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No Guitar No Life

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 夕飯は誰の発案だか、バーベキューだった。
 「暁園」の子どもたちも来る。
 広い駐車場を会場とし、「紅六花」のメンバーがバーベキュー台を持ち寄ったり一部レンタルもしたようだ。
 
 小鉄たちはずっと食材のカットをしていた。
 俺は子どもたちに言って、すぐに手伝わせた。
 響子は午後に起きてから「リッカランド」に連れて行ってもらっていたようだ。
 楽しそうに帰って来た。

 六花と三人で風呂に入った。

 「あー、私もバギーに乗りたかったなー」
 「ばかやろう! 子どもがバギー野郎になったらどうすんだ!」
 「え、いいじゃないですか?」
 「あ、そうだな!」

 響子が笑った。

 「私ね! 格闘技大会で優勝しちゃった!」
 「おお、そうか!」

 パラメーターを最大にしてくれたのだろう。
 スキルや得意技も設定でどうにでもなる。
 得意技は、やろうと思うだけで発動する。
 
 「リッカバスターで、どんな相手も一撃だったよ!」
 
 響子が嬉しそうに話していた。
 どうやら、隠しキャラのリッカ・ラグにしてもらったようだ。
 無敵キャラだ。
 最高のステータスで、防御力も最大になっており、ほとんどダメージを受けない。
 オートカウンターのスキルもあり、自動的に身体が動いて反撃する。
 さぞ、楽しんだことだろう。

 「隠しボス戦も楽勝だったよ!」
 「ああ、「業」にも勝ったか!」
 「うん!」

 六花と二人で頭を撫でた。
 
 風呂から上がって、三人でテレビを観ていた。
 タケが呼びに来たので、下に降りる。
 駐車場にテーブルが並べられ、各テーブルには明るいランプが置いてあった。
 大小のバーベキュー台が14台、それにビュッフェ・テーブルにフルーツやご飯、飲み物が置いてある。
 デザートも後で出て来る予定だそうだ。
 端の石神家専用バーベキュー台の他は、「紅六花」のメンバーが交代で焼いて行く。
 子どもたちのテーブルにもメンバーが2人いて、世話をしていく。
 基本は自分で取りに行く形だが、遠慮して行けない子どももいるかもしれないし、自分の嫌いなものを避けたい子どももいるかもしれない。
 そういうことを察して一緒に行ったり、焼き物を指定してやったりするためにいる。
 また、テーブルで会話して盛り上げる係でもある。
 その辺はうちの子どもらも協力する。
 まあ、喰いが落ち着いてからだが。
 バーベキューでなければ最初から出来るのだが。
 うちの子も結構役に立つのだが。

 亜蘭が自分から、そういう役目をやりたいと言っていた。
 見ていると、甲斐甲斐しく子どもたちの面倒を見て、一緒に笑って楽しんでいた。
 他の「紅六花」のメンバーたちも、それを見ていた。

 「石神さん、本当にいい男をお世話頂きました」
 
 よしこが頭を下げて来た。

 「よせよ。俺は単なる厄介払いだよ」
 「あはははは、確かに戦う奴じゃないですね」
 「そうだよ。あいつは優し過ぎるんだ。子どもたちを守ることは必死でやるけどな。自分から戦場に出て敵をぶっ殺すことは出来ないよ」
 「はい」
 「それによ。子どものスパイを使われたら、絶対にイチコロだって。「おじちゃん、ちょっと来て」って言われたら、もうダメだろ?」
 
 全員が笑った。

 「それは確かに。でも、じゃあ子どもに甘いということもありますか?」
 「それは無いな。まあ、甘いんだろうけど、亜蘭は必ず筋を通す人間だ。あいつなりに、子どものために一番いいことを考えていくだろうよ」
 「なるほど」

 「あいつは自分に甘い人間じゃない。まあ、もう前の話だけどな。うちの双子をナンパする時に、自分が慶応大学卒だって自慢したらしいよ」
 「アハハハハハ!」
 「それが自慢だったんだ。あいつは本当に頑張っていい大学に入ったんだよ。金が幾らでももらえる環境で甘い人間なら、努力なんて出来ないさ。あいつはやった。その後は流されちゃったけどな。でもそれだって、自分の愛を通すためにまた立ち上がったんだ」
 「アハハハハハ!」

 亜蘭が野菜を食べない子どもに苦労していた。
 子どもの頭を撫でたり、必死に話し掛けたりしていた。
 何と言っているのかは聞こえない。
 やがて子どもが目を瞑って野菜を食べた。
 亜蘭が喜んで子どもを抱き締めた。
 みんなが微笑んで見ていた。
 亜蘭は気付いていない。

