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紅バギー

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 朝食を食べ終え、みんなで「紫苑六花公園」へ行った。
 「紅六花」のメンバーはほとんどが一旦帰っているので、大体10人くらいだ。
 タケと小鉄は店があるので残り、六花のために唐揚げを10個ほど作ってもらった。
 前回双子に喰われたので、今日は俺が持った。
 あそこへ行くと、六花が泣く可能性がある。

 よしこやヒロミといった幹部、またヒロミの店のミカやキッチ、ラクなどもいる。
 車を近くの駐車場に入れ、歩いて向かった。

 公園のベンチにみんなで座り、「紅六花」のメンバーがみんなに缶ジュースを配った。

 「おい、牛丼ミックスはあるか!」
 「え! あれお好きなんですか!」
 「いや、大嫌いだから、別なのをくれ」
 「アハハハハ!」

 前に飲んで、あまりの不味さに柳にやった。
 本当に味見をしてから市場に出したのかと思う。
 俺は普通のレモンスカッシュをもらった。

 「あれ、結構人気なんですよ」
 「栃木の人間の舌ってどうなんだよ!」
 「あ、酷いですよ! もちろんジョークっていうか、あまりにも不味いんでみんな一度飲んでみたいとか」
 「なんだ、そりゃ」
 「罰ゲームなんかにも使ってるみたいですよ?」
 「ああ」

 どういうことか、よく分からん。

 「前回も、多分誰かがジョークで買ったんでしょう」
 「そいつを連れて来い」
 「アハハハハハ!」

 


 ベンチに横にみんなで座り、響子は俺の隣でニコニコして「いちごみるく」を飲んでいた。
 六花は立ち上がって紫苑の花畑に行った。
 ロボが遊びたがってついて行き、六花の尻に頭突きをしている。
 俺は笑ってロボを呼び、亜紀ちゃんと遊ばせた。

 「ここはやっぱりいいな」
 「はい」

 俺は六花の肩を抱いた。
 六花が優しく微笑み掛けて来る。

 「あの時は、自分が将来こういう風になるなんて、まるで思っていませんでした」
 「そうだろうな」
 「悲しくて、寂しくて、怖くて。真っ暗な中にいました」
 「そうだな」
 「でも、紫苑は笑っていたんですよ。いつだって」
 
 六花の肩を強く寄せた。

 「紫苑は幸せの中にいたんだよ。お前がいたからな」
 「え?」
 「自分のことをこんなにも思ってくれる親友が傍にいたんだ。幸せだよ」
 「びじがヴぃぜんぜー!」
 
 六花が泣き出した。
 しまった、早かった。
 手に唐揚げの袋を持っていなかったので、ベンチから持って来るように叫んだ。
 ルーが慌てて持って来た。
 途中で3個喰われて無くなった。

 「……」

 俺は六花の口に唐揚げを突っ込んだ。
 六花は泣きながら唐揚げを食べ、俺がどんどん突っ込むとやがて笑顔になった。

 ベンチに戻ると、亜蘭が泣いていた。
 「紅六花」のメンバーに背中を摩られ、肩を叩かれていた。
 誰かに「紫苑六花公園」の話を聞いたらしい。
 亜蘭に最後の唐揚げを口に突っ込んだ。

 「……」

 




 「弱肉強食」に戻り、食材を積み込んで「暁園」に出発した。
 今日は俺たちが昼食を作る。
 クリームシチューに、真鯛のポワレ、ポテトサラダに炊き込みご飯。
 子どもたちも手伝いに来る。
 この園では子どもたちも率先して料理や洗濯、掃除を手伝う。
 自分の家のことをやるのは当たり前だ。
 
 亜蘭は子どもたちに囲まれて楽しそうだった。
 
 午後はまだ開園していない「紅バギー」にみんなで出掛けた。
 よしこが「暁園」の大型バスを出す。

 建物の中で、みんなツナギに着替える。
 泥で汚れるためだ。
 それにヘルメットとゴーグルも被る。
 着替え終わると、安全の説明を受けた。
 手足を伸ばしたり、車の外に出してはいけない。
 両手はシートの前のバーに捕まっていること。
  
 子どもの年齢によって走り方やコースは変えるが、ジャンプしたり車体が回転したりして、子どもたちは大はしゃぎだ。
 4人乗りのものがメインで8台、2人乗りも3台ある。
 ロボも楽しそうに観ていたので、俺が運転して乗せてやった。
 助手席でハーネスをしながら、ロボが俺を時々見て、口を開けて喜んだ。
 戻ると俺に飛びついてきた。

 「にゃー! にゃー! にゃー!」
 「おう、楽しかったか!」

 みんなが笑った。

 「紅六花」の運転の上手い連中がドライバーになっているが、亜紀ちゃんが自分で運転したがった。
 
 「おう、じゃあ兄弟で乗って来い!」
 「はい!」

 亜紀ちゃんと皇紀が前に、双子が後ろのシートに座った。
 必要もないのだが、子どもたちの手前、ちゃんとハーネスを付けさせた。
 みんなで見ていた。

 「お姉ちゃん! スピード出し過ぎだよ!」
 「ワハハハハハ!」

 皇紀の叫び声と亜紀ちゃんの笑い声が聞こえる。
 バギーは激しく地面を跳ねまわり、転げながら進んだ。
 亜紀ちゃんがよく見ていたようで、ジャンプコースや横転させる方法も分かっていた。
 これまでにないダイナミックな疾走を見せる。

 「「「ギャァァァァァーーーー!」」」
 「ガハハハハハハハハ!」

 絶叫と笑い声が聞こえる。

 「亜紀ちゃん! 上のバーが折れて無いよ!」
 「亜紀ちゃん! タイヤが吹っ飛んでったよ!」
 「お姉ちゃん! 前!」
 「ん?」

 バギーがコントロールを失って激しく回転しながら盛り土に突っ込んだ。
 車体の半分が埋まる。

 「……」
 『……』
 「にゃ……」

 「さー、じゃあ帰ろうか」
 「石神さん!」

 よしこたちが慌てて助けに行った。
 もちろん、誰も怪我してなかった。
 バギーは大破していた。

 帰りの車の中。

 「前によ、俺がスーパーレッジェーラ買ったじゃん。それでお前らを一人ずつ乗っけたじゃん」
 
 みんな黙っている。

 「あの時によ。双子を乗せる前に、亜紀ちゃんが安全運転でって言ったんだよ。でも俺は「あいつら、時速百キロでぶっ飛んでも平気そうだぞ」って言ったのな。亜紀ちゃんが絶対にやめてくれって言ったよ」

 「「「「……」」」」」

 「やっぱ大丈夫だったな」

 「「「「はい」」」」

 後ろで亜紀ちゃんが他の三人に頭を引っぱたかれていた。




 「暁園」に戻り、みんなでプリンを食べた。

 兄弟たちに額にマジックで「悪」と描かれた亜紀ちゃんも配りに行き、みんなに笑われた。 
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