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「カタ研」第一回全体集会

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 「えー、それでは! 第一回「カタストロフィ研究会(カタ研)」全体集会を開催いたします!」

 亜紀の宣言で、それは始まった。
 石神が用意した本郷のマンション。
 30畳のリヴィングで、大きなテーブルを囲んでいる。

 「最初に、この研究会の部長を選任したいと思います!」
 「え、亜紀ちゃんでいいんじゃない?」
 「私は裏部長です」
 「なにそれ?」
 「影の部長です。「我らはシャドウガーデン・・・陰に潜み、陰を狩る者だ・・・」」
 「えーと、意味が分かんない」
 
 亜紀は呆れ顔で柳を見る。
 両手を拡げ、掌を上にして首を傾げた。

 「『陰の実力者になりたくて』を知らないんです?」
 「知らないけど?」
 「はぁー」

 亜紀は大げさにため息を吐いた。

 「とにかく、この研究会の部長は柳さんなので」
 「そうなの!」
 「そうですよ。だって一番学年が上で、しかも美人で頭も良くて」
 「そ、そうかな?」
 「そうですよ! ね、みんな!」

 みんなで拍手する。

 「じゃー、そういうことで! 次は、取り敢えず初めての人も多いので、自己紹介!」

 御堂柳:医学部三年。この中でだけの話だが、御堂総理の長女。
 石神亜紀;医学部一年。石神高虎の長女で、明るく優しい性格(自称)。
 柿崎真夜:医学部一年。石神亜紀命。元稲城会の直系組長の娘であることを告白。
 上坂さとみ:医学部二年。父親が埼玉県で病院を経営。将来はそこに入る予定。
 坂上真一:医学部二年。石神高虎を崇拝。将来は石神高虎のような医者になりたい。
 平裕之:医学部一年。趣味はオカルト。
 井之頭陽菜:医学部一年。鬼頭茜と友達で、石神亜紀に憧れて入部。
 鬼頭茜:医学部一年。井之頭陽菜と同じ。
 壇ノ浦洋平:医学部一年。同じく石神亜紀に憧れて入部。
 パレボレ・ウンコーカス:医学部一年。アメリカ人。地球の低レベルの文化を学びたくも無いが、一応。
 ジョナサン・ゴールド:社会学部大学院一年。ある筋からの要請で入部。正義を執行したい。
 響子:アメリカ人。ある財閥の娘だが、病弱なため通常は顔を出さない。秘密が多いため、苗字は伏せる。今日は参加していない。今日はいない。
 石神瑠璃・玻璃:中学一年生。石神亜紀の双子の妹。リーマン予想、解いたよー!
 ロボ:可愛いマスコット。絶対に怒らせるな。今日はいない。

 「あのさ、リーマン予想と解いたってほんと?」
 
 坂上が聞いた。

 「興味があるなら、後で送ってあげるよー」
 「でも、秘密だよー」
 「是非!」

 双子が全員にコーヒーを淹れた。
 
 「これは何ですか?」
 「お前は黙って飲め!」
 「……」

 パレボレが亜紀ちゃんに怒られた。
 一口飲んで不味そうな顔をすると、双子に睨まれ、ニッコリと笑った。

 「じゃあ、次は活動方針かなー。はい、部長!」
 「私! あのー、みんなから希望を聞こうか。何かやりたいことはありますか?」
 「はい!」
 「亜紀ちゃん」

 「「カタ研」は、世の中であらゆる災害を研究します」
 「そうだね」
 「中でも、最悪のテロリスト「業」に対処することを主旨とします」
 「うん。でも、他のカタストロフィでもいいわけだよね?」
 「その通りです。人類に見舞う災害を未然に防いだり、対処を研究していきます」
 「それはみんなもいいですか?」

 全員が拍手する。

 「それで、私は取り敢えずの活動を提案します!」
 「はい、どのようなものでしょうか?」
 「悪人を懲らしめて行きたいと思います」

 柳がコーヒーを吹いた。

 「あの、亜紀ちゃん。それはちょっと」
 「身近なことから始めたいと。渋谷のチーマーやあちこちの愚連隊を……」
 「ちょ、ちょっと待って! それは研究じゃないから!」
 「え? そうです?」

