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石神家本家 Ⅱ

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 あり得ないスピードでぶっ飛ばして、昼頃に盛岡に着いた。

 「あー、俺蒸発しようかな」
 「タカさん、しっかりして」
 「最後に六花と子どもに会いたかったな」
 「「タカさん!」」

 盛岡の山間に向かい、大きな屋敷に着いた。
 タカさんは車の中で震えて、降りなかった。
 玄関が開いて、15人の男の人たちが出て来た。

 「やっと来やがったかぁ!」
 「てめぇ! 高虎! なんだその車は!」
 「俺らをバカにしてんのかぁ!」
 「おう! ぶっ潰してやれ!」

 私とハーが慌てて降りた。

 「あれ? めんこい子らじゃ」
 「お嬢ちゃんたちは?」
 「タカさんの娘です!」
 「養女です!」
 「私が瑠璃で、こっちが玻璃です!」
 
 「おー、そうか! よく来たな!」

 一人の男の人が傍に来て、頭を撫でてくれた。
 優しそうな人だ。
 やっぱりタカさんに似ている。

 「ルーとハーって呼んで下さい!」
 「おー、よしよし」
 
 そう言いながら、運転席のドアを開けた。
 次の瞬間、タカさんがぶっ飛んで庭に叩きつけられた。

 「挨拶もできんかぁ!」
 「す、すみません!」

 タカさんが土下座して謝っていた。
 耳を掴まれて、中へ引きずられて行く。

 「ルーちゃんとハーちゃんも来な?」
 「「はい!」」

 とにかく中へ入った。





 広い畳の部屋へ連れて行かれた。
 タカさんは中央で正座している。
 私とハーにはお茶とお菓子が出た。

 「おい、何とか言え」
 「すみません!」
 「「同田貫」は持って来たか?」
 「は、はい、一応!」

 私がハマーに戻って荷台から持って来た。

 「おお、なんだよ、ちゃんと探したのかよ」
 「おい、虎白。それ、おかしいぞ?」
 「ん?」
 「三つ葉葵がねぇじゃん」
 「おお!」
 「ニセモノか?」
 
 タカさんを引きずって来たのが虎白さんだと分かった。

 「高虎! どういうことだ!」

 「あの! いろいろ手は尽くしたんですけど! どうにも分からなくて! だから同じ正国の「同田貫」を!」
 「あんだと!」
 「虎白、まあいいじゃんか。今時、正国のものなんて手に入らんぜ」
 「虎影さんが持ち出したんじゃしょうがねぇよ。それでいいじゃんか」
 「でもなぁ」
 「まあ、確認しようぜ」
 「おお」

 虎白さんが刀身を抜いた。

 「おお! 正国に間違いねぇ!」
 「すげぇじゃん!」

 でもすぐに気付いた。
 アロンアルファで貼り付けてる。

 「あ?」

 指で軽く叩いた。

 
 ぽき、かちゃん。


 「……」

 タカさんは平伏している。

 「おい、高虎」
 「……」
 「舐めてんのか?」
 「……」

 タカさんは震えている。

 「おう! 城へ行くぞ! 「虎地獄」だぁ!」
 『オォウ!』

 全員が雄たけびを上げた。

 「ヒィィィーーー!」

 タカさんが絶叫した。
 なんなの?




 みんなが家の中から刀を掻き集めて来た。
 それを抱えてタカさんを外に引きずり出す。
 そして山の上に向かって走った。
 私とハーも訳が分からず、「Ω」と「オロチ」の粉末を抱えて一緒に走った。
 行きの車の中で、絶対に手放すなとタカさんに言われていた。

