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御堂、衆院選 パーティ

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 五時までホテルで会談をし、一度家に戻った。
 澪さんと菊子さんが来ていた。
 軽くシャワーを浴び、全員がタキシードに着替えてリムジンに乗り込んだ。
 10人が乗っても余裕があったが、俺と御堂はロールスロイスで行く。
 ホテルオークラの会場だ。
 自由党の選挙戦の蹶起パーティだ。

 「懐かしーなー」
 「どうした?」
 「ほら、前に宇留間に撃たれてさ。そのあとでお詫びの宴会を今日の「平安の間」でやったんだよ」
 「ああ!」
 「数千万円かかったよなー」
 「アハハハハハ!」
 「まだ双子の資産なんてなかったしよ。涙が出たぜ」
 
 御堂が大笑いした。
 良かった、緊張はそれほど無いようだ。
 まあ、小島将軍との会見の経験が大きかっただろうが。

 「いろいろな人間が挨拶に来るだろうけどな。それほど気にしなくていいからな」
 「うん、分かった」
 「お前はもうトップなんだ。大らかに構えてりゃいいよ」
 「子どもたちにも警戒を怠るなと言ってある。今日だけは食い物にも夢中にならないよ」
 「ほんとか!」
 「お前、うちの子らを大食いバカだと思ってるだろう?」

 「アハハハハハ!」

 「大丈夫だよ。その後で上のベルエポックで喰い放題を約束してるからな」
 「そうか」

 御堂も正巳さんも、パーティではほとんど飲み食い出来ないはずだ。

 「言ってあるけど、俺は後援者の一人で、子どもたちはよく分からん誰かの子どもらだ」
 「アハハハハ!」
 「まあ、俺の名前を知っている人間も多いだろうけどな。裏社会を牛耳ったっていうなぁ」
 「そうだね」
 「「虎」の顔を知っている人間はほとんどいない」
 「うん」

 車が駐車場に入った。
 自由党の秘書だろう人間が待っていた。
 全員で会場に向かう。

 既にほとんどの人間が集まっているようだった。
 今日は1800人が入る予定だった。
 
 御堂と正巳さんの周りに、早速自由党のトップたちが集まる。

 現総理大臣が開演を宣言し、幹事長、選挙対策委員長などが壇上で話す。
 そして御堂と正巳さんが紹介された。
 会場で大きな拍手が湧く。
 全員が、これから御堂が自由党のトップに立つことを知っている。
 御堂が見事な挨拶と宣言をし、正巳さんも続いて挨拶した。
 御堂は言った。

 「これから日本は大きな転換点を迎えます。今までの政治でも経済でも乗り越えられない苦難です。ですが私は必ずみなさんを、日本を守り、救い、次の時代へのエクソダスを果たします!」

 《エクソダス》が俺たちのスローガンになっていた。

 御堂が木槌を総理から手渡され、壇上で樽を割った。
 大きな拍手が湧いた。

 宴が始まった。




 御堂は予想通りに自由党の幹部たちに囲まれ、しっきりなしに他の自由党員や後援者たちを紹介されている。
 御堂に後援は不要だったが、御堂は愛想よく振る舞っている。
 澪さんと菊子さんも一緒にいる。
 ダフニスとクロエが御堂の背後にいるので、護衛としては何の心配もない。
 双子が会場を探っている。

 「タカさん、黒っぽい人もいるね」
 「しょうがねぇな。それが今の政治だ。亜紀ちゃんにここで悪人狩りをするなと言っておけ」
 「「ギャハハハハ!」」
 「じゃあ、頼むぞ」
 「「はい!」」

 双子は自由党の秘書を連れて会場を回って行った。

 基本的に俺たちに挨拶しようという人間はいない。
 だから時々ビュッフェを摘まんでシャンパンを飲んでいた。

 若い議員らしい奴が、亜紀ちゃんをナンパした。
 亜紀ちゃんはいつもと違って優しく拒絶している。
 俺は向かった。

 「名前を教えてよ」
 「困ります」
 「いいじゃない。ちょっとラウンジに飲みに行かない?」
 「お断りします」

 世界最強の猛獣に何をやっているのか。

 「おい」
 
 若い議員が振り向いた。

 「俺の娘だ。誘うのは辞めてくれ」
 「あんた誰?」
 「石神だ」
 「ふーん」

 通じないようだった。
 威圧でもすれば簡単なのだが、今日は不味い。

 「僕はね、荒垣幹事長の甥なんだ」
 「そうか、さよなら」

 俺は亜紀ちゃんを連れて離れようとした。

 「ちょっと待てよ!」

 俺の肩を掴んだ。
 見ていたようで、荒垣幹事長が飛んで来る。
 若い議員が驚いていた。

 「石神さん! こいつが何かしましたか!」
 「ああ、俺の娘を連れ出そうとしてたんだ」
 「え!」

 荒垣幹事長が真っ青になった。

 「申し訳ありません! こいつには言い聞かせますんで」
 「いいよ。こういう席だ。酒に酔ってバカなことをする奴も出るだろう」
 「いいえ! 本当に申し訳ありません!」
 「伯父さん……」

