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石神家本家 来訪

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 6月29日土曜日。
 タカさんはようやく起き上がれるようになった。

 「あー、いてぇー」

 歩く度に呻いている。
 六花ちゃんは横になっているが、タカさんを心配そうにしている。

 「あー、お前は動くなよ。今は大事な時期だからな」
 「はい」

 「紅六花」の人の中で助産師さんになった人がいて、六花ちゃんは出産後すぐに退院していた。
 タカさんは六花さんと一緒にずっと寝ていた。
 今朝になって、ちょっと歩き始める。
 1階の「弱肉強食」で食事をするようになった。
 私もハーも心配で、ずっと一緒にいた。
 二人に出来るだけ「手かざし」をしていた。

 吹雪ちゃんは物凄く元気だ。
 そして、日に日に可愛らしさが増している。
 タカさんも、吹雪ちゃんを見る時だけは元気を出す。
 その他の時間は呻いていた。
 六花ちゃんが、優しく頭を撫でていた。
 まー、悲惨な状況だったけど、結構幸せだったかもしれない。




 翌日の30日。
 タカさんは帰ると言い出した。

 「タカさん! 無理だよ!」
 「大丈夫だ」
 「だって、まだ辛そうだよ?」
 「辛いのは慣れてる」

 そうなのかもしれないけど。

 「蓮花さんのとこに行こうよ!」
 「「Ω」とか補充しなきゃじゃん!」
 「ダメだ。俺がこんな状態じゃ、ブランたちに見せられん」
 「また無理してー」
 「「Ω」は送ってもらう。オロチは御堂に言って、次の脱皮が出たらすぐに送ってもらうよ」
 「じゃあ、亜紀ちゃんに迎えに来て貰うね」
 
 タカさんはいらないと言ったが、何とか承諾してもらった。

 亜紀ちゃんは「飛んで」来た。




 「タカさん!」
 「おう、でかい声を出さないでくれ」
 「だって! なんでこんなに!」
 「もういいんだ。終わったからな」
 「でも!」
 「いい。それよりも、ハマーを運転してくれ。家に帰りたい」
 
 亜紀ちゃんは六花さんと吹雪ちゃんに挨拶して、早々にタカさんを乗せて出発した。
 タカさんは後ろのシートをリクライニングさせて私とハーに挟まれて寝ていた。

 「こうやって、いろんな女とヤったんだね!」

 タカさんに頭をはたかれた。
 タカさんが呻いた。

 帰りの車の中で、タカさんが一江さんに電話をしていた。
 怪我を負ったので、一週間くらい休むと言っている。
 一江さんが驚いていたけど、事情を話すとなんか納得していた。

 六花ちゃんと吹雪ちゃんのことを話すと、一江さんも喜んでいるようだった。
 タカさんも、楽しそうに二人の話をしていた。

 途中で何度かサービスエリアに寄って、休みながら帰った。
 夕方に家に着いた。






 タカさんを支えてハマーを降りる。
 
 「おい、なんだあの車は?」

 マットブラックに塗装した、フォードのエクスプローラーという車種らしい。
 空いた駐車場に入れている。

 「誰か来てんのか?」
 「さー」

 誰も聞いていなかった。
 玄関を開けると、ロボが飛んできて、皇紀ちゃんが階段を降りて来る。

 「おかえりなさい!」
 「おう、誰か来てるのか?」

 タカさんがロボに突撃されてよろけながら聞いた。
 亜紀ちゃんがロボを抱き上げる。

 「はい、石神虎白さんたちが」

 タカさんの顔が蒼白になって、頽れた。
 亜紀ちゃんがロボを放り投げて支える。
 ロボが激オコだった。

 「ルー! ハー! 俺を抱えて逃げろ!」
 「「はい!」」

 その時、階段を一気に飛び降りて、虎白さんが笑っていた。
 
 「ようやく帰ったか!」

 タカさんが気絶した。

 「「……」」





 亜紀ちゃんに抱きかかえられて、タカさんがリヴィングに運ばれた。
 運ばれる痛みで、タカさんが目を覚ました。

 リヴィングでは、虎白さんたち5人が待っていた。
 みんな紅茶を飲んでいる。
 タカさんはガタガタ震えながら、いつもの席に座った。
 亜紀ちゃんが隣に立って、虎白さんたちを睨んでいた。

 「嬢ちゃん、そんなにコワイ顔をするなって。何もしねぇよ」
 「もう散々やったじゃないですか! このタカさんの状態を見て下さい!」
 「分かってるって! ちょっとやり過ぎたとは思ってんだ」

 虎白さんが、とにかく座れと言った。
 柳さんが私たちに紅茶を淹れてくれた。

 「今日は、ほんとに話をしに来たんだ。高虎に当主になってもらうためにな」
 
 亜紀ちゃんがタカさんを見た。

 「高虎、頼む! 石神家の当主になってくれ!」

 全員が立って頭を下げた。
 タカさんはじっと見ていた。

 「なんで俺なんかをそんなに当主にしたいんですか?」
 「お前しかいないからだよ」
 「虎白さんでもいいじゃないですか。俺なんかより、よっぽど強いんだし」
 「俺がお前より?」

 虎白さんたちが笑った。

 「おい、「虎王」の主が何を言ってやがんだ。大体、その前からお前には敵わないとみんな思ってんだ」
 「え?」
 「その闘気だよ。お前ほどの闘気を放ってる奴は、石神の歴史に中でもいない。まあ、余りにも凄すぎてな。大人になる前に死んじまうかもしれないって、虎影の兄貴が言ってた」
 「!」

 私とハーがびっくりした。

 「虎白さん! それって、タカさんの真っ赤な炎の柱のこと!」
 「あ? ああそうだよ。よく知ってんな?」
 「だって!」
 「そうか! だからあの晩に嬢ちゃんらは俺らを見て驚いてたのか! お前ら、あれが見えるんだな?」

 ハーと二人で頷いた。

 「それで高虎が嬢ちゃんらを連れて来たのか。不思議な力があるってことだな」
 
 もう隠す必要もないと思った。
 散々タカさんに「手かざし」をしていた。

 「なら話は早い。嬢ちゃんらは、俺たちと高虎の違いがはっきり分かるだろう?」
 「みなさんは、その気になると炎の柱になります。でもタカさんはいつも炎の柱の中にいます」
 「それだ! 高虎は尋常じゃねぇ。あれは石神家では「虎相」と言ってな、闘気を特別に高める技なんだよ。でも高虎は常にその中にいる。そればかりじゃねぇ。俺らの誰よりもでかい「虎相」を常に放ってやがる。こんな奴はいねぇ」
 「でも、虎白さんたちの方が強かったじゃないですか」
 「それはもう話しただろう。こいつが俺らを攻撃しなかっただけだ。まあ、確かに剣技はまだまだ未熟だけどな。でも、それだって高虎がその気になれば、幾らでも強くなるぜ」

 


 虎白さんが話し出した。
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