 物凄いスピードだった。
 私たちは「花岡」があるけど、普通の人には出せない速さだ。
 驚きながら、一緒に走った。

 「お、嬢ちゃんたち、やるね!」
 「「アハハハハハ!」」

 一人の男の人が笑い掛けてくれた。



 山頂に着くと、城が建っていた。

 「明治に廃城令とかあったけどよ。冗談じゃねぇ」
 
 なんか、強硬的にそのまま保存しているらしい。
 虎白さんたち15人の男の人たちが、城の前の広い庭でタカさんを取り囲んだ。

 「「同田貫」を失くした今、高虎に石神家当主になってもらう以外にねぇ」
 「虎白さん! 俺は当主なんて!」
 「うるせぇ! 当主しか「同田貫」をどうこう出来ねぇんだからしょうがねぇだろう!」
 「そんな! 無茶苦茶ですよ!」

 タカさんが正念場で立ち直ったように見えた。

 「グズグズ言うな! これからお前に石神家の剣を叩き込んでやる。それで晴れて当主だな!」
 「虎白さん!」

 タカさんは無理矢理日本刀を持たされた。
 真剣を使うのか!

 「行くぞ!」
 
 虎白さんがタカさんに向かった。
 でも、タカさんの剣技もスゴイ。
 栞さんにも、あの斬さんにも負けないほどに鍛え上げている。
 それに、タカさんには「花岡」もある。
 剣技も力もスピードも、タカさん以上の人間はいない。

 「キェェェェ!」
 
 裂帛の気合を入れて、虎白さんがタカさんに撃ち込んだ。
 タカさんも、当然受けている。
 次の瞬間、タカさんの腹に日本刀が入った。

 「「エェー!」」

 タカさんがやられるなんて!
 それにまさか本気で真剣を刺すとは思ってなかった。
 ハーと二人で驚いた。

 「まだくたばるんじゃねぇぞー!」
 
 虎白さんはまだ撃ち込んでいる。
 タカさんは必死に受けたりかわしたりする。
 お腹から血が零れて来る。

 「なんだぁ! その動きはぁ!」

 今度はタカさんの胸に突き刺した。
 浅かったが、刃先数センチがめり込む。

 「オラオラオラオラァー!」

 高速の突き。
 タカさんの身体のあちこちに刃先が突き刺さった。
 タカさんが全身から血を吹いて倒れた。

 「なんだよぉー! しょうがねぇ、休憩!」

 私とハーで駆け寄って、タカさんを庭の端に運んだ。

 「「Ω」「オロチ」「手かざし」」
 「はい! オール行きます!」

 タカさんが瀕死の声で言い、私たちは準備した。
 私は粉末を水で飲ませ、ハーが「手かざし」をした。
 虎白さんが近付いて来た。

 「なんだ、嬢ちゃんたちも治療出来るんか?」
 「「はい!」」

 タカさんの傷口から白い泡が出て来て、たちまち塞いでいく。

 「おお!」

 虎白さんが驚いて見ている。

 「おい、みんな! 見てみろ! 高虎の薬ってすげぇぞ!」

 みんなが集まって、傷が修復されていくのを眺めた。
 タカさんに厳命されていた。
 自分がどんな状態にされても、絶対にニコニコしていろ、と。

 「殺されても、ニコニコしてろ」
 「「え!」」
 「絶対に逆らうな! 殺されるぞ!」
 「「……」」

 何となく分かった。

 「スゲェな!」
 「なんだ、こりゃ!」
 「縫わなくて良かったか!」

 「おう! これならよ、幾らでもぶっ刺せるぜ!」
 「楽しいな!」
 「やりたい放題か!」
 
 「ヤメテクダシャイ」

 瀕死のタカさんが呟いた。

 「うちらの使ってる病院はよ、外科医の腕が最高なんだよ」
 「タカさんもスゴイですよ?」
 「あーそう? でもさ、俺らがしょっちゅう腕とか足とかぶった斬るじゃん。だから外科医が数をこなすからな。もう1時間以内ならきれーにくっつけるんだよ。あいつらスゲェよな!」
 
 みんなが「そうだそうだ」と言っていた。





 タカさんも大概だけど、石神家本家はぶっ飛んでいた。  
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