 流石に何か悟ったらしい。

 「お前! この方は石神高虎様だ! お怒りを買えば俺たちなぞすぐに終わるぞ!」
 「え!」
 「いいって」

 若い議員は幹事長に連れて行かれた。
 もう会場に戻ることは無かった。

 それとなく総理も俺の所へ来て謝罪していった。

 俺は亜紀ちゃんと柳を呼び、傍にいるように言った。
 
 「柳、御堂や正巳さんたちが大変だな」
 「はい」
 「お前も行くか?」
 「いえ、私はいいです」

 澪さんは白地に鶴の着物を着ている。
 ずっとにこやかに笑い、こっちも大変そうだ。
 菊子さんの方は若干慣れている。

 それからは何事もなくパーティは終わった。
 出口で自由党の幹部たちと一緒に御堂と正巳さん、澪さんと菊子さんが並んで帰って行く人たちを見送っていた。
 俺たちも先に出て、ベルエポックに向かった。




 御堂たちが入って来た。

 「よう、お疲れ!」
 「ああ、やっぱり大変だった」
 「アハハハハ!」

 俺はテーブルに着くように言った。
 みんなで楽しく食べていると、荒垣幹事長が先ほどの甥を連れて謝罪に来た。

 「みなさんで楽しくお食事している所を申し訳ありません」
 
 甥も青くなって震えながら謝罪した。
 俺のことを詳しく聞かされたのだろう。

 「いいですよ。それよりも、これから御堂を盛り立ててやって下さい」
 「それはもう!」
 
 「あの、ここの御食事代は是非私共で」
 「いいですって。大体、1000万を超えますよ?」
 「え?」

 後ろの子どもたちの喰いっぷりを見せた。
 テーブルに次々と料理が置かれ、それが物凄い勢いで喰われて行く。

 「君も良かったね。娘はオーキッドに何が置いてあるか知ってるからね。数百万は飲まれてたよ」
 「!」
 
 俺は二人を帰し、テーブルに戻った。

 「何かあったのか?」

 御堂が聞くので、俺が経緯を話した。

 「そうだったのか」
 「亜紀ちゃんが暴れなくて良かったよ」
 
 「亜紀ちゃん、いい子ですよ!」

 御堂と笑った。

 「澪さん、沢山食べて下さいね」
 「はい、でももうお腹一杯で」
 
 正巳さんは大きなイベントを終えて、楽しそうに飲んでいた。
 菊子さんも時々料理を摘まみながら笑っている。
 青嵐と紫嵐も隅のテーブルで食べていた。

 「お前たちもご苦労さん」
 「いえ! こんな豪華なお食事まで頂いて」
 「石神さんのお傍にいられて嬉しいです!」
 「そうか、今日は一杯喰えよ!」
 「「はい!」」

 子どもたちがようやく落ち着き、ゆっくりと話した。

 


 家に帰ると正巳さんが言った。

 「今日も「虎温泉」に入ろう!」

 俺たちは笑って、またみんなで入った。
 俺たちの後で、子どもたちは澪さんと菊子さんを連れて行った。

 風呂を上がって、今日は子どもたちを抜きに御堂家の皆さんと「幻想空間」で飲んだ。
 澪さんと菊子さんが感動してくれる。

 「今日はみなさん、お疲れ様でした」
 「石神こそ。小島将軍との会見はお前がいなければ無理だったよ」

 御堂が澪さんと菊子さんに小島将軍の話をする。

 「ところで石神さん。あの温泉は素晴らしいですね! 身体の疲れが一気に消えました!」
 「ああ、澪さん。あれはな、オリハルコンの効き目があるんだよ」

 正巳さんが得意げに説明した。
 俺と御堂が笑った。

 「それとな、ルーちゃんとハーちゃんのマッサージな! 長いこと患ってた腰痛が取れたんだよ!」
 「そうなんですか!」
 「後でまたやらせますよ。菊子さんと澪さんも是非」
 「はい、お願いします!」

 俺は菊子さんと澪さんを先に部屋へ送り、双子にマッサージをさせた。
 今日は部屋を替え、御堂と澪さん、正巳さんと菊子さんが一緒になる。
 正巳さんも部屋へ行き、ハーにそのままマッサージをさせた。

 「御堂、どうだ?」
 「うん、段々実感として湧いて来たかな」
 「まだそれかよ」
 
 二人で笑った。

 「明日はテレビ出演だね」
 「ああ、お前はまた夕方まで忙しいな」
 「うん」

 明日は御堂がテレビ局の生放送に出る。
 日本中が注目する御堂だ。
 多くの人間が観るだろう。
 午後は対談だ。
 こちらは録画なので、多少は気が楽だ。
 一応俺も一緒に動く。



 「世話をかける」
 「こちらこそだ。全部石神が段取りを付けてくれる」
 「まあ、こんな状況だが、御堂と一緒にいられて楽しいよ」
 「うん、僕もそうだ」

 俺たちは笑って乾杯した。
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