に熊野の待ち合わせ場所近くに着き、俺たちは車の中で眠った。
遅刻は出来ないから、そういうスケジュールで動いた。
昼前に、虎白さんたちが近付いて来るのを感じた。
双子を起こす。
車を降りて待った。
「おう! ちゃんと来たな」
「はい! 当主の高虎、参りました!」
「また嬢ちゃんたちも一緒か!」
「はい! 石神家のことを見せようと思って連れて来ました!」
「おう! じゃあ後ろから付いて来るといい。面白ぇからな!」
「はい! ありがとうございます!」
俺たちはコンバットスーツを着ている。
靴はいつものようにビブラムソールの鹿革の頑丈なものだ。
腰に「流星剣」を差し、背中に「黒笛」を背負った。
虎徹は予備としてハマーに残した。
双子は「Ω」と「オロチ」の粉末だけだ。
怪我人が出るかもしれない。
虎白さんがまた簡単に俺に説明してくれた。
「元々はロシアの妖魔だったらしんだがな。こっちの「野衾」(コウモリの妖魔)と融合したら、とんでもない繁殖をしがやった」
「そうなんですか」
「まあ、実を言うとよ。俺らも定期的に暴れられっから! だからいつもちょっと残してる」
「ワハハハハハ!」
なんちゅう連中だ。
「依頼って言ってましたけど、どこから頼まれてるんですか?」
「ああ、表向きは金山寺だけどな。まあ、いろいろあるんだよ」
「そうですか」
虎白さんは、吉野の有名な寺の名を挙げた。
修験道者が多く集まる寺でもある。
「毎回千匹以上狩ることが条件でな。それで10億ほど入る」
「そんなにいるんですか!」
「なーに、一日で終わるよ」
「そうですかー」
今回は「剣士」15人と、もうちょっと若い連中も10人程いる。
腕は全員確かだろう。
みんな2本の日本刀を腰に差している。
「あいつら受肉してっからよ。だから簡単に刀で斬れる。楽勝だよ」
「はぁ」
修験道者しか通らない道が山にはある。
それは普通の人間には道には見えない。
日本の山にはそういう「道」があって、そこを通れば恐ろしい速さで遠方に移動できるそうだ。
「堕乱我」はそこにいるらしい。
修行を積んだ修験者の生気を喰うということだ。
出発前に、食事にすると聞いた。
俺たちも腹が減っていた。
みんな車からでかい鍋や釜を降ろす。
食材も積まれていて、俺たちもご馳走になった。
「虎白さん! 何か狩って来ていい?」
双子が聞いた。
「おう! 頼むぜ!」
「「はーい!」」
暫くして、双子は二頭のシカを狩って来た。
「嬢ちゃんたち! いいな!」
「「エヘヘヘヘヘ!」」
虎白さんたちがすぐに解体し、みんなで肉を焼いて食べる。
もちろん双子も旺盛に食べた。
二頭の鹿が全員の胃袋に消えた。
「おし! じゃあ、そろそろ行くかぁ!」
虎白さんが号令し、全員が雄叫びを上げる。
「あの、それ俺が言うんじゃ?」
「あ?」
「なんでもありません! 当主の高虎でした!」
「おう。じゃあ行くぞ」
俺、ほんといらねぇじゃん。
どうせこの人たちで十分やっつけるんだろ?
なんなんだ、一体。
もちろん、口には出さなかった。
それに、石神の血なのか、俺も楽しくなって来た。
院長にはゆっくりと眠ってもらい、俺が9時頃に起きても、まだ部屋で寝ていた。
静子さんは何も言わずに7時頃に起きられ、子どもたちと一緒に朝食を作って食べられていた。
「夕べは長いことお話ししていたのね」
「はい。俺に付き合ってもらって。すいません」
「いいのよ。文学ちゃんも楽しかったでしょう」
「そうですね」
六花と響子も俺と一緒に起きて来た。
こいつらは早くに寝たはずだが。
一緒に朝食を食べる。
今朝は簡単なものだ。
サニーサイドアップの目玉焼きとレタスのサラダ。
塩昆布とタケノコの味噌汁。
六花はウインナーを別に食べる。
「昼食を摂ったら送って行くからな」
「はい!」
その時、電話が鳴った。
ハーが受けた。
「タカさーん!」
「ああ、俺か」
「虎白さんですよー!」
「!」
俺の顔色が変わった。
六花も緊張して俺を見ている。
「出掛けてるって言え!」
「ダメですよ。あの人分かっちゃいますから」
「仕方ねぇ」
俺は電話を取った。
「はい! 当主の高虎です!」
「待たせんなぁー!」
「す、すみませんでした!」
いきなり怒鳴られた。
当主なのだが。
「おう、来週出掛けっからな!」
「はい?」
「頑丈な刀を2,3本用意しとけ!」
「なんです?」
「熊野の〇〇に、昼に集合な! 遅れんなよな!」
「だから、なんなんですか!」
「妖魔狩りだぁ! 時々頼まれて行ってんだよ」
「そうなんですか?」
虎白さんはめんどくさそうに説明した。
「堕乱我(ダランガ)」という、コウモリ型の妖魔らしい。
