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「カタ研」始動

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 亜紀ちゃんの大学生活は順調で、柳や仲良くなった先輩の上坂さんや坂上さんに、いろいろ教えてもらって充実していた。
 早速計画していたサークル「カタストロフィ研究会」を立ち上げた。
 亜紀ちゃん、柳、そしてルーとハーもいる。
 そして、そこへ俺の仕込みの人間も加わった。
 亜紀ちゃんには最初は黙っていた。

 ジョナサン・ゴールド。
 ニューヨークでスパイダーマン事件の時に迷惑をかけたアメリカ人だ。
 アメリカ政府と日本政府への圧力と言うか、高度な折衝で、東京大学の院に入れた。
 もう一人、同じ方法で無理矢理入れたのが、「パレボレ・ウンコーカス」。
 うちに来た生意気な宇宙人だ。
 以前から何度も詫びを入れたいと申し入れていたので、亜紀ちゃんたちに協力しろと言って俺が東大に突っ込んだ。
 アメリカ人という設定になっている。
 最後に響子だ。
 まあ、幽霊部員のようなものだが、数か月に一度くらいは顔を出させる。

 俺が話すと、亜紀ちゃんと柳が驚いた。

 「ほんとですか?」
 「ほんとです」

 意味が分からないと言っていた。

 「ほら、アレだよ」
 「なんです?」

 「亜紀ちゃんも柳も、世界を破滅させる悪魔的力を持ってるじゃない?」
 「なんですよ!」

 「そこに超能力者、宇宙人、そして未来人(響子は未来がたまに見える)が入ったんだよ!」
 「「?」」

 「《SOS団》じゃん!」
 「「?」」

 無反応だった。
 すべった。

 「ま、まあ、あれだ。楽しんで活動してくれ」
 「はぁ」

 



 サークル「カタ研」は、積極的に新入メンバーを募集しなかった。
 活動の内容的にも、一般のサークルとは違う。
 活動方針は学校へ提出はしているが、自分たちでまだ具体的なものは無い。
 遊びのものでもいいし、本格的に研究してもいい。
 まだそんな感じだ。
 
 募集はしていなかったが、上クラの坂上さんと上坂さんが入部希望を出して来た。
 その他にも、「オリ合宿」での話を聞いた人間が数人。
 平裕之、井之頭陽菜、鬼頭茜、壇之浦洋平という新入生らしい。
 俺にわざわざ入部希望の用紙を見せに来た。

 「結構な所帯になっちゃいましたよ」
 「予想外だなぁ」
 「亜紀ちゃん、友達多いですから!」
 「ワハハハハハ!」

 13人か。
 まあ、響子はアレだが。
 「SOS団」が遠くなってしまった。
 亜紀ちゃんと柳がロボにも入部希望を出させた。
 前足に墨を塗ってハンコを押させる。
 ロボが怒って柳に「滅技七つの大罪キック」を見舞った。

 「なんでいつも私だけぇー!」

 柳がぶっ飛びながら叫んだ。



 金曜の夜に酒を飲みながら、亜紀ちゃん、柳、双子と話し合った。

 「それで、活動はどうすんだ?」
 「それなんですよねー。いきなり「業」のことを出すわけにもいかないし。いっそ、表の活動と裏の活動を分けようかとも」
 「でも、みんなともやりたいですよね?」

 柳は危険を心配し、亜紀ちゃんは一歩踏み込みたいようだ。

 「お前らはどう思う?」

 俺は双子に聞いてみた。

 「全部バラしたら不味いですかね?」
 「私も話したいと思う」

 子どもたちは意見を出し合い、話し合って行った。

 「タカさんはどう思います?」
 「俺はお前らの自由でいいと思うよ。だから、全部話してもいいと俺は許可するけどな」
 「でも、知れば危険になることもあるんじゃないでしょうか」
 「そうだけどな。でもな、実際に戦う人間であればともかく、知っているというだけでは大した違いは無いと思うぞ? だって世界中の人間が「業」の脅威を知っているわけだからな。具体的なことはそれぞれだがな」
 「なるほど!」

 「対抗手段ったって、たかだか学生が考えるものだ。注目されるはずもねぇ」
 「でも、私たちは本気でやりますよ?」
 「それでいい。万一、お前らが有用なことを考え出して危険になれば、俺たちが全力で守る。そうだろ?」
 「そうですね! そうなれば、もう戦う仲間ですもんね!」
 「そういうことだ」

