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天使集合!
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7月最初の金曜日。
今日は休むつもりだったが、早乙女家で突然体調が戻ったので出勤した。
俺のオペは一江が全部手配してくれていたので、ほとんど顔を出したようなものだったが。
でもやることは結構あった。
最初に部下たちに六花の子どもが無事に生まれたことを話し、みんなから祝いを言われ照れ臭かった。
「部長! おめでとうございます!」
「お、おう」
一江が満面の笑みで、みんなを代表して祝いの品をくれた。
ベッドメリーで、可愛らしい天使が回転するようになっている。
「……」
「部長?」
「あ、ああ! ありがとうな! 本当にカワイイぜ!」
みんなに拍手された。
天使かよ。
そして院長に六花が無事出産したことの報告。
電話で話していたが、口頭での報告と、写真を見せた。
「おお! いい顔だな!」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、今度祝いを送るな」
「いいですよ! 院長には散々お世話になってるんですし」
「いいから、やらせてくれよ」
「老後の資金が減っちゃうじゃないですか」
「バカモン!」
怒りながらも笑顔でいた。
まったく有難すぎる。
「一色はゆっくりさせてやってくれ」
「はい、でも早く戻りたいようですよ」
「あいつはしょうがないな」
「まったく」
俺は石神家本家のことも院長にある程度話した。
俺が当主になったことと、そのために一度どうしても本家まで行かなければならなかったこと。
幸いにも、「小柱」のお陰で身体がすっかり戻っていたので、血生臭い話はしなくても良かった。
「奥義」で斬られた傷の幾つかが全然塞がらなくて困っていたのだが、それも綺麗になった。
大分気持ち悪かったが。
響子の部屋に行った。
「タカトラ!」
「おう! しばらく来れなくてゴメンな!」
「いいよ! 六花の赤ちゃん、カワイイね!」
「そうだよな!」
響子の俺の両手を持ってブンブンした。
響子が大笑いする。
俺は六花と吹雪の様子を詳しく響子に話した。
「陣痛が始まって、病院に運ばれて30分で生まれたんだよ」
「へぇー!」
「初産の場合は、長いことかかることも多いんだけどな。もう、スルッポンって感じでさ」
「アハハハハ!」
「まあ、元気な女だしな。子どもも元気なんだろう。それにきっとお母さん思いなんだよ」
「どうして?」
「陣痛は痛いからな。少しでも早く出て苦しくないようにってな」
「そっか!」
「いい子だろ?」
「そうだね!」
まあ、そういうことでもないのだが。
こういう時には良いように語るのがいいのだ。
「早く六花たちに会いたいだろうけどな。しばらくは安静にしなきゃいけないから」
「うん、分かってる。タカトラ、無理させないでね」
「おう! 任せろ!」
俺は響子と一緒に祝いたいと言い、銀座の焼き鳥屋を予約した。
響子が物凄く喜んだ。
鷹は土曜日にうちに来て貰うようにした。
早乙女夫妻も呼んで、簡単な祝いをする。
一江と大森も呼んでいる。
左門とリーも来る。
銀座の焼き鳥屋で、響子は終始上機嫌でお喋りだった。
大将にも早速、俺と六花の子どもが生まれた話をする。
大将も喜んでくれ、小さなガラスの置物をくれた。
「お客さんにお祝い事があったら差し上げてるんでさぁ」
「ありがとうございます!」
そういう時のために、特注で用意しているそうだ。
小さなガラスの天使だった。
「……」
「タカトラ?」
「お、おう! すげぇ綺麗だな!」
「そうだよね!」
なんなんだ。
他にクマやネコなどもあるそうなのだが。
響子はいつも以上に旺盛に食べ、大将がお好きなものをと言うと、六花が好きだったネギまを2本食べた。
「六花の分も食べるんだ!」
「そうか!」
俺も笑って2本頼んだ。
後日、院長から祝いの品が届いた。
天使柄の柔らかなベビー布団。
栞からはレオン=バジール・ペロー作の天使の絵「L'ange endormie」(高精度印刷)。
鷹は天使の絵皿。
蓮花から天使柄の産着。
石神本家は日本酒「天使の誘惑」を100本。
千両たちは天女の掛け軸。
御堂からガレの天使ランプ。
早乙女たちからマイセンのアンティーク『楽器を奏でる天使』を。
道間家からはでかい御札を。
俺は麗星に電話で礼を言った。
「ありがとうございました、あんな立派な御札を」
「いいえ! あれがあれば、悪いものは寄せ付けませんのよ?」
「そうなんですか。大事にさせていただきます」
「あの、口伝なのですが」
「はい」
「あの御札に使った木は、天使が封じ込められているとか」
「……」
「石神様?」
「あ、ああ、そうなんですか!」
「はい。わたくしがヨーロッパで暮らしていた時に、有名な錬金術師から譲っていただきましたの」
「へ、へぇー」
どこかに仕舞っておきたかったが、麗星のやることは後々に重要な巡り合わせになる。
しょうがないので、六花に持たせておこう。
それにしても、何かの呪いか?