「外来種なんだよ。何しろ増えるのが早くてなぁ。時々間引きしねぇと大変なんだ」
「そうなんですか」
「前に修験者が大勢襲われたんだ。それからうちに討伐依頼が来んだよ」
「へぇー」
「お前も当主なんだから顔を出せってこった」
「困りますよ!」
「ああ、「虎王」はダメだぞ」
「なんでです?」
「獲物が一遍に無くなるだろう! 楽しめねぇじゃんか!」
「なるほど」
「じゃあ、伝えたからな!」
「おい!」
「あんだぁ!」
「すみませんでした!」
「絶対来いよ! 来なきゃお前の家を討伐すっからな!」
「分かりました! 当主の高虎、電話を切ります」
行くしかなさそうだ。
俺は全員に話した。
「タカさん、私たちもいこっか?」
「うん、頼むよ」
双子が気を遣ってくれた。
まあ、前回のようなリンチは無いだろうが。
子どもたちはもう夏休みだ。
俺もいろいろ予定はあったが、仕方がない。
暗鬱な気分で、一週間を過ごした。
金曜日の夜。
俺はハマー出掛けた。
斬からもらった虎徹、それに「流星剣」と「黒笛」を積んでいる。
朝方に熊野の待ち合わせ場所近くに着き、俺たちは車の中で眠った。
遅刻は出来ないから、そういうスケジュールで動いた。
昼前に、虎白さんたちが近付いて来るのを感じた。
双子を起こす。
車を降りて待った。
「おう! ちゃんと来たな」
「はい! 当主の高虎、参りました!」
「また嬢ちゃんたちも一緒か!」
「はい! 石神家のことを見せようと思って連れて来ました!」
「おう! じゃあ後ろから付いて来るといい。面白ぇからな!」
「はい! ありがとうございます!」
俺たちはコンバットスーツを着ている。
靴はいつものようにビブラムソールの鹿革の頑丈なものだ。
腰に「流星剣」を差し、背中に「黒笛」を背負った。
虎徹は予備としてハマーに残した。
双子は「Ω」と「オロチ」の粉末だけだ。
怪我人が出るかもしれない。
虎白さんがまた簡単に俺に説明してくれた。
「元々はロシアの妖魔だったらしんだがな。こっちの「野衾」(コウモリの妖魔)と融合したら、とんでもない繁殖をしがやった」
「そうなんですか」
「まあ、実を言うとよ。俺らも定期的に暴れられっから! だからいつもちょっと残してる」
「ワハハハハハ!」
なんちゅう連中だ。
「依頼って言ってましたけど、どこから頼まれてるんですか?」
「ああ、表向きは金山寺だけどな。まあ、いろいろあるんだよ」
「そうですか」
虎白さんは、吉野の有名な寺の名を挙げた。
修験道者が多く集まる寺でもある。
「毎回千匹以上狩ることが条件でな。それで10億ほど入る」
「そんなにいるんですか!」
「なーに、一日で終わるよ」
「そうですかー」
今回は「剣士」15人と、もうちょっと若い連中も10人程いる。
腕は全員確かだろう。
みんな2本の日本刀を腰に差している。
「あいつら受肉してっからよ。だから簡単に刀で斬れる。楽勝だよ」
「はぁ」
修験道者しか通らない道が山にはある。
それは普通の人間には道には見えない。
日本の山にはそういう「道」があって、そこを通れば恐ろしい速さで遠方に移動できるそうだ。
「堕乱我」はそこにいるらしい。
修行を積んだ修験者の生気を喰うということだ。
出発前に、食事にすると聞いた。
俺たちも腹が減っていた。
みんな車からでかい鍋や釜を降ろす。
食材も積まれていて、俺たちもご馳走になった。
「虎白さん! 何か狩って来ていい?」
双子が聞いた。
「おう! 頼むぜ!」
「「はーい!」」
暫くして、双子は二頭のシカを狩って来た。
「嬢ちゃんたち! いいな!」
「「エヘヘヘヘヘ!」」
虎白さんたちがすぐに解体し、みんなで肉を焼いて食べる。
もちろん双子も旺盛に食べた。
二頭の鹿が全員の胃袋に消えた。
「おし! じゃあ、そろそろ行くかぁ!」
虎白さんが号令し、全員が雄叫びを上げる。
「あの、それ俺が言うんじゃ?」
「あ?」
「なんでもありません! 当主の高虎でした!」
「おう。じゃあ行くぞ」
俺、ほんといらねぇじゃん。
どうせこの人たちで十分やっつけるんだろ?
なんなんだ、一体。
もちろん、口には出さなかった。
それに、石神の血なのか、俺も楽しくなって来た。
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、
ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、
私のおにいちゃんは↓
泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる