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「愛国義兵団」本部 襲撃

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 千両と桜はすぐに人員を配置してくれた。
 火曜日の昼。
 俺は病院を休んで、「日本一新会」の代表折原茂に会いに行った。
 もちろんアポなどは無い。
 千万組の連絡で、党本部にいることが分かっていた。
 永田町の党本部で、自分の名前を名乗った。

 「石神高虎だ。党代表の折原茂に会いに来た」

 受付の人間が驚いていた。

 「あの、折原はただいま……」
 「早く取り次げ。俺が誰だか分かっているだろう!」
 「はい! お待ちください!」

 急いで内線を掛ける。
 即座に案内された。





 折原は秘書らしい男二人と一緒に部屋で待っていた。

 「これは石神さん! 今日は一体……」
 「タマ!」

 俺の隣に着物姿のタマが現われる。

 「こいつらを全て正直に話すようにしろ」
 「分かった」

 途端に三人が硬直した。

 「あー、茶ぐらい出させれば良かった」
 「俺が煎れよう」

 タマが部屋を出て行った。
 あいつ、できんのか?

 しばらくして、若い女性が盆に茶を乗せて入って来た。
 俺たちを見ても驚かない。
 タマが洗脳したようだ。
 俺は茶を口に入れた。

 「一色六花を襲った件に関わる人間の名前を言え」

 折原が自分と幹事長、その他の4人の名前を口にした。
 この党の看板である女性議員・立川蓮葉の名前もあった。
 立川蓮葉は元々タレントだったが政治家に転身し、美人である上に容赦ない舌鋒での追及で人気がある。
 「日本一新会」が与党になった際には自由党の既得権益の破壊に大いに貢献し、各省庁や大手企業の癒着を追及して国民の人気を博した。
 野党に墜落してからも、自由党のスキャンダルを国会で追及し、今も人気がある。

 「「愛国義兵団」との窓口は誰だ」
 「幹事長の大葉です」
 「襲撃計画の中心人物は?」
 「それも大葉です。大葉が計画を練り、私たちも賛成しました」
 「ロシアとの接点は誰だ?」
 「それも大葉です。《ボルーチ・バロータ(狼門)》との交渉は、すべて大場が取り仕切っていました。今回の計画も、《ボルーチ・バロータ》からの指示だったようです」
 「!」

 ロシアン・マフィアだ。
 人間を化け物にする「デミウルゴス」の供給元だった組織だ。
 やはり、「日本一新会」は「業」と繋がっていた。
 俺は千両に電話し、今聞いた連中の確保を指示した。

 俺は三人をハマーに乗せて移動した。
 本部を出る前に、受付の人間の記憶と記録をタマに消させた。
 俺は中野のうちの土地の中にある一軒家に折原たちを運んだ。
 古い二階建ての家だった。
 千両には穏便に連れて来るように指示したが、大場と立川蓮葉は拉致して来たようだ。
 後から来た連中は、俺の姿を見て驚いていた。

 「石神高虎……」
 
 俺は威圧し、全員を畳みに座らせた。
 千万組の人間を4人残し、あとは外を見張らせた。

 「さて、お前たちがどうして集められたか分かっているな」
 「あなた! これは犯罪ですよ!」

 叫ぶ立川蓮葉の顔を蹴る。
 後ろへ倒れながら、派手に鼻血を零した。

 「お前ら! 俺の女を襲って命があると思うな!」
 「「「「「「!」」」」」」

 「六花を殺し、胎の子を人質にして俺を動かそうと思ったのか。絶対に許さん!」

 全員が必死で命乞いをしてきた。
 命が助かるのなら何でもすると言って来た。
 涙と鼻水で顔をグシャグシャにしていた。
 俺の威圧と、暴力に躊躇が無いことが分かったのだ。

 「俺に協力しろ」
 「何でもする!」
 「お前たちに出来ることは少ない。無能で卑しい連中だからな」

 全員が押し黙る。
 しかし、命を永らえることで喜んでいる。
 まったく、どうしようもない連中だ。
 俺も、殺す気は無かった。
 六花に何かをしていれば別だが、ド汚いことはしようとしていたが、実質何も出来ていない。

 「ボルーチ・バロータをおびき出せ。上手く出来たら助けてやる」
 「ほんとか!」
 
 もちろん、命の保証だけだ。
 妊婦を誘拐し、殺害しようとしたことは償ってもらう。
 それに加えて、「業」の手先となって日本を陥れようとしたこと。
 今後の日本で、それは大きな問題となる。
 政治家が私欲で好き勝手にする時代は終わるのだ。

 「まずは「愛国義兵団」だ。あの連中には消えてもらう」
 
 大場に、全員を集めさせた。
 誰かに電話し、俺に報告した。

 「今晩、全員が「愛国義兵団」の本部に集まります」
 「どのような理由だ?」
 「私がそう言えば。重要な話があるので、全員を集めておくように言いました」
 「それで集まるのか?」
 「はい、必ず」

 想像以上に大場と「愛国義兵団」との関係は強いらしい。
 
 「ではお前たちも一緒に来い。俺たちを裏切ればどうなるのかを見せてやる」
 
 六人が震えあがった。




 俺は子どもたちに連絡し、千両と桜にも準備してうちに来るように言った。

 千両は「虎王」を持ち、桜は素手だった。
 二人とも、タイガーストライプのコンバットスーツだ。
 
 「千両! 似合わねぇな!」
 「はい!」

 車は千万組で用意した。
 白のハイエースと2トン車のトヨエースだ。
 「日本一新会」の連中はトヨエースの荷台に突っ込む。

 俺たちは埼玉県の春日部市にある「愛国義兵団」の本部へ向かった。
 ハイエースは俺がハンドルを握り、トヨエースは桜が運転した。
 ハイエースには亜紀ちゃん、双子、そして千両が乗っている。

 「しかし、先日の鶏には驚きました」
 「ワハハハハハ!」

 「あの卵にも。大変美味しゅうございました」
 「そうか!」
 「石神さんには驚かされてばかりです」
 「そうかよ」

 俺の隣で千両が笑っている。
 
 「今回はお前たちにも大分手間を掛けちまったな」
 「いいえ」
 「褒美ってわけじゃないけどな。今度アラスカへ連れて行ってやるよ」
 「ありがとうございます」

 「六花に子どもが生まれたら、是非見に来てくれ」
 「はい、必ず」

 「俺たちが残してやる次の世界に生きる人間だ」
 「!」
 「俺たちはそのために戦うんだからな」
 「そのために、私らを?」
 「そうだよ。また冥途のみやげが増えるな!」
 「はい!」

 千両が嬉しそうに笑っていた。




 一時間後。
 俺たちは「愛国義兵団」の本部に近づいた。
 鉄筋の4階建ての建物が見える。
 周辺は住宅と畑だ。
 午後6時になっている。

 「タカさん!」
 「分かってる!」

 双子が感知していた。
 本部近くで張り込んでいた千万組の人間たちが駆け寄って来た。

 「30分前までに、全員が建物の中に入りました」
 「分かった。お前たちは離れていろ」
 「はい!」

 俺たちは手前の駐車場に車を入れた。
 全員に説明する。

 「妖魔化した奴が中にいる」
 「「「はい!」」」
 「生かしておくつもりだったが、それはナシだ」
 「「「はい!」」」

 「千両と桜もいいな!」
 「「はい」」

 「千両と桜は、議員たちと一緒に正面から入れ。あいつらは守らなくていいぞ」
 「分かりました」
 「お前たちが中へ入ったら、1分後に俺たちは突入する。俺はお前たちの後ろから。亜紀ちゃんとハーは屋上から。ルーは周囲を警戒し、逃げ出す奴を斃せ」
 「「「はい!」」」

 


 千両たちが中へ入って行った。
 俺たちは少し離れて、それを観ていた。
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