 双子が笑っていた。

 「石神さん、それはちょっと危険だから」
 
 坂上が言った。

 「いえ、危険はないんですが」
 「はい?」

 柳の言葉を坂上は理解出来なかった。

 「僕も賛成です! 悪い人間はこの世に残してはいけない!」

 ジョナサンが同意する。

 「待って! みんな待って! 確かに亜紀ちゃんもルーちゃんもハーちゃんも強いよ? でもそれは犯罪だからぁ!」
 「はい?」
 「僕も強いですよ?」
 「あなたは黙ってて、ゴールドさん!」

 亜紀たちは「分科会でやろうか」と話し合っていた。

 「亜紀ちゃん! とにかく、それは石神さんに話して許可を取って!」
 「じゃあ、ダメじゃん」
 「ダメなのよぉー!」

 柳が叫んだ。

 「あの」
 「はい、上坂さん」
 「取り敢えずなんだけど、今度一緒に飲み会を開かない?」
 「あ! いいですね!」
 
 亜紀が叫び、みんなも賛成した。

 「僕もですか?」
 「お前は取り敢えず出とけ、パレボレ!」
 「はい」

 柳が他の話になる前にまとめようとした。

 「じゃあ、場所と日時を決めましょうか」
 「うちのレストランでどう?」
 「ルーちゃんの?」

 上坂が驚く。

 「はい、「ミート・デビル」ですけど」
 「え! 一流の大人気のお店じゃない!」
 「私たち、オーナーですから」
 「個室を用意しますよ?」
 「「「「「「エェー!」」」」」」

 日本人学生たちが一斉に驚いた。
 今、予約は半年先まで埋まっており、毎日行列が出来ている店だった。
 ジョナサンはよく分かっていない。
 みんな即決で賛成した。

 「二人って、スゴイんだね?」
 「まあ、たまたま」
 「アハハハハ」

 井之頭が手を挙げた。

 「あそこは素敵なんですが、会費ってお幾らくらいになりますかね?」
 「あ、タダだよ? だってうちのお店だから」
 「え、でも」
 「大丈夫! 亜紀ちゃんが来ると20キロ食べちゃうけど、全然平気だから」
 「はい?」
 「私、ちゃんとお金払ってるもん!」
 「そうだっけ?」
 「そうだよ!」

 坂上が言った。

 「でも、流石にタダってわけには」
 「大丈夫ですよ! もうこないだの原油市場で100億ドル以上利鞘が出て、それを部費に回しましたから」
 「「「「「「ゲェ!」」」」」」
 「響子ちゃんのお陰ですけどね。当座の資金は大丈夫です」
 「何者!」
 「「「「アハハハハハ!」」」」

 石神一家が大笑いした。

 その後は雑談となった。
 
 「あの、パレボレさんって石神さんたちと前からお知り合いだったんですか?」
 「まーね。こいつ、ちょっと生意気だから」
 「でも、折角同じ研究会の仲間になったんですし」
 
 「僕は命令されて付き合ってるだけだから。まあ、君たちが分からないことは僕が何でも教えるよ」

 言ったパレボレは双子から頭をはたかれた。

 「こいつね、私たちを下等生物だって思ってるんですよ」
 「それは事実だよね?」

 亜紀が頭を殴ると、ちょっとへこんだ。
 全員が驚いていると、パレボレは内側からコンコンと音を出しながら頭を戻した。

 「「「「「「!」」」」」」

 「大丈夫ですか!」
 「まあ、着ぐるみだからね」
 「「「「「「!」」」」」」

 「じょ、冗談ですよ! こいつつまらない冗談ばかり言うんで困ってるんです」
 「そうなの?」
 「はい!」

 亜紀がニコニコ笑ってまたパレボレの頭をはたいた。
 双子がパレボレを連れ出し、しばらくしてから戻った。
 その後、パレボレは一言も言葉を発せず、固定した笑顔のまま過ごした。

 楽しく話し、パレボレ以外の全員が仲良くなった。
 同クラ同士は互いにファーストネームで呼び合うことになった。
 ルーとハーは愛称で呼ばれた。
 
  
 
 週末の金曜日に飲み会が決まった。
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