焼き鳥屋から帰って、響子を部屋まで送った。
「レイがね」
響子が守りについた虎のレイが言っていたと俺に話して来た。
「光の大天使様が、タカトラにおめでとうって言ってたって」
「そうなのか」
「うん。光の子が無事に生まれたんだって」
「へぇー」
俺はその話を思い出し、これも仕方がないのかと思った。
まあ、吹雪は俺と六花の大事な子だ。
それ以外の全てはどうでもいい。
何が集まろうと、大事な子であることは何も変わらない。
俺は可愛らしい吹雪の顔と、天使のように美しく吹雪を見詰める六花の顔を思い出した。
「確かに天使だよな」
俺はリヴィングに台を置き、戴いた様々な天使たちを並べて置いた。
「タカさん、いいですね!」
「そうだよな」
亜紀ちゃんが毎日丁寧に羽箒で埃を払ってくれた。
双子も時々、ニコニコして見ていた。
ロボが羽の生えたトカゲをおもちゃ箱から出して俺の前に置いた。
俺の顔をじっと見ていた。
「お前、これってよ……」
じっと見ている。
「すっげぇーカワイイな!」
ロボが俺に飛びつき、顔を舐めた。
今日は休むつもりだったが、早乙女家で突然体調が戻ったので出勤した。
俺のオペは一江が全部手配してくれていたので、ほとんど顔を出したようなものだったが。
でもやることは結構あった。
最初に部下たちに六花の子どもが無事に生まれたことを話し、みんなから祝いを言われ照れ臭かった。
「部長! おめでとうございます!」
「お、おう」
一江が満面の笑みで、みんなを代表して祝いの品をくれた。
ベッドメリーで、可愛らしい天使が回転するようになっている。
「……」
「部長?」
「あ、ああ! ありがとうな! 本当にカワイイぜ!」
みんなに拍手された。
天使かよ。
そして院長に六花が無事出産したことの報告。
電話で話していたが、口頭での報告と、写真を見せた。
「おお! いい顔だな!」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、今度祝いを送るな」
「いいですよ! 院長には散々お世話になってるんですし」
「いいから、やらせてくれよ」
「老後の資金が減っちゃうじゃないですか」
「バカモン!」
怒りながらも笑顔でいた。
まったく有難すぎる。
「一色はゆっくりさせてやってくれ」
「はい、でも早く戻りたいようですよ」
「あいつはしょうがないな」
「まったく」
俺は石神家本家のことも院長にある程度話した。
俺が当主になったことと、そのために一度どうしても本家まで行かなければならなかったこと。
幸いにも、「小柱」のお陰で身体がすっかり戻っていたので、血生臭い話はしなくても良かった。
「奥義」で斬られた傷の幾つかが全然塞がらなくて困っていたのだが、それも綺麗になった。
大分気持ち悪かったが。
響子の部屋に行った。
「タカトラ!」
「おう! しばらく来れなくてゴメンな!」
「いいよ! 六花の赤ちゃん、カワイイね!」
「そうだよな!」
響子の俺の両手を持ってブンブンした。
響子が大笑いする。
俺は六花と吹雪の様子を詳しく響子に話した。
「陣痛が始まって、病院に運ばれて30分で生まれたんだよ」
「へぇー!」
「初産の場合は、長いことかかることも多いんだけどな。もう、スルッポンって感じでさ」
「アハハハハ!」
「まあ、元気な女だしな。子どもも元気なんだろう。それにきっとお母さん思いなんだよ」
「どうして?」
「陣痛は痛いからな。少しでも早く出て苦しくないようにってな」
「そっか!」
「いい子だろ?」
「そうだね!」
まあ、そういうことでもないのだが。