 「亜蘭はさ、周囲にほどんどちゃんとした「大人」がいなかったんだ。昨日も話していたけど、メイドをしていた竹内という人だけだったんだろうよ」
 「学校でも出会わなかったんですね」
 「今はなぁ、難しい時代になっちゃったよな。おまけに本も読まねぇ。まあ、そこはお前らもだけどな」
 「ワハハハハハ!」

 「だから分からなかったんだ。生きるということが、どういうことなのかをな。亜蘭はいい奴だよ。でも誰も、どう生きればいいのかを教えてくれなかった」
 「石神さんが教えたんですね」
 「俺なんかは何もしてないけどな。東雲たちが背中で教えてくれたんだよ、きっと。あと、一番はレイだったかな」
 「そうですね」

 レイの最期は亜蘭も知っている。
 レイにも会ったことがある。

 



 子どもたちの「喰い」が終わり、俺はエレキギターを持った。
 今日はフェンダーのストラトキャスターだ。
 
 布袋寅泰の曲を中心に歌った。

 『さらば青春の光』
 『DANCING WITH MOONLIGHT』
 『バンビーナ』(ロボがジルバを踊った)
 『MERRY-GO-ROUND -』(ノリノリになったロボがクルクル回った)
 『Poison』(ロボはもう飽きて毛づくろいを始めた)

 俺のギターを聴いたことがあまり無い子どもたちは大興奮だった。
 「紅六花」のメンバーに前に連れて来られ、すぐ傍で聴いた。
 うちの子どもたちがノリノリで踊った。
 六花も響子を連れて来て、手足をとって躍らせた。
 疲れやすいのですぐに辞めた。
 でも、響子も楽しそうに笑っていた。

 俺は響子と六花を前に呼んで、両脇に座らせた。
 今井美樹の『おもいでに捧ぐ』を歌った。

 よしこたちが子どもたちを「暁園」に送り、解散した。
 俺は最後に竹流を呼んだ。

 「おい、明日はもう「紫苑六花公園」には行かないからな」
 「はい、そうですか」
 「早起きして掃除する必要はないぞ?」
 「分かりました」

 



 翌朝。
 俺は4時半に起きて顔を洗ってから「紫苑六花公園」へ行った。
 ハマーを停めると、竹流がやって来た。
 俺がわざわざ今日は来ないと言っていたのに、竹流は来た。

 「あ!」
 「おう、なんだよ」
 「神様、来てたんですね!」
 「今日は俺が掃除しようと思ったのに!」
 「アハハハハ!」

 二人で笑って掃除を始めた。
 落ち葉を掃き、ゴミがあれば拾い、最後に二人で長いベンチを雑巾で拭いた。
 俺が缶コーヒーを買って来て、竹流に渡した。
 二人でベンチに座る。

 「おい、ここちょっと湿っぽいぞ」
 「そうですね」
 「お前が拭いたとこだろう」
 「違いますよ」
 「あ、お前神様に逆らうのか!」
 「アハハハハハ!」

 二人で公園を眺めながらコーヒーを飲んだ。

 「昨日のギターは凄かったです」
 「そうか」
 「はい。僕もああいうことが出来たらなぁ」
 「やればいいじゃないか」
 「はい?」
 「どうして、やりたいのに立ち止まるんだよ」
 「!」
 「やれよ。俺はそうやって生きて来た」
 「じゃあ、ギターも!」
 「いや、あれは無理矢理な」
 「え?」

 俺は貢さんとの出会いと修行の日々を話した。
 竹流は大笑いし、感動していた。

 「まったくよ。貢さんのせいで、俺はもうギターから離れられない人間になっちまった」
 「はい」
 「お前もそうしてやる」
 「え!」
 「俺が無理矢理教えるからな。ああ、帰ったらギターを送ってやる。覚悟しろ!」
 「はい!」

 竹流が嬉しそうに笑った。

 「俺は出来ないんだけどよ。亜紀ちゃんか誰かにネットで映像を繋げさせるからな」
 「ああ、スカイプとか」
 「え、お前できんの?」
 「はい」
 「すげぇな!」
 「アハハハハハハ!」

 「じゃあ、それでやろうか」
 「お願いします!」
 「その前にすりこぎ殴り機を作んないとなー」
 「アハハハハハ!」




 竹流と一緒に朝食を食べ、俺たちは帰った。

 後日、竹流にギターと貢さんの顔を貼り付けたすりこぎ殴り機を一緒に送った。
 竹流が大笑いして礼を言って来た。
 すりこぎは痛いので、柔らかい布を巻いた。
 時々、竹流とネットでギターを教えた。

 毎回、亜紀ちゃんに繋いでもらっている。
 普通なら「いい加減に自分で覚えて」と言われるだろうが、亜紀ちゃんは毎回ニコニコして繋いでくれる。
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