 子どもたちが盛り上がった。

 「いろいろアイデアを出せよ。いろいろな分野でな。兵器開発でもいいし、作戦でもいいし、敵戦力の分析もいいよな。既存の軍事力の研究もそうだし、俺たちが今取り組んでいる霊素のことだって取り上げてもいいぞ」
 「そうなると、本当に広範囲で活動出来るね!」
 「具体的な活動はタカさんに報告しながら進めますね!」
 「おう! 活動の進展次第だけど、俺が顔を出してもいいし、早乙女の「アドヴェロス」や左門たちに協力させてもいい。それだけ有用な成果が上がればな。場合によっちゃ、アラスカに招待するぞ」
 「「「「やったぁー!」」」」

 みんな喜んだ。

 「まあ、それはまだ先の話だ。とにかく、やってみろよ。ああ、お前たちの能力を見せるのはまだな。メンバーに活動の意義がある程度浸透してからだ」
 「「「「はい!」」」」

 「それと、ルーとハーは水割りは飲むな! なんでこっそり飲んでやがる!」
 「「エヘヘヘヘ」」

 思った通り、山中家の女は酒好きだった。

 「だけど、ジョナサンさんはともかく、パレボレって大丈夫なんですか?」
 「あー。あいつに関しては、生意気なことを言ったらぶん殴っていいからな」
 「でも、着ぐるみなんですよね?」
 「大丈夫だよ。少々殴ってもぶっ壊れるような設計じゃねぇ」
 「ほんとですか?」
 「ああ、俺が試したから大丈夫」
 「「「「アハハハハハ!」」」」

 みんなが笑った。

 「あいつよ。俺の前でまた「みなさんの面倒を見ればいいんですよね」なんて言いやがってよ。そうだ、あいつは疑似的に飲食も出来るし、一応トイレも行けるみたいだから、安心していいぞ」
 「そういえば、ジョナサンさんは日本語が出来ませんよね?」
 「あー、その辺も大丈夫」
 「どういうことです?」
 「めんどくせぇから、タマに日本語を脳内に学習させるように言った。もう流暢に話せるぞ」
 「「「「えぇー!」」」」
 「タマは便利なんだよなぁ」
 「じゃ、じゃあ! 私たちも外国語が自由自在に!」
 「あー、それダメ。タマは日本語と広東語しかダメらしい」
 「広東語は出来るんですか!」
 「それもなー。日本で大妖魔になったせいらしいんだけど、日本語しか誰かに覚えさせられねぇらしいよ。残念だな!」
 「「「「……」」」」

 しょうがねぇだろう。

 「それと、響子も一応は顔を出すこともあるからな。その場合は、柳、お前が面倒見てくれな」
 「はい! 分かりました!」
 「その時はプリンでも用意してくれ。あいつの好物だからな」
 「はい、必ず!」

 亜紀ちゃんが俺に聞いた。

 「響子ちゃんって、必要ですか?」
 「カワイイだろ?」
 「それはそうなんですけど」

 嫌なわけではないようだが。

 「柳!」
 「はい! あのね、ルーちゃんとハーちゃんは知ってるけど、響子ちゃんは都市運営や政治、社会、金融に関しては、もうエキスパートなの」
 「そうなんです?」
 「片手間に世界のデリバティブ市場をシミュレーションしたら、8割の市場資金を回収したそうよ!」
 「えぇ!」
 「実際にお金を運用して、8パーセント集めたそうだから」
 「スゴイですね!」

 俺は笑って言った。

 「響子が直接顔を出すのは少ないだろうけど、メンバーとしては実に優秀だぞ。響子もやる気だしな」
 「そうですか!」

 ルーとハーに言って、図面とPCで映像を見させた。

 「これは俺のプレゼントな。部室は無いだろうから、俺が本郷校舎の近くに部屋を借りた。マンションだけど、広さは3LDKだ。リヴィングは30畳ある。キャビネットや20人が座れるでかいテーブルと、8人掛けのソファセット、テレビや冷蔵庫なども入れた。ベッドはないぞ。ここには泊るな。一応男女だからな」
 
 みんなが喜ぶ。

 「今後、必要なものは随時入れて行けよ。活動がまだ決まってないから、今は基本的なものしかないからな」
 「「「「ありがとうございます!」」」」

 「最初はみんなで話し合え。創設はお前らだが、これからみんなで活動していくんだからな」
 「「「「はい!」」」」

 


 楽しそうなサークルになりそうだった。
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