こういう時には良いように語るのがいいのだ。
「早く六花たちに会いたいだろうけどな。しばらくは安静にしなきゃいけないから」
「うん、分かってる。タカトラ、無理させないでね」
「おう! 任せろ!」
俺は響子と一緒に祝いたいと言い、銀座の焼き鳥屋を予約した。
響子が物凄く喜んだ。
鷹は土曜日にうちに来て貰うようにした。
早乙女夫妻も呼んで、簡単な祝いをする。
一江と大森も呼んでいる。
左門とリーも来る。
銀座の焼き鳥屋で、響子は終始上機嫌でお喋りだった。
大将にも早速、俺と六花の子どもが生まれた話をする。
大将も喜んでくれ、小さなガラスの置物をくれた。
「お客さんにお祝い事があったら差し上げてるんでさぁ」
「ありがとうございます!」
そういう時のために、特注で用意しているそうだ。
小さなガラスの天使だった。
「……」
「タカトラ?」
「お、おう! すげぇ綺麗だな!」
「そうだよね!」
なんなんだ。
他にクマやネコなどもあるそうなのだが。
響子はいつも以上に旺盛に食べ、大将がお好きなものをと言うと、六花が好きだったネギまを2本食べた。
「六花の分も食べるんだ!」
「そうか!」
俺も笑って2本頼んだ。
後日、院長から祝いの品が届いた。
天使柄の柔らかなベビー布団。
栞からはレオン=バジール・ペロー作の天使の絵「L'ange endormie」(高精度印刷)。
鷹は天使の絵皿。
蓮花から天使柄の産着。
石神本家は日本酒「天使の誘惑」を100本。
千両たちは天女の掛け軸。
御堂からガレの天使ランプ。
早乙女たちからマイセンのアンティーク『楽器を奏でる天使』を。
道間家からはでかい御札を。
俺は麗星に電話で礼を言った。
「ありがとうございました、あんな立派な御札を」
「いいえ! あれがあれば、悪いものは寄せ付けませんのよ?」
「そうなんですか。大事にさせていただきます」
「あの、口伝なのですが」
「はい」
「あの御札に使った木は、天使が封じ込められているとか」
「……」
「石神様?」
「あ、ああ、そうなんですか!」
「はい。わたくしがヨーロッパで暮らしていた時に、有名な錬金術師から譲っていただきましたの」
「へ、へぇー」
どこかに仕舞っておきたかったが、麗星のやることは後々に重要な巡り合わせになる。
しょうがないので、六花に持たせておこう。
それにしても、何かの呪いか?
焼き鳥屋から帰って、響子を部屋まで送った。
「レイがね」
響子が守りについた虎のレイが言っていたと俺に話して来た。
「光の大天使様が、タカトラにおめでとうって言ってたって」
「そうなのか」
「うん。光の子が無事に生まれたんだって」
「へぇー」
俺はその話を思い出し、これも仕方がないのかと思った。
まあ、吹雪は俺と六花の大事な子だ。
それ以外の全てはどうでもいい。
何が集まろうと、大事な子であることは何も変わらない。
俺は可愛らしい吹雪の顔と、天使のように美しく吹雪を見詰める六花の顔を思い出した。
「確かに天使だよな」
俺はリヴィングに台を置き、戴いた様々な天使たちを並べて置いた。
「タカさん、いいですね!」
「そうだよな」
亜紀ちゃんが毎日丁寧に羽箒で埃を払ってくれた。
双子も時々、ニコニコして見ていた。
ロボが羽の生えたトカゲをおもちゃ箱から出して俺の前に置いた。
俺の顔をじっと見ていた。
「お前、これってよ……」
じっと見ている。
「すっげぇーカワイイな!」
ロボが俺に飛びつき、顔を舐めた。
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