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「愛国義兵団」本部 襲撃 Ⅱ

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 千両たちが入って1分が経った。
 俺たちは同時に建物の中へ強襲する。

 千両たちは何人かに出迎えられて中へ入って行った。
 建物の廊下の突き当りにエレベーターがあった。
 4階で停止している。

 俺は亜紀ちゃんたちに任せることにし、1階の部屋を見て回った。
 誰もいない。
 階段を駆け上がり、2階へ。
 上で激しい戦闘音がする。
 亜紀ちゃんや千両たちが交戦している。
 ガンの発射音が連続する。
 複数の武器で応戦されているのだろう。
 2階にも誰もいなかった。
 3階。
 複数のプレッシャーがあった。
 人間のものではない。

 オーガタイプの妖魔化した人間が4体いた。
 俺は両手で「オロチ・ストライク」を撃ち、数秒で撃破した。

 上で巨大なプレッシャーを感じた。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「1分だ! 行くよ!」
 「うん!」

 私はハーに声を掛け、屋上の扉を破壊した。
 4階に人が集まっていたらしく、すぐに階段下に集まって来る。
 いい動きだった。
 不意を突かれても、対応が早い。
 AK47を握って攻撃してきた。
 私とハーは瞬時に高速機動で移動し、私は天井を突き破って屋上へ。
 ハーは壁を蹴って一気に下に降りて集団の中へ突っ込んだ。
 私もまた屋上の床を破壊して下へ降りる。

 「亜紀ちゃん、無茶苦茶だよ!」
 「アハハハハハ!」

 ハーが全員斃していた。
 私たちは廊下を進み、またすぐに応戦された。
 悲鳴が聞こえる。
 きっと千両さんたちが戦っているのだと分かった。

 「あっちだ!」
 「うん!」

 弾丸を掻い潜りながら、前方に「虚震花」を放った。
 廊下で銃を撃っていた連中は掻き消えた。
 
 千両さんたちが戦っていたのは、広いホールだった。
 何体か、妖魔化した連中がいた。
 私とハーで「オロチ・ストライク」を撃って殲滅した。

 「おお、助かりましたぜ!」
 「桜さん、油断しないで!」
 「ああ!」

 私たちが来る前に、既に2体ほど千両さんが妖魔化した者を斃していた。
 流石だ。

 ここにほとんどの人間が集まっていたようで、既に戦闘は終わりかけていた。
 周囲のリノリウムの床は溢れる血で滑る。
 
 「終わりかな?」

 千両さんが構えを解いていない。

 「亜紀さん!」

 千両さんが叫んだ。
 同時に強烈なプレッシャーが感じられた。

 大きな扉の向こうだ。
 私は千両さんを抱え、ハーが桜さんを抱えた。
 同時に天井を破壊して上空へ飛び出した。
 次の瞬間、建物から巨大な光が伸びた。
 数百メートル離れていても、高熱を感じる。

 「!」

 そして今度は建物を上に貫く電光。
 タカさんだ!

 「タカさん!」

 私は千両さんを抱えたまま、建物の残った屋上へ降りた。
 大穴が空いており、まだ鉄筋が高熱で真っ赤になっている。

 私たちを狙った熱線はずっと先まで伸びて、途中の住宅地を抉っていた。
 幅20メートルといったとことか。
 タカさんが4階に来た。

 「無事か!」
 「はい!」

 ハーも桜さんを抱えて降りて来た。
 ハーが叫ぶ。

 「タカさん! 今のは!」
 「分からん。途轍もない奴だった」
 
 ルーも飛んで来た。

 「みんな! 大丈夫!」
 「ルー! 大丈夫だ。あの熱線がどこまで伸びているのか調べてくれ!」
 「はい!」

 ルーが飛んで行った。

 6人の議員は部屋の隅でしゃがんで脅えていた。
 私とハーで建物内をもう一度探したが、もう誰も残っていなかった。
 ルーが戻って来て、約2キロ先まで地面が焦げていることを伝えた。
 帰りはスマホの動画を撮って帰って来た。
 途中にあった住宅地が激しく燃えていた。
 この時間だと、多くの家で人がいただろう。

 「可哀そうに……」

 議員たちを担いで撤収することにした。
 千両さんが桜さんに何か言っている。
 桜さんが床から一人を担ぎ上げた。

 「こいつはまだ生きてます」
 「そうか」

 タカさんにそう言った。
 千両さんは凄い人だ。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 中野に戻り、トヨエースの荷台から議員たちを降ろした。
 古い一軒家に入れる。
 ワイヤーロープで縛った「愛国義兵団」の男をハイエースから桜さんが運んだ。
 もう意識があった。
 千両さんの強烈な峰打ちを首に喰らったのだから、結構な体力だ。
 
 「日本一新会」の議員たちには、タカさんがタマさんに指示して暗示を掛けさせた。
 今日はもう解放する。
 明日から、彼らは「業」の尖兵となって日本で大規模なテロ活動を企んでいたと発表する。
 政治的に、また利権を求めていたことが「業」のために動くという目的に摩り替えられている。
 しかし、「虎」の軍に察知され、テロ部隊を急襲されたことで自首することになった、と。
 「虎」の軍の粛清を畏れ、全てを告白する代わりに、命を奪われずに日本の法により裁かれたいというシナリオだ。
 「愛国義兵団」を使っての数々の犯罪を犯したことも、「業」の儀式のために妊婦を襲ったことも告白する。
 法的にどれほどの刑罰が下るのかは分からないが、社会的にはもう破滅する。
 
 「愛国義兵団」の生き残りからはタマさんが全ての記憶を引き出したが、「ボルーチ・バロータ」の情報は殆ど無かった。
 一方的に接触して来るだけで、自分たちからの連絡手段は無かった。
 「太陽界」と同じだった。

 「愛国義兵団」は「ボルーチ・バロータ」からデミウルゴスの提供を受け、また銃器なども卸してもらっていたようだった。

 「あの強烈な光線を出す奴はなんだ?」
 「あれは2週間前に運ばれて来た。「ボルーチ・バロータ」の連中は、強力な妖魔で、俺たちを守ってくれると言っていた」
 「どういう奴だった?」
 「まだ幼体ということだったが、亀の上に木のようなものが生えている姿だった」
 「……」
 「その木の上に大きな目玉のようなものがあった。俺たちにはどういう能力があるのかは教えてもらえなかった」

 タマが俺を見て言った。

 「主、もう限界だ」
 「なに?」
 「こいつの中に、妖魔の核が埋め込まれていた。もう身体が崩れるぞ」
 「!」

 男の腹が腐臭を放って割れ、内臓が零れて来た。
 胸が畳に落ち、そこから上もたちまち溶け崩れ、足も倒れて同様に崩れた。
 全員を外へ出し、家ごとクロピョンに喰わせた。

 


 「タカさん、お腹減ったね」
 「おお! そうだったな!」

 ハーが俺に言った。
 もう夜の10時を過ぎている。

 「早く帰って飯にしよう!」
 「うん!」
 「早乙女さんちの方が近いよ?」
 「ばかやろう! 怜花を喰う気か!」
 「アハハハハハ!」

 俺たちは「虎温泉」に入り、その間に柳に夕飯を温めさせた。
 千両たちは内風呂だ。

 いつものようにステーキをガンガン食べた。
 千両も分厚い肉を食べていた。

 「怜花ちゃんも美味しそうだよね!」
 「そうだな! でもなぁ、士王のプニプニの腕とか腿の方がなぁ!」
 「アハハハハハ!」

 みんなで笑った。
 いつもの石神家の食卓だった。
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